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530 上海万博(来年5月)で中国の独自3.9世代技術が「試験サービスイン」、の予定

来年に5月に行われる上海万博で、中国の独自3.9世代(TD-LTE)がお披露目される、とのニュースが出ています。

第3世代の間違いではありません、なんと「次世代」のデモをすると言っているという話です。


◆2010年5月の上海万博でTD-LTEがお披露目される「予定」

念のために書いておきますと、TD-SCDMAではなく、中国版LTEとでも言うべき「TD-LTE」です。

少し前、世界にLTE風が吹き始めた頃から見かけるようになった単語で、話題自体は前からあったものです。

まずは引用を行って、それから書いてみたいと思います。

中国移動:上海万博で4G携帯電話の実験
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0304&f=stockname_0304_024.shtml

中国携帯電話業界最大手の中国移動有限公司[香港上場、中国移動(チャイナモバイル)、00941]の関係者によると、来年5月に開催する上海万博で同社が開発中の次世代携帯電話、4G水準TD-LTEネットの実験を行うもよう。実現すれば中国初の4G実験になる。

政府の工業及び情報化部部長の李毅中氏は、現在は3G普及に主力を注いでいるが、次世代携帯システムの研究は必要不可欠と述べている。

つまり、来年五月(2010年5月)の上海万博で中国移動(チャイナモバイル:中国のドコモみたいなところ)が、中国の独自次世代技術のTD-LTEの試験サービス?実験?を行うようです。

えー、と思った人も多いと思います。なにしろ独自第3世代のTD-SCDMAすら何だか怪しい状態だからです。記事にもそういう状況がでてしまっています(「3G『普及』に主力を注いでいるが」)。

念のために別の記事、

上海万博(世博会)、エリア内では国産4G方式通信も採用
http://www2.explore.ne.jp/news/article.php?id=11968&r=sh

中国ではいまTD-SCDMAの国産3G方式携帯電話システムの普及を目指しているが、上海万博(世博会)では、会場内で国産の4G方式となるTD-LTE方式も採用される。通信速度は、下りで100Mbps。万博エリア内では、100%信号がカバーされる見込みで、上りでも、20~50Mbpsの通信速度が確保される。

TD方式の普及には、2009年3月~4月にかけてこの規格に対応するネットブックパソコンが登場していき、多くのメーカーが感心を寄せているという。年末までには各メーカーから30種類のネットブックが出てくる見込み。

なんか意味不明記事になっていますが、順番に検討してみましょう。

「中国ではいまTD-SCDMAの国産3G方式携帯電話システムの普及を目指しているが」というのは先の記事と同じ、実のところ独自の第3世代もまだ怪しい状態が現状だということ。

またこちらでも「国産の4G方式となるTD-LTE方式」とあり、別の方式(例えばTD-HSDPA)のデモをTD-LTEと間違えてのニュースではなさそうな事が解ります。

デモだけならイメージモックだけ飾ってあっても「デモ」なのですが、こちらの記事では試験サービスに近い規模で提供されることがかかれています。

・エリア:万博会場を全て圏内にする
・下り速度:100Mbps
・上がり速度:20~50Mbps

万博会場、それも国策で行う万博の会場ですから狭い会場をカバーしておしまいということにはなりません、小さい都市全体で試験サービスインするくらいの規模にはなってしまいます。

ただしこの記事、後半部が変なことになっています。

「2009年3月~4月にかけてこの規格に対応するネットブックパソコンが登場していき(略)」とあるのは、モバイルWiMAXとTD-LTEが混同されていることがわかります。

近々にネットブックが出る(かもしれない)のは明らかにモバイルWiMAXのことですが、モバイルWiMAXは「中国の独自次世代技術」ではないわけで、少なくともネットブックと独自技術の記述の間には矛盾があります。


◆北京五輪のTD-SCDMAと同じ手法

両方ともの記事にありますが、中国が国策で開発した独自第3世代技術の「TD-SCDMA」がまだ怪しい状態で、そもそも第3世代のサービスインすらまだ行われていない状態です。

