« 最近の純増数について少し | トップページ | 490 ロシアのWiMAX、LTE陣営への寝返り決定 »

491 TD-LTEとLTEを混同してはいけません(別物です)

ソフトバンクが導入を検討しているという話で話題になっている「TD-LTE」について書きます。

次世代本命の「LTE」と名前が似ているのですが、少なくとも多くの人が思っているほどには、LTEとTD-LTEは関係無い、という話。

#以前から読んでいただいている人には復習になります

◆携帯電話の技術の歴史(省略版)

「LTEって何ですか」の前に、まず携帯電話の技術の歴史を簡単に振り返ってみたいと思います。
#その方が良く解るからです


第一世代:

携帯電話はまず最初アナログ方式でした。非常にいい加減な言い方をすると、トランシーバやアマチュア無線と類似のシステムでした。


第二世代:

その後、携帯電話は「デジタル化」します。現在「第二世代」と呼ばれている技術です。第二世代は結局このような結果になります。

世界のほとんど:GSM
日本(と韓国):PDC

この残念な結果は、日本を叩きたい人には大人気の事実で、日本は間違っていると言い張る根拠として用いられます。

ただし、日本(ドコモ一家)がこの結果を反省したからか、以後においては日本は孤立どころか世界の本流(勝ち陣営)の重鎮です。ですが、今になってもまだこのネタで叩く人が。


第三世代:

陣営で考えた方がわかりやすいので、世界を以下の陣営に分類します。単純化し過ぎですがお許しを。

- 日本:ドコモ一家
- アメリカ:クアルコム
- 欧州:エリクソン
- 中国:国策

第二世代の孤立で反省したドコモは、GSMの元締めの欧州と協調して今後は孤立しないようにします。

一方で、第三世代の技術力で圧倒的リードがあったのがアメリカの「クアルコム」でした。クアルコムは自分で第三世代の方式を開発します。

- 日欧:W-CDMA陣営
- アメリカ:CDMA2000陣営

通信業界の老舗が連合したW-CDMA陣営でしたが、新参者のクアルコムの特許と技術の壁を屋を破ることは出来ず、クアルコムの天下が到来します。

また中国は、独自の通信方式を開発しようと企みます。そこで、多くの方式(FDD)と異なるTDD方式の第三世代技術を開発することに決めます。中国に何らかの優位性や勝算があったというより、他の技術と違うように見えたという理由で。

#FDDとTDDについては後ほど説明します(おそらくしばらく後の記事で)

序盤はこうなります
- 日欧:W-CDMA陣営(苦戦)
- アメリカ:CDMA2000陣営(快進撃)
- 中国:TD-SCDMA陣営(ずーっと「開発中」のまま)

序盤はCDMA2000陣営の快進撃が続きます。日本ではAUの黄金時代とFOMA暗黒時代が「クアルコム技術帝国」の快進撃を象徴する出来事でした。

なお、CDMA2000やW-CDMAに少し遅れて実用化することになっていたはずの「中国の第三世代」ですが延々開発が出来ずに遅延します。

クアルコムの「相手陣営を突き放す新技術」の投入が続かなかったこと、第三世代の技術自体が枯れてきてW-CDMA陣営の物量が作動し始めたため、

途中から
- 日欧:GSM/W-CDMA陣営(世界標準へ)
- アメリカ:CDMA2000陣営(減速)
- 中国:TD-SCDMA陣営(第三世代の導入を禁止し、その上で開発続行)

ただし、W-CDMA陣営も結局クアルコムの特許を突破できなかったので、W-CDMA陣営が栄えようともクアルコム自身は儲かるので別にかまわないという状況になります。そして、中国は第三世代の導入を禁止して時間を稼ぎますが、独自技術は作れないままです。


次世代(3.9世代):

現在3.9世代と呼ばれている「第三世代の次」においては以下のようになります。

序盤:
- 日欧:LTE
- アメリカ(クアルコム):UMB
- モバイルWiMAX
- 中国:(TD-SCDMAがまだ完成しません)

ドコモは独自な方式を提案したかったようですが、欧州に譲歩して普通な方式になります。第二世代での心の痛みがしたのでしょう。

クアルコムは第三世代をさらに拡張した方式を考えたりした後、LTEとは別の次世代方式を提案します。

モバイルWiMAXについてはこのブログの過去の記事をご覧ください(面倒なので)。以前は話題がバブルでしたが、現在は沈没陣営です。

そして中国ですが、TD-SCDMAがまだ完成しません。国策だからと北京五輪に間に合わせて何とか動作するようなものを用意しますが、実質的にはまだ未完成の状態でした。つまり、他陣営の第三世代が完成を通り越して枯れつつあり、次世代すら登場目前の状況で、まだ第三世代を作っているのが中国でした。


現在:
- 日米欧:LTE
- モバイルWiMAX:炎上中
- 中国:TD-SCDMAが一応完成/TD-LTEとか言い出した

クアルコムの次世代「UMB」を採用しようとするところがなく、おまけにCDMA2000陣営で最大の携帯電話会社のベライゾンが「LTEを採用します」と言って寝返ってしまったため、クアルコムは負けを認めてLTE陣営に合流します。

ここに事実上の世界統一規格の「LTE」が誕生します。

中国はそんな状況のなか、ようやく独自方式のTD-SCDMAのサービスを開始します。現在でもまだTD-SCDMAの基地局は初期段階の整備中です。完全に一周遅れです。

そして中国も「次世代を開発する」と言いはじめます。その独自技術の名前は「TD-LTE」でした。

◆名前は似ていますが違います

経緯から明らかな通り「LTE」はあらゆる意味での超本命技術です。

しかし「TD-LTE」は、LTEと名前は似ていますが、同じものではありません。(少なくとも現在のところ)技術的に周回遅れの中国が、次なる国策技術として予定しているものに過ぎません。

#中国版の次世代PHSという説明がされていることもありますが、それも間違いです

OFDMA(という技術)を用いているLTEと同じく、TD-LTEもOFDMAを用いるという点では共通点がありますが、

OFDMAを用いている次世代技術
- LTE
- モバイルWiMAX
- UMB
- XGP
- というか最近の技術の大半

そういう説明ならば、次世代技術の大半は皆似ているという説明が適切ということになります。


|

« 最近の純増数について少し | トップページ | 490 ロシアのWiMAX、LTE陣営への寝返り決定 »

コメント

書いていることが正反対なブログ。
http://www.phs-mobile.com/?p=718
>結論から言いますと、物理的なスロット構成以外はまったく同じものです。
>
>良く言われることに、「TD-LTEは中国が独自で開発しているものを無理やり国際標準にしているだけだ」と言うような説があるわけですが、これはまったくの間違い。正確に言うと、LTEと言う大きなシステムアーキテクチャの中に、FDDタイプアクセス、TDDタイプアクセスの二種類がある、と言う状況に過ぎません。

ここの人、無線関係が本職らしい。
ウイルコム信者にとっては教祖級の人。

投稿: 業務連絡 | 2010/06/15 10:09

おっしゃる通りですね。こんな記事もありましたし・・・

http://lteltelte-lteworldsituation.blogspot.com/2010/05/td-lte-lte-fdd.html

投稿: lteltelte | 2010/12/09 23:07

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 491 TD-LTEとLTEを混同してはいけません(別物です):

« 最近の純増数について少し | トップページ | 490 ロシアのWiMAX、LTE陣営への寝返り決定 »