540 アメリカのLTEは2009年中に開始予定(ただし「オバマ」次第)
なんと、アメリカのLTEは今年中(つまり2009年のうちに)に開始されることになりそうです。
◆ベライゾン「2009年中にLTEを試験サービスインします」
ベライゾンがLTEを2009年中にはじめると言っているようです。
最近読み始めた人のために、念のために補足。
「ベライゾン」とは北米の携帯電話会社のことです。ボーダフォンも出資しているところで、世界最大のCDMA2000な携帯電話会社でもあります。北米では勝ち組な電話会社です。
CDMA2000陣営なのですが、2007年末に次世代技術ではW-CDMA陣営のLTEを採用しますと発表してしまい、その後の700MHz帯オークションでも競合するグーグルを蹴散らして(あるいはそうではなくて・・)、携帯電話向けとして良質な帯域である700MHz帯の獲得に成功しています。
ベライゾン700MHz帯をLTEに使うと最初から言っており、早期のサービスインを目指すと以前から発表していました。
で、まずは元のニュースの引用です。
ベライゾン、LTEサービスの試験運用を年内に開始
米国2都市で試験サービス、2010年には商用サービスも開始を予定
http://www.computerworld.jp/topics/nb/136189.html
米国の携帯電話キャリアVerizon Wirelessは、60Mbpsの伝送速度をサポートするLTE(Long Term Evolution)方式のモバイル通信サービスを、2009年中に米国の2都市で試験運用する予定であると発表した。来年(2010年)には商用サービスも正式に開始する予定であり、サービス地域も25~30カ所に拡大する計画だ。
世界的にはLTEの先頭集団は2010年からサービスを開始するような感じになってきているようですが、ベライゾンはさらにその前の2009年にとりあえず「開始」してしまうつもりのようです。
・2009年のうちに:2都市で試験サービスイン
・2010年:商用サービス開始
「2都市」だけですか?と思った人も居ると思います。ですが、アメリカでサービスイン済みということになっているモバイルWiMAXも同じような状態だったりします。実はモバイルWiMAXはいくつかの都市で(練習的に)サービスインしているだけに過ぎません。
よって、実はモバイルWiMAXのリードは僅かでしかありません。
さらに、アメリカのモバイルWiMAXは怪しいことになっていて足踏み状態になっていて、なおかつエリア整備で不利な2.5GHz帯のWiMAXと、電波の飛びが良い700MHz帯のLTEですから、ベライゾンの進撃速度にあっという間に追いつかれる可能性があり、
「2010年に25~30カ所に拡大する計画」
の序盤でいろんな面で完全に追い越されている可能性があります。来年の前半には試合終了状態かもしれないということです。
またベライゾンがLTEで何をするのかというと、
Verizonはまず、ノートPCユーザーを対象としたデータ通信サービスを開始する予定だが、料金プランについては明らかにしていない。
モバイルWiMAXにぶつけてくるようです。
また、これは2009年の試験サービス以降アメリカで「LTEで通信したいノートPCの需要が出現」する事を意味します。
ノートPCユーザーは当面、内蔵/外付けカード型やUSBドングル型の端末を使ってLTEネットワークに接続することになる。
需要が発生すればLTE通信モジュールを内蔵したノートPCも早期に出現しやすくなります。
「60Mbps」という数値は、同社がパートナーの英国Vodafoneと共同で実施した試験運用の実績に基づくピーク・レートだ。VerizonのCTO(最高技術責任者)であるリチャード・リンチ(Richard Lynch)氏は、実際のサービスでどの程度の転送レートが得られるのか、見通しを示していない。
ベライゾンは20MHz幅でのLTEサービスインを行う予定で、20MHz幅で試してみたところ60Mbpsくらい出たということでの数字なのではないかなと予想します。
なお、ベライゾンは20MHz幅のサービスが出来るだけの帯域を手に入れています。
連邦政府の実施した競売で同社が落札した700MHz帯(22MHz幅のバンド)が使われる
1.5GHz帯を細切れにして台無しにしている日本は、今からでも考え直すべきかも知れません。これからベライゾンのLTEが圧倒的パワーを見せ付けたとしても、「日本では帯域幅が狭すぎて真似できません」ということになりかねません。
また、60Mbpsは今回限りの言い逃げではないようで、
