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489 北米の「モバイルWiMAX」が、WiMAXからの撤退準備を開始?

WiMAXネタです。

北米のモバイルWiMAXが、WiMAX閉店の準備を始めたかもしれない、というニュースです。

◆北米のモバイルWiMAXが閉店準備?

北米で唯一モバイルWiMAXを提供しているクリアワイヤーが、モバイルWiMAX からの撤退準備とも取れることを行っていることが解りました。

まずは引用

米クリアワイヤーにTD-LTEの採用可能性 - チャイナモバイルとの提携の噂も
http://wirelesswire.jp/Watching_World/201005111455.html

これまで米国でWiMAXの展開を進めてきたクリアワイヤー(Clearwire)が、LTEも採用する可能性を示唆した。

同社は先頃、WiMAX陣営の最大の支持者で同社の主要株主でもあるインテルとの間で結んでいた契約の内容を修正したけ、WiMAX以外の技術も採用できるようにしたという。

クリアワイヤーというのは、北米で唯一モバイルWiMAXを提供しているところです。もしクリアワイヤーが脱落すると、文字通り北米でのモバイルWiMAXが終了します。

もともと北米のモバイルWiMAXは、CDMA2000陣営の「スプリント」という携帯電話会社が次世代としてサービスインする予定でした。

その昔はモバイルWiMAXの話題は大層なバブル状態だったこともあり、スプリントはモバイルWiMAXで通信業界に旋風を巻き起こしますよ、と意気盛んでした。

しかし、だんだんWiMAXが疑われはじめ、なおかつスプリントの経営状態が思わしくなくなったので、今度はスプリント再建のためにWiMAXから手を引くべきだと言われるようになります。

この間、他社がモバイルWiMAXに参入してくることはなく、みんなLTEに行ってしまいました。何かあるたびに「モバイルWiMAXが来るぞ」という噂が立つものの、蓋を開けてみるとモバイルWiMAXはすっかりスルーされている、この繰り返しでした。

結局どうなったかというと、スプリントが帯域の免許を提供し、インテルやケーブルテレビが出資するモバイルWiMAX新会社が設立され(つまりスプリントはモバイルWiMAXを外部へ切り離した)、そこで北米のモバイルがスタートすることになります。

そして今回のニュースは、そのクリアワイヤーがモバイルWiMAXからの撤退を準備しているという驚きのニュースです。

明らかになった事実は以下の通りです。

・クリアワイヤーはこれまで「モバイルWiMAX」で事業をします、という約束を出資者と行っていた
・しかし、その約束をわざわざ修正する作業を行い、モバイルWiMAX以外で事業を行っても良いように約束の内容を変更した

・しかも修正には、他ならぬモバイルWiMAX陣営のボスであるはずの「インテル」も同意している

つまり他ならぬインテルが「モバイルWiMAX以外の技術を採用しても別にかまいません」と同意してしまったということになります。

◆TD-LTEに乗り換えるという「噂」

約束を変更した、じゃあ、クリアワイヤーは何をするつもりなのか?というところが気になるところです。

記事ではまずLTEの名前が挙げられています。現在はLTEの話題が加熱中ですから、どうしても話題はLTEになります。

ただ、モバイルWiMAXはTDDな技術であり(TDDが何であるかは近いうちに技術をします)、いわゆるLTE、世界を制圧しつつあるLTEはFDDな技術ですから、いわゆるLTEそのものをそのまま採用することはできません。

先日ブログで書きましたが、この記事ではまたもやLTEとTD-LTEがきちんと区別されていない気がします。例えば以下の部分はどうも混同があるように思えます。確かに広い意味では、類似の機材を使うTD-LTEでLTEも安くなりますが。

米市場をカバーするクリアワイヤーによるTD-LTE導入が実現すれば、基地局や端末の調達コストが一気に下がり、LTEの普及に弾みがつくことが予想される。

もしかするとTD-LTE陣営が上手いこと言ってLTEの威光を横取りしているのかもしれませんが、LTEとは区別して考えておくべきものです。

クリアワイヤーの確保している帯域がFDDで使えるようになっている場合は、LTEそのものへの移行が可能ですが、そうでないならばTDD系の次世代技術が現実的な候補になります。

LTEのTDD版がまず候補になるところでしょうが、LTE本家のエリクソンもLTEのTDD版を開発していますし(正規版とでもいう感じでしょうか)、中国もTD-LTEというものを開発中です。また、LTE以外(LTEという名前のついていない)の次世代技術も採用可能です。

なお、中国は「もうすぐ完成する」と言い続けて、延々とTD-SCDMAが開発中のままになっていた大失敗の前科もあります。TD-LTEもどうなるのかまだ解らないと見ておいた方がよいのではないかと思います。
#もちろん早期に素晴らしい技術として完成する可能性もあります

TD-LTEへの移行を決意していたとして、ここから今度はTD-LTEが原因で難儀することもありそうです。つまり、移行するとしてもすんなり行くとは限らないということです。

とりあえずクリアワイヤーが難しいことになっているのは間違いないようです。



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コメント

仮にLTEは世界で成功して、日本WiMAX(と韓国?)だけがぼっちになった場合、どんなことがおきるのでしょうか?

投稿:   | 2010/05/29 22:03

端末調達に苦労したりする

投稿: | 2010/05/30 16:04

韓国製の端末だけでデータ端末はじゅうぶんじゃないの?

投稿:   | 2010/05/30 19:56

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