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497 スマートフォンを「ケータイ」の世界進出のチャンスにできるかも、という話

ちょっと考え方を変えてみると、「スマートフォン」を経由して、「ケータイ」の世界進出が可能かもしれない、ということを書いてみたいと思います


◆「低価格スマートフォン量産時代」の足音

世界市場向けに低価格にパソコンを量産しているメーカーが、今後次々にスマートフォン市場に押し寄せてくる、というニュースをまず。

パソコンメーカー、相次いでスマートフォン市場に参入(1)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCZV1051.html

パソコンメーカーは、販売の落ち込みを補うべく、従来は携帯電話機メーカーが支配していたスマートフォン(多機能携帯電話)市場に参入している。
今年はパソコン・携帯電話機の世界販売台数は減少する見通しだが、スマートフォンの出荷台数は依然として伸びている。調査会社オーバムによる今年の出荷予想は、スマートフォンが23%増の1億7190万台、一方の携帯電話は9.1%減。同ガートナーの予想によると、パソコン出荷台数は6%減の2億7400台。

景気減速の影響もあり、パソコンの市場はあまりよろしくないようです。

従来は、携帯電話とパソコンはまったく違った商品であるため、パソコンメーカーには携帯電話は参入しにくい市場でした。

しかし「スマートフォン」ならばパソコンメーカーにとって手が届きそうで、なおかつ現在どんどん市場が大きくなっています。「今が参入のチャンス」と見ているのではないかと思います。

コンピュータ機能を搭載するスマートフォンが増えている一方で、利益率ではスマートフォンは従来のパソコンの2倍を超えている。この意味ではパソコンメーカーによる同市場への参入は、理にかなっている。

多分、パソコンメーカが大挙して押し寄せた時点で、パソコンと同じくらいには儲からなくなるのではないかと思うのですが、今の所はパソコンを作るよりも実入りの良い商売だそうです。

エイサーで携帯情報端末(PDA)事業の副社長を務めるロジャー・ユエン氏は、パソコンとスマートフォンとは部品やソフトウエアが類似しているため、パソコンメーカーがスマートフォンを製造するのは比較的たやすい、と明かす。

個人的にはパソコンとどれくらい類似しているのだろうか、とは思いますが、従来の携帯電話よりはパソコンメーカーのノウハウが生かしやすい、つまり参入がたやすいようです。

この記事にも、いろんなメーカーの名前が出てきます。

米パソコン大手デル(Nasdaq:DELL)は17日、契約者数ベースで世界最大の携帯電話事業者、中国移動(チャイナモバイル)(0941.HK,NYSE:CHL)と提携してスマートフォン市場に初参入する、との計画を発表した。米ヒューレット・パッカード(HP)(NYSE:HPQ)、台湾の宏碁(エイサー、2353.TW)や華碩電脳(アスーステック)(2357.TW)などのパソコンメーカーは、デルに先立ちすでにスマートフォンを売り出している。

DELL、HP、Acer、ASUSの名前が挙げられています。

これまではスマートフォンはメインの市場から少し外れた場所にありましたが、これからは世界の巨大メーカーの本気攻撃を浴びることになりそうです。


◆予想のとおりになるのかどうか

こういう事になっている原因は、市場予想屋さんの予想がスマートフォン市場が大きくなると言っているためだと思われます。

・事実:これまではスマートフォンは限られた市場だった
・事実:現在、まだ小さい市場ながらも、スマートフォン市場は成長中
・予想:これからスマートフォン市場はめきめき成長する

ただ、この予想が本当に当たるのか?という疑問もあります。

日本でも、「一部」の事前予想では「2009年はスマートフォンが大きく成長する」事になっていて、これは「iPhoneのブーム感」をそのまま真っ直ぐに外延して予想を作ったのではないかのではないかと思われるものでした。ですが、ブームは続くとは限らず、醒めてしまうことも多いものです。

今回引用したニュースにもこうあります

パソコンメーカー、相次いでスマートフォン市場に参入(2)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCZV1052.html

パソコンの受託生産メーカー、アスーステックのジョニー・シー董事長によると、来年のスマートフォン目標出荷台数は100万台だという。同社は05年にスマートフォン市場に進出、先週にはナビ機能を搭載した2機種を発売した。

しかしこうした動きによる利益貢献に対し、少なくとも短期的には懐疑的な見方を示すアナリストもいる。大和証券のアナリスト、カルバン・ハン氏は、「粗利益率や収益性を引き上げるためには、収入の少なくとも10%をスマートフォンで稼ぐ必要があるが、パソコンメーカーが向こう1-2年以内にこれを実現することは難しい」と指摘する。当初の出荷量は小規模なものにとどまる公算が大きく、生産を増強するまでには時間がかかる、としている。


世界向けで「100万台」ですから、非現実的な数字ではないのですが、

・沢山売れるようにならないと、本業のパソコンの業績を改善するようなことにはならないですよ
・本当に沢山売れるようになるのかわからない

また、

出荷台数で世界第3位のパソコンメーカーであるエイサーは、今年2月にバルセロナで開催された見本市、モバイル・ワールド・コングレスで、スマートフォンの製品一覧を発売した。王振堂董事長は当時、向こう3年間以内にスマートフォン事業が収入の10%を生み出すようになるかもしれない、と語っていた。

