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529 モトローラが中国の独自次世代技術(TD-LTE)に協力

モバイルWiMAX開発の張本人であるモトローラが、中国の独自次世代技術「TD-LTE」の開発に協力するようだ、という件について。


前回の記事:
530 上海万博(来年5月)で中国の独自3.9世代技術が「試験サービスイン」、の予定
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2009/03/530-539-322c.html

の続きです。

◆モトローラが中国の国策技術開発に協力する?

モバイルWiMAXが(今のところ)うまく行かず、携帯端末販売でもうまく行かずで困っているはずのモトローラですが、なんと中国のTD-LTEに協力するようです。

モトローラ、TD-LTEへの取り組みを強化
http://mediacenter.motorola.com/content/Detail.aspx?ReleaseID=10811&NewsAreaID=2

北京発-2009年2月24日-米モトローラ(MYSE:MOTO)は本日、TD-LTE(時分割複信LTE)商用化の進捗状況を発表しました。モトローラは通信事業者と協力し、2009年中にTD-LTEの運用試験を実施します。

これは中国の通信事業者やTDD帯域を使用する世界中の通信事業者の将来のニーズを満たすTD-LTEに対するモトローラの取り組みを改めて示すものであり、また世界中でのパーソナルなモバイルメディア体験の提供を加速するものです。

モトローラと言えば、WiMAXの古参にしてWiMAXの張本人です。WiMAXがモバイルWiMAXになって変な騒ぎになる前から関わってきていました。

モトローラについては、モバイルWiMAX陣営がIEEE802.20委員会でトラブルを起こしていたときにクアルコムが(激怒して)こう評しています(以下、引用の引用になります)

過去の記事:
749 続き:モバイルWiMAXを嫌っている/避けている陣営
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/01/749_wimax_f209.html

一方、説明会に同席したクアルコム・ジャパン代表取締役社長の山田純氏は、WiMAXに賛意を示している韓国サムスン電子社、米モトローラ社などを「携帯電話におけるインフラビジネスに脱落した人々」と酷評。

モトローラはGSM御三家(という表現もどうかと思いますが)の一角でしたが、第三世代では世界の第一線級の存在ではなくなっているように思います。クアルコムはこういう状況を「脱落した」と言ったわけです。

この表現にあわせるならば「脱落組」のモトローラが、やはり「世界のインフラビジネスで競争する能力が無い」中国の独自技術開発と手を組んだようにも見えます。

◆「2009年中に試験運用」

モトローラによると「2009年中に運用試験をする」とあります。今現在すでに2009年ですから、残りは僅かしかありません。何をするか考えましょうか、というようなことでは間に合いませんから、既に存在するものをベースに話が進められるはずで、そうなると

・中国側:既になされているTD-LTEの検討
・モトローラ側:モバイルWiMAXおよびモバイルWiMAXの発展技術の研究成果

どちらが力があるかというと、開発済みのモバイルWiMAXかもしれません。中国の固有の事情があるとしたら、TD-SCDMAと一緒に利用することに配慮するようなこともあるかもしれません。またモバイルWiMAXは音声通話に使う事をあまり考えずに作られていますが、音声通話できるよう求められるかもしれません。

中国が単独で独自にTD-LTEを間に合わせるとなると本当なのかなと思えてきますが、もしモバイルWiMAXをベースにした技術で、ほとんどモバイルWiMAXと変わらないのなら、

・2009年中に試験運用
・2010年5月に試験サービスインに近い事をする

確かに間に合う話かもしれません。

単にモトローラがちょっと協力するだけのことで、あまり気にするような事も無いのかもしれませんが、考えようによっては、

・中国政府がモバイルWiMAXの技術をモトローラの技術開発部隊ごと買い取る
・負け試合になってきて困っているモバイルWiMAX陣営が中国に頭を下げた
・モトローラもモバイルWiMAXに見切りをつけた

というようなことも考えられます。

◆ただし

ただし、独自の第3世代のTD-SCDMAは今のところ先が心配される状態です。悪い方に流れが進むとW-CDMAとCDMA2000に本家中国大陸でこれからフルボッコにされることになります。

そういうことになればTD-LTEも無事ではすまないはずです。TD-SCDMAの大失敗が明らかになり、その上で世界でLTEのサービスインがはじまっていたとしたら、さすがどうかと思うはずです。

また中国政府からすると国策で開発している技術が、「米国」の技術であるモバイルWiMAXを借りて作ったのが明らかになるようなことは許されないはずです。中国は自国の力だけで、他の技術とは一線を画する違いを持った技術を開発したいと思っているはずです。

協力して利益も得るモトローラ自身はともかく、モバイルWiMAX陣営にとってTD-LTEは本来「直接の競合相手」となります。同じTDD帯域を使う技術ですから。TD-LTEが栄えることはすなわち、
・LTEとモバイルWiMAXが、FDDとTDDの違いで住み分ける
・先進国の携帯市場はLTEが、途上国ではモバイルWiMAX
というモバイルWiMAXの「残った未来」を潰すことにも繋がります。特に途上国市場では中国相手の競争は相当に厳しいことになるかもしれません。

また、モバイルWiMAX陣営ではLTEと合流すべきだという意見もあり、LTEのTDDモードをモバイルWiMAXということにしようという話もあります。そういう意見においては、全く同じ方法でLTEと合流してしまう可能性もあるTD-LTEは危険な存在です。LTEとTD-LTEが合流してしまったら、モバイルWiMAXがLTEと合流するのはほぼ不可能です。

つまり中国を手を組んだ時点で、モバイルWiMAXは取引条件として自らの存在自体を売らないといけないかもしれません。


あるいは実はこういうことかもしれません。

・モトローラがモバイルWiMAXに見切りをつけ、場合によってはTD-LTEに寝返ろうと考えている

もしそうなら、モバイルWiMAXは完全に終了モードになっているだけで、モトローラはモバイルWiMAXの残りかすから回収できるものは回収しようとしているだけかもしれません。

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コメント

>また、モバイルWiMAX陣営ではLTEと合流すべきだという意見もあり、LTEのTDDモードをモバイルWiMAXということにしようという話もあります。


そんな話があるのですね。
LTEのTDDモードが見られるのならそれもいいなー。もしそうなったら ノートPCなどにデフォルトでLTE(TDD)が搭載されるかもしれないのですよね?
そうなれば ケータイキャリアでTDDモードのLTEをケータイに採用するところも出てくる可能性が増えたりするのでしょうかね?
これはこれでおもしろいかも。

投稿: sy | 2009/03/11 16:36

WiMAXの利点って畢竟、クアルコムの庭でないこと、この一点だったのかも。

モトがクアルコムの庭に住むことを決めたら、auのお庭は金が掛かり、UQのお庭は荒れ放題になったりして

投稿: | 2009/03/11 22:59

WiMAX技術のバルクセールでしょうか

投稿: | 2009/03/12 09:58

裏・表LTEの合流というか・・・
↓記事ではこうですね。
http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMITbp000011032009

「3Gへの巨額投資で世界のメーカーを引きつけながら4Gへ向けて発言力を高め、最終的にLTE-FDDとLTE-TDDという4Gの2つの方式を融合させて世界の主流キャリアの座を占めようとする戦略が見え隠れしている。」

本当に、まんまと企んでいるのなら、WiMAXやXGPなどは粛清されて当然なのかもしれないですね。

投稿: TT | 2009/03/12 17:24

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