LTE事情の観察に必要なあたりを少しまとめてみた
どの程度の頻度になるのかよくわかりませんが、とりあえず執筆を行ないたいと思う次第です。
2011年はLTEの離陸の年になると思われますので、LTE事情の観察に必要なあたりを少しまとめてみることにしました。
まだ肩慣らしの投稿です。
#やっつけで書いたとも言う
◆比較相手
2010年末にとうとう次世代本命のLTEがサービスインしました。LTEがこの後どのようになるのかはまだ解りませんが、とりあえずは2011年はLTE離陸の年になるであろう年で、私らとしましては、それを観察する年になろうと思われます。
LTEは(多くのものがそうですが)絶対的に評価されるというよりも相対的に評価されるものです。まずは、LTEの比較相手について整理をしてみましょう。
- モバイルWiMAX:次世代としてのライバル
- HSPA+(DC-HSDPA):現行世代(の拡張)で十分では?というライバル
モバイルWiMAXがLTEを倒すことはほとんど考えられません。しかし、日本ではモバイルWiMAXは健闘していますので、
・モバイルWiMAXの命の削れる速度
・LTEの進撃速度の低下
という意味でライバルになりえます。
DC-HSDPAについては、早期にLTEへ移行したい陣営と、現行世代(W-CDMA)の延命技術を経てからLTEに移行したい陣営の綱引きです。
◆速度・帯域の違い
LTEとの比較となると、どうしても速度の話になりがちです。しかし、速度は帯域(電波)を沢山使えば出ますから、技術としての性能(効率)を考えるにあたって、それぞれが速度を出すために消費している帯域について整理しておくことにしましょう。
補足しておきますと「×2」とは、「下り:基地局→端末」と「上り:端末→基地局」の帯域の二つで、という意味です。
ドコモのLTE
・LTE:5MHz×2(37.5Mbps)
#一部エリアで10MHz×2(75Mbps)
延命技術(現状のもの)
・HSPA+:5MHz×2(21Mbps:7.2Mbps×2×1.5)
・DC-HSDPA:10MHz×2(42Mbps:7.2Mbps×2×1.5×2)
とりあえず現時点では、DC-HSDPAはLTEの倍の帯域を使っていることは覚えておいてください。
次に、モバイルWiMAX。
モバイルWiMAXはTDDです。TDDやFDDって何?というあたりは過去の記事を参照してください。ともかくもWiMAXでは「下り:基地局→端末」と「上り:端末→基地局」の帯域が共用になっており、時間切り替えで上下が使い分けられています。
・モバイルWiMAX:10MHz幅で上り下り共用(40Mbps)
このままではLTEとの比較がうまくできません。下りと上りの時間比率はおよそ「2:1」なので、そこから計算すると以下のようになります。
・モバイルWiMAX:下り6.7MHz幅相当、上り3.3MHz幅相当
上記よりLTEと比較すると以下のようになります
下り(ダウンロード速度)
・LTE:5MHz幅(37.5Mbps)
・モバイルWiMAX:6.7MHz幅相当(40Mbps)
上り(アップロード速度)
・LTE:5MHz幅(12.5Mbps)
・モバイルWiMAX:3.3MHz幅相当(10Mbps)
下りをまとめるとこんな感じになります。
・LTE:5MHz(37.5Mbps)
・HSPA+:5MHz(21Mbps:7.2Mbps×2×1.5)
・DC-HSDPA:10MHz(42Mbps:7.2Mbps×2×1.5×2)
・モバイルWiMAX:6.7MHz幅相当(40Mbps)
ただし、LTEとモバイルWiMAXはMIMOでスペックが二倍になっています。
また、速度は他の部分の影響も受けます。現状はこちらが主かもしれません。
・基地局と端末の間(上記の話題)ではなく、基地局より向こう側が混雑していて速度が出ない
・何らかの帯域制限をかけている
・何らかの技術的理由による制限、例えば、安定性確保のために速度が出ないモードで通信させるようにしている
・混雑して速度が低下している
◆安定性の問題
速度は解りやすく比較しやすいのでどうしても速度比較になりがちですが、実際に使って問題になろうことは、エリアの問題やエリア内での安定性です。
安定して使えるのであれば、最高速度が利用感に大きく影響を与える場面は限られるはずですが(そういう意味では速度比較の記事ばかりになる傾向はよろしくない)、つながれば速度が出ても接続が安定しない場合は使いにくいはずです。
モバイルWiMAXが今ひとつ良い評価を得ていないのも、ここに問題点があるためです。
LTEとモバイルWiMAXの「安定性」を比較するにあたって、注意しなければならない点があります。というのは、現時点ではLTEが不利(難しいことをしている)という点です。
日本のモバイルWiMAXは、WiMAXの出来が悪いことを前提としてサービスインされている面があります。このことについては以前、記事にもしました。
例えば、WiMAXは基地局と基地局の中間点で干渉が発生する問題点があります。基地局Aと基地局Bが同じ周波数の電波を出していると、その中間地点で両方の電波がぐちゃぐちゃになってしまって悲惨なことになる問題点です。
干渉しないように出力を下げればよい?そうするとそもそも電波が届かず圏外になる場所が生まれます。
仕方がないのでこういうことをしています、
・周波数Aで基地局を配置、基地局の中間地点は電波が届かずに圏外になったり干渉で壊滅したりして穴ぼこだらけになるが、しょうがない。
・周波数Aで穴ぼこが空いたところに、別の周波数Bを用いて穴をふさぐ
「WiMAXは最低2波がないとサービスイン出来ない」と突っ込まれているのは、こういうことになるためです。なお、実際には2波でも厳しいので、3波の組み合わせが無難です。
日本のモバイルWiMAXは
・周波数Aと周波数Bで基本的エリアを構築
・さらに周波数Cで屋内の圏外や、エリアの穴を補完
というようなことをしているようです。
結果的に周波数を三つ使って気を使って基地局を配置することで、利用者には一つの周波数が安定して届くように努力していることになります。
じゃあ、LTEはどうなのかというと
・LTE:周波数Aの一つだけでカバーできます
基地局と基地局の間はどうなってしまうの?大丈夫なの?と思うところでしょうが、
・基地局と基地局の間の難しい部分は、LTE自身が持っている能力でカバーする
LTEはマイクロセル向けに設計されているわけではないので、基地局をでたらめに配置して動作するというわけには行きませんが、気を使って基地局を配置すれば、周波数一つで面カバーできる能力があります。
このため、このように言われたりします、
・WiMAXには問題点があるので、最低2波、現実的には3波の周波数が無ければサービスイン出来ない
・LTEなら1波だけでもサービスイン出来る
この点は各国の次世代通信技術の採用レースでも、WiMAX叩きの格好の材料になっています。例えば、以前書いたようにWiMAXが嫌いなクアルコムによるフルボッコでも。
またこういうことも言えます、(スペック上の)高速化競争でも優位です。
・WiMAXでは、三つ束ねられないので10MHz幅の最高速度が限度
・LTEでは、三つ束ねられるので10MHz幅×3の最高速度が出せる
以上は良い面だけを書きましたが、実際には
・3波を使う方法は、簡単で確実な方法
・1波だけで済ますのは、難しくて危うい方法
ドコモは5MHz幅の1波だけでLTEを開始しようとしています。WiMAXよりも難しいことをしようとしていることには違いがないのです。難しいことの実現には苦労はつきものです。
基地局や端末は難しいことをしなければならなくなります。
「基地局と基地局の間では、難しい動作を行なって通信が途切れないようにしないといけない」
ということになりますし、基地局の設置も難しくなります。また、日本の都市部は利用者が異常に高密度で、電波の飛び方も複雑怪奇のため(消費者が品質に異常にうるさいことも含め、世界最悪の状況とも言えます)、安定させるためには非常な苦労が必要となる可能性もあります。
現状どうであろうとも、最終的にはドコモの異常な執念が問題をねじ伏せて行くことになるのではないかと思いますが、当面は安定しないままになるかもしれませんし、ドコモでは安定しているのに他社のLTEは酷い、ということも起こるかもしれません。
なお、現行世代(つまい第三世代系)では「1波だけで済ます」ことは、(少なくとも現時点では)ノウハウの蓄積の面でも技術的にも容易ですので、電波状態が難儀と思われる場所で、LTEと現行世代の安定性の比較をしてみると差が出るかもしれません。
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