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532 AUが「LTEまでは新技術を投入しない」の理由

AUがLTE開始まではRev.Aのままで行くと発言して一部で不評らしい件について、実はそう思うようなことでもないぞという事を書いてみたいと思います。

一度良い方向に誤解を解きますが、結局はAUは難しい事になっているという話になります。


◆LTEまではRev.Aでいく、Rev.Bは導入しない(新技術は投入しません)

AUのボスが、LTE開始までは現状のままのRev.Aでサービスを続けますと言っていますよという話があります、それについて一部で不評だったりする件について少し書いてみたいと思います。

まずは引用です。

[前編]3.9GまではRev.Aでいく,Rev.Bは導入しない
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Interview/20090204/324198/

以下が問題となっている直接の部分です。ちょっと短いですが、まずはこの部分だけ。

3.9Gの導入まではEV-DO Rev.Aでいくのか。Rev.Bは導入しないのか。

そうなる。Rev.Bは導入しない。

このニュースはソースに使っただけで、どうもAUは以前からRev.Bには消極的な感じです。

ネットではなんとなくAUに不満を言っておけば問題は無いみたいな空気もあるので、「他社に遅れをとっているAUが怠けていてけしからん」みたいなリアクションを生んでいるような気がします。

ただ、Rev.Bを採用しないのはしょうがない気もします。何故そのように思えるかをちょっと説明してみます。

まず基本として、AUはCDMA2000陣営で、携帯他社はW-CDMA陣営です。基本的に両方ともにCDMAなので似たところが多いのですが、利用する帯域幅が違います。

・CDMA2000:1.25MHz幅×2(下り:基地局→端末、上り:端末→基地局)
・W-CDMA:5MHz幅×2(下り:基地局→端末、上り:端末→基地局)

AUの方が「通信あたりで利用している帯域が細い」ので、スペック上の最高速度が劣る傾向があります。

次に世代の整理をしてみましょう、

まず素の第3世代
・CDMA2000 1x
・W-CDMA

次にいわゆる3.5世代
・EV-DO(WIN) : 2003年11月28日
・HSDPA(FOMA HIGH-SPEED) : 2006年8月31日(3.6Mbps)

通信方法を変えてデータ通信の高速化を図った(そして混雑に弱くなった)のが3.5世代での高速化でした。3.5世代的な方法を考えたのもクアルコムなので、EV-DOが先に開発されており、この流れの速い業界で年単位の差がついてしまっていました。

この圧倒的な技術的先行こそAUの黄金時代をもたらした原動力でもありました。

今、世界ではLTEなのか第3世代の進化版なのかという話題がありますが、第3世代の進化版というのはつまり3.5世代にさらに細工して高速化をしようという流れです。

進化の方法にはいろいろなものがありますが、今回話題にするものをいくつか抜き出すと、

・上り通信も同様の方式を採用して高速化
・変調方式を64QAMにして高速化(「スペック上」は1.5倍)
・MIMOの採用
・帯域を複数束ねて高速化

ちなみに、W-CDMA陣営にとってはこれらの技術は「これからの話題」です。

・上り通信も同様の方式を採用して高速化
これはHSUPAとか言われているもので、ドコモやイーモバイルが導入しつつあるものです。

・変調方式を64QAMにして高速化(「スペック上」は1.5倍)
これ(+α)を実施をすると「21Mbps」に到達します。

・MIMOの採用
アンテナ2本でスペック上は速度2倍になる方法です。基地局工事が必要になるのが難点です。

・帯域を複数束ねて高速化
これは、DC-HSDPAと言われているものです。「21Mbps」とこれをセットで導入することで「42Mbps」を実現するというのがエリクソンの売り込んでいるものです。

おそらく、AUはサボっているという意見は、他陣営が新技術を投入しているのに何をやっているんだという意見だと思うのですが、CDMA2000陣営では実はこういうことになっています。

・上り通信も同様の方式を採用して高速化
EV-DO Rev.A で導入済み。

・変調方式を64QAMにして高速化(「スペック上」は1.5倍)
EV-DO Rev.A で導入済み。

・MIMOの採用
導入が検討されていたが、CDMA2000系では採用されないことになった。

・帯域を複数束ねて高速化
EV-DO Rev.B(開発済み)

