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雑:オーランチキチキ(オーランチオキトリウム)は、なぜ画期的か?

藻の話題のブログではないのですが、事情により「油を作る藻」について続けて投稿します。

オーランチキチキ(オーランチオキトリウム)が色々難しいのだと言う話、そして、榎本藻という新しい藻の存在が公表されたニュースについて書きました。

引き続いて、そもそも「油を作る藻」とは何なのか?そして、チキチキ(オーランチオキトリウム)は、別の意味で画期的な存在であるという説明をします。

※「藻はもういい」という人は読み飛ばしてくださいませ

◆補足:「油」には「油脂」と「炭化水素」がある

以下、記事を投稿したついでに、オーランチオキトリウムについてなど、少し補足をします。

※この記事は以下の記事の続きです

オーランチキチキ(オーランチオキトリウム)は前途多難だという話
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2011/07/post-1580.html

これからは「榎本藻」、オーランチキチキ(オーランチオキトリウム)はもう古い?
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2011/07/post-83ba.html

前回の記事も前々回のも、わかりやすくするために「油」を作る藻と書いてきました。しかし、正確には「炭化水素」を作る藻です。

「炭化水素ではない」油を作る藻や植物は珍しくありません。しかし作られるのは植物油で「油脂」と呼ばれるものです。車の燃料などに用いられているものは「炭化水素」で分子構造が違うのです。

直感的には、灯油みたいな「食べられない油」と、植物油や脂肪のような「食べられる油」として理解できる違いです。

以下、具体的にどのような違いがあるのかを説明します。

ちょっと難しいので、意味が解らなかったら「違うのだ」ということだけを理解して、この部分は読み飛ばしてください。

まず炭化水素から。

炭化水素は、炭素の骨格の周りに水素がくっついた分子構造をしています。化学の時間の原子模型を頭に浮かべてください、手が四本ある「炭素原子」を複数取ってきて、炭素同士をくっつけて炭素の骨格を作ります。そして余った「手」に水素をくっつけたのが炭化水素、通常使われる燃料です。

ですから「CnHm」みたいな分子式になります。単純です。

次に油脂について。

一方で油脂は、脂肪酸とグリセリンが結合したものです。

脂肪酸とは、有機物の酸のことで酢酸(お酢)なんかもそうです。炭化水素の一箇所が酸の構造(-COOH)になっているものです。ですからCnHmCOOHみたいな分子式になります。

グリセリンとは、特殊な構造をしたアルコールの一種(C3H5(OH)3)で、炭素三つの鎖にアルコール基(-0H)が三つくっついた構造をしています。

「油脂」は、グリセリンの「三つのアルコール基(-0H)」が、脂肪酸のもつ「酸の構造(-COOH)」と結合することで、グリセリン一つが三つの脂肪酸を合体させたような構造になっています。

つまり、手を三つ持つグリセリンが、脂肪酸三つと合体したものです。炭化水素とは構造が全然違うのです。

以上で難儀な話は終わりです。

◆チキチキ(オーランチオキトリウム)はなぜありがたかったのか?

一度まとめです。

  • 油と呼ばれているものには「炭化水素」と「油脂」がある
  • それぞれは全然違う分子構造をしています。

そして厄介なのは、炭化水素の代わりに油脂を使ったり、油脂の代わりに炭化水素を使うことが難しいことです。

たとえば、植物油や脂肪は食べられますが、石油(炭化水素)は食べられません。

逆に、石油(炭化水素)は燃料や化学原料としてつかえるのですが、油脂ではそれが難しいのです。つまり、未来を担う燃料として植物に「油」を作ってもらうと、大抵は「油脂」が作られてしまい、燃料や化学原料としては使いにくいのです。

