501 エリクソンが北米のCDMA2000市場への侵攻を開始
エリクソン(LTEの重鎮)が、北米のCDMA2000市場を狙った活動を始めているようです。
◆スプリント、エリクソンに命脈を握られる
スプリント、通信網の管理をエリクソンに委託
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCXN6923.html
スプリントについては、しばらく前に結構ブログで話題にしました。というのも、北米のモバイルWiMAX推進派だったからです。
最初はモバイルWiMAXで大革命を起こす、のような随分と調子の良い事を言っていたのですが、だんだんトーンダウンして相次ぐ計画の延期と縮小、ついには撤退するのではないか(ないしは、外野から「撤退すべきだ」という声があがるようになり)とまで言われるようになり、最終的には他社と一緒にモバイルWiMAXの子会社を作って細々とやっているだけになっています。
つまり、最終的には実質的に撤退とも取れる状況(最初の大言壮語は見る影も無い)になっているのですが、これまでの経緯を踏まえると、北米のWiMAXにとってスプリントは重要な存在でした。
ここは、経営状態があまりよろしくありません。少なくとも北米の携帯電話会社では状況が最も思わしくないところです。また、CDMA2000を採用しているところです。
で、このニュース。
携帯電話サービス大手スプリント・ネクステル(NYSE:S)は9日、通信網の運営をスウェーデンの通信機器大手エリクソン(Nasdaq:ERIC)(ERIC-B.SK)に委託し、同社に向こう7年間で最大50億ドルを支払うことで合意したと明らかにした。スプリントは新製品と顧客のつなぎ止めに集中する狙いだ。
つまり、
・携帯電話網の運営をエリクソンに丸投げする(!)
・携帯電話の免許と設備の所有権はスプリントに残る(少なくとも今のところは)
・スプリントは新製品と顧客のつなぎ止めに集中する
・・・携帯電話会社とは何なのか、良くわからなくなってきました。
日本にもこういうことになる会社が出現しないことを願うばかりです。
また、スプリントはCDMA2000を採用しており、先に書いたように一度はCDMA2000+モバイルWiMAXを画策しました(結果としてはモバイルWiMAXは別会社で細々とやることになりました)、しかしエリクソンはGSM/W-CDMA/LTEの親玉で、モバイルWiMAXに対してはずっと批判を浴びせてきたところです。
エリクソンはCDMA2000の商売にも手を出すことになり、一方でスプリントはW-CDMA/LTE陣営の親分に事業の命脈を握られた状態になるということになります。
スプリントはお金が無いからこういうことをやっているので、当面は既存のインフラをお金を使わずに維持することになり、既存のCDMA2000網がしばらく維持されるはずですが、その後はエリクソンの流れでW-CDMA/LTE陣営への移行(CDMA2000+LTE)ということになりそうです。
(少なくとも北米の)CDMA2000+モバイルWiMAXはこれで事実上消滅かなと。
◆エリクソン、ノーテルからCDMA2000部門を買う
エリクソン、ノーテルCDMA部門獲得で北米市場での優位確保
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCYI9424.html
ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)スウェーデンの通信機器大手エリクソン(Nasdaq:ERIC)(ERIC-B.SK)は、破産手続きを進めるカナダの同業大手ノーテル・ネットワークス(NRTLQ)が実施した入札で、同社の最も収益性の高いCDMA部門を11億3000万ドルで落札した。ノーテルが25日明らかにした。
CDMA部門とは、日本流に言うなら「CDMA2000部門」のことです。
ノーテルは携帯電話主流での負けが込んでいたので、逆転を狙ってモバイルWiMAXに入れ込んでいた、ようですが、モバイルWiMAXも終わってしまったので撤退してLTEに乗り換えると言ってモバイルWiMAXブームにさらなる止めをさしたあたりで、ノーテル自体も終わってしまっていました。
逆転狙いでモバイルWiMAXに手を出しただけの負け組みの烏合の衆、というような表現はかつてクアルコムがモバイルWiMAX陣営の嫌がらせ(クアルコムが言うには)に怒っているときに使った表現でしたが、実はここもそうだったと言えるかもしれません。