ちょっといい加減に比喩することになりますが、AUは既に「HSPA+化」に相当するようなことを既にやってしまっているというわけです。

・EV-DO Rev.A : 2006年12月
・HSPA+ : 日本ではまだこれから


◆AUがRev.Bを採用しないと言っている理由

(くりかえしますが)いい加減な比喩ではあるのですが、AUはすでにHSPA+相当のところまで新技術の投入を済ませている事情があります。21Mbps化っぽいものを2006年12月に済ませているような感じだということです。

Rev.Bは帯域を束ねるだけではないのですが、大まかに言ってRev.BとはDC-HSDPAに相当するようなものです。

「帯域束ね」をするとスペック上の最高速度、および混雑が無い場合の実効速度は「束ね数」に応じてどんどんと上がってゆきます。ちなみにMIMO無しで20MHz幅の限界まで束ねると、

・W-CDMA系:21×4=84Mbps
・Rev.B:73.5Mbps

CDMA2000系の方が帯域を細切れにして使っている無駄がある分だけ遅いのですが、あまり変わらない速度になります。

このように高速化をするのですが、Rev.Bが導入されない方向なのは以下のような理由があると思われます。

まずコストアップにつながるためです。基地局はともかく(アップデートで大半済むかもしれません)、Rev.Bに対応した端末を用意したりと面倒な事になります。しかもCDMA2000陣営は拡大方向ではありませんので、量産効果もあまり見込めません。

次に、「帯域を多量に使って高速化する」方法では、混雑を考えると実効速度が上がらないという問題点があります。

どういうことかというと、
・これまでの高速化(利用効率):同じ帯域幅を利用して、出来るだけ速度を出す
・束ねての高速化(利用量):一人で何人分も同時に使うことで高速化する

建物で例えると

・これまでの高速化:高層ビルを建てて沢山の人が住めるようにした
・束ねての高速化:土地を何倍にも使えるようにした

土地が余っている状態なら「束ねて高速化」がスペック上の速度向上と同時に実効速度の向上にも繋がります。

しかし、土地が足りなくて困っている状態ならば、高層ビルを建てる方法しか有効性がありません。

で、AUにおける「高層ビルを建てる方向の高速化」については、Rev.Aでおおよそ終了しています。Rev.Bにすると帯域束ね以外でも高速化の効果はありますが、実際の改善効果は知れていると。

つまりAUは「お金がかかる割に『実効速度』への貢献が怪しいので、やめときます。それならLTEに予算を使います」と言っているということです。

ちなみにドコモもHSPA+について似たような評価をしていると見られ、HSPA+の本格導入をするくらいならばLTEにお金を使うべきです、という発言をしています。

ちなみにRev.Bを導入してどんどん束ねると、7.2Mbps超えどころかモバイルWiMAX超えの「スペック上の速度」をAUが手にする事も可能です。

AUには現時点では連続で使える20MHz幅はありませんが、仮に20MHz幅まで束ねた上でMIMOで2倍にすると、

73.5Mbps×2=147Mbps

という「ものすごい数字」が出てくる事になります。ただ、AUはそういうハッタリはやらないし、そもそもそういうハッタリ数値を必要としない商売のやり方に進んでいるから必要性もないのだと思われます。


◆じゃあLTEはいつ開始するのか

CDMA2000陣営の電話会社は第3世代の延命技術(データ系での高速化)に期待していないところが多く、データ通信の高速化についてはLTEへの早期移行をもくろんでいるところが多いように思われます。事情はAUと同じような感じではないかと思われます。

例えば、アメリカのベライゾンは2009年中にLTEの試験サービス開始という勢いです。

それではではAUはいつLTEをスタートさせるかのか、ということになりますが、これが難しい事になっています。

LTEをどの周波数帯で利用するかという問題がある。2GHz帯はPHSとの干渉帯域があるので5MHz幅しか連続で利用できない。10MHz幅を連続で利用できるのは2012年に800MHz帯の再編が終わったときになる。最終的な結論は出していないが,800MHz帯の活用が現在の基本的な考え方。そうすると2012年になってしまうが,800MHz帯は既存設備に併設するだけなので,事前に工事さえ実施しておけば比較的早期に提供できる。さらに全国で提供するのか,他の周波数帯で早く提供すべきかなどはこれから判断する。提供時期は明確にしていない。

