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484 「高度化XGP=TD-LTE」なのか「高度化XGP≠TD-LTE」なのかという話

XGPについて「高度化XGP=TD-LTE」なのか「高度化XGP≠TD-LTE」なのかという話題があります。これについては、ちょっと考えてみましたという投稿。

◆今年中に新生XGPがサービスイン予定である

ウィルコムからソフトバンクへと移った「XGP」ですが、2011年内にサービスインがされると発表されています。

総務省、WCPによるXGP開設計画の変更を認定
http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20110603_450484.html

なお、高度化XGPのサービス提供時期は2011年内で変更は無い。高度化XGPはTD-LTE方式と多くの部品が共通化でき、端末を含め、ハードウェアの供給やコスト削減において効果が期待できるとしている。

確かに「サービス提供時期は2011年内」とあります。音沙汰なしの現状からすると、本当?という気もしますが、とりあえずは年末までには新生XGPが利用可能になるということだそうです。

さて、以前から盛んに話題になっているのは、そのサービスインされる「XGP」とは、「XGP=TD-LTE」のことなのか「XGP≠TD-LTE」のことなのかという話です。

上記のニュースでも「XGP」ではなく「高度化XGP」とあります。つまり、2011年内にサービスインされるXGPは、ウィルコムがサービスインしようとしていたXGPとは少し違うものになるのは違いないのです。

さて、問題は「どのように違うか」です。

よく言われている話としては、「高度化XGP」とは実質的に「TD-LTEそのもの」であるという観測です。つまり、XGP用として免許を貰った帯域で、自称「高度化XGP」でその実体は単なる「TD-LTE」をサービスインする目論見であるという観測です。

一方で、新生XGPはTD-LTEっぽいけれども、それでもあくまでも「XGP≠TD-LTE」だという話もあります。

◆それぞれの主張の根拠をまとめてみる

「XGP=TD-LTE」の根拠は以下のようなものでしょう。

ソフトバンクは独自技術になど興味は無く、中国相乗りの世界調達で基地局を買ってきて、それをそのまま設置してサービスインしたいだけ。しかし免許は「XGP」で貰っているので、「TD-LTE」でサービスインするとなると免許をいったん返上しろと言われるなど話がややこしくなる。

そこでソフトバンクは「TD-LTE」に「高度化XGP」という別名をつけるというインチキで乗り切ろうとしているだけだ、という意見があります。

孫社長が「次世代XGPは100%TD-LTEと互換」と発言していることもあるので、「100%互換」とは、つまりXGPとはTD-LTEそのものであるが上記のトリックで名前だけ変えたものであるという意見です。

ソフトバンクや中国移動などがTDD推進団体設立、「次世代XGPは100%TD-LTEと互換」と孫社長
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110215/357183/

しかし、一方で「高度化XGP≠TD-LTE」であるという主張もあるようです。

ウィルコムが2.5GHz帯の免許を得た際の「XGP」は、モバイルWiMAXを意識して作った「次世代PHS」であり、今回仕切りなおしでのサービスインがされる「高度化XGP」はTD-LTEを意識して作った「次世代PHS」に過ぎない、つまり依然として「高度化XGP≠TD-LTE」であるという意見です。

例えば、

XGPがバージョンアップの件
http://www.phs-mobile.com/?p=866

2.5GHz帯の免許を得た際の「XGP」の方こそ、WiMAXと競争して免許を得るために不自然にWiMAX風に作りなおしたXGPであって、今回の「高度化XGP」こそ、本来計画されていたXGPの姿に近いという意見です。

また、関係者の発言でも次世代XGPの見所として「PHSから継承された長所」をアピールするかのような発言が見られます。もし仮に「XGP=TD-LTE」であるとしたら、このようなアピールは出来ないはずです。

例えば、2011/05/31の記事でこういう発言があります、

スマホ急増でモバイルネットワーク飽和の危機、3キャリアの対応策は
http://www.itmedia.co.jp/promobile/articles/1105/31/news020.html

ソフトバンクモバイルで代表取締役副社長を務める松本徹三氏は、この2.5GHz帯の用途について、“XGPの技術をベースにLTEの機器を使ったサービス”を展開するとした。

XGPには、ネットワークのキャパシティを増やすのに有効な小セル化を図りながら、小セル化によって起こるセル間の問題を解消するチューニング技術があると松本氏。この技術を使いながら、モジュレーションはLTEと同じものを利用するサービスを展開すると説明した。

「小セル化によって起こるセル間の問題を解消するチューニング技術」とは、PHS由来のマイクロセル技術の事だとすると、いわゆるTD-LTEそのものとは「別の技術」ということになります。

また、ウィルコムの現在のボスの発言にもこうあります

http://twitter.com/#!/miyakawa11/status/37393085772210176

@miyakawa11 宮川潤一 生存危機に直面した山登りを再挑戦する為には、例え遠回りになろうとも道具の構造の理解とその準備を入念に行う必要がある http://bit.ly/eTviqm ウィルコムの技術は確実に世界の技術革新の中で生きています。XGP準備着々と。#willcom

「ウィルコムの技術」は放棄されずに生き残っているというようなつぶやきです。

またそもそも、孫社長の「100%TD-LTEと互換」の発言がなされた際にもこういう発言が同時になされています。

ソフトバンクや中国移動などがTDD推進団体設立、「次世代XGPは100%TD-LTEと互換」と孫社長
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110215/357183/

孫社長は、同社グループのウィルコムには15年のTDD技術の経験があることを説明。これらの経験をもとにGTIの活動を支援できるとした。さらにウィルコムからXGP事業を引き継いだWireless City Planning(ワイヤレスシティプランニング)が今後計画する次世代XGPは「TD-LTEと100%互換性がある」と説明した

