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523 LTEでは「オフライン」の概念が無いかもしれない

次世代通信技術では、「スペック上」の最高速度の話題ばかり話題になりがちですが、もしかしたらLTEは「まったく別の」で次世代感を持っているかもしれない、という話。


◆最高速度競争だけではない

次世代通信技術の話題となると、どうしても「スペック上」の最高速度の話題になりがちです。ADSL並みだとか光ファイバー並みだとかそういう感じの話題です。

おそらく世間では「ITというものは何でも爆発的にスペックが改善してゆくものだ」という思い込みがあって、CPU性能やメモリと同じように、モバイルでの通信速度も高速化してゆくのだという先入観があるのだと思います。

しかし、前回の記事にも書いたとおり、通信速度は物理法則による限界が存在するので劇的な向上は難しいのが現状です。おそらく次世代通信技術も、「同条件下」での実効速度は大きくは変らないものになる気がします。

では、互いに何も差がつかないだけの未来になるかというと、意外なところで違いが出てくるかもしれないという話を書いてみたいと思います。

まずは、ニュースの引用

インテルやNEC、クアルコムがWiMAXや3.9Gの現状と今後を語る
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2008/11/26/21650.html

次世代技術についていろんなところが語っていましたというようなニュースです。前半はインテルがモバイルWiMAXについていつものことを言っているだけなので割愛しまして、その次のNECによるLTEについての発言、その後のクアルコム日本による発言に注目してみる事にします。

で、今日の本題に入る前に、「前回の記事と同じ話題がここでも出ている」ことを書いてみたいと思います。長い寄り道になりますが、

まずはNECの発言、

周波数の利用率向上は、LTEや「IMT-Advanced」(4G)などを採用しても、「当面は、最大で10~12倍程度の効率向上しか見込めない」のが現状だという。そこで、面的または空間的な利用効率の向上に期待を寄せる。

「IMT-Advanced」というのは3.9世代の次の「本物の第4世代」となるはずのものとして計画されているものです。100MHz幅の帯域を用いて1Gbpsに到達するというような話です。このブログでも以前に少し話題にしたものです。

つまり、机上のプランやら研究中の技術が実用化されることまで想像しても「10~12倍程度の効率向上」が限度だろうという発言です。

なおこの「効率向上」にはMIMOによる速度インフレが進むことも勘定に入っているはずです。実環境ではMIMOはあまりうまく働かないとされることを考えると、将来技術を総投入しても帯域あたりの実効速度の向上は数倍程度しかないのかもしれません。

で、NECの人が旧来的な速度向上の方法に代わって期待しているのが、

面的または空間的な利用効率の向上に期待を寄せる

というわけで、言ってみれば「マイクロセル技術」が将来を担う技術であると言っています。ただしNECは

面的または空間的な利用効率の向上としては、具体的にフェムトセルが挙げられる。
1つの基地局に接続するユーザーが少なくなるため、周波数の利用効率が向上する。

としており、通常型の基地局を多数配置するのではなく、容量増加型のマイクロセルを想定しているようです。

ただし現状のLTEはマイクロセル運用されることを主に考えて作られているわけではありませんから、現状のままだとやっぱり干渉問題が起こってしまいますが。

クアルコム日本の人も同じ趣旨の発言をしています。

石田氏は、3GPP2やEV-DOに限った話ではなく無線通信技術全体に言えることとして、「新しい技術が出ると周波数利用効率が上がってきたが、そろそろ限界が見えてきた」との見解を示した。

こちらも「そろそろ限界」という発言です。そして、

「LTEとHSPA+の周波数利用効率は変わらない」とする。「MIMOには期待できる」としながらも、「4×4のMIMOで通信速度が4倍になるのはせいぜい2~3%の端末。また、端末にアンテナをたくさん入れられない」とした。

HSPA+(第3世代の進化バージョン)と次世代のLTEの周波数利用効率にはあまり差が無いというクアルコムの主張がここでも繰り返されています。

またMIMOについても「期待する」とは言ってはいるものの、実環境ではあまりうまく働かないし、携帯端末に多量のアンテナを搭載するのは無理があるし、としています。

そして、マイクロセル的な世界が次の速度向上の鍵であるとしています。

そこで提案したのが、カバー範囲が異なるマクロセル、マイクロセル、ピコセル、フェムトセルが混合し、干渉制御などを自動的に行う「ヘテロジニアスネットワーク」だ。通信方式ではなく、ネットワークのトポロジーにより効率を上げるという考え方であり、「既存の技術を打破できる」と自信を見せた。

