石原都知事の演説で決した?夕張市長選の結果
夕張市長選の結果について投稿します(選挙ネタの連続になって申し訳ない気もしつつ)。
結果としては、羽柴秀吉落選、都知事陣営の勝利でした。が、本当の敗北者はおそらく別であろうという話を少し書いてみたいと思います。
◆選挙の結果
選挙は結局以下の通りとなりました。
- 都知事陣営:鈴木さん(当選)
- 小泉チルドレン:落選
- 羽柴秀吉(落選)
- 地元の人(落選)
結果は「都知事陣営」の勝利となりました。今度こそ当選するかもしれない、と言われていた羽柴秀吉さんはまたも落選となりました。
まず最初、前回選挙の結果の延長線上で見た場合には、羽柴さんが優勢だと考えられていました。これはこれまでの記事で書いたとおりです。
ですがその後、情勢は動いたようです。鈴木さんの支持が伸び、最終的に石原都知事が夕張に来て演説をしたことが大きな効果をもたらし、鈴木さんの当選となったのではないか、と見られます。
(メディアでも、最初は羽柴さん有利、選挙戦が進むと「誰が当選するか解らない」という表現が)
「石原都知事」の演説には、かなりの人数が集まったとされています。聴いた人は千人レベルだったという話すらあります。何しろ夕張市長選は「数千票」での戦いです。ですから千人というのは恐るべき数字となります。
演説の内容についても印象的なものだったようで、石原知事の演説を聴いて鈴木さんへ投票することに決めた人(迷っていた人)も多かったようです。石原都知事は選挙が終わってからも度々夕張市に言及しているほどで、本気で応援していたからこその演説だったのかもしれません。
結局はこれらの東京都知事軍団の支援が(他にも副知事の猪瀬さんも応援に来ています)、選挙結果への最終的な決定打となったのではないかと思われます。
◆各陣営について:小泉チルドレン陣営
では、どうしてこういう結果になったのか考えてみましょう。もう選挙は終わりましたしね。
まず、「小泉チルドレン陣営」について。
この陣営は「夕張の既存権益」そのものだったのではないかと思います。選挙結果のポイントは、羽柴落選でもなく、最年少市長でもなく、夕張の既存権益(旧市議会勢力)が敗北したことではないかと思っています。
これまでの記事に書いたとおり、夕張市では「市議会と市長の深刻な対立」がありました。対立が決定的になった事件として産廃処分場の建設を巡る対立がありました。この事件を大げさに書いてみると
- 旧市議会:夕張の既得権益を皆で分配
- 前市長:常識的に考える人だったので、市議会に反対してしまう
なお、夕張の悪口を書いているつもりはありません、こういうことは日本中に蔓延していることです(本当は良くないことだとしても)。ので、地方議会と首長の対立も珍しくないわけです。
で、前市長と対立していた市議会はどうしたか?
「空気の読めない」前市長を潰すことにし、公募で新しい市長を擁立することにしました。その結果、「小泉チルドレン」を担ぎ出すことになります。そして夕張の伝統的選挙マシンがこれを支援します。
こんなことでは駄目じゃないか!というのが今回の選挙のまず一つ目のポイントでした。
そして、今回の選挙結果は、このような「旧なるもの」へNOでした。
念のために補足しておきますと、旧市議会の人達が何もかも悪いなんて書くつもりはありません。今まで通りということは、良くも悪くも今まで通りということです。
夕張はこれから沈没する他なく、それならば余計なことをせずに大人しく沈没することが、結局は沈没対策になるということであれば、「良くも悪くも今まで通り」が良いということになります。例えば「実績」とか「責任」というような表現はそういうことです。
これもこれまでに書いたとおり、夕張の現状は、石炭時代の繁栄の夢から醒められない人達の身から出た錆の側面もあります。ですから、この選挙結果で良かったのかどうかは、本当は良くわからないところもあります。
◆羽柴さん
その前の選挙では、結果として上記の観点では以下のようになっていました。
- 「旧なるもの」の統一候補:前市長
- 意味不明だが「旧なるもの」ではない:羽柴さん
選挙結果は「羽柴さんなのに僅差」でした。それだけ「旧なるもの」への反発があったということです。
その後、選挙で選ばれた前市長は市議会と揉めてしまいます。「旧なるもの」ではもう駄目、という証拠がまた一つ増えてしまいました
そして前回の選挙の後、(これも書いたとおり)羽柴さんは夕張市での草の根の運動を続けていました。
市議会が「小泉チルドレン」を擁立し、それに納得しない勢力が別の候補を擁立します。ともかくも鈴木さん擁立の過程には、夕張市の政治の内輪もめが関係していました。
その結果、以下のようになったように見えました。結果「羽柴有利」となります。
- 今までの夕張(本流):候補A(小泉チルドレン)
- 今までの夕張(傍流):候補B(鈴木さん)
- そうではないもの:羽柴さん+前回の選挙から活動継続
以前の記事にも書いたとおり、羽柴さんがなぜ支持されているかはやや不明でした。羽柴さんそのものが支持されているのか(その場合も、本当の支持なのか打算的支持なのか)、消去法で支持されているだけなのか解りませんでした。