来年1月にエリクソンの最高経営責任者(CEO)に就任するハンス・ヴェストベリ最高財務責任者(CFO)は「われわれの目標は北米市場で通信機器とサービスの供給元として最大手になることだ」とコメントしている。
エリクソンはどういう会社かというと、「携帯電話基地局屋さん」とでも言うところです。
次世代技術戦争では勝利陣営となったエリクソンですが、世界市場では中国勢の安売り攻勢を受けています。原因は各種の「標準化」が進み、新興国の企業の追い上げが容易になったことです。日本の家電メーカーが苦しんでいるのと同じ構図が、携帯電話の基地局でも発生しています。
エリクソンはGSM/W-CDMA/LTEの市場に注力してきましたが、CDMA2000陣営が勢力を持っている北米市場への進出を画策しているようです。目標は記事によると、
「われわれの目標は北米市場で通信機器とサービスの供給元として最大手になることだ」
なお、CDMA2000というと、世界標準としてようやく君臨を始めたW-CDMAに押されて将来はあまりよろしくないということになっています。ですから「これから縮小する市場ですよね?」というあたりはどうしても話題になります。
アナリストの間では、CDMA向け機器の売り上げがどの程度のペースで縮小していくかについて意見が割れている。高い収益性を10年以上保つとの見方もある一方で、ベライゾン・ワイヤレスや他の携帯電話サービス事業者がLTEの導入を急いでいるため、CDMAの減少ペースはもっと速いとの見方もある。
意見が割れているそうです。それぞれの意見は、
・高い収益性を10年以上保つ(まだまだ儲かる)
・LTEに早期に巻き取られる
「高い収益性を10年以上保つ」というのは、これからも当面はCDMA2000陣営によって第三世代は(あるいはLTEと平行して)利用され続けるだろうという意見です。考えてみれば、中国では「これから」CDMA2000の基地局網を中国全土に整備するところもあります。
後者は、CDMA2000陣営はCDMA2000+LTEの状態を経て、早期にLTEへの一本化を行うのではないかという意見ということになります。
ちなみに、CDMA2000陣営はCDMA2000+LTEに移行するのであって、CDMA2000を放棄してW-CDMA/LTEに移行するわけではないという点にはご注意ください。W-CDMAとセットでなくても導入できます。
つまりのところ、LTEへの一本化がどのような速度で進むか、が問題になっていることになります。
ただ考えてみるとわかりますが、エリクソンはそもそもLTEの主役です。早期に「LTEだけ」になってしまっても、LTEの基地局網がエリクソンの手の中にあれば別に問題が無いのかもしれません。実はCDMA2000の先が長くないことなど最初から前提で、北米のCDMA2000陣営を手中に収め、CDMA2000陣営がLTEへ移行するノウハウを蓄積し、将来のLTE化した北米を制圧するつもりなのかもしれません。
なお、エリクソンはベライゾンのLTE導入計画でも名を連ねています。
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コメント
韓国 WiBroくんはめでたく電話に変身したようですね。
http://kiyonari.japazine.com/technology/post-1041.html
UQと違いSIMカード認証のようで・・・
こんなノリでXGPも電話になる日が来るのかな?
投稿: . | 2009/08/05 12:57
中国のチャイナユニコムが5ミリオン台の“WCDMA iPhones”を仕入れるそうです・・・。
金があんのか、それともソフトバンクより有利な交渉ができたのか知れませんが、強気ですねえ。
http://www.unwiredview.com/2009/08/13/5-million-iphones-bought-by-china-unicom-sales-to-debut-in-september/
投稿: . | 2009/08/15 20:11
エリクソン(とかノキア)が先進国をインフラして
ZTE(ほか中国勢)が途上国をインフラするのかしら
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Interview/20090806/335262/
投稿: . | 2009/08/17 21:23