そういう状態で来年の5月に次世代技術の試験サービスインをすると言われても、大丈夫には思えなかったりします。

まず念のために説明をしておきますと、世界でLTEと呼ばれているものとこれは別です。次世代関係を列挙してみると、

W-CDMA陣営:
・第3世代:W-CDMA/HSPA
・次世代:LTE、LTE(TDD)

CDMA2000陣営:
・第3世代:CDMA2000/EV-DO
・次世代:UMBだったが開発中止してLTEに合流

モバイルWiMAX陣営
・第3世代:(なし)
・次世代:モバイルWiMAX

中国
・第3世代:TD-SCDMA/TD-HSDPA
・次世代:TD-LTE

面倒なのは、欧州(日欧)で開発されているLTEのTDD版と中国のTD-LTEは別物(のはず)だということです。もちろん、モバイルWiMAXとも別物(のはず)です。

怪しい話だな、と思った人が多いのではないかと思います、それは
・TD-LTEは最近話が出てきただけで、デモなどがされた情報は全く無い
・TD-SCDMAすらまだ未完成で、独自3.5世代も未完成
・残り期間は僅か一年とちょっとしかない

残り期間の問題は深刻です。デモンストレーションが出来る状態になっていても、そこから実際に試せる状態にするのに長い期間がかかるのが普通だからです。万博会場全体をカバーするのですから、開発中ですがデモする機械を持ってきました、みたいなことではダメなはずですから。

TD-SCDMAを北京五輪にぶつけてお披露目をしようとした作戦と似ていることから、「同じ人が同じ思考回路で言い出した」可能性も疑われます。もしそうなら、

向こうのえらい人の誰か(あくまでも妄想):

第一段階
・国の威信をかけたTD-SCDMAを何としてでも中国五輪で世界に自慢したい
・開発が遅れに遅れていたTD-SCDMAの試験サービスインのスケジュールが現状無視で設定される
・とりあえず北京五輪の前に試験サービスインしたことにした
・えらい人に「言われたとおりに試験サービスインしました」という成功の報告が行く
・実際問題としては、2009年になってもTD-SCDMAは全然ダメな状態だが、そういう現状は報告されない。

第二段階
・えらい人:北京五輪で自分の国家事業が成功した
・えらい人:強い決意で期限を設定すれば成功するんだ
・えらい人:じゃあ次は上海万博までに次世代を完成させよう
・「来年五月までに試験サービスインできるようにせよ、間に合わないなら間に合わせなさい」

まず思ったのは、無理な期限を設定して完成させてお披露目させる手法、すでに北京五輪のTD-SCDMAで失敗しているということです。まさかあの状態でTD-SCDMAが華々しく世界にデビューできたと思っている人は居ないはずです。

国策事業だから大人の事情で無理をして試験サービスインしているんだろうな、事情はお察しします、というのが普通の感想だったはず。

とりあえずあれから随分経った現時点(2009年3月)になってもTD-SCDMAがまともにサービスインしている話は聞きません。

普通、失敗したと思った場合には同じ手法は用いらないはずですが、また同じ手法が用いられている点に疑問を感じます。TD-SCDMAとは状況が違う可能性も当然考えなければなりませんが、同じく「張本人が現状を全くわかっていないから」という可能性も当然考慮されるべきだろうと。

ただ、来年の5月にはもしかすると

・(中国での)サービスインから1年経ったW-CDMAやCDMA2000がいよいよ勢いがついてきた
・TD-SCDMAが炎上していることは誰の目にも明らか

ということになっている可能性もあり、TD-LTEのデモをするどころの状況ではなくなっているかもしれません。


◆と思っていると・・

長くなってしまったので分割して次の記事にしますが、モトローラが中国のTD-LTEに協力するという気になる話が出てきているようです。続いてすぐに投稿しますのでしばらくお待ちください。

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