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ウィルコムの「お金を増やしません」の件についての仮投稿

何だかよくわかってないところもあるのですが、とりあえず投稿します。

必要ならば後でまた別に投稿。

「何時になったら私は帰れるんですか」の後の土曜日なので、ゆるい記事をポストしてから昼間から寝ようと思っていたのですが、面倒な話題をまず先に処理しましょうか。


◆カーライルがウィルコムのお金を増やすのを諦めるとか

まず元のニュースを引用して、それからこれまでの経緯を整理して、という感じにしたいと思います。

〔話題株〕 米カーライル[CYL.UL]がウィルコムの増資計画を撤回、ドコモ<9437.T>の回線使用で投資抑制
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities/idJPnTK023319920090212

[東京 13日 ロイター] 米投資ファンドのカーライル[CYL.UL]が、投資先の通信会社ウィルコム(東京都港区)の増資計画を撤回するとともに、設備投資を抑制をするためNTTドコモ(9437.T: 株価, ニュース, レポート)のネットワーク回線を使用する戦略に転換することが分かった。関係筋が12日、ロイターに明らかにした。

ウィルコムは新たなスポンサーに新株を発行して資金を調達し、高速通信を可能にする次世代PHSの導入に振り向ける計画だった。昨年増資の財務アドバイザー(FA)にメリルリンチMER.Nを起用し、割当先となるファンドの選定などを行なっていた。しかし、割当先が見つからず、当面はドコモのネットワークを使うことで設備投資を大幅に抑制する方針に切り替えた。

元のニュースはこういうことを言っています。
・ウィルコムの増資計画はやめました
・ドコモの回線を借りる戦略にした

増資計画とは
・新たな出資者を見つけて「新株」を発行する
・メリルリンチに探してもらっていた

で、新たな出資者がみつからなかったので、増資計画は諦めますというニュース。

「新たな出資者」に「新株」、つまり新たにお金を出してもらう話だったのですが、引き受けるところが見つかりませんでしたということです。この話が始まったのはまだ世界が好景気だった2008年の8月の事で、その後の不景気襲来が計算に入っていなかったこともあると思われます。

また、新たな投資の話ですからカーライルが株を他所に渡す話ではないです。とりあえずこのニュースについては。


◆これまでの経緯

まず、これまでの経緯を整理してみます。

ウィルコムの株主がどうなっているかについて。

・カーライル 60%
・京セラ 30%
・KDDI 10%
また、KDDIは京セラの子会社。

会社の意思決定はまずは多数決なのでカーライルの意見が通ります。しかし、重要な事については33%以上の反対で決定を取り消しに出来るので、カーライルは過半数を持っているからといって、重要な事については京セラの意思に反することが出来ません。

つまり経営はカーライルが行うが、京セラが拒否権を持っているような状態です。

また、カーライル(やカーライル関係)が新たな出資をして66%よりも増えると、京セラの拒否権が無くなるので京セラが反対します。よってお金を新しく用意するには手間がかかる状態になっています。

ウィルコムは連続で赤字決算にしないとかの条件の代わりに、低い金利でお金を借りているとかで、借金でお金を調達するとそちらの条件でクリアが難しいことがあるんじゃないかと思われます。

お金を追加で用意するのがちょっと面倒な状況です。

次に、

2.5GHz帯の免許をもらう時点での次世代PHSの事業計画では、「自前の資金だけで済ませる」話になっていました。新たな出資者も新たな借金も無しで。

当然に免許取りの競争ですから、なるべく「良い内容」の計画書にするようにはしたはずです(全陣営が)。

ウィルコムについて総務省は「お金の面では大変良い計画である」(四候補のうち一番良い)という判定をしました。総務省はアイピーモバイルの失敗があったので、審査での再度の失敗が無いように注意もなされていました。

