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意外な被害:震災(津波)で日本の防空に問題が生じている件

震災では意外なところが大被害を受けていたりしますが、そういう話の一つとして。

#またもや脱線話題です

宮城県の航空自衛隊の基地(松島基地)で戦闘機が津波で全滅してしまいまして、結果、日本全体の防空に影響が出る、という困ったことが起こりつつあります。

そして、その説明ついでに、日本の防空ってどうなってるの的なことを、私が知っている程度の怪しい知識で少し。

◆津波で全滅

まずは、基本的なことが書かれたニュースを持ってきます、

F2戦闘機18機など水没 松島基地、1機120億円
http://www.asahi.com/national/update/0312/TKY201103110818.html

防衛省によると、今回の地震で航空自衛隊松島基地(宮城県)で、空自F2戦闘機18機のほか、T4練習機、U125救難捜索機など10機が水没した。同省幹部は「海水にかなりつかってしまっており、場合によっては使えなくなってしまうかもしれない」という。F2は1機約120億円。

「場合によっては使えなくなってしまうかもしれない」とありますが、使えなくなってしまう可能性が高いと見られています。修理するにしても、費用と期間がかかってしまうようです。

空を飛ぶ「機械」として見た場合でも塩水に漬かったうえに泥やゴミが入り込んだ状態は不味いわけですが、加えて戦闘機は高価な電子機器の塊だったりするためです。電子機器に塩水はよろしくありません。

また記事には書いていませんが、当然に飛行場の設備やいろんな機器も壊れてしまい、さらには人的被害(基地の人にも行方不明者多数)も出ているようです。こちらも飛行機を飛ばす能力の回復への大きな妨げとなるでしょう。

・・と、ここまで書いて気がつきましたが「F-2って何やねん」となっていると状況が理解できないと思いましたので、まずは日本の持っている戦闘機はどうなっているの的なことを少し書いてみたいとおもいます。

◆日本の戦闘機のざっくりしすぎたまとめ

日本の持っている戦闘機を非常にざっくりとまとめると以下のようになります。非常にいい加減な説明ですが、おおよそを一瞬で理解するくらいには役に立つはず・・です。

  • F-4:およそ40機
  • F-15(旧型):およそ100機
  • F-15(新型):およそ100機
  • F-2:およそ100機(94機)

F-4は旧型過ぎるので今すぐに引退させたいけれど仕方無しに飛ばしているものです。後継機を導入したいのですが話がまとまらず、どういうわけだか当分は飛び続けることになっています(整備の苦労は半端ないと思われます)。今回の事件でさらに引退が遅くなってしまったかもしれません。

F-15は飛行機を攻撃するための飛行機です。また、F-15は長い間(西側の)最強戦闘機でした。日本に向かってきた飛行機を海の上で叩き落す係です。

日本が持っているF-15には「旧型」と「新型」がそれぞれ100機程度あります。旧型は飛行機の中の配線が「アナログ」のF-15、新型はデジタル対応可能なF-15です。

旧型は改修によるパワーアップが困難なため、最新の電子機器や最新のミサイルに対応させることが困難という問題があります。また、根本の問題であるアナログの配線をデジタルに置き換えることは(合理的なコストで実施することが)難しいため、旧式化しつつあります。よってこの飛行機は不良在庫気味で、できれば新型への置き換えが必要です。

新型のF-15はデジタル対応のもので、こちらについては最新の機器への改修や新型ミサイルへの対応が続けられています。改修予算が十分にないために、全機が最新鋭の状態に保たれているわけではありませんが、こちらのF-15は侮れない戦力として日本の周囲に睨みを利かせています。

F-2は主に船を攻撃するための飛行機です。海をわたって日本に攻めてくる敵艦隊を海上で木っ端微塵にする係です。飛行機の開発をめぐってアメリカと揉めたり、左の人に欠陥飛行機呼ばわりされたりと、色々可哀想な経緯のある飛行機です(そして今回、津波の被害に)。

