« 雑:携帯電話2011年5月の純増数について | トップページ | 482 ドコモとソフトバンクが「接続料」で喧嘩している件について »

483 700/900MHz帯割り当てについて

現在、色々と議論になっている「700/900MHz帯の割り当て」について少し書いてみたいと思います。

◆700/900MHz帯とは

まず、基本事項の確認から。

「700/900MHz帯」とは、電波の周波数帯のことです。なぜ注目されているかというと、アナログ地上波の停波などに伴って携帯電話への再割り当てがなされることになっているためです。

800MHz前後の周波数は、携帯電話にとって非常に上質な周波数帯であるとされます。

周波数が高いと電波は光のような強く持つようになり、物陰に回りにくくなったり建物の中などが圏外になりやすくなります(つまりエリア展開が難しくなる)。かといって周波数が低すぎるとアンテナが大きくなるなど別の意味で扱いにくくなります。

800MHz前後の周波数はそういう意味で非常に性質の良い周波数で、そのような良い周波数帯が、しかも大量に割り当てられるために、誰に、どのように、どうやって割り当てるか、で色々と議論がされています。

しかも、この話にはアナログ地上波の停波など、既存の他の電波利用も関連してきます。

この帯域は最初、700MHz帯と900MHz帯とをペアにするというちょっと変わった割り当てが行われる予定でした。

通常の携帯電話の電波割り当ては、下り:基地局→端末、の通信と、上り:端末→基地局、の通信それぞれの帯域をペアにして割り当てる必要あります。当初案では、700MHz帯と900MHz帯をペアにした割り当てになる予定でした。

しかし、そんな割り当ては見直したほうが良いという意見が出てきたため、見直しがなされていました。

◆論点

以下、その後の経緯やら論点のいい加減なまとめです。

他国とそろえろ!:

まず議論になったのは、他国の割り当てと違うじゃないか!というツッコミでした。「世界から孤立する!」はどうにも日本で盛り上がりやすいネタではあります。

他の国、例えばアメリカでもアナログ地上波の停波に伴っての割り当て作業が既に行われていましたが、これと日本の割り当て方法が違うものでした。欧州とも共通していませんでした。

一方で日本には日本の事情があります。日本が空けられる帯域一覧を眺めてみて、どういう割り当て方が一番無駄が生じないか考えるべきで、無理に他国にそろえると無駄が生じることもあるかもしれません。

揃っていなくても騒がれているほど問題が起こらないのでは?、だから別に揃ってなくてもいいじゃんという主張もありました。

結果としては、以下のような結論となりました。

  • 700MHz帯と900MHz帯の組み合わせでペアにする案は廃止
  • 700MHz帯と900MHz帯、それぞれでペアを作って割り当てる
  • 他国での割り当てとできるだけ同じようにする

他の用途への割り当てを削ろう:

また、携帯電話に割り当てる帯域が少なすぎる、携帯電話以外の大したことのない用途に周波数が使われすぎている、という主張がありました。

携帯電話では、ありえないほど高度な電波の利用がされているのに対し、携帯電話以外の用途では、そんなに帯域を使ってそんな程度の使い方ですか、ということが普通でした。

貴重な周波数を無駄にしないためにも、日本にとって価値の高い用途に集中すべきであるという主張が再燃します。

これについては、立ち退きを求められる側が反対をすることになり、政治的な綱引きが行われることになります。

結果としては、以下のような結論となりました。

  • 一部の用途で立ち退きの方針が決定
  • 別の帯域への引越しなどをしてもらうことに
  • 立ち退きや引越しにかかるコストは、新規に割り当てされる者が支払う

たとえば700MHz帯では、

  • FPU(テレビの無線中継): 引越し
  • ラジオマイク: 引越し(ホワイトスペースないしは別の帯域に)

900MHz帯では、

  • RFID(無線タグ): 引越し(諸外国での割り当てに揃える)
  • MCA無線(業務無線): 引越し
  • パーソナル無線: 廃止

また、このようにして帯域を整理することによって、900MHz帯や700MHz帯それぞれでのペア利用を可能にしたり、諸外国と周波数割り当てを同じにすることも実現しています。

