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夕張市がカオスの件:「羽柴秀吉」 vs 小泉チルドレン vs 都知事

前回の記事に書いた「夕張市で羽柴秀吉が当選するかもしれない」の件について、色々カオスになっているので追加で記事を書いてみたいと思います。

まず一つ目は、夕張市がなぜか「羽柴秀吉 vs 小泉チルドレン vs 都知事」の対決構図になっていることについて、

そして、前市長が立候補しておらず、なぜか市議会に立候補していることについて。実はこれには、難しい事情があるようです。夕張市で、市議会と市長の深刻な対立が発生していたのです。

カオスの深さが解ってくると、羽柴秀吉さんが当選してもやむなしとすら思えてきます。

今回も同じく、面白いのやら悲しいのやら複雑な気分になる夕張情勢です。

◆ 羽柴秀吉 vs 都知事 vs 小泉チルドレン

前回の記事で書いたとおり(もし読んでおられない場合はぜひ下記を先にお読みください)、

あの「羽柴秀吉」が夕張市長選で当選有力になっている件、と、何故そんなことになったか?
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2011/04/post-3d8e.html

羽柴秀吉候補が(少なくとも「従来の選挙」と比べて)有利な情勢ですが、そんなことでは駄目だと思う人が多かったのかどうか、「大物」が夕張市入りして、羽柴秀吉の当選阻止に動いています。

まずはニュースからその様子を少し引用してみて、各陣営がどういう感じになっているかを簡単にまとめてみようと思います。

都知事・小泉チルドレン…夕張市長選に弁士続々
http://www.yomiuri.co.jp/election/local/news/20110415-OYT1T00157.htm

元都職員鈴木直道氏(30)の陣営の応援には、先日4選を果たしたばかりの石原知事が告示後の20日、夕張市入りする。(略)猪瀬直樹副知事も、選挙戦終盤に夕張を訪れる見込みだ。

前衆院議員飯島夕雁氏(46)の陣営には、告示前の15日に佐藤ゆかり、告示後の18日に片山さつきの両自民党参院議員が、それぞれ応援に訪れる。陣営では「飯島の衆院議員時代の仲間である2人が、ぜひ応援したいと自ら名乗りを上げてくれた」と話す。21日には、武部勤・自民党元幹事長と親交がある俳優の杉良太郎さんも夕張入りし、飯島氏とともに、市内の福祉施設などを回る予定だ。このほか、17日朝の第一声には橋本聖子参院議員らが出席。推薦しているみんなの党や、公明党の国会議員も、期間中に夕張入りする予定といい、応援の総数は10人近くになる見通しだ。

まず、前回の記事で書いたように「統一候補が存在しない」ことは良くわかるのではないかと思います。羽柴陣営以外に、有力陣営が二つあり、結果的に羽柴さんを当選させないという意味では「同士討ち」になっていることがよくわかります。

  • 羽柴秀吉さん:いわずと知れた方、詳細は前回の記事でをご覧ください
  • 鈴木直道さん:元東京都職員(石原都知事の支援を受ける)
  • 飯島夕雁さん:前衆議院議員(元小泉チルドレン、推薦:みんな、公明)
  • 笹谷達朗さん:塩販売業

なお、自民党と民主党の支持基盤はどちらがどっちをはっきりと支持しているという感じにはなっておらず、色々ねじれてしまっているようです。

つまり、夕張市の対決は実はこういう感じになっているということなのです。

  • 羽柴秀吉さん vs 石原都知事軍団 vs 小泉チルドレン

よりによって「夕張市」でこの対決はどうなんだろうと思えますが、その上、有力候補は「羽柴さん」です。

詳しい状況を調べるとさらにカオスは深まります。

◆羽柴当選阻止で夕張に大物が襲来

では、各陣営がどんなことになっているのか、ニュースから引用してみましょう。

選挙:北海道・夕張市長選 告示 再生託す市民の選択は 新人4候補、雪舞う中第一声
http://mainichi.jp/hokkaido/seikei/news/20110418ddr041010019000c.html

小泉チルドレン陣営:

「飯島さん:小泉チルドレン陣営」は、有名人の大量投入を図っています。、

  • 議員の現地入り:伊達忠一、橋本聖子、長谷川岳、佐藤ゆかり、片山さつき
  • 有名人の支援:杉良太郎
  • 祝電:小泉純一郎元首相、高橋はるみ北海道知事

女性候補です。この人はもともと、いわゆる「小泉チルドレン」な人です。地方議員郵政賛成派への刺客となり(地元にはまったく関係ない人でしたが、北海道10区に出馬)、小選挙区では落選したものの比例復活しました。しかしその後の自民党大敗の衆議院選挙で落選しています。

