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ウィルコムが事業再生ADR申請の件

ウィルコムが事業再生ADR申請の件について

ようやくブログを更新です。

連休は意味が解らんほど忙しかったため(今もですが)、ブログどころではなくなっていました。そういう時に限ってめんどくさい話題が出てきて、さらに投稿が難しくなるのは何の法則(何の呪い)でありましょうや。

まずはこの話題を片付けないと、他の記事を書いたり出来ないということで、書いて投稿してみたいと思います。

◆前置き

まず元ニュースの引用

ウィルコムが事業再生ADRを申請、「XGP展開へ財務体質改善が不可欠と判断」
http://journal.mycom.co.jp/news/2009/09/24/010/?rt=na

すぐに商売ごとなにもかも無くなってしまうようなイメージを持った人もいるかもしれませんが、そういうことではありません。上記のニュースでも「財務体質改善」とあります、商売を畳みますというニュースではないです、まずはですが。

悪い方向に話が進んだとしても、少なくともPHSのサービスが止まることは(少なくとも当面は)ないはずです。

「事業再生ADRを利用するのは、サービスの継続を確保することができるから」とし、同社サービスを利用しているユーザー、販売店、メーカーなどの取引先に対しては、「事業再生ADR利用申請による影響はない」と説明している。

XGPのエリア展開を当初計画の通りに進めるには資金が足りなくなったので、銀行などと相談を開始しました、という話です(「XGP展開のため」、というのはそういうこと)。

逆の誤解も無いように書いておくと、何も問題ないというわけではありませんから、そちらの誤解もなきように。問題ある状況であることは確かですから。


◆何が足りなくなったか

ウィルコムのやっている事を大まかに分類すると、以下の三つになります。

・PHS(音声)
・PHS(データ)
・XGP

XGPの当所の計画では、

これまで:
PHSからのお金→PHSの技術開発と設備投資

次世代:
PHSからのお金→XGPの技術開発と設備投資

技術開発と基地局の新型への交換は以前から絶えず行われていて、これを次世代対応基地局への交換にするので新規参入と比べて話が大きくならずに済む、という話でした。

ですから今回の話は以下の片方以上が起こった事になります、

・「PHSからのお金」が計画より少なくなった
・XGPに必要なお金が計画より大きくなった

確かに、みんなが以前に思っていたよりも、最近のPHSの調子は良くありません。少なくともXGPへの計画通りの移行に必要なお金が足りなくなっているということです。

XGPで一番よろしくない展開は、XGPの開発がうまく行かずに何も完成しないことでしたが、そうはならずに最初のハードルはクリアしています。既に東京都心では一応使える状態になっていて、デモにおける評判も、悪くはありません。

ただ「PHSからのお金」が予想以上に減ってしまったので、少なくともXGPのスタートをする最初の予算がそもそも足りなくなってしまったようです。もしXGPがどんどん儲かるものだったとしても、XGPをスタートしてしばらくしないとお金は入ってきません。

つまりウィルコムの説明的には「世代移行の谷間」に足を取られてしまったということになるのではと。


◆何を交渉しているか

そうなるとお金を追加で用意するか、計画を遅らせる必要が出てきます。

そこで、実質的に正式サービスインを遅らせ、それと同時にお金の交渉をすることになったようです。

まず、サービスインについてはこうなりました。

既にエリア整備されている東京都心で、おそらく既に用意できている端末で、無料で使ってもらって、
・現状でもちゃんと動いていること
ということと
・予算があれば基地局を増設してサービスエリアを広げられる
ことをアピールするのだと思われます。

実質的には正式サービスインとは呼べない状況です。大人の事情で正式サービスインとなっているようですが。

まずは三月末までは無料で利用でき、無料期間中に解約しても無料となっているので、料金設定には何の意味もありませんが、現在設定されているXGPの月額料金は(他の次世代などと比べ)目立って高くは無いものの目立って安くもありません。資金不足で交渉中な事情により、意欲的な料金設定はしなかった(できなかった)のでしょう。

