479 Firefox が 2011年末には「Firefox 9」にもなるのはどうしてか?
今後 Firefox は「やたらと」バージョンアップすることになっています。少なくとも、これまでの感覚だとありえない速度で。
現在発表されている予定ではこのようになっています。
- Firefox 5: 2011年6月21日
- Firefox 6: 2011年8月16日
- Firefox 7: 2011年9月27日
- Firefox 8: 2011年11月1日
- Firefox 9: 2011年12月20日
これまで長い期間かかって「Firefox 4」になったのに、残り半年で「9」になってしまうというわけです。
これまでの感覚からすると、新バージョンを乱発しているように見えます。お札を刷りまくってサイクリング活動になる馬鹿国家のようにも見えますから、感心できないことが始まったようにも見えます。
この一件意味不明に見える、「新バージョン連発」がどうしてなのかについて説明を書きます。
◆これまでのバージョンアップ
その前に、これまでのバージョンアップがどういうペースだったかを再確認して、「これまで」と「これから」の落差がいかに大きいかを確認します。
- Firefox 1.0: 2004年11月9日
- Firefox 1.5: 2005年11月29日
- Firefox 2.0: 2006年10月24日
- Firefox 3.0: 2008年7月16日
- Firefox 3.5: 2009年6月30日
- Firefox 3.6: 2010年1月21日
- Firefox 4.0: 2011年3月22日
大きいリリースは年に一回くらい、バージョン番号(の最初の数字)が上がるのは「数年に一回」だったことが解ります。
しかし、今後はこういうことになります。
- Firefox 5: 2011年6月21日
- Firefox 6: 2011年8月16日
- Firefox 7: 2011年9月27日
- Firefox 8: 2011年11月1日
- Firefox 9: 2011年12月20日
これまでのペースならば「4.5」ですら2011年にはリリースされないペースですが、どういうわけだか2011年のクリスマスには「9」が登場していることになります。
◆これまでとこれから
どうしてこのようになったかというと「方針」が変更され、「『6週間ごと』にバージョンが一つ上がる」ことになったためです。
これまでとは「バージョン」の意味が変わってしまったのが、原因です。
定期的にどんどん新バージョンを出す方針は、ウェブブラウザでは「Google Chrome」が採用しています。このような方針は「ラピッドリリース」と呼ばれ(恐らく良い意味でも悪い意味でも)当世流行風な方針です。
これまでのバージョンとは「ざっくり言って」こういうものでした。
- これまでのバージョン:達成目標
つまり「Firefox 3.0」とは、まず最初に「Firefox 3の将来計画」を皆で議論して決め、次にそれに向かって開発作業を開始し、計画の目標がひとまず達成されたときに「Firefox 3が完成しました」として、Firefox 3.0がリリースされていました。
ですからこれまでの新バージョンには、それ自体に重みがありました。なぜなら、次世代計画が目標を達成しました、ということだったからです。
利用者からすると、バージョン番号は機能的な違いを示す分類番号とも言えるものだったかもしれません。
ですがこれからはちょっと様子が違います。
- これからのバージョン:六週間が経過しました
補足:ただし、方針転換後のすぐになる「5」と「6」については、6週間ではなく8週間でのリリースとなる予定
つまり六週間分に行われた作業をまとめ上げたものが定期的にリリースされるだけになります。よって、バージョンが上がったからといって、大きな進歩があるとは限らなくなりました。
◆なぜ方針を変更したか
(私には)以前の方針の方が、バージョン番号から機能面での変化や大きな変化の有無がわかるので解りやすように思えるものでしたが、以下のような面倒があることが問題とされました。
「達成目標」で番号をつけている場合、新バージョンの開発が進む間、当然ながら旧バージョンが並行して利用されることになります。
新バージョンの開発には相応の期間がかかりますから、その間、旧バージョンのメンテナンスが平行して必要になっていました。例えば、バグの修正などです。
その結果、新バージョンに向けた開発と旧バージョンのメンテナンスを平行して続けることになり、「ちょっと面倒」ということになっていました。
そこで、これからはこういう方針になります。
- 六週間ごとに新バージョンがリリースされる
- 深刻な問題点が見つかった場合の緊急対応を除き、六週間ごとの定期リリース以外のリリースはしない
- 新バージョンがリリースされたら、旧バージョンのサポートはやらない
- 結果、新バージョンと旧バージョンの平行作業はやらなくてよくなる
他に、頻繁にリリースすることにより、要望やすべきことを認識しやすくなる効果もあります。
結果として、「バージョン番号がやたら増える」以外の違いとして、利用者に以下を強いることになります。
- 利用者は六週間ごとに常に「最新バージョン」を利用する必要がある
- これまでのように旧バージョンを使い続ける選択肢がなくなる(セキュリティ的問題を甘受して自動更新をOFFにしない限りは)
なお、定期的なリリースを行っているGoogle Chromeでは、強制的な新バージョンへの自動更新が行われています。
Firefoxでは自動更新をOFFにする機能は提供されるようですが、かといって旧バージョンは放置状態になるので、安全に使い続けることはできません。
つまりこれからは、以下は出来ない/推奨されないことになります。
- 新バージョンは嫌だから今のバージョンを使い続ける
- バージョンを上げるとお気に入りのアドオンが動かなくなってしまうから、しばらく旧バージョンを使う
具体的には、計画通りに今年のクリスマスに「Firefox9」がリリースされているとして、その時には「Firefox9(=Firefox4の進化版)」以外を使い続ける選択肢は提供されない、ということです。
◆まとめ
- Firefoxは今後やたらと「バージョンアップ」する
- 6週間ごとにバージョンが一つ上がるようになる
- 方針が変更されたので番号がインフレしているだけ
- 番号は派手でも、当面は機能的に「Firefox 4」を改良したもの程度
- 今後は最新バージョンの利用が強制され、旧バージョンを継続して使えない(安全には)
- 上記の代わりに、今後はFirefoxの開発の速度が上がる「かも」しれない
このような方針変更は最近の流行には乗っているのですが、世の常として流行している方針が良い方針だとは限りません。また、利用者側での混乱を招くおそれもある方針の変更です。ので、もしかするとまた方針が変更されることもあるかもしれません。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント