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光の道:「実現できない夢」か「つまらない現実」か

私らしいネタを書いてくださいというご意見に出来るだけ応えてみたいと思う次第です。

というわけで光の道について少し。

  • ソフトバンク案は諦めましょう
  • 意外なところにある(かもしれない)逆転の方法

◆経緯

まずは「光の道」について説明しましょう。

「光の道」とは国策で、日本の一軒一軒全てに光ファイバのインフラを張り巡らそうというような計画のことです。まあこの時点で既に議論があります。

  • いまさら国策が必要なのですか?
  • そもそも日本は世界一の光ファイバ帝国だし、余計なことをする必要があるのか?
  • なにその巨大公共工事
  • 日本全体の「一軒一軒」に光ファイバを張り巡らせなければならない必要性がわかりません、光ファイバ以外の選択肢は?
  • 光ファイバ整備の前に、ネットが使われるようにするのが先では?

ごもっともである(と私は思います)、これらの点についてはまた後で触れます。

この話、もともとは政権獲得前の民主党にソフトバンクが持ち込んだ話だったようですが、まあ色々あって最終的には以下のようなことになっています。

  • NTT案(ソフトバンクがA案と呼んでいるもの)
  • ソフトバンク案(ソフトバンクがB案と呼んでいるもの)

以上のどちらを選ぶか、という話になっていました。他の選択肢は?とも言いたくなりますが。

◆夢はあっても、実現性がない

ソフトバンクはCMを使ってまで、B案が優れているという主張していたのは皆さんご存知のとおりだと思います。

ですが、簡単にまとめるとこういうことなのです、

  • NTT案(A案):実現性はあるが、夢がない
  • ソフトバンク案(B案):夢があるが、ほぼ実現できない

どれくらい実現性が無かったかというと、お上の悪口を言うために生きているような人々ですら、多くが今回はB案を支持しなかったというほどでした。

ソフトバンクの主張は以下のようなものでした、

  • 光ファイバと従来の電話線が二重に整備されるのは無駄
  • 全部光ファイバを引いて、従来の電話線を廃止すれば、従来の電話線を維持する巨額のコストが浮く
  • その他、ソフトバンクの計算では色々安くなるはずである

CMのB案で、「くしゃみをすると隕石が消える」というのは、従来の電話線をなくせばコストがかからないと言いたかったわけですね。

でも残念ながら、ソフトバンク案はツッコミ放題だったために(これについては散々指摘されていますので割愛)、支持する意見は広がりませんでした。実際に実現できる話には思えなかったわけですね。

いくら夢があっても、到底実現できない話ではどうしようもないですよね。

また、実現性について突っ込まれているのならば、実現性について納得してもらうような形で具体的客観的に反論をすれば良かったわけですが、それが出来ません。夢について語って反論したり(反論になっていませんね)、CMで世論を煽ったりしましたが、いずれにしても実現性への疑問に対する説明とはなっていません。

たとえば、ソフトバンク自身の光の道ページにはこういう文言があります

ttp://www.softbank.co.jp/hikarijp/ から

ここで私たちが考えなければならないことは、「実現できるのか、できないのか」ではなく、「どのように実現するか」です。国の借金(債務残高)が900兆円、国民一人当たりで700万円以上の借金を抱える私たちには、「できる、できない」の議論をしている余裕はありません。

夢を語りたいのはよく解りましたけど、そもそも無理じゃないすか?に対してこの返しではどうにもなりません。まあつまり「基地局4万6000局」の光ファイバー版にすぎなかったのではないかと思うわけですね。

◆何故?

「B案」はお上が大嫌いな人にすら支持されませんでした。まあ、全然駄目だったと言えましょう。そうすると何故、駄目な主張を続けたのだろうかということになります。

  • 天然である
  • 負け戦だろうとなんだろうと、光ファイバをどうにかする必要があった(別の目的を果たす活動の一部)

「基地局4万6000局」の光ファイバー版だと考えると、天然かもしれません。

また、B案にあわせて強く主張していたのは「NTTの分社化」でした。つまり、NTTの持っている光ファイバをNTTから切り離し、国と三社(NTT、KDDI、ソフトバンク)が作る新会社の持ち物に移行したいという主張でした。「NTTの光ファイバが欲しい」ということだったのかもしれません。

◆そもそも必要なのか?