実際に「大変良い」のかどうかはともかく、審査なんてあてにならないとしても「とりあえずは大丈夫じゃないの」程度にはなっているのではないかと。

逆に、基地局や端末の開発が間に合うかどうかについては、サービスインの予定まで時間が無さ過ぎるので大丈夫なのかなと思っておりました。完成したものがどの程度のものかはともかく、なんとか開発は間に合ったようですが、こちらは今でもどうかなと思っています。

次に、

2008年8月にカーライルが「次世代PHSの計画を前倒しするため」に増資を計画している発表をします、今回「なし」になったのはこの計画です。増資は当初の事業計画には入っていません。

・公式:提出した計画より前倒しでエリア展開したい(そうしないと、競合他社に勝てない?)
・もしかすると:ウィルコムの儲けが予定より減っていて、追加でお金が必要になった
・もしかすると:予定以上にエリア整備に予算が必要になった(次世代PHSの基地局単価が高くなったなど)

免許の時とこの時の違いは、世界にLTE風が吹きはじめたことと、3.5世代でのPC定額が一般化したことでした。私は、急がないといけないと思ったのではないかと解釈しました。現に、モバイルWiMAXは試験サービスの予定をどんどん前倒ししています。

また、この時点では世界はまだ好景気でした。

次に、

今回の件ですが、2008年8月の件についてカーライルが諦めたという一部報道です。8月の件とつなぎ合わせると、

・前倒しのために新規でお金を集めるのを諦めた
・その代わりにドコモのMVNO

増資は「整備の前倒しのため」で、その代わりに「ドコモのMVNO」が出てきたわけですから、おそらく、

・総務省へ提出した計画でのエリア展開の速度では、競合他社に勝てない
・新たにお金を用意したいが、お金を用意する手段が限られる
・お金を出してくれるところが見つからなかった
・ドコモからMVNOすれば、エリア展開を早くしたのと似た効果が得られる

イーモバイルがドコモから回線を借りているのと似た状況ということになります。

懸念されているのは8月の話が、
・予想以上に手持ちのお金が減った or 予想以上にエリア整備にお金がかかりそう
・計画を遅らせてドコモからMVNOしよう
という解釈ではないかと。

また8月以降に、
・ウィルコムとは関係なく、景気減速でカーライル自身が現金に戻せるものは戻したい
という観測もあるのだと思いますが、今回の件については「新規の出資」を求めていたが、という話。またそもそも、カーライルは京セラが賛成しないことはできないという条件もつきます。


◆急がないといけない?

ここも八本槍に置き換わっていたのか、ということが最近でもあります。ウィルコムは現行PHSの八本槍への置き換えは続けているようです。個人的には、今基地局を更新する予算を使う代わりにもうちょっと待って一気に次世代にしてくれないかなあ、と思っていたりしました。一応、予定のとおりの予算はあるのかなあと。

モバイルWiMAXがエリア展開を急いでいますが、これと同じ事情がウィルコムにもあるはずです。また、モバイルWiMAXが前倒しすること自体が、次世代PHSへの前倒しのプレッシャーになるはずです。

お金が予定より足りないのなら補充すれば済むわけですが、時間の遅れは補充が出来ません。しかも、技術開発がスケジュール的に厳しい状態です。

よって、8月の話が予算の補充だったならまだ良いと思うのですが、時間の問題でそれが今回ドコモから回線を借りる話に置き換わったのなら、ちょっとよろしくないなと。

お金不足については、実際にサービスを動かせば解消するかもしれません。

10月までの試験サービス中に、次世代PHSの良い点を理解できるようなサービス(が出来る事)を示せば、あるいはそこまでしなくても「品質は謎でも、メガクラスの通信は提供可能」でであることを示せば、説得力が出るはずです。この程度は、現状完成している基地局が不完全なものだったとしても可能なはずです。

ではなくて、短期間でエリア拡大をせねばならないのだとすれば(例えばモバイルWiMAXと同じように)、春から全力でエリア展開せねばなりません。今の時点で準備が出来ている必要があります。が、そうではないのではないかなと。

