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499 前置き:フェムトセルの復習

フェムトセルのニュースについて少し書きたいと思いますが、その前に、復習としてひとつ記事を書きます。


◆「フェムト」

フェムトセルの「フェムト」とは、マイクロ(10の-6乗)とかミリ(10の-3乗)とかピコ(10の-12乗)のような「小さい単位につけるもの」のことで、フェムトは単位としては10の-15乗を意味します。

マイクロセルが「基地局のセルが非常に小さい」という比喩の意味で使われると同じように、マイクロセルよりもさらに狭い範囲(ピンポイントに近い)をカバーする基地局のことを「ピコセル」と呼ぶことがありました。

ピコセルよりもさらに小さい範囲をカバーする基地局の概念だったので、フェムトセルには「フェムト」セルという名前がついています。

通常の携帯電話の基地局が、鉄塔やビルの上に大きなアンテナを設置し、大きな装置を設置し、しっかりした専用回線を引いて動かすのに対し、フェムトセルは、

・普通の回線:一般人が使う民生用のネット接続回線を使う
・簡易な装置:安価で小さい装置が基地局と同じようなことをする
・狭いカバー範囲:基地局の周辺だけをカバーする

ピコセルが普通の基地局の流れで小さくしたのに対し、フェムトセルは「発想の転換」がなされていました。

フェムトセルで革命がおきる、という話では、

・「基地局」が安価に大量生産される
・そんな基地局があちこちにそれこそ大量に配置される
・携帯電話会社が設置する重厚長大な大形基地局が、一般人が設置する小型基地局の海によって取って代わられる

こうやって書くと、なぜ素敵な話として歓迎されたかはわかりやすいと思います。

新しいものはすばらしいと思う人や、一般消費者の小型基地局が大きな基地局に取って代わるというところにロマンを感じた人や、金のにおいがするから煽ってどんどん期待を膨らませてぼろ儲け、とかで話題になったのではないかなと思います。

ただしこの話、かつての「みんなが設置した無線LANの海が都市を多いつくし、携帯電話での通信なんて時代遅れになる」という、結局実現しなかった未来ともどこか似ていました。


◆フェムトセルの難点

最初の調子の良い話では、今頃はとっくに世界中フェムトセルだらけになっているはずでした。ですが、そんなことにはなっていません。

フェムトセルにはいくつかの難点がありました。

まず通常の基地局とのハンドオーバーが難しいいう問題があります。ハンドオーバーは基地局から基地局に通信を引き継ぐわけですから、基地局同士でその情報のやり取りをしなければなりません。しかしフェムトセルは「簡易」であるためその情報のやり取りをきちんと行うのが難しい(面倒)という問題があります。

また、ハンドオーバーさせて良いのか?誰がどのようにフェムトセルを利用するのを許すべきなのか、ハンドオーバーさせたときの料金設定はどうなるんだ、というような問題もあります。こちらは技術的な問題だけではないですが。

干渉の問題もあります。携帯電話の基地局は互いに干渉したり圏外を生じたりしないようにきわめて計画的に配置されていますが、フェムトセルの基地局は「みんなが配置する」わけですから計画的に配置されません。

フェムトセルの基地局が出す電波も結局は「携帯電話基地局の電波」ですから、通常の基地局の電波と干渉したり、フェムトセルの基地局同士が干渉したりする可能性が生じます。干渉すると、圏外になってしまったり大きな性能低下を起こしたりします。

しかも干渉で問題が生じても、通常の基地局と同じように管理されていませんから、基地局を調整したりして対処することが難しく、場合によっては意図的にフェムトセル基地局が改造(出力増強など)される可能性もありました。

つまりそもそも、基地局を自由に配置することが困難な技術を用いているのに、自由に配置される基地局を作ろうとしたので問題が起こっていました。

◆干渉問題

フェムトセルで革命が起こります、という一部の主張は、上記の「干渉の問題」を無視しての未来予想図だったのではないかと思います。

基地局をあちこちに山ほど配置すれば、それで面カバーできるのではないかとか、通信容量をぐっとパワーアップできるのではないか、という予想は、携帯電話の基地局は気をつかって配置しないとちゃんと動かない、電波が届かなくて圏外、と、電波が干渉して圏外、をきちんと計画して調整しないとなりたたない、という状況を無視しています。

じゃあ、干渉しないように技術開発すれば良いのでは?

実際、こういう干渉の問題を解決すべく開発されている技術もあります。例えばPHSやXGPがそうです。ですから、PHSやXGPなら「山ほど配置作戦」はまだ実現できるかもしれません。

しかし、通常の技術を「後付け」で干渉しないように改良するのは困難で、その上フェムトセルともなると、既存の方式をそのままに安価な基地局で何とかしようとするわけですから、容易な事ではありません。

実のところ干渉対策されているPHSやXGPでも無計画に基地局を配置すると性能が十分に出ないので(干渉しなくても性能が出なければ設置する意味が無い)、基地局の配置場所は考えて決められています。

というわけで、結局のところ

・一般人が設置する小型基地局の海によって取って代わられる

は、なかなか難しいのではないかと思えます。

上記のようなフェムトセルのことを「容量増加型のフェムトセル」「置き換わり型のフェムトセル」とでも呼んでおきます。


◆消極的なフェムトセル

じゃあ、フェムトセルはまるで使い物にならないかというとそうでもありません。

干渉が問題にならない状況での利用すればこれまでに挙げた難点はかなり解消されます。

例えば、「圏外の場所」「圏外に近い場所」に簡易基地局を設置するような方法や限定的な狭い場所のカバーしかしないなら、干渉の問題は起こりにくくなります。

・一般の携帯基地局の電波が届かない/弱い場所に設置する
・そういう場所を簡易的にカバーするための簡易基地局として用いる
・電波は最小限にしか飛ばさない

こういう消極的なフェムトセルの事を「圏外解消型のフェムトセル」「お手伝い型のフェムトセル」とでも呼んでおくことにします。

ただ、あまり劇的な効果も見込めなさそうです。

・エリアに本格的な穴が開いているのなら、通常の小型基地局の設置が望ましい
・フェムトセルの設置コストは、通常の基地局より安いものの、無視できるコストでは無い
・カバーできるエリアは狭くならざるを得ない

フェムトセルが大きな「革命」を起こすためには、現在の携帯基地局網を担っている「通常の基地局」に置き換わるものである必要があります。が、これはむしろ「通常の基地局が頑張ってもカバー出来なかった残りのスキマを埋める」や「容量面で少しお手伝いする」ものです。


(続く)

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