535 NokiaがSkypeをスマートフォンに「密接に統合」する予定
ノキアがSkypeを携帯電話と統合してしまうらしい、という話について。
◆電話会社・基地局・技術・電話機
前回の記事で「それぞれの組織の立ち位置」によって、同じLTEとの関係がそれぞれ違っているというような事を書きました。
前回の記事:LTEなのかHSPA+なのか / ドコモはベライゾンの大成功を願っているかもしれない
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2009/03/536-ltehspa-9d2.html
さて今回は、世界最大の携帯端末メーカの「ノキア」が、その立ち位置ゆえにやった事についての記事を書きます。
まずはその前に「ノキアが何をやったか」について説明をしてみたいと思います。
◆Nokiaが「スマートフォンにSkypeを密接に統合」
SkypeとNokiaが提携合意、スマートフォンにSkypeを密接に統合
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/02/18/22475.html
SkypeとNokiaは17日、NokiaのスマートフォンにSkypeを密接に統合することで合意したと発表した。Skype機能が組み込まれて出荷される最初のスマートフォンはNokia N97で、出荷時期は2009年第3四半期ごろとしている。
ニュースの要点は実は以上だけです。
ポイントはノキア自らが標準搭載するということと、「密接に統合」というところです。
通常、スマートフォンのようなものでSkypeを動かす場合、自前でインストールしなければならないだけではなく、スマートフォン本体の通話機能とは分断された形で利用を余儀なくされます。
ところがノキア、電話機が最初から備えている通常の通話機能とSkypeの通話機能を一体化すると言っております。
今回の提携ではSkypeが1つのアプリケーションとしてインストールされているのではなく、スマートフォンのOSの一部として深く統合されていることが大きな特徴だ。
この端末では、携帯のアドレス帳にSkypeのプレゼンス機能が組み込まれ、アドレス帳を見ることによって、連絡先がオンラインかどうか確認でき、そこからインスタントメッセージを送信できる。さらに、Wi-Fiや3Gネットワークを使い、Skype同士の無料音声通話、Skypeから世界各地の固定電話や携帯電話への低料金通話が行える。
つまり、ノキアのスマートフォンでは「通常の携帯電話の通話機能」と「Skypeの通話機能」が区別されずに使えるような状況に向かうという事です。
ユーザにとっては便利になるわけですが、これはちょっといろいろな問題になりえます。
#実は、昔にこういう問題が発生しうるというネタを書いたことがありました
◆Skypeは電話会社にはあまりありがたくない面がある
Skypeでの通話は携帯電話会社にはあまりありがたく無い側面があります。まず、音声の料金体系とデータ通信の料金体系を区別しているのに、その境界を踏み倒されてしまいます。
また、本来の音声通話は効率よく(低ビットレート)で音声通話ができるように工夫されていますが、Skypeはそんな事お構いなしに帯域を使います。また、間違ってテレビ電話が流行ってしまったりすると鬼トラフィックの発生源になります。
つまり、電話会社からすると課金体系の秩序を壊したり、無駄なトラフィックを発生させうる厄介モノだということです。
おまけに、音声通話を音声通話として制御する権利を携帯電話会社から奪い、土管屋に格下げをすることでもあります。
長期的には「この流れ」は無視できないものになるかもしれないにせよ、とりあえず携帯電話会社にとってはありがたくない現象であるには違いありません。
元のニュースでは「携帯電話会社の得にもなるんですよ」と言っていますが、
同社では、Skypeを利用しやすくする契約を携帯電話事業者と結ぶことによって、ARPUの増加や音声通話時間の増加が見込めると主張しており、携帯電話事業者のHutchison 3との提携でそのことは実証されているとしている。
消費者が喜ぶ事をすることによって全体の需要が増えるから、双方が儲かるんですよと言っているわけですが、実際には携帯電話会社にとって良い話ではないように思えます。もし携帯電話会社が折れるとしたら、時代の流れだから仕方ない、という感じではないかと。
◆ノキアだから
日本でこういうものが発売されると、スマートフォン向けにパケット定額を提供しただけのはずが、気が付いたら音声通話(の一部)も定額にしたのと同じになってしまうわけで、電話会社は困る事になるはずです。
日本でこういうスマートフォンが出てくることがあるとすれば、どこかのキャリアが思い切った決断をして、他社には出来ない(他社が嫌がる)ことで勝負しようと思った場合だけでしょう。
前回の記事でLTEとHSPA+に関する立場の違いが、それぞれが「どういう商売をやっているか」に関係しているのではないかという事を書きました。例えば、エリクソンは基地局を売りたいからああいう立場を取っているのではないかと。
同じように、スマートフォンにSkypeを統合するというようなことをノキアが進めるのは、ノキアが「端末メーカ」だからです。極論すれば端末が売れればよいのであって、携帯電話会社が多少困る事はノキアには関係ないからです。
また、Skypeの搭載は音声通話を音声通話として握る権利を、電話網から端末内部に移動させようとする企みであるとも言えます。電話網とは携帯電話会社の支配領域で、端末といえばノキアの支配領域。
携帯電話会社にとってケータイとは携帯電話網のことであって端末は手段、ノキアとしてはケータイとは電話機の事で携帯電話網は手段にしたい、と。
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コメント
SBMでジョブ電3Gがやらかすと即死ですが・・・
SBM面白プランは他社通話へのアクセスチャージなどにも支えられているはずです。それがふっとびますので。
投稿: | 2009/03/03 12:55
私もこの話には注意を引かれていたのですが ケータイにスカイプが有機的に統合されたものが一般的なものになったとして そのときに移動体通信業界がどのようになっているのかが想像できないのですよね......思考が停止してしまってw
ただの土管屋になってしまうのか......?はてさて?ってかんじで。
ただ 支障が出るくらい回線が逼迫するのだけは(するでしょうが)勘弁ですねー。
投稿: sy | 2009/03/05 01:57