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478 世界のノキアが、MeeGo(インテル+ATOM+Linux)にサヨナラを言った

ノキアから「ある新機種」が発表されました。しかし、その機種はノキアからインテルへのお別れの挨拶だったという話について。

以前(かなり以前)にも話題にしたことがありますが、ノキアとインテルは以前から、「モバイル世界の新しいOSをATOM+Linuxで作る」にて協力関係にありました。しかしこの協力関係が、ほぼ終わっていました。

◆お別れの新機種

インテルとノキアの協力関係について説明する前に、まずは、ノキアから発表された「新機種」について簡単に説明をします。

Nokia、最初で最後のMeeGo端末「N9」を発表
http://www.itmedia.co.jp/promobile/articles/1106/22/news028.html

記事タイトルにも「最初で最後の」とあります。

「MeeGo端末」とあるのは、「MeeGo」という名前のインテルとノキアの協力で作られたモバイル用のOSが搭載された端末だからです。

この端末はMeeGoを搭載した最初の端末であり、そして最後の端末になるだろうと言われています。

また、インテルとの協力で作られた端末なのですが、搭載CPUはインテルのATOMではなく、なんとインテルの天敵であるARMプロセッサとなっています(まさにお別れの機種です)。

インテルとしては、MeeGoは止めたくないそうですが、これから書くようにノキアがMeeGoを止める決断をしており、この機種には続きは無い予定です。

なおNokiaが、「最後に一機種だけ発売して撤退する」のは今回が初めてではありません。以前、モバイルWiMAXから撤退する際にも、一機種だけノキアのモバイルWiMAX端末が発売されましたが、その後程なく生産中止となっていました。

#一機種だけ出して撤退する芸風なのかもしれません

なお、ノキアはかつてモバイルWiMAX陣営に属していましたが、モバイルWiMAXの旗色が悪くなったころ(日本で2.5GHz帯の取り合いをやっていた時期に近いあたり)に陣営から手を引いていて、今ではモバイルWiMAX?何それ?という立場になっています。

◆MeeGoとは何か?

では、MeeGoについての説明に移りましょう。

MeeGo(ミーゴ)とは、Nokiaとインテルが共同で開発していた、Linuxベースのモバイル用のOSです。

インテルとノキア、それぞれが開発していたが旗色が良くなかったLinuxをベースとしたOSを、両社で協力して開発しようとして始まったものでした。元になったOSは以下の二つです。

  • ノキア:Maemo
  • インテル:Moblin

Moblinは、インテルがATOMでモバイル世界に攻め込むために作っていたOSでした。ネットブックや、今で言うタブレット端末やスマートフォンを、ATOM+Moblinで作ってもらうことを意図したOSでした。

しかし、インテルのモバイル世界に対するATOMによる攻勢は今のところ完全に失敗です。それどころか、インテルと棲み分けているつもりだったARM陣営を眠りから覚ましてしまい、現在、ARM陣営からの逆方向の攻撃まで始まっています。

Maemoは、ノキアがLinuxベースで開発していた似たような用途のOSでした。こちらはARMを前提として開発がなされていたOSでした。

両陣営は2010年の頭に協力することを表明、「MeeGo」というモバイル用のOSの開発が続いていました。当初の計画では、MeeGo+ATOMな端末がノキアから登場するはずでした。

◆ノキアが撤退を表明

ノキアは少し前に、MeeGo路線の放棄と、マイクロソフトとの協力を発表していました。

ノキア、新規端末の開発期間短縮へ
http://japan.cnet.com/news/business/35003930/

ノキアの方針とはざっくりまとめると以下のようなものでした。

  • MeeGo路線は放棄する(ATOMはもういい)
  • Androidは気に入らない点があるので採用しなかった
  • マイクロソフトと協力する
  • Windows Phoneに自社技術をくっつけて独自性を持たせた端末を市場に投入する

なお、上記記事にもマイクロソフトとの協力関係がもう動いている話が出ています。

「今後われわれは端末の開発期間を最低でも3分の1に短縮する予定だ」とElop氏。同氏は2010年9月にMicrosoftからNokiaに移籍した人物で、Nokiaに「事業遂行における切迫感と迅速さとスピードの感覚を植え付けたい」としている。