応援に来ている議員も、そのつながりを感じさせる議員です。地元関係だったり、小泉チルドレンかつ女性議員だったりですから。

まあ、従来型の候補者擁立には見えます。しかし、片山さつきさん、どこでも出てきますねえ。夕張市で何を言ったのかは気になります。

都知事陣営:

「鈴木さん:都知事陣営」は、東京都つながりを前面に出しています。

  • 石原慎太郎東京都知事が20日に夕張入り
  • 猪瀬直樹副知事

「東京都職員」が何故立候補したのか不思議なところだと思いますが、この人は東京都から「内閣府地域主権戦略室」に出向する形で二年前から夕張市に派遣されており、その関係で地元からの立候補要請に応えたためのようです。

つまり、外から来た小泉チルドレン陣営とは違い、ともかくも地元で活動していた人の立候補です。

労組の支持など民主系の支持の色があり、上記候補との二大政党対決の色も少しあります。しかし、自民系の支持基盤も支持していたり、そもそも都知事の支持が陣営の看板だったりと、外部の人が思うような政党対決色はどうも無いようです。

また、鈴木さんは「現市長からの後継指名」も受けているようです(この件に関しては、色々なことがあるので後述します)。

羽柴さん:

一方「羽柴さん」には応援は来ませんが、「中央頼み」「他人頼み」の他陣営へのツッコミを浴びせています。

「パイプ(人脈)があっても誰もカネを出してくれない。パイプばかり強調するのは自分に自信がないからだ」と訴え、中央の人脈をアピールする対立候補を皮肉る。

この主張は前回からで、羽柴さんは実際に夕張で色々と活動しているので、説得力もあるようです。

もう一人の人:

なお当選することがないであろう、もう一人の候補(笹谷達朗さん)は夕張出身者なのですが、

「(休止中の温泉施設)『ユーパロの湯』を立て直すことが夕張再建につながる」と訴えた。

夕張市は箱モノで赤字だらけになって破綻しましたが、『ユーパロの湯』とはつまりその箱モノです。夕張市には少なからず、繁栄していた時代のままでなければ納得しない人が居るようですが(前回の記事をご覧ください)、そのような夕張の空気を象徴するような第一声となっています。

◆一方前市長は:夕張市は「阿久根市」でもあった

前回の選挙では羽柴さんは僅差で落選しました、今回と違って、反羽柴で統一候補が立てられたためです。ですが今回の選挙には「その人」が立候補していません。

では、「統一候補」の現在の市長はどうなってしまったのかというと、これもカオスなことになっています。

2011統一地方選・北海道:夕張市、問われる議会のあり方 /北海道
http://mainichi.jp/hokkaido/seikei/news/20110415ddlk01010233000c.html

破綻後の街作りをけん引してきた藤倉肇市長(70)は1期で引退し、異例の市議選出馬を表明。背景には市議会との対立や確執もあったとされる。

なんと、「市長を辞めて市議になる」と言い出しているということです。前回の選挙から四年、もちろんのこと財政再建は完了していません。

トホホな理由で市長を投げ出したかのようにも思えますが、実はこのようなことになったのには深刻な事情がありました。市議会と市長が色々なことで揉めており、最終的にある事件で決定的に喧嘩状態となったことが原因でした。

最近あちこちで話題になっている、「地方議会と首長(市長)の対立」が夕張市でも発生していたのですね。

羽柴さんに僅差で勝利したあと、市長も市議会も「オール与党」の体制でした。しかし議会の主張と市長の主張で食い違いが色々と生じるようになり、「紅葉山の産業廃棄物処理施設建設問題」がきっかけとなって決定的に決裂します。

  • 市議会:約束したとおり産廃処理場を作れよ!同意してたじゃないか!おかげで色々混乱して迷惑だ!
  • 市長:記者会見で「産廃処理場はやはり作るべきではない」と反対表明、政治生命をかけて建設阻止すると表明

市長は何故反対したのでしょうか、それは住民から反対運動が起こったためのようです。なぜ反対運動が起こったのかというと、産廃処理場の計画がツッコミを浴びるようなものだったからのようです。

こういう施設の場合、かならず反対運動が発生します。その上、「環境汚染への配慮が少ないタイプ」を、しかも地盤が弱い場所に作るという計画でした。地盤が崩れればもちろん大変なことになります。

