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482 ドコモとソフトバンクが「接続料」で喧嘩している件について

ドコモとソフトバンクが「相互接続料」というものを巡って、ずっと揉めています。この問題、かなり前から続いており、以前に記事にしたこともありました。

とうとうドコモが本格的に怒って公的な場で決着をつけようとし、ソフトバンクがそれに対して「応酬」したために、なにやら本格的な喧嘩のようになって来ています。

「接続料」とはそもそも何か、これまでの経緯と、現在起こっていることについて書きたいと思います。

◆「接続料」とは

接続料については一度記事にしました。

接続料問題
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2009/06/510-c150.html

2009年の記事ですから二年前のことです、そんな前から続いていた揉め事です。

上記の記事にも説明がありますが、もう一度、「接続料」とは何か、どうして揉めているのか、それぞれについて再度説明をしておきたいと思います。

「接続料」とは何か?:

まず最初に「接続料」とは何かを説明しましょう。

ドコモの携帯電話を持っている人(Aさん)が、ソフトバンクの携帯電話を使っている人(Bさん)に向けて電話をかけているとします。その際、「通信」は以下のように行われています。

ドコモの電話機 = [ドコモの携帯電話網] = [ソフトバンクの携帯電話網] = ソフトバンクの電話機

説明するまでもありませんが、日本の料金システムでは、この場合の「電話料金」はAさんがドコモに支払います。

しかし上記を良く見てください、通話ではソフトバンク側の設備も使っていることが解ります。設備を使っているのですから、何らかの形で利用コストが支払われないといけません。

日本ではこういう場合に、ドコモからソフトバンクに対し、ソフトバンク側の設備の使用料金を払う仕組みになっています。

これを「接続料」と呼びます。

なお、アメリカでは、Aさんがドコモ側の料金を、Bさんがソフトバンク側の料金を支払うという、非常に明快な仕組みになっています(ただし、かかってきた携帯電話に出るだけでお金を取られてしまいますが)。

ドコモはなぜ怒っているか?:

さて、ドコモはなぜ怒っているのでしょうか。

ドコモは以下の点で不満を持っています。

  • ソフトバンクの接続料が他社と比べて目立って高い
  • ドコモ→ソフトバンク、ソフトバンク→ドコモ、それぞれの通話の量は同じくらいであるにもかかわらず、ドコモからソフトバンクへの支払いが100億を越えている
  • 高い接続料の根拠が示されていない

なお、法律の決まりで25%を超えるシェアを持っているキャリア(ドコモとAU)は、接続料の算定根拠を開示する必要があります。しかし、ソフトバンクは25%に達していないので、法的な開示義務がありません。

しかし、ドコモから見ると、

  • ソフトバンクが一方的に決めた、根拠も解らない高額の接続料
  • まるで「ぼったくりバー」
  • 結果的に「他社のユーザから料金を取る」形となるので、ドコモやAUのユーザがソフトバンクのホワイトプランの穴埋めをしているような、意味の解らない構図になっている

このためドコモは「高額な接続料の根拠を示してください」と言い続けてきました。

注意して欲しいのは「値下げしなさい」ではなくて「根拠を示しなさい」と要求していることです。根拠があれば高くてもよいことになりますから、ドコモは「高い」ではなく「不正がある」と考えていることもわかります。

なお、ドコモが公表した「2008年の3分あたりの接続料」は以下の通りです。

  • docomo: 区域内:28.80円/ 区域外:32.40円
  • KDDI: 区域内:31.50円/ 区域外:39.24円
  • SBM: 区域内:38.70円/ 区域外:45.36円
  • EM: 全区域:29.34円

確かにソフトバンクが目立って高いことが解ります。

ソフトバンクは弱小キャリアは安く出来ないのですと主張したことがありますが、さらに弱小のはずの「イーモバイル」は接続料が安いことも同時にばらされていました。

◆ドコモ、とうとう公的な場での決着に向けて動く

以前、記事にしてから二年間、ドコモはソフトバンクに根拠を示しなさいと言い続け、ソフトバンクは応じないままで、埒が明かなくなっていました。

そして、ドコモはとうとう「公的な場」で白黒つけようと動き出します。

「協議では解決できない」、ドコモが紛争処理委員会へ申請
http://www.nikkei.com/tech/news/article/g=96958A9C93819499E3EAE2E0848DE3EAE2E7E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2

NTTドコモは2011年5月18日、ソフトバンクモバイルが3月に提示した2010年度の接続料水準について、電気通信事業紛争処理委員会へあっせん申請を行ったと発表した。

