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511 イーモバイルが8月上旬にHSPA+(21Mbps)を開始すると発表

イーモバイルが、21Mbps(HSPA+)をサービスインすると発表した件について

#推敲せずに投稿(すみません)


◆2009年8月上旬にHSPA+(21Mbps)を開始

まずはニュースの引用をします。

イー・モバイル,21Mbpsの通信サービスでWiMAXに対抗
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090608/331526/

イー・モバイルは2009年6月8日,受信速度を最大21Mビット/秒に高速化したHSPA+(high speed packet access plus)方式のデータ通信サービスを8月上旬に開始すると発表した。早期に既存のサービス提供エリアの70%程度で利用できるように対応を進め,UQコミュニケーションズのWiMAXサービス(関連記事)に対抗する。
通信料金は1年間の継続利用を条件とした場合の二段階定額プランで月額580~5980円。

イーモバイルが、8月上旬に最高速度を21Mbpsに引き上げる予定だそうです。

前からこのブログを読んで頂いている方には「イーモバイルは『あれ』をするのですね」というだけ話だと思いますが、少し振り返ってみたりしたいと思います。

まず、この高速化は、次世代技術によるものではなく、現行世代(第3世代系)の技術をさらに発展(延命)させたものです。次世代技術(LTEやWiMAXやXGP)に対して、イーモバイルは当面は第三世代系の技術で対抗することにした、ということになります。

ドコモやAUは、現行世代の技術への追加投資よりも次世代(LTE)の早期展開を優先する予定ですから、上位二社とは違う選択肢を取っていることになります。


◆実効速度(実際に体感できる速度)の高速化は限定的

また(このブログをずっと読んでおられる方にはもはや常識だと思いますが)、

「21Mbpsと大幅に高速化する」という話になっていますが、実際にユーザが体感できる速度の向上は、さほどでは無いはずです。

またまた再度になりますが(そして随分と話を単純にしていますが)、
・3.6Mbps(3.5世代の基本速度:この時点で3.6Mbpsに近い速度は出ない)
・7.2Mbps(3.6Mbps×2:ただし実効速度はそんなに速くならない)
・14.4Mbps(3.6Mbps×4:さらに実効速度の向上効果は限定的になる)
・64QAM化(×1.5:ノイズに弱くなる代わりに一度に転送する速度を向上させる、電波状態がとても良い場合のみ高速化)

今回の高速化は「下の二つ」を使って「スペックを三倍にする」というものです。しかし、どちらの高速化についても、実際の効果は限定的ですねえ、という感じのものです。

ですから、利用者としては高速化にあまり期待するべきではないですし(「もう少し速くなるかも」くらいの期待が一番適切)、イーモバイルとしては「スペックは凄くなっているが実効速度はさして高速化していない」ことを悟られないようにする必要があると思われます。

特に「現状で速度があんまり出ていない」イーモバイル利用者は、あまり高速化は期待できないはずです。速度が出ない理由としては、

・ノイズが多くて速度が出ていない
・混雑が激しい

まず前者についてですが、新技術の景気の良い「高速化します」のニュースは、電波状態が良い場合には高速化するという話が基本なので、その前提が外れている場合はさほど高速化はしないと思った方が無難です。

後者については、混雑が解消しない限りは結局現在と似たような速度のままのはずです。十分な速度が出るのは、「空いている」場合だけですから。

よって、21Mbps化での高速化をはっきりと体感できる人は、現時点で「相当速度が出ている」場合に限られると思われます。


◆展開速度は比較的速いと思われる

よって、実際に速くなるかどうかという点については、世間の普通の人が「21Mbps」という数字から素直に受けるような印象を期待するべきではないと思います。

しかし、21Mbps対応のエリア拡大については、思ったより早く行われる事になると思います。記事にも、

早期に既存のサービス提供エリアの70%程度で利用できるように対応を進め

とあります。

なぜに早期のエリア拡大が可能かというと、今回の高速化は「基地局のハードウェアはそのまま」で「信号処理の方法」を変更しての高速化だからです。そして今時の携帯電話の基地局は信号処理をソフトウェア的に実現している事が多いので、基地局をアップデートするだけで対応できてしまう(ことが多い)ためです。

基地局が新しいものではない場合には、基地局のアップデートで対応できる範囲を超えてしまう場合も発生しますが(例えば、ソフトバンクの基地局には「古すぎる」「パワーアップできない」基地局が多い)、イーモバイルはサービスインしてから間もないため、結果的に新しい基地局が多い傾向があります。

ただ本当は、HSPA+の本当の性能を出そうとするなら、基地局配置や基地局のアナログ部分の性能まで、きちんと考慮しないと性能が出ない面もあるので、ただ単に「基地局がHSPA+の電波が飛ばせればよい」というものでもないのですが、