消去法な支持とは「雨宿り的な支持」と呼ばれることもあります。例えば、与党は支持できないが野党も支持しにくい状況になったとき、どちらにも投票したくない票を取り込んで新党や共産党が、「一時的」に勢力を伸ばすことがあります。
◆鈴木さん
しかし、選挙戦が進むと最終的に以下のようになります。
- これまで的:小泉チルドレン陣営
- これまでを刷新:都知事陣営
- ちゃぶ台返し:羽柴さん
最終的には鈴木さんが「旧なるもの」を変える人として認知され、勝利することになります。鈴木さんの公約にも、「日本一の若さと行動力で国や道と闘う」とあります。
夕張を変えたい人が投票する候補(既存政治の延長線ではない)として認知されるようになったことに加え、都知事の支援で、弱点である新人で若者であることへの不安感が少なくなり、(羽柴さんと違って)投票しやすかったこともあるでしょう。
また、今回はっきりしたのは既存政治(旧なるもの)への明らかなNOが表明されたことです。
既存政治への批判が二つに分裂していて、しかも既存の選挙マシンの支持を受けていたにもかかわらず小泉チルドレン陣営が負けてしまったのは、既存政治への不満が相当にあるということでしょう(前回の羽柴さんの善戦もそういうことでした)。
ただし「既存政治への不満」の正体が、だらしない地方政治への批判なのか、現状を受け入れたくない現実逃避なのかは、解釈のわかれるところだとは思いますが。
◆今後は難しいはず
夕張市は非常に難しい状態にあります、ですから単に「元気があって善良な人」が市長になったから問題が解決するような状況にはありません。まともな状態から程遠いからです。むしろ、異常な腕力のある人が必要な状況です。
#これは羽柴さんを待望する一部意見の根拠となっています、グレートなちゃぶ台返しとしての羽柴さんを待望する意見として
鈴木さんご本人もそう発言されている通り、鈴木さんの力量でこの状況を何とかできるかは不明なところがあります。
前市長がそうなったように、市議会(ないしは既存利権)との戦いに敗れてしまい、結局大したこともできずに4年が経つ可能性もあります。ただ、市議会には「前市長」が当選しているなど、新市長の味方となる勢力は居ますが。
あるいは問題の根本の大半が、石炭自体の繁栄の夢から醒めない夕張市民の方であった場合、「国や道と闘う」という立場を取り下げない限り、何をどうやってもどうにもならないかもしれません。
個人的には、小泉チルドレン当選よりは鈴木さんの当選で良かったのではないかと思っていますが(羽柴さんについては判断がつきません)、正直、四年後に夕張市が幸せになっているとは予想し難いです。これから大変でしょうね・・
また、夕張市は全国の手本でもあります。
夕張市が抱えている問題は日本中に広く見られる問題です。衰退した市町村で昔は良かったと不満を言う住民、だらしない行政と、ありえない打開策の待望・・。もし夕張が何らかの「結果」や「教訓」を残せるなら(ネガティブな例として、かもしれませんが)、全国の手本になることでしょう。
◆落選後の羽柴さん
落選後の羽柴さんは逆切れしたと報じられています。
羽柴秀吉またも落選「バカな市民!」夕張市から撤退へ
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110425/plt1104251134000-n1.htm
羽柴氏は「支持者のみなさんには、このような結果になって申し訳ない」と頭を下げながら、「一番の敗因は大物を呼ばなかったこと。トラの写真に負けたんだ。親分がついているということに、市民がだまされた。でもオレは自分が親分だから」と敗戦の弁。鈴木氏の応援に、石原知事が駆けつけたことに悔しさをにじませた。
羽柴さんも、石原知事の応援で流れが大きく変わったことにお怒りのようです。
報道が面白おかしく書いているだけのような気もするので、本当に本人の気持ちを表している表現かどうかわかりませんが、落選に逆切れしていたようです。
有権者を「バカな市民」とこき下ろして、4年後の市長選出馬を否定。
なお、小泉純一郎と同じ選挙区で衆議院選挙に出馬して落選した際にも、同じように有権者に逆切れした(国民に絶望したので国政選挙にはもう出ないというような発言)という話はあります。
ただ、打算的な人ならばこんなことは言いません、思いっきり本音を言ってしまっていますから、天然ですね。
結局、誰が当選しようと夕張に渦巻く不満は解消困難です。よって、新市長が次の選挙まで人気者であり続けるのは、やはり難しいと思われます。結果として、羽柴さんが一定以上待望される状況は、今後も続くと思われます。
羽柴さんはもう選挙に出ないと言ったそうですが、まだ選挙に出るつもりならば、四年後に再度似たような状況になることは十分に考えられます。
新市長でもダメとなっている場合、羽柴さんにちゃぶ台返ししてもらうしかない、ということになっているかもしれません。あるいは、新市長が炎上した時点で、羽柴さんがまた夕張に戻ってくるかもしれません。
よって、夕張市のネタ要員としての羽柴さんを愛好されている方は、羽柴劇場はまだ完結したわけではないので(「続編」がありうる終わり方なので)、今後の羽柴さんの活躍に期待しましょう。
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