485 ドコモがLTEに本腰であることはすぐわかるという話
ドコモがLTEに本腰であることは、ドコモが2GHz帯でLTEを開始したことから明らかであるという話について少し。
◆実は無茶をしている「ドコモが2GHz帯でLTE」
ドコモは現在、2GHz帯でのLTEの整備を開始しています。この事実からだけでも、ドコモがLTEに本腰であろうことが解るという話を少し書きます。
ドコモのLTEに対する態度については色々な予想がされています。しかし、これから書くように、ドコモがLTEに本腰を入れないとは考えにくい状況にあります。
まず、LTEが開始される前の2GHz帯の利用状況を確認してみましょう。
- 5MHz幅×2:W-CDMA
- 5MHz幅×2:W-CDMA
- 5MHz幅×2:W-CDMA
- 5MHz幅×2:W-CDMA
なお、ドコモにとって2GHz帯は「主力の帯域」です。ドコモは利用者も大変多いですし、データ通信の利用が増え続けている昨今の状況では、帯域はフル稼働状態です。
ドコモは2GHz帯でLTEを開始しています、ということは帯域を一度このようにしたということです。
- 5MHz幅×2:W-CDMA
- 5MHz幅×2:W-CDMA
- 5MHz幅×2:W-CDMA
- 5MHz幅×2:(LTE開始に備えて一度停止)
なんと25%ものパワーダウンです。つまりドコモは現在「パワー25%カット状態」なのです。
25%のパワーダウンが「とんでもないこと」であるのは、昨今の「電力消費量との戦い」をイメージしていただければ何となく解ると思います。
電気と通信は同じ性質ではありませんので比喩としては正確ではありませんが、ドコモがとんでもないことをしているのには変わりはありません。ドコモには大量の利用者が居ますし、帯域を馬鹿食いするスマートフォンやテザリングな端末が投入されつつの帯域減少です。
事前に備えて基地局を余分に増強し、一時的に利用量が多い地域×時間帯で速度が出なくなることも覚悟の上でのことだろうと思います。
◆LTEへの移行が進まないと苦しい
LTE開始によって帯域の利用状況はまずはこうなります(現在)、
- 5MHz幅×2:W-CDMA
- 5MHz幅×2:W-CDMA
- 5MHz幅×2:W-CDMA
- 5MHz幅×2:LTE
ただし現在、LTEの利用者はほとんど居ない状態です。
仮に、W-CDMAの能力を1、LTEの能力を3とします。もしLTEがほとんど使われないままだと以下のようになります。
- W-CDMAのみ:4
- 現在:3
しかし、もしLTEへの移行が始まるとこうなります
- W-CDMA×4:4
- W-CDMA×3、LTE×1:6(LTEの帯域が一つ)
- W-CDMA×2、LTE×2:8(LTEの帯域が二つ)
移行が進むと状況は一気に変化することがわかります。逆に言えばドコモ、LTEへの移行を遅らせることができない状況にあることがわかります。
ただ注意して欲しいのは、ここまでの話は混雑=通信容量の話で、エリアの話ではないということです。よって、優先されるべきは
- エリア拡大ではなくて、混雑地区のLTE化
- 全端末のLTE化ではなくて、一部端末のLTE化
ドコモの発表を見て解るとおり、最初にLTE対応するのは「パケットを馬鹿食いする端末」となっています。少数の端末が集中的に通信をする傾向がありますから、大食い端末がLTEに引越しするだけでも状況は大きく変わると思われます。
また、少し前の記事で書いたとおり、
なぜLTEのエリア展開はゆっくりに見えるか?
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2011/06/lte-38e7.html
LTEはW-CDMAとの組み合わせで利用できるので(LTE単独でエリアカバーしなくともなんとかなる)、LTEのエリア展開は慌てる必要が無いという事情もあります。W-CDMA/HSPAで別に問題が無い地域は当面はそのままでも良いので。
よって(少なくとも当面は)、ドコモはLTE化に積極的だけれども、それは「エリア的」というよりも「容量的」な積極性だろうということになります。
もし移行を進めないと、自分で自分の首を絞めた状態になるので、移行を妨げる何らかの事情があれば別ですが(例えばLTEそのものに技術的な問題が発生するなど)、そうでなければドコモがLTE化をわざわざ遅らせるとは考えにくい状況にあります。
◆なぜ「最大75Mbps」のエリアが「現状まだ」広がっていないか
ドコモのLTEは「下り最大75Mbps」ということで売り込みが図られていますが、現在のところ75Mbpsエリアはほとんど無いことが知られています。
モバイルWiMAXよりも大きな数字を出しておきながら、現状ほとんどのエリアは「最大37.5Mbps」とはどういうことだ、という状態ですが、これも上記で書いた事情によるものです。
LTEへの移行が進まない限りは「パワー25%カット状態」が続きます。ですから、まず最初は、
- W-CDMA×3、LTE×1(LTEの帯域が一つ)
以上の状態で、「LTEへの容量的移行を出来るだけ進める」ことになります。
ドコモが年末に向けて投入すると発表しているLTE端末群は、容量大食いの通信をまず引越しさせることを目指していると見られるものです。
LTEへの移行が十分に進んでくると、おそらく「世間でLTEの話題が珍しくなくなった」ころになると、LTE帯域は本格的に使われ始めて、更なる移行が可能となります。
- W-CDMA×2、LTE×2:LTEの帯域が二つ
LTEが実際の通信利用においても主になり始めると、ドコモのLTEは全面的に「下り最大75Mbps」になると思われます。
この状態にまでなると、LTEの方が電波の利用効率が良いので、ドコモの基地局建設能力が異常なこともあわせて、ドコモの2GHzは他社とは比較にならないほどの最強モードになっているはずです。
全面的な「下り最大75Mbps」になったときには、ドコモが名実ともにLTE時代を迎えたシグナルであると見てよいでしょう。
◆他社はどうなのか?
では他社はどうでしょうか?
まずモバイルWiMAXですが、モバイルWiMAXはLTEと違って単独でのエリアカバーを強いられます。よって、面的な拡大をまず優先せざるを得ません。現状基地局をどんどん建設しているのもそのためであろうと思われます。
AUですが、AUの主力帯域は2GHz帯ではなく800MHz帯です。逆に言えば2GHz帯は比較的空いているのですが(よって2GHz帯でならLTE導入は可能だと思われます)、AUとしてはLTEも800MHz帯を主力にしたいようです。
800MHz帯は現在周波数帯の再編が行われており、その上に主力の帯域のため大混雑しており、現状LTEへの移行を開始することができず、AUは現在待ち状態にあります。ですがLTE化が可能になり次第、積極的なLTE化が進むと思われます。
ソフトバンクは第三世代のエリア整備が済んでおらず、ホワイトプランとiPhoneで帯域は大混雑しており、現実問題としてLTEどころではないという状況ではないかと思われます。
ソフトバンクとしては、まず1.5GHz帯でHSPA+を開始して、2GHz帯から1.5GHz帯への引越しを行い、その上で2GHz帯でLTEを開始したいのではないか、とされていますが、700/900MHz帯や2.5GHz帯のXGPもあり、思いつきで計画が変わったりもするので結局どうなるのかは解らないところもあります。
イーモバイルは1.7GHz帯に帯域が三つあり、現在HSPA+(DC-HSDPA)でのサービスが行われています。当面はHSPA+側(第三世代の延命技術)に思い切って舵を切って高速化を行いその代わりにLTE化は遅らせるのか、それとも当面は厳しい辛抱をしてでも早めのLTE化を目指すのか、悩んでいるところではないかと思われます。
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