486 Firefoxの「遅いアドオンのワーストテン」と、納豆のグラム数減少の話
Firefoxを作っているところが、入れると遅くなるアドオンのワーストテンを公表するページを作っています。
このページがどういう経緯で作られたページなのかを説明しまして、そしてそこから、納豆のグラム数減少が同様の現象ではないかという話などをしたいと思います。
◆Firefoxが「遅くなるアドオンのワーストテン」を晒している
Slow Performing Add-ons
https://addons.mozilla.org/en-US/firefox/performance/
まず基本的なところを再確認します。
念のために説明をしますと、アドオンとはユーザが自分がネットから見つけてきて、Firefoxに色々な機能を追加することができるものです。
Firefoxが評判になった理由には、アドオンで様々な機能をどんどん追加することができる便利さもあったと思います。
ただ、一つ問題がありました。アドオンを追加すると遅くなってしまう(ことが多い)ことです。Firefoxはもとも、その設計上の思想からちょっと遅めになりがちなこともありますが、ユーザがアドオンをどんどん入れているうちに低速化してしまうことが多く、結果として「Firefoxは遅い」というイメージもどこかあります。
このページが目指しているのは、こういうことだと思われます。
- そうではない:Firefoxは遅い
- 事実はこうである:遅いのは一部のアドオンである
そして、以下を目指していると思われます。
- 遅さの原因となっているアドオンを晒すことで、遅い原因をなくす
現在、各種ブラウザによるブラウザ戦争が続いています。戦いには「高速(快適)に動作するか」も重要なポイントです。
例えば、JavaScriptのペンチマーク戦争でのトップ奪取合戦はおなじみです。Firefoxも日々、高速化に向けた改良をしています。
しかし、Firefox本体をせっかく高速化したのに、アドオンが原因で低速化してしまっているとしたら、Firefoxを開発している方面としてはとても残念な状態ということになります。
◆Skype がブロックされる事件
「遅くなる」だけではなく、過去にはこういう大事件もありました。
Firefox 用 Skype Toolbar をブロックリストで無効化します
http://mozilla.jp/blog/entry/6218/
Skypeをインストールすると、一緒にFirefoxに自動でインストールされるアドオンが「ブロックリストで無効化」されることがありました。
#なので、このアドオン、皆さんも知らないうちにインストール済みかもしれません
なおブロックリストに登録されると、世界中のFirefoxで基本的にそのアドオンは機能しなくなります。まあ、緊急停止装置というか、デスノートみたいなものです。
なぜ、そんなことになったかというと
- 一週間で約 4 万回ものクラッシュを引き起こした
- Firefox の DOM 操作を最高 300 倍も低速化し、ページ読み込みや読み込んでからの動作を低速化させる
あまりにも酷いということで、ブロックリスト入りとなりました。
なおその後、Skype側が「反省版」を作成して問題を解消させたので、当然今ではブロックは解除されています。
◆無責任が発生する現象
さて、なぜこのような問題が起こったり、遅いアドオン一覧を晒す必要まで生じてしまったのでしょうか。
実は、こういう現象は自然に発生してしまう傾向があるのです。
原因や因果関係が理解しにくかったり見えにくく、原因を作る人と、その結果で困る人がバラバラだと、自然にこういう現象が発生してしまいがちです。
例えば今回ですと、
- 本当の原因:アドオン作者
- 被害を受ける人:利用者
- 因果関係は理解しやすいか:難しい
- 不満はどこへ向かうか:Firefoxそのもの
また、見つかりにくいことを良い事に「サボる」という話にするとこうなります。
- サボって利益を受ける人:アドオン作者
- 被害を受ける人:利用者
- 因果関係は理解しやすいか:難しい
- 不満はどこへ向かうか:Firefoxそのもの
Firefoxが「遅いアドオン一覧をワーストテン」を発表したのは、こういう現象を抑止しようとした結果だろうと思います。
なお、見える部分での苛烈な競争が、見えない部分での「手抜き」を招く現象もあちこちで見られます。
例えば納豆。
納豆は少し前までは、一パック50グラムが割と普通でした。しかし、苛烈な価格競争が続いた結果、こういうことになってしまいました。
- 解りやすい部分:価格は値下げ
- わかりにくい部分:一パックの内容量が50グラム→45グラム→42.5グラム
「三パック○○円」は確認するけれども、一パック何グラムかを確認することが少ないために起こっている現象です。そのうち40グラムを目にするのではないかとすら思うことがあります。
グラム数が減ると一食分が貧相になってきますし、グラム単価で計算すると、一見高く見える50グラム入りの方が安いなんていうことすらあります。困った現象です。
牛丼の味の劣化も、似た現象と言えるかもしれません。
また、このブログ的な話題にも、同じようなことがあります
- 解りやすい部分:超高速通信使い放題(理論値)
- わかりにくい部分:実測値やエリア
あるいは、
- 解りやすい部分:話題の機種が0円
- わかりにくい部分:実質負担
世の中にはこういう現象が存在することを前提にしている活動も沢山あります、例えば、マーケティングという語がなんとなく胡散臭いのは、こういうことも原因です。
一般的に良くある感じにするとこうなりましょうか。
- 解りやすい部分:各種の素敵なイメージ
- わかりにくい部分:ボッタクリ商品
世の中がどうあるかが決まる分かれ目でもあると思います。
- 「ズルをする人」と「アホ」のセットが栄える世の中
- 「まともな仕事」と「賢い人」がセットが栄える世の中
Firefoxがやったように、わかりにくい部分をわかる部分に変えれば、こういう現象は緩和することができます。
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