「向こう3年間以内にスマートフォン事業が収入の10%」ですから、バンバン売れないとそういうことにはならないはずです。


◆目論見のとおりになるかはともかく

パソコンメーカーが「希望」するとおりに、パソコンメーカーが量産するスマートフォンがどんどん売れるようになるのかどうかはさておき、

「そこそこの性能のスマートフォンが安価に量産される流れである」

ではあるようです。大量生産したけれども、ちっとも売れずに困ることになるかもしれませんが、それでも生産はなされます。

なお、「そこそこの性能」としているのは、

「消費者は高性能で低価格の商品を望んでいるため、パソコンメーカーがスマートフォン市場で成功する機会はある。いずれはスマートフォンもパソコン同様に日用品化する。パソコンメーカーはコモディティ化した商品を得意としている」と述べた。

多分、通がうなるような品を少量生産するようなことはしないでしょう。

既存のスマートフォンメーカーは、せっかく贅沢してスマートフォンを買うのに、あんな安物を買うくらいなら普通のケータイの方がまし、だからこっちを買う、と思わせるようなものを作るようになるのではないかと思います。

ので、パソコンメーカーが大量生産するスマートフォンのことをひとまず「量産型スマートフォン」と呼んでおくことにします。


◆なんちゃってケータイ

日本以外では、少なくとも当面は、

・普通の世界の携帯電話の価格 < 量産型スマートフォンの価格

となるのではないかと思います。ですから、スマートフォンの高機能さ(と操作性の癖など)に値段の分の価値があると判断されるかどうかが問題になります。

しかし、日本では、

・世界量産型のスマートフォンの価格 < 日本の低価格ケータイの価格

ということになるのではないかと思われます。

「世界の携帯電話」は日本では受け入れられません。レベルの高い日本では商品として成立しないからです。ですから、以前からの

・世界の携帯電話の価格 < 日本の低価格ケータイの価格

は日本には影響はありませんでした。ガラパゴス議論を引き起こした以外は。

しかし、「世界量産型のスマートフォン」は日本でも商品価値をもつと思われるため、

・世界量産型のスマートフォンの価格 < 日本の低価格ケータイの価格

は「ケータイは高いし、安物スマートフォンで我慢するか」という現象を引き起こす可能性があります。

また「スマートフォンはケータイではない」のですから、「スマートフォンで別にいい」と思ったとたんに、日本的なケータイの尺度も通じなくなります。

さらに、「ケータイっぽいスマートフォン」を最初から計画して作らせることもできます。これを、以前書いた記事で「劣化ケータイとしてのスマートフォン」と呼びました。

これは「ケータイ」にとっては困った現象です。

実際、

日本固有のケータイ vs 世界から押し寄せて来るスマートフォン

はよくある対立図式です。ケータイとiPhoneのよく見かける議論もこれです。

◆スマートフォンは「ケータイ」にとって最大のチャンスかもしれない

ここで「ケータイ」とは本当のところ何のことを指すのか、一度考えてみましょう。

ケータイ化したスマートフォンが売れたとして、なぜ「ケータイ化スマートフォン」を買った人は「単なるスマートフォン」を買わずに「ケータイ化スマートフォン」を買ったのでしょう?

それは「ケータイを使いたかった」からです。

「ケータイ化スマートフォン」はハードウェア的にはケータイではないけれども、「ケータイのように」使うことができるから、「ケータイ化スマートフォン」です。

ハードウェアとしてはケータイではないので、ハードウェアだけ見れば「売れなかったので負け」です。

しかし、本来ケータイではないスマートフォン上で、いわば「エミュレーション」をしてまで(そしてスマートフォンとしての本性を犠牲にしてまで)、「ケータイ」として使いたいと思っている人がいたとしたら、そこまでして使いたいと思わせた「ケータイの勝利」とも言えます。

また「ケータイを使ったり持った時に得られている体験ができること」が「ケータイ」ならば、別にハードウェアを伴っている必然性はない、と思えてきます。

もちろん、「このケータイの色と形は何とすばらしい」という部分はエミュレーションできないわけで、もしかしたら「ケータイ」の価値は二つ(以上)に分けて考えないといけないのかもしれません。

で、ここから逆に考えます。

「ケータイ」とはハードウェアのことではなく、日本人が携帯電話機から受けている良いサービスのことを指す、と定義しなおします。

そして、「ケータイ」は日本で海外の携帯電話(ケータイではない携帯)がまったく売れなくなるほどに、ハイレベルなものです。

しかし海外ではいろんな事情で、日本の携帯電話は高すぎたりいろんな事情で現地になじむことができず、電話機が海を渡れていないので「ケータイ」体験を海外にうまく提供できていません。

そして「ケータイ化スマートフォン」はスマートフォンを用いて「ケータイ」を提供する試みとみなせます。

日本製の携帯電話は海外にありませんが、「スマートフォン」はこれから世界に広まります。考え方を変えると、日本に閉じ込められていた「ケータイ」を提供できるプラットフォームが世界に普及し、ケータイの良さを理解してもらえるチャンスである、とみなすこともできます。

・ハードウェア:台湾
・ソフトウェア:アメリカ

これを

・ハードウェア:台湾(裏方ご苦労)
・OS:アメリカ(裏方ご苦労)
・「ケータイ」:日本(商品価値の本体)

そうなると「ケータイ化スマートフォン」を経由してハードウェアとしての日本製携帯電話の価値も上がるかもしれません、よく出来た「専用設計ハードウェア」だからです。

もし、そういうことが可能なら、

普通の世界の携帯電話 < 量産型スマートフォン < ケータイ化スマートフォン < 本物のケータイ

とすることもできるかもしれません。

以上、面白いことを考えてみたよ、という話でした。

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コメント

世界で100万かぁ

ドコモが販売元(回線はMVNOで)になって
FOMA(英語版)を世界で売り出したら
各機種がそれぞれ達成できそうだな・・・

って思った

ていうか中国で売れれば大丈夫かと

投稿: 姫 | 2009/08/26 09:44

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