なお、他にも帯域を削りたいが削れていない、ものもあるようです。

以下、各種批判意見を混ぜて少し書きます。

FPUはテレビ放送の中継車が中継に用いている周波数です。中継車から地上波(衛星ではなく)で放送局まで中継するために用いられています。

これについての批判では、無駄に広い帯域を確保している上に、実際には中継にすらほとんど使われていないので、引越しではなく廃止でよい(専用の帯域を確保するほどではないのではないか)という意見もあるようです。

ラジオマイクは要するにワイヤレスマイクです。

引越し先として指定されているのは、テレビ放送帯域の空き帯域である「ホワイトスペース」です。遠距離通信をしないワイヤレスマイクにとっては、都合の良い引越し先だと言えます。

RFID(無線タグ)は、商品などにつける電子的なタグのことです。商品に関する様々な情報(商品名や流通の管理上の情報など)を無線でワイアレスに読み取ることができるものです。未来的な流通システムには欠かせないハイテクです。

これも引越しとなりましたが、引越しをするのみならず、同時に日本独自の周波数になっていたものを世界共通の周波数への引越しをすることに決まったようです。結果的に一石二鳥な感じになりそうです。

MCA無線とは、業務用の無線に用いられている帯域で、タクシーの無線や防災無線などに用いられている帯域です。通信方式が旧式ということもあり、結果的に携帯電話と比べて、少ない利用者が多量の帯域を占有する結果となっていました。これも引越しとなるようです。

パーソナル無線とは、個人向けの免許がいらない通信で、車同士、例えばトラック同士が無線で会話したりするのに用いられていたものです。

しかし、現在となっては利用者は少なく、違法利用が横行していること、携帯電話が普及していることなどで廃止となるようです。

割り当て方法:

帯域の割り当て方法について、利用者の多いキャリアにまとまった割り当てを行うべきだと言う主張と、各社公平になるように割り当てるべきだという主張が出ています。

例えば、LTEは20MHz幅がないと最大性能が出ません。LTEより先の技術では20MHz幅でも狭いかもしれません。帯域を細切れにすると、例えば10MHz幅での運用をずっと続けなければならない非効率を招くかもしれません。

例えば1.5GHz帯では、帯域をまとめて割り当てることが出来ずに、三社に10MHz/10MHz/15MHzでの割り当てとなりました。つまり、1.5GHzでは「将来にわたって」、LTEの最大性能は出せないのです。

割り当ての優先順位は、利用している帯域に対して利用者が多いキャリアを優先すべきで、帯域はまとめて割り当てるべきだという主張があります。

しかし反対に、「各社公平に」割り当てて欲しいという主張もあります。特に、800MHz帯を持っていないキャリアは厚遇すべきだという主張も(当事者から)なされています。

しかしその場合には、利用している帯域に対して利用者が多いドコモやKDDIへの割り当てをしないのは不自然なことも会わせ、「公平」に割り当てた1.5GHz帯のように細切れになる可能性が高いのではないかと思います。

オークション:

これまでの帯域の割り当ては、関係者で話し合いが行われて国が決定する方式でした。しかし、もっとオープンに決定すべきだという意見もあります。

もっとも解りやすい割り当て方式として、オークション方式で帯域を売りに出す方法があります。例えば、アメリカでの700MHz帯の割り当てでは、オークション方式がとられました。

オークション方式の利点は、恣意的な割り当てがなされない点と、有効活用するところに帯域が割り当てられるので電波資源が有効に使われるはずだ、という点です。

オークションならば「恣意的な割り当てがなされない」のは明白です、なぜならば入札額が大きいところが落札する仕組みですから、役所の主観が入る余地はありません。

有効利用されるはず、ですが、高いお金を払うからにはそれに見合っただけの収益が出る事業が計画されているはずで、収益が出る事業とは利用者がお金を払うということであって、結果的に利用者=国民にとって一番役に立つ方法で利用されるようになるはずだという主張です。