「電気通信事業紛争処理委員会」とは公的な機関です、そこに「あっせん申請」つまり「仲裁」をお願いしています。ドコモは公的な場での話し合いをしようとしているわけです。

記事では、接続料の差が酷くなっているとの説明があります、

「1.46倍の格差は理解しがたい。ソフトバンクモバイルと協議を進めてきたが、もう協議では解決は図れない」とし、あっせんによる紛争処理申請に至った経緯を説明した。

スライドの画像から「一分あたりの接続料」引用すると、

  • docomo:8.10円(2009) -> 5.22円(2010)
  • SBM:10.20円(1.26倍) -> 7.62円(1.46倍)

なお、ドコモはソフトバンクが開示している情報から、独自に「本当の接続料」を試算しています。

ガイドラインに基づいた推計では5.6円/分、固定資産値に基づいた推計でも5.1円/分となり、今回7.62円/分と提示したソフトバンクモバイルの接続料とは異なり、ドコモとの格差は約10%にとどまるとした

なお、このニュースにはありませんが、同じ計算式でKDDIの接続料を試算すると、実際の接続料とほぼ一致するとのことです。

なお、異常に高い接続料の「原因」としては、以下のような計算のインチキがあるのではと指摘しています。

「営業費が他社と比べて極端に少ないのか、利潤を過大に設定している可能性が大きいのでは」(古川室長)とした

なお、ドコモは接続料が引き下げられた場合には、利用者に料金引き下げで還元すると表明しています。

「接続料の低減と格差の適正化を、ユーザー料金の低廉化に還元していきたい」と明言した。

◆計算式でも「おかしい」

なお、このタイミングでドコモが動いたのには理由もありました。

これまでドコモとソフトバンクが揉めた結果、接続料の計算方法のガイドラインが決められていました。

ドコモ、ソフトバンクの接続料に対し紛争処理委にあっせん申請
http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20110518_446510.html

  • 音声通話の接続料:「ネットワークコスト+適正な利潤」÷「総通話時間」
  • ネットワークコストには営業費用は原則含まれない

つまり、

  • 「営業費用」のような「それは設備のコストじゃ無くね?」という数値を除外するルールを明示
  • 「純然たる設備のコスト」に適正な儲けを乗せ、「全体のコスト」を計算する
  • その電話会社での総通話時間を積算する
  • 「全体のコスト」を「総通話時間」で割ると、単位時間当たりの設備コストが計算できる

なお「営業費用」のような良く解らない数字が混ざっていたのは、実は他社も含めてのことでしたが、この騒動で明確に排除されることになりました。

つまり、通信設備そのものを維持するコスト(全体のコスト)を、全部の通話の時間を合計したもの(総通話時間)で割ると、時間あたりのコストは計算できますよね?という、とても明快な式です。

そして、上記の計算式でソフトバンクの主張がなぜおかしいかということについてもドコモがコメントをしています。

まず、上記の「全体のコスト」について、ソフトバンクは設備にお金を使っていないのに全体のコストが大きくなるわけが無いと主張しています。

ソフトバンクの設備投資コストはドコモの約1/4で、1ユーザーあたりの設備投資額についても、ドコモを1とした場合にソフトバンクの投資額は0.65~0.81倍と低いと主張する。投資額が少ないにも関わらず接続料の格差が1.46倍となるのは不自然というわけだ。

「全体のコスト」に大きく影響するはずの設備投資コスト(携帯電話の設備にかけている予算)は「ドコモの約1/4」と低く、利用者あたりの設備投資額を計算してもドコモよりも低いのに、結果が1.46倍というのはおかしいのではないかと言っています。

そして、「総通話時間」ですが、ソフトバンクはホワイトプランで大量に通話がされているはずで、総通話時間が少ないとも考えにくい状況にあります。

◆これに対してソフトバンクは

これに対してソフトバンクの返事は、自らの主張の根拠をきちんと説明するものではありませんでした。

ソフトバンクが正式に拒否 ドコモへの情報開示
http://www.nikkei.com/tech/news/article/g=96958A9C93819696E2EBE2949E8DE2EBE2E4E0E2E3E38698E3E2E2E2

まず「接続料の根拠を開示してください」に対しては、

ドコモへの開示を拒否し総務省の電気通信事業紛争処理委員会に情報を提供すると正式発表した。

お役所には資料を提出するがドコモには見せません、という返事となりました。今後はひとまず、お役所がどう判断するかを待つことになりました。

そして逆に、以下を要求します。

  • ドコモに過去に払った接続料が高すぎるとして、払い戻しを要求
  • NTT東西の事業者向け配線工事が1件当たり200円高いとする主張
  • NTTの「116」窓口における「フレッツ光」の不適切な勧誘についての意見申し出