そして、油を作る藻は沢山存在するものの、そのほとんどは油脂を作る藻でした

  • ほとんどの植物(藻)は油脂を作る
  • 燃料(エンジン)や化学原料は「炭化水素」を前提としている
  • 「油脂」は燃料や化学原料には使いにくい

そこで、色々な工夫がなされています。

以下、せっかくですのでチキチキに限らず「色々な工夫」について書いてゆきます。

まず、植物の側で炭化水素を作らせる試みがあります。今回、ブログで話題にしている取り組みです。

  • 調べてみると、藻の中には炭化水素を作る「かなり変なやつ」が居る
  • じゃあ、それで頑張ってみよう

ボツリオコッカス(ボトリオコッカス)がそうですね。榎本藻もボツリオコッカスの一種ですし。

良いところは、すでに社会に構築された「炭化水素前提のシステム」をそのまま使えるところです。

チキチキも「炭化水素を作る藻」ですが、すこしポジションが違いました。

  • 有機物を食べて、炭化水素に変換する高性能の藻

すでに書いたように「自分で光合成をしない」ので、一工夫を強いられるという意味では難儀でした。余っている有機物がある場所、例えば下水で活躍させるなどの、少しひねった使い方が必要になります。

しかし、このような使い方も可能でした。

  • 他の何かで有機物を供給し、それを炭化水素に変換するために用いる

何らかの方法で炭化水素以外の有機物を莫大に生産し(例:藻や植物を使う)、まず「燃料にならないもの」を大量生産し、その後それをチキチキ(オーランチオキトリウム)で、炭化水素に変換する二段階生産システムです。

ですからチキチキは、「他の大発明」を実用に結びつける可能性を持ったものでもあります。このようなことは、光合成をする藻には出来ないことです。

つまり、チキチキ(オーランチオキトリウム)は光合成しないことが大きな欠点であると同時に、光合成をしないことが大きな利点でもあるのです。

◆藻以外の話し

太陽光からのエネルギー生産は人の技術では苦手な部分です。ですから、植物にやってもらう価値はあるかもしれません。

しかしその後の「変換」は生き物に頼らずとも、人間に出来ることは沢山あります。

例えば、油脂を従来の化学工業的に燃料に変換する方法があります。ですからチキチキに変換させる必然性は無いとも言えます。

例えば使用済み天ぷら油で走っているバスの話などを聞いたことは無いでしょうか。そのような試みでは、油脂を化学処理した「バイオディーゼル」というものが使われています。

バイオディーゼル:wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/バイオディーゼル

バイオディーゼルにはコスト面の問題や、炭化水素前提のエンジンを痛めることがあるなど、色々な問題もあります。しかしこれも選択肢の一つです。

あるいは藻から炭化水素を作ろうとしている人達は、「バイオディーゼルじゃだめなんですか」に答える必要があるということです。

上記の問題は「エンジン」の側で努力することも出来ます。極端な話、油脂そのもので動くエンジンを作れば、全ての問題は解決します。

また、バイオディーゼルとは結局のところ、炭化水素じゃないのだけれど、炭化水素のように使える物質で燃料をまかなうという計画です。

「炭化水素じゃないのだけれど燃やせる」物質は他にもあります。良く知られたものでは「アルコール」があります。

  • 植物に糖分を作らせる(サトウキビなど)
  • アルコール発酵させて、アルコール燃料にする

あるいは

  • 植物にでんぷんを作らせる(さつまいもなど)
  • アルコール発酵させて、アルコール燃料にする

石油の輸入が止まった戦争中の日本では、航空燃料用のアルコールをさつまいも(食べると不味いが大量に出来る品種で)から作っていました。

またブラジルでサトウキビを原料にしたバイオ燃料が製造されていますが、これもサトウキビの糖分からアルコールを作る試みです。燃料としてはガソリンに混ぜたりして使われています。

以上、藻の話をきっかけに色々な説明をしてみました。

関連記事:

雑:オーランチキチキ(オーランチオキトリウム)は前途多難だという話
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2011/07/post-1580.html

雑:これからは「榎本藻」、オーランチキチキ(オーランチオキトリウム)はもう古い?
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コメント

来ましたね 「チキチキマシーン」

痛いニュース(ノ∀`) : 世界初、藻の油70%混ぜ車走行に成功 筑波大研究チーム - ライブドアブログ
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1687877.html

投稿: | 2012/01/02 23:51

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