対艦攻撃機としては世界最強レベルの飛行機で、F-2が生き残っている限り、いつ多量の対艦ミサイルが飛んできて艦隊全滅するか解らんという感じの強力な攻撃能力があります(ソ連大艦隊との対決のために作られたためです)。

ソ連は消滅しましたが、今度は中国が海軍力を膨張させているので、現在および今後は中国艦隊に睨みを利かせる係になっています。

まとめると、こんな感じです。ちょっと色々省略しすぎですが。

  • F-4EJ改;とっくに引退しているべき旧型
  • F-15J(旧型):旧式化しているので引退が望ましい
  • F-15J(新型):空の守りの要
  • F-2A/B:敵艦隊を木っ端微塵にする係

◆一気に2割減

元のニュースに戻りましょう。

そんなF-2のうち18機が津波に漬かってしまったという事件です。なんと2割のF-2がダメージを受けたことになります。一気に2割減とは相当なダメージです。

修理はできるのでしょうか?

アメリカで、カトリーヌ台風で基地が水没してしまい、飛行機が水に漬かってしまう事件があったようですが、結局修理不能(修理したとしても無意味に高くつく)とされてしまいました。

日本の場合、新規調達が困難という事情があるので、意地の修理が行われるかもしれませんが(場合によっては「それは修理ではなくて新しく作っているのではないのか」というレベルの)、いずれにしても修理は容易ではない可能性も高いことになります。

また、他にも重大な問題がありました。

この基地(松島基地)は、パイロットの養成を行っていた基地でした。松島基地のF-2は、(平常時は)攻撃のために配備されているわけではなく、訓練のために配備されていました。

「二人乗り」のF-2(F-2B)は数が限られているのですが、それが一気に沢山に失われてしまいました。幸いにして全滅ではないのですが、複座(二人乗り)のF-2Bが十分に無い場合、今後パイロットの養成が難しくなってしまいます。

通常は長い間使っているうちに飛行機を壊したりすることを考えて余分に作っておくものもののようですが、石破さんという大臣がF-2の調達を早期に打ち切る決定をしていたため、壊れたとき用の予備も十分にありません。

他からF-2を持ってきて済ませたとしても、その分だけ訓練以外で使うF-2の数が減ってしまいます。

◆代わりは?

F-2を新しく作ってしまえば一番は話は簡単です。そして幸いにしてF-2の生産はまだ続いています。

しかしながら、追加調達は容易ではない状況であるとされています。

F-2生産終了目前で、半ば生産は終了しているとされるためです。その上、F-2開発時の日米でのゴタゴタにより、F-2は日本で全部生産できるにもかかわらず、わざわざアメリカと日本で分割して生産が行われており、アメリカ側が作ってくれなければ飛行機として完成しません(あるいはこれを日本側が引き取るとなると、日本に持ってくるコストも必要になります)。

生産が完全に終了しているわけではないので、まだ追加調達の可能性が残っているのは良いことですが、すんなりと追加生産できる状況にはない、とされます。

F-2以外の飛行機で代わりをすることができないのかというと、F-2に乗るための訓練を他の機種で行うことが難しいなどの事情があるようで、それも容易ではないようです。

この問題はどうなるのか解りません。

数が減ったままなんとか我慢するのか、別の飛行機を買ってきてなんとかするのか、あるいはF-2を追加生産することになるのか(そして追加生産するとしたらどういう方法で追加生産するのか)、今後どうなるのやらというところのようです。

以上、地震で、予想外にいろんなことが起こっていますよという話の一例でした。

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コメント

今回基地の被災+自衛隊の10万人動員ですが、それで防衛が手薄になるのを見越して空母群が早めに派遣決定ってのもあると思います。
日米同盟の間ではそういった取り決めもあるのかもしれないですね。他国の侵略ではなく、震災でも空母群が支援&牽制に回ると。

投稿: | 2011/04/04 17:43

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