お金の不足ならば、10月までの試験サービス(あるいは実質的にはもうちょっと先まで)でのアピールにがんばっていただきましょう。それでダメなら駄目と言う事で。

時間の問題ならば、ともかくも初期はドコモの回線を借りてエリア整備前倒しの代わりをせざるを得ないかもしれません。今の時点で前倒しの準備が出来ていないのならば。

イーモバイルも長い間エリア面で苦しんでいましたから、エリア展開が遅いと同じような事になるのかもしれません。イーモバイルの場合には競合は居ませんでしたが、今回は競合が沢山居ますから。

ドコモから回線を借りる場合には地方のエリア展開の遅れをカバーすると共に、W-OAM基地局を導入したのと同じ方法で高トラフィック地点から次世代PHSの基地局を配置することになるのではないかと思われます。そういうわけで「設備投資を抑えられる」ということではないかと。

もしドコモから借りられない場合には、現行PHSの8x(800kbps)との組み合わせで同じような事をするのではないかと思います。

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コメント

いつも楽しみにしています。
初コメントです。

次世代PHSは
今年3月まで1498局人口カバー率14%を約束しています。
1月末まで現在1局。
こうなることをWILLCOMは予想していたのでしょう。
次世代PHSは、
1)メタル回線から光ファイバーへ
2)アンテナは現行/次世代共用
3)XGPアンプ?設置。(初期段階では別々で将来共用)
4)調整やその他工事
これだけの工事を1月からしていたのでは、時間が足りない
そこで、1)と2)だけを先に工事しておいて、
XGPアンプをおいて接続するだけでいいように
現行PHSメンテをかねて前工事しているのですよ。
1月のWILLCOMの資料によると
12月末で候補地10650箇所(推測すると前工事完了基地局)
ここに3月まで数字合わせでXGPアンプをおいていくんでしょう。

ただ気になるのは、去年1局目を設置して
2局目がなかなかですね。
なんででしょう?
量産型基地局じゃなくて、テスト中?
それともバグ多発で、改修中?
お金がないから凍結?
UQは1局目ついてから順調に増えてるし。

XGP基地局は3月までの約束をクリアできるのでしょうか?

投稿: おーくてぃ | 2009/02/14 19:37

>次世代PHSは今年3月まで1498局人口カバー率14%を約束しています。

http://www.willcom-inc.com/ja/corporate/open/index.html
公式資料によると、今年度末(=来年3月)までに1,498 局だそうです。

投稿: | 2009/02/14 20:25

・試験サービス(エリア限定サービス)開始が2009年4月
・サービスインが2009年10月

2009年3月末は試験サービス開始前なので、超フルテンションの試験サービスになります(笑)。

#2010年3月末ですね

投稿: | 2009/02/14 20:39

>ただ気になるのは、去年1局目を設置して
2局目がなかなかですね。

皆さんが基地局数の根拠としているのは総務省のwebページにある無線局登録情報だと思うのですが、このページの情報は1月10日現在のものなんですよね。
おおむね二週間ごとに更新と書いてあるのですがいまだに更新されていません。何か事情があるのでしょうが次の更新がまちどおしいところではあります。
このときXGP局がどれくらい増えているかで進捗度合いがわかるんじゃないでしょうか。

投稿: | 2009/02/14 20:54

来年度末までに1498局 人口カバー率14%ですか......
増資しないと 私の生活圏がまともに圏内になるのは3年後以降かなぁ......?

投稿: sy | 2009/02/15 00:20

今年3月じゃなく来年ですか。
まだ余裕ですね。安心しました。

投稿: おーくてぃ | 2009/02/15 13:14

>皆さんが基地局数の根拠としているのは総務省のwebページにある無線局登録情報だと思うのですが

これは2/16に更新があると思います、せめてこの時点で10局はいってないと

投稿: | 2009/02/15 19:12

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