そもそも光ファイバ化を一軒一軒に引く必要があるのかという疑問があります。

日本は世界一の光ファイバ帝国で、インフラ自体が立ち遅れているわけではありません。よって、慌てる必要があるのかどうか良く考える必要があります。もし、他に優先すべきことがあるなら、そちらを先にすべきですよね?

実際、光ファイバはあまり有効活用されていないというツッコミがあります。そもそもの目的は何か考えて見ましょう。ハコモノを作っても使われなければただの無駄使いであるのと同じように、本当に問題なのは「ITが高度に活用されることによって日本が豊かになること」です。

現状、「ITが高度に活用される」ための障害とされているのは、回線の問題ではなく、回線を引いたのに活用されていないことが多い点とされます。そうなると、回線を引くことは少なくとも直接の問題解決としては違うことになります

また、光ファイバ以外の選択肢が検討されていないという突っ込みもあります。これについては孫社長に何度も浴びせられているツッコミです。なぜなら、ソフトバンクはモバイルの会社だからです。

このブログで以前から書いているとおり、無線には容量が足りないという問題があります。よって、都市部で無線で有線を代替することはあまり現実的ではありません(そして、都市部については別に心配するまでもなく光回線が来ています)。

しかし、過疎地となると話は別です。人が居ないのですから、無線帯域をじゃぶじゃぶに使ってもあまり混雑が起こりません。しかも一方で、固定回線を引いて維持するコストはとても高くなります。よって、過疎地はモバイルである・・・というのが例えば「固定WiMAX」が作られた経緯でした。

じゃあ別に現状の流れのままでいいじゃないですかということにもなります。光の道と騒ぐ必要性はだんだん怪しくなってきます。

またそもそも、従来の電話回線(メタル線)を全廃したら驚くほどコスト削減できるのであれば、早期にNTT自身が行うことでしょう。そもそもNTTは光馬鹿なのですから。

◆意外な逆転カード

以下については、ちょっと面白そうな話を考えてみたという程度にお読みください(ご注意)。

NTTから光ファイバを剥がそうとしてのことならば、今回の騒動はソフトバンクの負け試合となったといえるように思います。

ただ、「自宅への光ファイバ」を何とかしたいというのであれば、ソフトバンクにはカードがあります。ADSLではありません、ADSLでNTT対策が何とかなるならば今回のような無茶はしなかったでしょう。またLTE(やHSPA+)ではありません、LTEではドコモ(NTT)と差がつきません。

無線の有線に対する弱みは容量です。そしてソフトバンクには容量馬鹿になりうる無線技術が手中にあります。XGPです。

なお、TD-LTEでは駄目です。それでは単なるLTEになってしまいます。ですから、TD-LTEを買ってきてすませてはいけません。LTEと違う特性でなければ、ドコモと差がつけられません。よって、XGPはLTEと反対側に進化させるほうが面白いでしょう。

もしかすると従来のXGPでも不十分です。LTEとの差異とさらに大きくして、容量馬鹿を徹底的に追求してXGPを進化させましょう。その上で基地局を超高密度配置しましょう。

光ファイバ(家庭に引き込む)をすっかり倒すことは難しいでしょうが、XGPならモバイルでも利用できます。もしかするとB案を成功させるよりも可能性は高いかもしれません。

このようなプランはウィルコムだけでは難しかったはずですが、孫社長の「大きな声」が合わさると何が起こるかわかりません。

「NTTの光の道は駄目だ、ソフトバンクはXGPの道で日本を変えます」

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コメント

>無線の有線に対する弱みは容量です。そしてソフトバンクには容量馬鹿になりうる無線技術が手中にあります。XGPです。

ソフトバンク的には、「高度化XGP」という名前のTD-LTEを始めるようです。
もしよろしければ、以下の記事をお読みになってください。
http://suzunonejh.blog15.fc2.com/blog-entry-1368.html

投稿: たなべ | 2011/03/01 10:57

誤入力訂正
×「高度化XGP」
○「次世代XGP」

投稿: たなべ | 2011/03/01 11:04

>CMのB案で、「くしゃみをすると隕石が消える」というのは、

あのCM意味がわからなかったんですけど、そういう誘導CMだったのですか。
あのCMシリーズ自体嫌いなんですけど、飛びぬけて変でした。
カルトっぽい煽り方ですよね。

投稿: モコム | 2011/03/09 12:53

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