後ろ二件については、ドコモの話ではなくNTT東西の光ファイバの話なので、関係ない話を混ぜ込んでしまっています。

また、議論を「接続料」からずらそうとしているように見えます。

会見したソフトバンクモバイルの弓削哲也常務執行役員は「問題は接続料だけではない。通信業界では競争上のハンディが多数ある」と強調した。

「ドコモ」と「接続料」の話をしているはずですが、ソフトバンクはドコモではない光ファイバの話を出してきたり、接続料ではなく接続料以外の全体の議論こそ必要だという返しをしています。

私には理に対して理で応じているようには見えません。説明をするのではなく、大声で関係ないことを言って騒いでいるように見えます。これはちょっといただけないのではないでしょうか。

◆接続料の「値下げ」を求めていた千本会長

以前の記事からの再引用になりますが、接続料についてはイーモバイルの千本会長が、なかなかの男前の発言をしていました。

「接続料は半額可能」 新規参入のイー・モバイル会長に聞く(2009年3月9日0時7分)
http://www.asahi.com/business/topics/TKY200903080153.html

――どの程度が適正だと。
「実際にかかっている費用は現在の接続料の3分の1ぐらいではないか。利益を上乗せしても半分にはできる。払うのは各社同じだから、一斉に下げれば経営への大きな影響もない。接続料が下がり競争が働けば通話料金も下がる
なぜ接続料がこの額になるのか、各社は根拠を明らかにしていない。接続料は着信時にかかる費用の回収が目的。広告費用も契約獲得費用も、端末の開発費用も関係ない。なぜ固定電話に比べ5倍以上も高いのか。適正な費用から算出しているのか疑問だ

ドコモとソフトバンクが揉めた結果、計算ルールが明示されました。その結果として「営業費用」などの接続料とは言いがたい費用の除外が明示されました。この記事は、そのようなルールが決まる前の発言です。

「広告費用も契約獲得費用も、端末の開発費用も関係ない。」という発言は、既存キャリアは接続料に意味の解らんコストを上乗せしているぞ、というツッコミです。

ちゃんと「着信時にかかる費用」だけで計算すべきで、原価だけにすれば接続料はおそらく3分の1ぐらいに、利益を上乗せしても半分にはなるはずだと主張しています。

なお、接続料は片方だけが値下げをするとソフトバンクとドコモ間のように、差額の支払いが発生することになりますが、一緒に値下げをすれば帳消しになります。

「一緒に値下げ」を実現するためには、各社に接続料の計算をまともな方法で行ってもらうことで実現できるでしょう。

接続料が下がれば、各社間の通話料金も全体的に下がることになります。接続料問題は、ドコモとソフトバンクの間の綱引きのみならず、結果的に利用者全体にとって影響がある問題となっています。

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コメント

今後の展開が気になりますね。

ちなみに、
「接続料の差額がありすぎるので、接続やめる」
みたいな選択肢は・・・、やっぱ無いんでしょうか?
(インフラだと考えてればないはずなんだろうけど)

投稿: さじった | 2011/06/13 21:53

接続をやめるとなるとユーザにも不便をかけて客離れにもつながるでしょうし難しいのでしょうね。
私はいっそ各社一斉に接続料の高い一社「以外」だけ値下げをすればと思っています。
「一社だけ値上げ」ではないので客が損する訳じゃないですし、「一社だけは逆ざやになってしまうので値下げできません」と理由を付けて発表すれば広くこの問題が認知させるようになる気がします。


投稿: どうなることやら | 2011/06/13 23:07

連投・自己レスですみません。
書いた後で気づきましたが、そしたらその一社も他社宛の値下げをするかもしれませんね。
「どこにかけても安いのはうちだけ!」って。

投稿: どうなることやら | 2011/06/13 23:48

確かにどうなるのでしょうかね。
話題のソフトバンクは、現在のシェアを伸ばし25%を超えた暁にはどう説明するつもりなのでしょうか。
興味ありますね。
もっとも、ソフトバンクは接続料が燃料ですから、燃料切れの自動車は走らなくなるのでしょうね。

投稿: 孫は損? | 2011/06/16 16:42

光が出て来るのは仕方ないかもしれない
アンテナ基地局への引き込みは今ほとんど光だし
しかも、AUとSoftBankはよそのケーブルに相乗りしてるから
イーモバイルはどうか知らんが。

投稿: | 2011/09/07 00:24

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