536 LTEなのかHSPA+なのか / ドコモはベライゾンの大成功を願っているかもしれない
LTEとHSPA+について少し。
同じ話題を読む事になる人もいると思いますが、整理も兼ねて一度。
◆LTEの三大勢力
知らない間に世界の最先端地区になってしまった日本のWiMAXを除いて、世界的にはモバイルWiMAXは終了の流れになってきています。
モバイルWiMAXとLTEの話題が減る代わりに出てきたのが、LTEなのかHSPA+なのかという話題です。ただし、LTEもHSPA+も同一陣営の技術ですから、どちらが生き残るのか、というわかりやすい話題として表出しないのが難しいところです。
異論はあるところだと思いますが(他にいい案があったらコメントください)、携帯電話の界隈では、
・欧州のエリクソン
・北米のクアルコム
・日本のドコモ一家
携帯電話本流の技術開発においては上記の三大陣営があるということにします。
エリクソンとドコモはW-CDMA陣営で、クアルコムはCDMA技術の王にしてCDMA2000陣営主催でした。
次世代ではエリクソンとドコモがLTEを開発し、クアルコムがUMBを開発しましたが、クアルコムもUMBを諦めてLTE陣営に合流しています。
またクアルコムはW-CDMA陣営のライバルであるCDMA2000の主ではありつつ、「CDMA技術そのもの」の支配者でもあるためW-CDMAにも関与しています。
クアルコムは技術開発やチップの開発など裏方に徹しており、エリクソンは基地局で世界一で、ドコモは携帯電話会社だというところも違います。
◆次のメインの話題はLTEとHSPA+の「内輪もめ」
そして今回の話題。
早期のLTE化をすべきなのか、HSPA+を経由してからLTE化が本流なのかで、それぞれの意見が違っています。一応三つともに「LTE陣営」なのでLTEは必要ないとは言いませんが、本音としては「まずはHSPA+が次の本流であって欲しい」と思っているところもあるかもしれないということです。
ドコモは、3.5世代は「7.2Mbps化+上がりの高速化」で終わりにするつもりのようです。そして出来る限りのLTE早期サービスインをしたいと考えています。ただし、W-CDMAで世界の先頭を走りすぎて苦労したトラウマから、他国の様子を見ている状態です。
またドコモはHSPA+になると不利になるからこういう行動をしているのではありません。HSPA+化でもドコモが有利な状況にあるのですが、それでもLTEこそが正しい選択肢であると判断していると見られます。
次にエリクソンですが、最近記事にしているとおりに「HSPA+を絶賛売り込み中」の状態です。例えば、
HSPA+とLTEは並行して導入される――Ericsson、モバイルブロードバンドの動向を予測
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20090217/1023795/
記事ではHSPAが、21Mbps化→42Mbps化→84Mbps化を進める話が出てきています。前に説明をしたときには、20MHz幅で168Mbps化の話もある事を紹介しました。
#ただし「理論値」なのですが
オーストラリアのTelestraの場合、2010年に42Mbpsにアップグレードする計画なので、84Mbpsの実現は2011年以降になるでしょう。2010年~2011年にLTEが始まるころには、HSPAのピークレートはかなり進化しているはずです。また、2G技術のGSMも進化しています。今後もGSMと3G、そして4Gが並行して利用されるでしょう。
第3世代どころか「GSMもまだ頑張るよ」と言っている始末です。つまり、LTEを大プッシュする気は前提から無いということです。
もっともこういう行動を取るのには、HSDPAの基地局で大きな世界シェアを持っているために、既存顧客にアップグレードを売り込めるHSPA+のほうがありがたかったり、さらにはGSMの基地局の既存顧客も居るから、ということではないかと思います。
また、エリクソンはHSPA+の「理論上の最大速度」の話をしています。ドコモが「実効性能」を気にしてHSPA+を採用しないのと対照的です。
つまり、エリクソンは基地局屋なので基地局を売るのが仕事、ドコモは基地局を「買って」「使って」サービスをするのが仕事(しかも世界最高レベルの市場で)というのが両者の反応を分けていると思われます。
またクアルコムは、LTEもCDMAも最終的な電波利用効率はさほど変わりませんよ、と(まるでウィルコムのようなことを)言い出していたりします。世界がCDMA系に留まる限り、クアルコムの支配下に留まるからです。
・ドコモ:早期のLTE化を希望
・エリクソン:GSMやHSPAの進化版基地局で儲けてからLTEに移行
・クアルコム:CDMAの方が覇権を保てる
ただし、
・モバイルWiMAXはダメ技術で終わってる
というのは共通する認識ではないかと思われます。
◆ドコモが望む流れになるためには
実はドコモ以外に早期のLTE化を望んでいる勢力があります。
それはどこかというと「CDMA2000陣営の電話会社」です。CDMA2000を採用している電話会社には、HSPA+の採用が不可能なために、一気に次世代に移行してしまいたいと考えているところがあります。
例えばベライゾンがそうですし、AUもその方針です。
もっとも、HSPA+で話題になっているような高速化技術はCDMA2000陣営にも存在しており、一部はとっくに採用済みだったりもします。HSPAの21Mbps化で用いられる64QAM化は、AUのRev.Aでとっくに用いられているなど、第3世代での高速化は進んでいるのですが、ドコモと同じような事を考えてLTEへの移行が望ましいと考えているようです。
アメリカのベライゾンが2009年中にも、
・電波が良く飛ぶ700MHz帯
・フルスペックが出る20MHz幅
・ベライゾンはアメリカの勝ち組キャリア
・クアルコム(端末)、エリクソン(基地局)のサポート
でLTEを開始する予定で、これが世界へのLTEの本格お披露目になるはずです。
もし、ベライゾンのLTEが衝撃的デビューを果たした場合には、世界の流れは一気にLTEに傾くはずです。世界の考えがドコモの考えに近くなるわけです。
逆に次世代ってあんまり意味無いな、と思ってしまったらHSPA+モードになるかもしれません。
というわけでW-CDMAの世界最強電話会社のドコモは、なぜかCDMA2000世界最強のベライゾンのLTEでの成功を願っているという不思議なことになっているかもしれません。
もしくはベライゾンのサービスインがどんどん遅れてしまってドコモが世界初になってしまった場合、世界の注目が集まっているのに「5MHz幅@2GHz帯」でのサービスインをやってしまって、帯域が狭いのが原因の「それほどすごくない速度」を世界に見せてしまうと、HSPA+が本流になるのを後押ししてしまうかもしれません。
早期のLTE化を願っている方面は、ベライゾンの実測60Mbpsとか実測80Mbpsという話が現実のものになって世界が驚くよう願いましょう。
#そうなるとモバイルWiMAXも終わります
HSPA+が本流になって欲しいところや、LTE一色の世界は退屈だ(乱世が見たい)と思っている人は、「何か面倒な事が起こってしまう」ことを願いましょうか。
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