クアルコムは従来型の通信技術でマイクロセル化をした場合の難点である「干渉
」について言及をしています。おそらく、技術開発ををやっているからの言及ではないかと思われます。

つまり、容量型フェムトセルやマイクロセルが今後の方向であるという話です。

次世代PHSもこの流れに沿っていますし、「第3世代携帯と無線LANを組み合わせる」後ろ向きにも思える方法もこの流れに沿っていると言えます。


◆LTEには「オフライン」の概念がないかもしれない

それでは本題。

実効速度については劇的な改善は難しいという話でした。劇的な改善が難しいということはつまり、利用者にとって「次世代通信技術じゃなきゃだめだ」というような圧倒的な速度差にはなりにくいということです。実効速度では。

ですが、差は何も無いのかというと、最高速度以外のところで利用者にとっての「差」が出ることになるはずです。

試験サービス中のモバイルWiMAXでは、移動に弱かったり圏外になりやすいという「他の技術との差」が話題になりつつあります。

つまり、次世代技術は最高速度で語られるだけではないということです。

LTEですが、実は最高速度面以外でも「第3世代系」との差がつくように作られているところがあります。それは別の意味で「はやい」ことです。

LTEでは、通信速度は最大で100Mbps、伝送遅延は5ミリ秒、接続遅延は100ミリ秒以内を目指している。さらに、時速500kmの移動でもハンドオーバーが可能になるとする。

「伝送遅延」というのを(不正確ながら)ごく簡単に説明すると、携帯端末がデータをリクエストするパケットを送ってから、その応答が戻ってくるまでの時間のことです。RTTとか応答時間?とか言われている数字のことでもあります。

この時間を大きく短縮することを意図して作られているということです。

ここで言う「5ミリ秒」とはネットワークでの通信のうち「LTEの部分」になので、ドコモがLTEをサービスインしたら実際のRTTが5msになる、という話ではないのですが、

「固定回線としか思えないような応答時間」

というのが目標になっているということです。モバイル接続はネトゲ向きではない、という話どころではなく、下手をすると品質の悪い固定回線よりも応答が速いなんてことになるかもしれないということ。

次に接続遅延、

「接続遅延」というのは回線接続が接続してない/休止中の状態から(アクティブな)接続状態に移行するまでの時間の事です。

これを0.1秒以内にするのを目標にしているということです。

例えば携帯電話でメールを取ったりウェブを見に行くときに、ネット接続が切れているときには「接続中」というような表示が出て待ち時間が発生しますが、いわばあれを0.1秒(100ms)以内にするのが目標になっているということです。

「0.1秒以下」ですから、もはや「接続中」などと表示する必要性自体が無いかもしれないということ。

LTEでは「接続の待ち時間」が体感的にほぼ無視できるレベルになっているかもしれず、その結果「ネットに接続する」という概念自体が利用上は消滅しているかもしれないということです。

つまり、通信の必要性が生じてから接続をしても、現時点の感覚から言うと「まるで最初から繋がっていたかのような」感じになるかもしれないということです。

また、「瞬時にアクティブな接続状態にできることを前提としたサービス」が作られた場合、他の技術では真似ができなくなってしまうこともあるかもしれません。

※ずっとアクティブな接続状態のままにしておけばよいと思うかもしれませんが、それだと電力も使いっぱなしになります

もしLTEと他の技術との実効速度での差が無かったとしても、「まるでずっと繋がっているかのよう」ならば、LTEは利用者にとって他とは全く違った通信技術になりえるという話でした。

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コメント

モバイルWiMAXには内蔵型のメリットがないかもしれない。

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0403/hot604.htm

>ノートPCの内蔵アダプタが主流になった際、2台のノートPCを所有するユーザーが2回線分契約しなければならないのでは負担が大きい

>アダプタは複数のノートPCで使い回せる外付けが主流になるというのも悲しい。

投稿: | 2009/04/06 12:49

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