「環境汚染への配慮が少ないタイプ」とは、水の遮断などの対策を「行わない」タイプの処分場です。その代わりに「安全なモノ」しか捨てないようにするから大丈夫だ、ということなのですが、これが守られなければ汚染されるということになります。そして、それを守らずに環境汚染となった例は全国にあり(違反の取締りが甘いためです)、当然に不安は生じます。

市長ですが、実は相当な覚悟で議会と対決していました。

産廃計画 夕張 大揺れ:市長一転「政治生命かけ反対」
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/feature/hokkaido1231810114276_02/news/20091207-OYT8T00543.htm

市長は最初は賛成していましたが、説明会に出るなど現状を知り、また市民の声を聞くにつれ、この計画には賛成するわけには行かないと決断し、身を挺して反対に転じます。

藤倉市長は「説明会では、処分場計画に反対の意見しか出なかった」と語り、その上で「熟慮を重ねたが、安全・安心への不安が払拭(ふっしょく)できない。政治生命をかけて決断した」と述べた。

市が反対しても北海道が許可してしまうと設置が許可されてしまうため(権限は北海道にあるため)、他の市では市が反対しても建設されてしまう例がありましたが、この市長はそれでも阻止すると表明します。

夕張の計画についても、道は認める可能性があるが、藤倉市長は処分場建設に不可欠な市有地の移転や河川用地の占有を「認めない」と宣言している。市長の同意なしで建設はできない。

主に賛成派は、現市長を「能力がない」「手腕に問題がある」と批判します(「ムラ社会の空気」を壊す人はこのようなレッテル貼りをされるのかもしれません、また「能力」や「手腕」が何を指すかを考えると興味深いです)。

一方で建設反対派は現市長を支持し、「次の選挙への立候補するよう」お願いがされます。

しかし最終的には「市議としての立場で夕張市の問題に取り組む」ことにしたようです。議会への不満を表明して市議として立候補しているのには、これまでのこういう事情がありました。

今回の選挙は、この「処分場計画」にストップをかけている市長の次の市長を選ぶ選挙でもあります。なお、この件についての意見が一致しているかどうかはわかりませんが、現市長は、鈴木さん(都知事陣営)を後継候補として指名しているようです。

◆羽柴秀吉さんの草の根選挙活動

前の前の市長は財政破綻の責任を取って引退しました。その次の市長(現在の市長)になっても混乱は続き、市議会への不満も強まります。最終的には前市長が市議に立候補するという変なことになりました。

役所関係の給料カット、公共サービスの低下(例えば施設の閉鎖、病院や学校の統合など)、公共関係の支払い額の上昇、・・と楽しくないことが続きます。前回書いたようにこれは、市がバブル時代の間違った地域振興で自爆した面もあるにせよ、石炭時代の繁栄の夢から醒められない人の身から出た錆でもありました。

ですから、夕張市にはもともとどうしようもない大きな不満が渦巻いています。そして、市長と市議会は喧嘩しているありさまです。

羽柴秀吉さんは、夕張市に企業を進出させます。つまり、実際に何かをやります。そして、前回選挙から時間をかけて、草の根の選挙運動を行っていました。

何度も夕張市に足を運び、「お茶の間懇談会」という市民と話し合う会をずっと続けます。その回数なんと数百回以上。相当な人数と直接対話をしていることになります。そして、夕張市の人口はそんなに多くありません・・市長選も数千票での争いです。

つまり羽柴さんはかなりの本気で選挙に臨んでいます。もともと前回の選挙では僅差でしたが、その後の選挙への準備も他陣営を圧倒しています。

「お前は何を言っているんだ」的な公約は相変わらずですが、それでも、多くの人が羽柴さんと実際に会話をすると支持をするようになります。実際に話をするといい人なのでしょう。

市議会や市長に対する落胆も、つまり既存の市政に対する落胆も羽柴市長を待望する空気を生み出します。

夕張市は破綻していますから既に国の管理下にあります。何をやるにも全て国の指示次第となっています。よって、誰がやってもほとんど同じだろう(夕張の逆転復活はないだろう)という諦め感も広がっています。その上に、市長と市議会が喧嘩しているありさまです。

それならば、いっそのこと羽柴秀吉さんに任せてみるという賭けも悪くない・・・羽柴さんの公約について「お前は何を言っているんだ」と思っている人にも、こうなったら一度羽柴さんを市長にする方がマシだと思う人も出てきます。

そして今回は、反羽柴統一陣営はできませんでした。結果として、誰が当選しても不思議ではない状況が出来上がりました。

その上羽柴さん、今回落選しても、まだ諦めないはずですから、次の次の選挙でまた同じことになるのではないかと思います。

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コメント

鈴木直道 当確

投稿: 岡本昌明 | 2011/04/24 22:21

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