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542 ソフトバンクの携帯基地局数、ドコモにダブルスコアにされる・・が

携帯基地局数で、ソフトバンクの基地局数がドコモにダブルスコアされたらしい件を枕に。


◆ソフトバンクの携帯電話基地局数、ドコモにダブルスコアにされる

ソフトバンクの携帯基地局数がドコモにダブルスコアにされてしまっています。

現在の基地局数はこれくらい
ソフトバンク:3万7千くらい
ドコモ:7万6千くらい

37000×2=74000なので、しばらく前に「ドコモはソフトバンクをダブルスコアにした」ことになります。

また「基地局の質」でもドコモの基地局の性能とソフトバンクの基地局の性能は全く違うため、そのあたりも考慮に入れると、もしかすると実質的には一桁くらい違う感じかもしれません。

また、AUにも基地局数で逆転されそうになりつつあります。AUは数より質優先でエリア整備を行っているにもかかわらずです。

他社が原因と言えるような要素もあります、
・ドコモはどうかしているほどの基地局整備をしている
・AUはトラフィック増への対応や、2GHz帯の整備や、800MHz再編で基地局整備を進めている

AUについては現在すでにある基地局の改修を行いつつ(改修は数の増加に入らない)、その上で増えた数であることを考えた方が良いと思います。

新しく基地局を別の場所に作って(+1)既存の基地局を撤去する(-1)ような事はしませんし、改修や入れ替えで済むのならそちらの方がコストもかかりませんから、そちらが優先されてこの数字ということになります。

ドコモについては、意味が解らないレベルの基地局整備なので比較するのもどうかと思いますが、ドコモとの比較をはじめたのは孫社長自身なので、その辺は勘弁していただくとしましょう。


◆ただし、ソフトバンクも「質的改善」は続けている

AUについての補足で「改修は数の増加に入らない」ということを書きましたが、これはソフトバンク自体にも当てはまります。

よって、数が増えていないからといってソフトバンクが何もしていない(何も改善が無い)ということにはなりません。実際に意外なことから、ソフトバンクが質的改善を行っている事がわかることがありました。

少し前にソフトバンクの「無免許基地局事件」がありました。

ソフトバンクモバイル、無許可で携帯電波発信
http://www.asahi.com/national/update/0127/SEB200901270004.html

携帯電話会社のソフトバンクモバイル(SBM、本社・東京都港区)が、基地局の無線設備をNEC製からエリクソン製に変更する工事の際、監督官庁の関東総合通信局の許可を待たずに、基地局から電波を発信していたことが分かった。同通信局は電波法違反としてSBMから事情を聴いており、行政処分を検討する。

どういう事件かというと、
・ソフトバンク(の下請け)が役所への届け出の許可待ちを無視して基地局入れ替え工事を行っていた
・その結果、免許はまだなのに基地局が稼動していることがあった
・「電波法違反」となった

電波法では携帯電話会社が基地局を設置して電波を発信する場合、国の免許がいる。出力変更などで無線設備を交換する場合も許可が必要で、無許可で電波を発信した今回のケースは、基地局の運用停止や文書・口頭による指導など行政処分の対象になる。
朝日新聞が入手したエリクソン社の工程表によると、神奈川県のある基地局では、設備変更の許可は昨年10月8日なのに、2日前の6日には更新した無線設備で電波を発信していた。このほか、許可の1週間前から発信した基地局もあり、東京都や埼玉県など計31カ所の基地局が違法に運用されていた。

というわけで、「違法」となったわけです。

ソフトバンクは基地局の価格交渉でかなり無理をしているとか言われますが、それゆえに工事の現場に無理が行っている証拠かもしれません。

また、無茶な予算で無茶なスケジュールで工事をさせた結果手抜き工事が行われ、結果としてしばらくすると故障やらに悩まされるようになっているかもしれません。

(そういうことになった前例はいろんな分野で見られます)