慎重に開発しなければならない携帯電話の世界に、MS流の開発を持ち込んだら大変なことになるのではないかという気もしますが、それはともかく、

  • スマートフォンで主流になり損ねたノキア
  • 健闘していたWindowsMobileが転落し、iPhoneとAndroidに劣勢になったMicrosoft

ノキアは携帯端末の世界で王者の地位にありました。しかし、スマートフォンでは主流になりそこねており、ここを何とかしなければなりませんでした。

マイクロソフトも、かつてはWindowsMobileでは健闘していたものの、Androidが急成長する一方で、マイクロソフトの次世代モバイルOSは上手く投入できず、なんとか巻き返しが必要でした。

この両社が巻き返しで協力する計画です。

◆ノキアのOS

ノキアは、世界標準的な端末(つまり日本の水準からすると単純すぎる端末)の販売でトップでした。

また、ノキアはスマートフォン(当時の水準で)も発売しており、これには欧州で開発されたモバイル用のOSであるSymbianOS(シンビアン)が搭載されていました。ノキアの布陣はつまり以下のようなものでした。

  • 普通の端末
  • SymbianOSスマートフォン

例えば、ボーダフォン時代に日本で発売されて一部でカルト的人気を誇った「Vodafone 702NK」もSymbianが搭載されていました。

Symbianは電力やパワーが非常に制限されつつ長時間駆動が求められるモバイル機器向けに作られたOSで、そういう用途向けには非常に良く出来ているOSです。OSは省電力を実現するために特殊な作りになっており、プログラミングも独自のスタイルで行う必要があります。

日本で「ドコモのF」などが日本式ケータイの「内部的なOS」として採用しています。

SymbianOSはその後ノキアが買収し、完全にノキアの布陣の一部となります。

とてもよく出来ているSymbianOSでしたが、今日的な高機能スマートフォンのOSとしては、色々不十分なところもありました。現在のスマートフォンでは電力やパワーの制限ではなく、もっと別なところがポイントになったこともあります。

具体的にはiPhoneやiPad、Androidが戦っている領域で戦うための何かが必要になっていました。そこでLinuxをベースとした独自の取り組みが行われていました。

  • 普通の端末
  • Symbianスマートフォン
  • Maemo(Linux)

そしてその後、Maemoは同じLinuxベースのMoblinと合流します。これは、ATOMプロセッサでARM系プロセッサの陣地に攻め込みたいインテルとの協力関係でもありました。

  • 普通の端末
  • Symbianスマートフォン
  • MeeGo(Linux+ATOM):インテル

ところが、ノキアは「最初で最後のMeeGo端末(しかも「ARM」を搭載)」を発売してMeeGo路線から以下の布陣へ変更することとなります。

  • 普通の端末
  • Symbianスマートフォン
  • Windows Phone 7(マイクロソフト)

ノキアがAndroidを採用しませんでした。そしてその代わりにAndroidとまさに戦おうとしているマイクロソフトを提携相手に選びました。

その理由は、Android陣営ではノキアは差別化できず埋もれてしまい、GoogleはハッピーになってもNokiaは吸い取られるだけになるだろうという判断だったようです。つまり、Androidの実績よりも、ノキアらしさを保つことを選んだことになります。

大丈夫なのか怪しい判断ですが、確かに世界中で量産されるAndroid端末を考えてみて、そこでGoogle以外が強い独自性を主張できるのかと言われれば、それは確かに難しそうです。

ともかくもノキアはマイクロソフトと手を組み、ノキアの独自性を出した「Windows Phone 7端末」を発売することになりました。

これにてMeeGo路線は終了、Symbianスマートフォンはこれからも当面は発売され続けるものの、近いうちに決戦に投入される端末ではなくなることになります(ただし、予定通り計画したとおりのWindows Phoneが用意できればですが)

◆置き去りになった人達

一方のインテルにとっては大変残念な結末になりました。

インテルがATOMを投入してからおよそ三年、モバイル世界への攻撃は成功していません。ARM陣営の領土を削るどころか、ARM陣営が逆向きに攻めて来る始末です。

インテルとしては今回の件を持ってMeeGoを終了させるつもりは無いと表明しています。しかしノキアの方針転換はATOMにとって大きなダメージであることは確実です。

ともかくもMeeGoが実質的には終わりだったとしても、インテルとしては自分で終了宣言をする気は無いということです。

MeeGoが将来的に普及する前提で色々準備していた人にとっても、なかなかありがたくない結末ではないかと思います。新技術を巡っては、良くある悲劇ではありますが。

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