お金については、引用したニュースの通りです。

本当は「XGPのための追加のお金」が欲しいところなのではないかと思います。ただ現在交渉中とされているのは、

一定期間、借入金などの債務の元本残高維持を要請し、それ以降については、債権者に対する債務の弁済スケジュールの変更を要請する予定となっている。

・まず最初に元本をそのまま借りたままにさせてください
・その後返すのを遅らせる交渉をする

返すのを遅らせることが出来れば、その分だけ資金の余裕ができます。予算を少し追加で用意できたのと似たことになります。

債務の免除や、株式化(デット・エクイティ・スワップ)を要請することは、「現時点で想定していない」(ウィルコム)という。

・元本を減らすお願いをするつもりはない

元本はそのままにして、遅れるものの返すのは変わりない(今のところの交渉の方針は)とのことです。PHSからのお金では根本的に返せないのなら(XGPからのお金が出てくるのはしばらくあとになりますし)、元本を減らす交渉をする必要があるはずですが、とりあえずはそういう話ではなさそうです。

・現行世代PHSが予想以上に小さくなってしまった
・次世代に乗り換えて先に進む必要がある
・しかし計画通りに次世代を整備するお金が足りない
・返済を遅らせてもらって、XGP立ち上げに必要な予算を確保して、谷間を超えたい

ここを乗り切ってXGPに進むことが正しい出口だとウィルコムが考えていて、そのための交渉であるのならば、上記の通りであろう思います。


◆PHS自体は続くはず

この交渉があまりうまくまとまらなかったとしても、(少なくともすぐには)PHS自体が無くなる事はないはずです。

・小さくなってしまったPHSにあわせて小さくなる
・PHSは続けられる
・CORE 3Gも続くはず

XGP自体が根本的によろしくない状況なら、PHS+MVNOないしはPHS(音声特化)に撤退することになるかもしれません。しかし、少なくとも当面はそれ以上の撤収はないでしょう。PHSそのものはまだ儲けられるからです。その先をどうするんだ、ということにはなりますが。


◆問題

XGPの予算が足りないというのはウィルコムの事情であって、お金を出す側(ないしは貸したままにする側)からすると出した方が得なのか損なのかということになります。

ウィルコムが無料デモをしてアピールしたいのは、

・基地局は開発済み
・端末も開発済み
・東京都心でもう既に動いていて、これを日本中に広げられる
・基地局の設置場所は既にある(PHS資産の再活用にもなる)
・PHSの設備更新と一緒に整備できる(PHS資産の再活用にもなる)

というところでしょう。

とりあえずこれまでのデモの結果は(少なくとも大きな)技術的な問題があるようには思えないものでした。技術的に問題がないのなら、問題はサービスインのコストの話になります。

端末は、面倒が多い音声端末が必要ではなく、データ端末で事足ります。どこかに頼んで量産して、それなりの値段に収まるなら当面はそれで何とかなります。データ端末はそうそう買い換えるものではありませんし。基地局側のコストについては解りようがないですが、○○をカバーするのに基地局はどれだけ必要で、費用はどれだけ必要です、みたいな話はできるでしょう。

一応ウィルコムはXGPをサービスインするために今回の話し合いをする事にした、と言っていますので、サービスインすれば儲かるはずなのでしょう。考え方によっては、随分思い切った方法でXGPの資金確保を試みている、とも言えます。

このあたりの土俵際の駆け引きは、他社の方がはるかに上手というか、他社ならそもそもこんな事にならなかったはずだろうとか思いますけど。

#ただ、実際に起こっていることはもっと複雑で別なことではないかという気も少しします


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コメント

金を出す方はウィルコムをバラすことになった場合、ウィルコムの資産やXGPの知財とか手に入るんでしょうか。

投稿: ハゲタカ | 2009/09/29 00:08

現状のままなら、ウイルコムの資産や知財は株主(カーライル,京セラ,KDDI)で分配ということになるのではないでしょうか。

※世界の流れとしては「LTEこそ本命、mWiMAX(含むXGP)はそれまでの繋ぎ(=レガシー)」ということになっているようで...いまさらXGPの知財やノウハウを手に入れても...

投稿: | 2009/10/09 20:05

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