総務省は今回,1.5GHz帯で3.9Gの免許を募集する。

1.5GHz帯では国際ローミングができない。事業者の立場からすると,これは非常に重要な問題。我々が800MHz帯の再編に約5000億円も投資しているのは国際的な周波数と合わせなければユーザーに迷惑がかかるから。同様に3.9Gの周波数帯も,800MHz帯と2GHz帯をメインにせざるを得ない。

まとめるとこういうことになります。

帯域の状況
・1.5GHz帯は日本固有の変な周波数なので、LTEに使いたくない。
・800MHz帯は2012年まで再編が終わらない(それまでは帯域が細切れのまま)
・2GHz帯はPHSとの干渉で封印されている5MHz幅があるので、15MHz幅しかない

世界共通の2GHz帯と800MHz帯をLTEのメインにしたい要望があるようです。これについては他社も似たようなことを考えているようで、ドコモもLTEは2GHz帯で始めたいようですし、SBMも1.5GHzでHSPA+をやってから2GHz帯でLTEをやるのが本命のようです。

AUは

・LTEのメインは再編後の800MHz帯(2012年)

という方針であるとしていますが迷っているようで、「他の周波数帯で早く提供すべきかなどはこれから判断する。提供時期は明確にしていない。」としています。

もし2012年の方針のままだとすると、

・2012年まで:2GHz帯でのRev.A化と800MHz帯の再編が進む
・2012年:800MHz帯でLTE開始

と、2012年まで「現状の技術のまま」になります。移行までの間に基地局の整備は続くはす(移行に必要なため)なので、だんだん混雑に強くなってゆくかもしれませんが、最高速度などはそのまま、となります。

また、LTEとCDMA2000は並行利用される事になるはずですから、既存の帯域(800MHz帯も2GHz帯も「既存の帯域」です)をLTE用に使う場合にはCDMA2000の利用者を一度「どこか別の帯域」に移動させて停波させてからになります。

Rev.Bを導入しないのは良いとしても、肝心のLTEをどうするのか難しいことになっています。


◆モバイルWiMAXはどうするのか?

LTEまでのつなぎでモバイルWiMAXを活用する可能性はあるのかという質問に対しては、

モバイルWiMAXと携帯電話では発展形態が違う。モバイルWiMAXは無線LANの発展系と言え,MACアドレスですべてを制御する。MACアドレスはメーカーが決めるもので,MACアドレスを持ったWiMAX端末であれば基本的に誰でも接続できる。
もちろんモバイルWiMAXも活用するが,auの携帯電話とは違う使い方をせざるを得ない。auの携帯電話とシームレスに連携させようとすれば何らかの処理を加えなければならず,コストアップの要因になる。

ちなみに、モバイルWiMAXも実質的に「KDDIのもの」なので「モバイルWiMAXは必要ない」とは言いにくい立場の人の発言ですが、

「auの携帯電話とは違う使い方をせざるを得ない」
「auの携帯電話とシームレスに連携させようとすれば何らかの処理を加えなければならず,コストアップの要因になる」

というわけで、auの「ケータイ」がモバイルWiMAX対応する可能性についてはどうも否定した感じの回答です。

とりあえずAUは

・次はLTE
・LTEまでは新技術の投入はなさげ
・ただしLTEはいつ、どの帯域で開始するのかわかりません。
・遅くとも2012年にはLTEがスタート

AUは、全国の3.5世代化はとっくに終えた状態でしたが、その先どうするのかで足踏みしています。気が付くとドコモも3.5世代化を終えてしまいました。まだ救いなのは残りの二社がずっと後方にいるということでしょうか。

第3世代の前半戦ではクアルコムの技術力でドコモから年単位で先行したAUでしたが、2012年にLTEとなると、今度はドコモに先行されることになるのかもしれません。このままだとAUは「永遠の2位」になりそうです。

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