アメリカでは基本的にオークション方式です。

しかし反対意見もあります。

例えば欧州では第三世代の帯域をオークションにした結果、落札価格が高額になりすぎて携帯電話会社を圧迫し、第三世代の普及を遅らせてしまったという主張があります。

また、お金のあるところが帯域をどんどん買えるので、公平な競争ができないという主張もあります。極端な例としては、他社に使わせないために買って、放置するようなことも起こるかもしれないという意見もあります。

また、既存キャリアの資金力の前に新規参入の道を閉ざすという主張もあります。ただしこちらについては、新規参入が優れた案であれば、お金は用意できるはずだという主張もありますが。

しかしとりあえずは、既存の携帯電話会社の多数はオークション方式を好ましく思っていないようで、オークション方式の導入は微妙なようです。

その理由は、お金のあるところが帯域を買い占めてしまったり新規参入を阻害するというのが表向きの理由のようですが、本音としては、これまでの方式だとお金を払うことなく帯域をもらえるのにオークションに賛成する理由がない、というところもあるでしょう。

◆思うこと

私としては、優先順位をつけるとするなら、

  • 帯域を出来るだけ沢山用意すること(携帯電話以外の用途を出来るだけ減らすこと)
  • 帯域を細切れにしないこと
  • 他の国とそろえること

以前から書いている通り、優先順位としては他の国と周波数をそろえるよりも、帯域を沢山用意することが大事だろうと考えていました。まだ、他の用途の整理は不十分だろうと思えます。

また、他の用途の巻き取りは結構大変だと思います。日本中に沢山の利用者がいるからです(例えばワイヤレスマイクを想像してみてください)。しかし、これを時間をかけずになんとか巻き取るようにする必要があります。

そして、必要以上の「移行費用」を支払うようなことも避ける必要があります。

帯域を細切れ、特に均等に細切れにしてしまうのは、止めた方が良いのではないかと思います。1.5GHz帯のような割り当てが続くようでは、無駄ばかりではないかと思います。

場合によっては既存帯域の権利を含めて調整を行うなどして、帯域はまとめて割り当てるようにして欲しいと思います。

このエントリーをはてなブックマークに追加

|

« 雑:携帯電話2011年5月の純増数について | トップページ | 482 ドコモとソフトバンクが「接続料」で喧嘩している件について »

コメント

>利用している帯域に対して利用者が多いドコモやKDDIへの割り当てをしないのは不自然

ドコモはともかくKDDIは、割り当てられた帯域に対しての利用者がソフトバンクよりも遥かに少ない。

2011年04月末契約数
docomo: 58,197,800
au: 33,139,000
softbank: 25,648,000
EAccess: 3,192,300

2010年(3.5G)
docomo: 800(15x2)+1.7GHz(15x2)+2GHz(20x2)=100MHz (581千契約/MHz)
au: 800(13x2)+N800(5x2)+2GHz(15x2)=66MHz (502千契約/MHz)
softbank: 2GHz(20x2)=40MHz (641千契約/MHz)
EMobile: 1.7GHz(5x2)=10MHz (319千契約/MHz)

2012年(3.5G+3.9G)
docomo: 800(15x2)+1.5GHz(15x2)+1.7GHz(15x2)+2GHz(20x2)=130MHz (447千契約/MHz)
au: N800(15x2)+1.5GHz(10x2)+2GHz(20x2)=90MHz (368千契約/MHz)
softbank: 1.5GHz(10x2)+2GHz(20x2)=60MHz (427千契約/MHz)
EMobile: 1.7GHz(15x2)=30MHz (106千契約/MHz)

投稿: | 2011/06/09 17:51

ソフトバンクが900メガヘルツの電波帯を使えるようになれば、3Gの電波の穴を900メガヘルツでしらべる事が出来て、効率の良い基地局の運用ができるのではないでしょうか?
現在のソフトバンクの基地局増強は出鱈目に数打てば当たるような作戦で基地局を増加させている。

投稿: VCVNC | 2011/10/03 12:21

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/41683/51897077

この記事へのトラックバック一覧です: 483 700/900MHz帯割り当てについて:

« 雑:携帯電話2011年5月の純増数について | トップページ | 482 ドコモとソフトバンクが「接続料」で喧嘩している件について »