またもう少し考えてみるとこの事件は

・ソフトバンクが免許手続き無視の工事をやっていた

という事がわかるだけではなく、

・NECの基地局をエリクソンの基地局に入れ替えていて、どうやら基地局の「出力変更」もなされている

ということも解ります。記事にはこうもあります、

SBMや関係者によると、同社は昨年から首都圏の基地局約1800カ所で、無線設備をNECからエリクソン社製に変更している。工事や関東総合通信局への提出書類作成はエリクソンが担当。その後、基地局の免許を取得しているSBMが、電気通信事業者として許可を申請した。

これはおそらくこういうことではないかと思われます。

・「4万6000基地局」を達成すべく、無計画に作った基地局、ないしはかなり以前からある旧式基地局を
・将来を見越した性能のあるエリクソン製の基地局に入れ替えている

こういうのが関東で少なくとも1800カ所で行われていたという事です。もしかしたら、エリクソンの基地局を一つ設置して、多数の「無駄な基地局」を撤去している状態かもしれません。

だとすると、基地局数は減るくらいで良いのかも知れません。

孫社長が数が多い方が勝ちみたいなことを言い出したので話が若干おかしくなっていますが、同じ性能の基地局ならば多くの場合には「数が沢山配置されている方がしっかりした基地局網」と言えるのは言えるのですが、質優先の戦略もありえます。

また、少ない基地局数で基地局網を作ったほうがコストもかからない傾向がありますから、維持費の掛からないインフラという意味では数は多くない方が良いわけです。


◆「4万6000発言」は重ねて愚かであった

最初に念のために書いておきますと、おそらく孫社長ご自身は「4万6000発言」については相当に反省をなされているのではないかと思います。今でもソフトバンクの基地局は5万を超えていると発言なさっていますが、これは「一度言ってしまったので引っ込みがつかない」ということではないかと思います。

#もしまだ反省をしていないのなら、相当にダメです

「4万6000発言」はいろいろな意味で失敗でした、まずこれまでに書いたのは

・物理的にほとんど達成できない目標だった
・役に立たない基地局に予算を浪費するという間違いにつながった
・ソフトバンクの評判に土をつけてしまった
・ドコモを眠りから覚ましてしまい、世界最強のインフラへとひた走る原因を作ってしまった

さらに加えて、

・基地局は数より質が優先だ、という戦略を取りにくくしてしまった
・予算を上手に使うには、質優先の戦略も有効手だった
・質優先の基地局は、HSPA+やLTEへのアップグレードへの配慮を考えても望ましい戦略だった


◆AUは基地局の数が少ない事をむしろ誇っていた

ここ数年で勢いがなくなったAUの発言ではなく、まだ元気があった頃の発言ではありますが、AUはドコモよりも携帯基地局の数が少ない事をむしろ誇りにしていました。

つまり、量より質優先で能率よくエリア整備してて賢いでしょう?と。

これでエリアに穴だらけなら叱られたと思いますが、第3世代では圏外になりにくいことで知られていたのがAUでした。

逆に言えばドコモの怒涛の基地局整備、基地局網の維持コストをどんどん増大させている点では問題だとも言えます。もし将来的に技術革新があり、現時点で最新型の基地局がお荷物になった場合には、ドコモは役に立たない金食い虫を多数抱えた状態になりえます。

実際、ソフトバンクの基地局入れ替えの原因には「3.5世代に対応できない基地局が多い」というものがあります。第3世代の事しか考えていない基地局が役に立たなくなって、交換を迫られているというわけです。

今ソフトバンクが新しく整備している基地局、例えば今回の記事のエリクソン製の基地局は、

・最低でもHSPA+化は見据えたもの
・LTE化も一応考えられている基地局

になっているのではないかと思われます。

孫社長が自分で言ってしまったが故の「基地局数の呪縛」はしばらく続くと思いますが、基地局の入れ替えが進んでいるのなら、安物乱立よりは良い傾向だとは思えます。

#質も数も両方とも足りない状態だとは思いますが

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コメント

非常に参考になりました。
またこのような記事をお願い致します。

投稿: yupa | 2009/06/29 19:19

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