つまり、ウィルコムが持っているノウハウをカードとして使おうとしていることが解ります。単に「XGP=TD-LTE」だとしたら、PHS由来のノウハウを単に放棄することになってしまいますから。

◆要素に分けて考えてみる

ウィルコムがもともと計画していたXGPを、我々からの視点で「要素」に分けると大体こんな感じではなかろうかと思います。

  • 土台としての第四世代の技術(OFDMA)
  • その上でのPHS由来のマイクロセル技術
  • PHSとの組み合わせ利用への配慮

XGPがXGPであるためにもっとも大事な部分は「PHS由来のマイクロセル技術」の部分となります。ここが生き残っていればPHSの系譜は生き残ったといえるでしょうし、そうでないならば独自技術だったとしても、微妙な感じです。問題になるのも「この部分がどうなのか」です。

また、ウィルコム的なXGP普及シナリオにおいては、XGPとPHSのデュアル端末やデュアル基地局が作れることも大事なことでした。ですが、今となってはこの部分はもうあまり重要とはされないでしょう。

土台部分の入れ替えならば、別に魂まで抜けるわけではありません。

これまで、モバイルWiMAXの土台を流用していたのを、状況の変化にあわせて、TD-LTEを流用した土台に置き換えただけなわけですから。

また、松本副社長の発言にはこうあります、

この技術を使いながら、モジュレーションはLTEと同じものを利用するサービスを展開すると説明した。

PHS由来の技術を使いながら、土台部分(モジュレーション:変調)はLTEのものを流用すると言っているように取れます。

ソフトバンクモバイルで代表取締役副社長を務める松本徹三氏は、この2.5GHz帯の用途について、“XGPの技術をベースにLTEの機器を使ったサービス”を展開するとした。

「LTEの機器を使った」というのは、LTEの普及に伴い量産されるLTE向けの各種ハードウェアを用いることによって、LTEの量産効果に相乗りする主張であろうと思われます。

なお、既存のXGP(2.5GHz帯の免許獲得時)では、同じようにWiMAX関連のハードウェアを流用することでWiMAXの量産効果に相乗りできるので、WiMAXに対するコスト面での不利はありませんという説明がなされていました。

これをそっくりLTEへ置き換えて作戦を作り直したとも考えられます。

なお、LTEの各種量産効果に相乗りする作戦のことを「LTEのエコシステム」という表現が用いられている場合もあります。

【Mobile World Congress 2011】
孫正義氏、高度化XGPを2011年に開始とコメント
http://k-tai.impress.co.jp/docs/event/mwc2011/20110215_427069.html

孫氏はスピーチの中で、TD-LTEとハードウェア的に互換性の高い、高度化XGPを推進していく構えを見せ、中国、インドといった拡大が見込まれる市場のエコシステムに組み込まれることで、コスト削減などが図れるとした。

なお、ここでも「ハードウェア的に互換性の高い」とあります。同一ハードウェアで、技術的には違うというような説明とも読めます。

また、ウィルコム時代のXGPの人が登壇したことも記事に出てきます。

イベントではこのほか、WCPのCTOとして近 義起氏が登壇し、高度化XGPの特徴などを紹介。ウィルコム時代からの技術を活かしてサービスを提供していく様子を語った。

「高度化XGP=TD-LTEそのもの」だとすると、このような発表だとちょっと変になります。なぜならウィルコムはXGPは開発したけれども、TD-LTEの開発は行っていないからです。

ただし、「TD-LTEの大波に最大限乗っかる」ためには、TD-LTEをそのまま丸ごと採用することが無難な作戦であることも事実ではあります。

よって、「XGP=TD-LTE」なのか「XGP≠TD-LTE」なのかという話、現在では主に「XGP=TD-LTE」という語られ方が多いように思うのですが、どちらの可能性もあるように思えます。

◆「XGP≠TD-LTE」だとして

「XGP≠TD-LTE」だとして、そのような判断がなされた理由は何でしょうか?

まず考えられるのは、総務省への義理立てです。つまり、XGPをともかくも存続させるということでウィルコムを引き受けている可能性です。

そして、もう一つは、ソフトバンクがウィルコムの独自技術を重要なカードとして活用する意思がある可能性です。

孫社長も自ら発言しているように(「ウィルコムには15年のTDD技術の経験がある」)、TDD系の技術で高度な蓄積があるキャリアは世界でほとんど無く、マイクロセルを実際に運用した経験のあるキャリアは貴重な存在です。

しかも。基地局間の干渉除去(≒マイクロセル)技術はこれから重要視されるはずの技術です。

ソフトバンクはずっと「自前の技術が無い組織」でした。ですからPHS系のノウハウは、初めて手にした「世界に通用する技術」ということになります。

つまりソフトバンクにとって初めての、技術で大勝負が可能な局面だということです。

もし孫社長がTD-LTE陣営にXGP由来の技術を手土産に現れたら、とりあえずは歓迎されるはずです。そこからソフトバンクがTD-LTE陣営の世界戦略に関与するような展開、孫社長としても望む展開かもしれません。

(ただまあ、そうだとしたら「次世代XGPは100%TD-LTEと互換」という孫社長の発言はどうなのだということにはなりますが・・「ハードウェア的には」みたいな重要なフレーズが抜けた発言かもしれませんが)

実際にサービスインしてみると単に「高度化XGP=TD-LTE」なのかもしれませんが、「XGP≠TD-LTE」であると考えることもできるし、もしそうだったら、今後の展開について色々と面白い想像も出来ますよということで、記事にしてみました。

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