リンチ氏は、「実際にネットワークの運用を開始するまでは、平均速度がどの程度になるかはわからない。今年12月末までにははっきりするはずだ」と述べた。
試験では60Mbpsが出ましたが、実際にどのくらいの速度になるかは年内に実際のサービスでお見せしますしますからどうぞご覧下さい、とのことです。
とりあえずは大幅なハッタリ速度ではないようです。もしハッタリ速度だったら後でこの発言がたたる事になるでしょう。
ただし、この速度が実際の計測値だとしても「混雑したら速度は下がる」というのは避けられません、ベライゾンはマクロセル運用するはずですし。
ただ、そこはフェムトセルも計画されているようでして、
リンチ氏は以前、企業や家庭の屋内における通信状態を改善するために、LTEの電波に対応したフェムトセル方式の小型基地局を普及させていくと発言していた。
もともと電波の質がとても良い700MHz帯なので、屋内に基地局を設けなくても圏外にはなりにくいはずですが、トラフィック分散が狙いなのかもしれません。
普通の基地局については、
同社のLTEネットワークでは、フランスのAlcatel-LucentとスウェーデンのEricssonの機器
というわけで、LTE本家のエリクソンとアルカテルルーセントが参加しています。
LTE対応スマートフォンが2011年くらいには登場するとか、LTE家電が登場するなどという話(こっちは怪しいかも)があったあと、料金プランもLTE登場後は新しい感じになってゆくかもしれないという発言をなさっています。
さらにリンチ氏は、ゆくゆくは多くのユーザーがマシン間通信対応の機器を中心にLTEインタフェースを搭載したデバイスを5~6台程度持つようになるとしたうえで、こうしたデバイスの通信料金を一括で支払えるような新しい料金モデルが登場するだろうと「予言」している。
電話機やパソコン用の通信モジュール以外のいろんな機器がLTE対応になると、自然の成り行きで個別に料金を払ったりするような話ではなくなるだろう、というだけのことでもあるのですが。
ちなみに、いろんな機器がLTEに対応する未来の図、WiMAX陣営が喧伝していた未来図と同じものです。LTEでも同じ事が出来るぞ、ということかもしれません。たぶん、他の通信方式でも同じでしょう。
◆今後
ただし、以上の話には大きな前提が一つあります。
「アメリカでアナログ地上波が停波する」ことです。テレビの跡地をLTEに使う話だからです。
本来なら2009年2月の中頃に停波が済んでいるはずでした。しかし、4ヵ月延期されて6月になってしまいました。
この4ヵ月延期に停波問題が解決しなかった場合には、再延期される可能性もゼロではありません。そうなるとベライゾンのLTEサービスイン計画はどんどん後ろにずれてゆきます。2010年になっても延期されていればLTEも延期です。
ただ、(ほぼ)無料で電波帯域をもらっている日本と違い、アメリカではオークションで帯域を売ってしまっています。
日本なら「公共」の電波だからもうちょっと待って、という理屈も成り立ちやすいですが、ベライゾンはお金を払って買ったので(個人の持ち物に近い)、苦情を言いやすい立場にあります。もし再度延期されると「さすがに待たされすぎだ」と喧嘩がはじまるかもしれません。
つまり、LTEの今後はオバマさん次第でもあるということです。
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コメント
そういえば 米では日本よりケーブルテレビは一般的になっていると聞いた覚えがあるのですけど その度合いによっては多少強引に停波してしまうということもあるのでしょうかねー?
投稿: sy | 2009/02/25 00:21
強引に停波せざるを得ないかもしれませんね。一応電波帯域を売ってしまっている以上、ベライゾンに権利があるわけですし。後は、どこでバランスをとっていくかでしょう。
まあ、やるにしても段階的にはなるでしょうけど。
日本もこのままいくと間違いなく停波か延期かを迫られるのは必至ですね。日本の場合はどちらに転ぶのやら。
投稿: Nakatoshi | 2009/02/25 17:06
電話屋とテレビ屋では、アメリカではどっちが強いのでしょうね。
オバマというよりロビー活動しだいか?
個人的には「俺んちで見れなくなるのなら、テレビに戻らない」かも。
私にとってのデジタル化は
従来アナログテレビのフルセグ(大画面)→携帯のワンセグ
へのバージョンダウンかもしれない。
投稿: TT | 2009/02/25 20:34