« 「ポポポポーン」に作画ミスがある件について、余計な確認をしてみる | トップページ | 意外な被害:震災(津波)で日本の防空に問題が生じている件 »

雑:「アナログ地上波の停波」の延期が検討される話

アナログ地上波の停波の延期が検討されているという話について少し書いてみたいと思います。

#またしばらく脱線の記事です、投稿無しよりはマシだと思っていただけると幸いです

以前から停波を延期すべきではないかという意見はありましたが、今回、震災を契機に具体的に見直しをする話が出てきたようです。

◆延期の検討開始

まず元のニュースから、

総務相、地デジ移行「被災地の調査必要」 延期も
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819694E2E3E2E2948DE2E3E2E6E0E2E3E39797E3E2E2E2;at=ALL

片山善博総務相は1日の記者会見で、東日本大震災による東北地方などの被害を受け、7月24日のテレビの地上デジタル放送(地デジ)への完全移行を予定通り実施するかどうかについて「まず調査が必要」と述べた。

これまでも、延期した方が良くないですか?という意見もありつつ、決めたとおりに進めようとする動きもありました。

そして今回、停波が決定したわけではないのですが、延期するかどうかの検討が開始されました。理由としては、東北は移行どころじゃないのではないのではという、何らかのツッコミです。

総務省内では震災による被害の大きかった東北など一部地域のみで完全移行を延期する案などが浮上している。ただ地デジへの完全移行に伴う地上アナログ放送の空き電波は、2012年春に開始予定の携帯向け次世代放送などに利用されることが決まっている。

一応、総務省としては「延期を最小限にする」べく検討を行っているようです。

その理由としては、停波後の使い道も決まっている/決まりつつあるのに、延期するなんて困りますということのようです。しかし、さすがに地震を無視するのも難しいようで、延期しないにしても延期のための調査すらしないのは無理なようです。

調査のみで延期をしないか、延期を最小限にしたいようですが、延期すべきという意見も以前からありますから、ここから一気に見直しがはじまる可能性があります。

◆延期したくない

以前から停波については色々な意見があります。

まず当然に、「決めたこと」なので、見直しはしないし延期しないというような意見があります。役所はどうしてもそういう風な考え方になりがちですし、計画に乗っかっている人達もそういう主張をすることになります。自分たちの「シナリオ」を崩すな、と。

例えば、放送局方面から見直しはしたくない的な意見が出ています。

民放連:「地デジ延期必要ない」会長会見
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110318k0000m040026000c.html

日本民間放送連盟(民放連)の広瀬道貞会長は17日の定例会見で、7月24日に予定されている地上デジタル放送完全移行について「7月24日に(アナログ波を)停波できるような環境作りに対し、歩みを止める必要はない」として、従来の姿勢に変更がない考えを改めて表明した。また東日本大震災の被災地へ1億円の義援金を送ることも発表した

広瀬会長は「人とお金をかけ、(地デジへの)切り替えができる環境を作ることが大切」と発言。支援としてデジタル対応テレビを支給するよう政府に求めていくことを明らかにした。そのうえで、地デジ化については「全国一斉が原則。私自身は(震災でも)引き延ばす理由はないと思っている」と強調した。。

要するに「震災だけれども、延期なんてしたくない」という意見です。そして、そのためのコストは政府に負担してもらいたいというような意見です。

被災地が可哀想だという指摘を受けかねない内容であるためか、「被災地へ1億円の義援金を送る」ことも同時発表されています。

なぜ反対しているのでしょうか?

これは、アナログとデジタルの設備が二重になっているのを早く止めたいからです。アナログを停波できればアナログ放送にかかっているコストが掛からなくなるからです。

だから、停波が延期すると、地方の可哀想な放送局が破産してしまうかもしれないから停波しなきゃ駄目だ、というようなことが主張されることもあります。地方の可哀想な放送局を救うために一般人がアナログ停波で不便することは可哀想ではないのか?と思ったりもしますが。

そして、移行促進のための費用は政府が出してくださいというようなこと言っています。政府が出すということは税金、つまり結果的に日本全体で支払ってくださいということになります。

◆停波したくない

(計画通りの)停波に反対する意見も以前からあります。

反対意見をざっと分類してみるとこんな感じでしょうか(他にもあるかもしれません、あれば教えてください)

  • 移行できない人が可哀想だ的な意見
  • 同意が確認されていない(地デジへの拒否)
  • テレビに止めを刺す(テレビ自体への拒否)

移行できない人が可哀想だ的な意見

移行できない人が可哀想だ的な意見では「地デジ難民」というような表現が良く使われます。この問題点は役所も認めている問題点です。あるいは、役所は「この反対意見」に対して十分に対応したのだから、もう十分でしょ?として話を終わらせたいと思っているようにも思えます。