「21Mbpsに対応しました」

と、とりあえず名乗るだけのことなら、それ無理矢理じゃね?ということになっていても別に問題なかったりします。


◆他社への影響

記事にはWiMAXへの対抗策、とあります。

WiMAXは7月スタート(HSPA+開始よりも前)で、スペック上の最高速度も40Mbpsとなっているため、イーモバイルに数字上のリードを許す事はありません。しかし、エリア面ではイーモバイルにかなりのリードがありますから、確かにWiMAX対策にはなる事でしょう。

#WiMAXの40Mbpsも、体感速度とあまりにかけ離れた非現実的数字ですが

ただし、以前の記事で書いたように、イーモバイルが「HSPA+の第二段階」の「42Mbps化」を実現した場合には、イーモバイルが日本最速の座を取り返すことになります。実現するには、物理的な設備投資が必要になるMIMO化か、投資はほとんど必要ないものの、新帯域が必要になるマルチキャリア化が必要になります。

前者はお金がかかったりするのが面倒ですが、比較的早期(場合によっては2009年中)に42Mbps化が可能になります。後者(新帯域)については今すぐは無理ですが、1.5GHz帯や1.7GHz帯の割り当ての流れによっては実現します。ただし、新帯域の割り当てはイーモバイルにとってあまりに有利な結果を生むので、携帯他社が反対する可能性もあります。

#とりあえずソフトバンクは反対するのではないか、と思います。

また、XGPのサービスイン時のスペック上の最高速度は20Mbpsで、正式サービスインは秋になっていますから、スペック上の最高速度でも、サービスインの時期でも、XGPが一歩遅れをとる形になります。

ただし、XGPは現時点で既にWiMAXよりもスペック上の数値が劣る(スペック上は日本最速ではない)ことが前提に入っていますから、基本戦略は崩れないはずです。スペックよりも実効速度、速度より容量、という方向性ですから。しかし、影響を受けないというわけには行かないでしょう。

また、記事を書く予定で遅れている話題なのですが、AUが採用を表明した「マルチキャリアEV-DO Rev.A」ですが、結局「三本束ねの3.1×3の9.3Mbps」となるようなので、7.2Mbpsには勝てても14.4Mbpsや、ましてや21Mbpsには勝てないことになります。

よってAUが一時的にでも「第三世代最速」の座を奪還するのは難しい感じになりそうです。まあ、AUの戦略はそういうことは全く重要視していませんが。

ソフトバンクについては取り残され感で困っているのではないかと思います。ソフトバンクも早期LTE派ではなく、HSPA+を経由する派なのですが、イーモバイルと違い基地局が古かったり非力だったりするため、7.2Mbps化どころか3.5世代化そのものも不十分な状態です。できることなら21Mbps化はもっと後になって欲しかったはずです。

ドコモについては21Mbpsを採用する気が無いだけで、採用するとなると圧倒的速度でエリア展開がされ、性能面でもちゃんとHSPA+の性能を引き出す事をやってくれるはずです。

現状ではLTEの早期サービスイン優先で、21Mbps化はスルーする可能性のほうが高いと思いますが、ドコモが「やっぱりやります」と言った場合には、やはりドコモが世界最強のHSPA+網を作り上げる事になると思います。

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コメント

微妙に疑問

基地局は品質的に微妙でも一応動作モードとして
対応していれば名目だけでも「提供しています」
といえるのですが

端末は出てくるのでしょうか?
HSPA+よりもHSPA14.4Mの端末すら出てきていません

でてきたと思ったら
10.5M(7.2MをベースにHSPA+化)の端末だったりしないのでしょうか?

投稿: 姫 | 2009/06/11 14:02

今年2月に下り21.6M/上り5.7M製品が正式に発表されているのですが?
またオーストラリアのTelstraが本サービスを4月に開始しています

投稿: | 2009/06/11 23:16

クロサカタツヤ氏が最近さかんに基地局ベンダの暗躍?を口にされていますが日本への影響というのはいかがなものでしょうか。

投稿: . | 2009/06/27 11:07

掲載当日しか見られませんが

クロサカタツヤのケータイ産業解体新書
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20090701/199080/?P=1
通信はノキア、端末はインテル
iPhoneが累積で2000万台を突破する一方、ノキアは四半期だけで1億台以上の端末を販売している。

ノキアは、ノキア・シーメンス・ネットワークスという世界第2位の基地局ベンダーを連結子会社として有している。ベンダーがファイナンスを手当てしてインフラの高度化を進め、通信キャリアが有する端末やサービスの商流(あるいは財務基盤さえも)を根こそぎ奪っていく「ベンダーファイナンス」の手法は、まさしくお手の物である。

結論を急ぐべきではないのかもしれないが、これほど激しい競争環境を、日本企業が単独で生き残っていくことは、おそらく不可能だろう。だとしたら負ける戦いにリソースを投入するのではなく、生き残りの策を考える必要がある。

 少なくとも、日本の通信キャリアを柱にして護送船団方式で世界に出るか、海外ベンダーと組んで彼らのエコノミーの中に身を投じるか、あるいはアップルのような身のこなしを何とか習得するか、といった大きな方向性は、もう決まっていてしかるべきタイミングである。

投稿: . | 2009/07/02 06:29

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