「弱者」への配慮は行っております、無料でチューナを配布しております、切り替えの支援を行っております、高齢者への声かけを行っております。

それに対して、それでは不十分だし困る人達が居るから駄目だ、延期してくださいという主張というような構図です。

地震は、この点における不十分さを新たに発生させました。ですが、問題点は「移行できない人」の存在だけではありません。

同意が確認されていない

例えば「停波をするとコストや不便も生じますが、デジタル移行をしたいですか?」という問いかけをして同意が確認されたわけではありません。あまりに多くの人に影響を与えることについて、どういう形でも同意確認がなされていないことは事実です。結果的に、「誰かが勝手に移行を決めた」だけとも言えます。

実際、「私はアナログのままで困らないのですが」という意見はめずらしくもなんともありませんし、停波に伴ってテレビが写らなくなって捨てなければならないことにも納得しない人は多いでしょう。

「地デジ難民」的な視点は、移行したいが移行する力が無い人への支援に過ぎません。無料でチューナーを配っております、と言ったところで、「移行して欲しくなかった」に対する答えにはなりません。

テレビに止めを刺す

若い人がテレビをあまり見なくなっているなど、テレビは皆が見るものという前提が崩れつつあります。

「それでもテレビを見ている人」に放送の内容を合わせた結果、テレビ放送内容が異様なものになっていることもあります。例えば、テレビに今の音楽が出てくることは少ないのに対し、どういうわけか「何十年も前の歌手やアイドル」の話題ならば良く見かけるというありさまです。

地デジにしてまでテレビを見ないといけないのか?こんな状況で完全地デジ化すると、テレビの衰退の火に油を注ぐようなもので、現状のままのアナログ停波はテレビの衰退を早めてしまうという意見があります。

◆欠けていること

「地デジ難民」という表現が良く使われますが、私は「地デジ難民」という表現は思考をこういう対立図式に閉じ込めてしまうようにも思えます。

  • 推進:国策で決めたことですから
  • 推進:停波後の使い道がもう決まっているから
  • 反対:移行する能力の無い人達がいる(「地デジ難民」)

当然に(上が)決めたとおりになるという前提で、その決定に追いつく力の無い弱い人達(「難民」)が居るので、支援してあげる必要がある。そして、支援をしたのだから、移行には問題がありませんと。

また、「地デジ移行の機運」を盛り上げるための各種活動が行われていますが、

「これから地デジの時代ですよ(だからあなたも当然地デジにすべきです)」
「地デジ化 済んでますか?(みんな地デジに乗り換えましたよ)」

まるで、メディアが作ったブームに皆が踊ることを期待しているかのようです。また、乗り換えたくない人など居ないかのようです。

というか、こんなマヌケなことが国費を投じて行われていたりします。

「完全デジタル化に向けた最終国民運動」の展開
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu09_01000015.html

全体的に情けないのですが、一部だけその見本を抜き出しますと、

―地デジボランティア全国声かけ・念押し運動、「地デジ詐欺ご用心!」運動―

「地デジ化はお済みですよね?」「アナログ表示は本当に出ていませんね?」「デジサポがお手伝いしてくれることをご存じですか?」等の声かけ・念押し

「これって地デジ詐欺?ウソ・ホント?」等による注意喚起

この運動が想定している日本国民の頭の程度はどういうものなのか知りたいところです。

では、伏せた項目を追加したものを再度掲載してみましょう。

  • 推進:国策で決めたことですから
  • 推進:停波後の使い道がもう決まっているから
  • 反対:移行する能力の無い人達がいる(「地デジ難民」)
  • 反対:地デジへの拒否(勝手に変えないで!)
  • 反対:テレビそのものへの拒否(テレビはもう要らない)

「国策」も「停波後の使い道が決まっている」ことも、テレビを見る人の意見や都合とは関係ありません。ですから実は、反対に対する理由にも説明にもなっていません。自分の事情で他人への説明としてしまっています。

「拒否」に対しては、謝罪や説明やお願いが必要なはずです。場合によっては補償も必要になるかもしれません(意に反しての移行なのですから)。しかし、そのようなことは(少なくとも主には)行われていません。「拒否」は実際には一番大きな問題かもしれませんが、重視されているようには見えません。

地震を契機にして、いろんなことで「愚かな判断」が露見していますが、地デジが今ひとつなことになっているのも同じような原因ではないでしょうか。なんでこんな事になっているのかを考えて解決しないと、まだ同じような無駄や間違いが生じることになるはずです。

もしかすると地デジも「人災」の一つなのかもしれません、

|

« 「ポポポポーン」に作画ミスがある件について、余計な確認をしてみる | トップページ | 意外な被害:震災(津波)で日本の防空に問題が生じている件 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 雑:「アナログ地上波の停波」の延期が検討される話:

« 「ポポポポーン」に作画ミスがある件について、余計な確認をしてみる | トップページ | 意外な被害:震災(津波)で日本の防空に問題が生じている件 »