569 「ホワイトスペース」が日本に攻めてくるかもしれない
前からブログで話題にしてきたホワイトスペースについて少し。
◆「ホワイトスペース」推進=ホワイトスペースの外国への売り込み(押し売り)開始?
念のために少し復習をすると、「ホワイトスペース」というのは、テレビ用に割り当てられているけれども使っていない帯域を、無線LANみたいにして開放してしまおうというような話です。
詳しくは、過去の記事にいろいろ書いたので、検索するなりしてそれを読んでください(すみません)。
個人的には、有効利用できる電波の「スキマ」があるのならば、利用すべきだとは思うのですが、ただ無線LAN的に無秩序に使わせるのはどうかなー、とまだ思っています。このあたりは以前書いたとおり。
放送業界 vs IT業界での非難合戦もあったようですが、結局アメリカではホワイトスペースを開放することに決まりました。つまり、放送局へ割り当てられている帯域の「スキマ」は無線LAN的に利用される方向になりました。
そして、今回のニュース。
アメリカで開放が決まった「ホワイトスペース」を「国際レベルで推進する」動きがアメリカで出てきています。
FCC、国際レベルでの「ホワイトスペース」推進プログラムを立ち上げ
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0901/13/news027.html
米連邦通信委員会(FCC)は1月9日、テレビの未使用周波数帯、通称「ホワイトスペース」の活用を、国際レベルで推進するイニシアチブ「International TV White Spaces Fellowship and Training Initiative」の立ち上げを発表した。
同イニシアチブは、ホワイトスペースの活用について、米国内だけでなく国際的な協力を求めるもの。
実はアメリカでもまだスタートしていないわけですが、国際的な普及についての「協力を求める」活動が始まっているようです。つまりこれは、外国に「ホワイトスペース」を押し込むぞということだと思われます。
もっと具体的には、「ホワイトスペースを開放しない日本はガラパゴスで滅びる」というようなことを言う人が出てくる、というようなことかもしれません。
具体的には、ホワイトスペース活用に関心のある諸外国の政府や専門家にオンライントレーニングを提供したり、現地での説明会を行うとしている。「White Spaces Fellows」に選ばれた諸外国の専門家をFCCの施設に招待し、トレーニングを行う。またホワイトスペースを携帯通信に活用するための情報を網羅したWebサイトを立ち上げるとともに、年に1度、White Spaces Fellowsを集め、総会を開催する計画という。
アメリカでもそうでしたが、日本においてもホワイトスペースの開放となると放送局が嫌がることになるはずです。放送局に免許が下りている帯域の一部を開放させるという話ですから。
◆日本でも開放がなされるとして考える
日本でも開放されるのか、また開放するにしてもアメリカと同じ方法で利用するのが正しいのかは議論の余地があります。
ただ、今回の投稿ではその件は一度さておいて、アメリカ式がそのまま日本にやってくるという前提で少し考えてみましょう。
前々から良い表現が無いか考えているのですが、「ガラパゴス屋」というか「日本滅びる団」の人たちにとっては日本叩きのチャンス到来になります。今更の「PDCで孤立した」をまた繰り返す人とか出てくるはずです。
機器メーカーにとっては、ホワイトスペース関連機器を開発して売るチャンスになるかもしれません。ただ、アメリカがこの辺りの権利を押さえ込んだあとで、「世界の皆さん、ホワイトスペースを買いましょう」となるはずなので、
・黒幕:アメリカ
・大量生産:台湾・中国
・涙目:その他の国
という台本がもう仕上がっているのかもしれません。
◆ホワイトスペースの攻撃を受ける意外なところ
ホワイトスペースは強化版の無線LANというような呼ばれ方をすることがあります。なぜかというと、誰でも使える無線LANと同じ感じで使われるようになる予定だからです。
無線LANといえば、20世紀末に変な大ブームがあって、「近いうちに市街地は無線LANに覆い尽くされる」「街のどこでも基本的に無線LANが使えるようになる」「携帯電話とかはそのうちに時代遅れになる」なんて言っている人たちも居ました。
結局はそんなものちっとも実現しなかったわけですが、無線LANがそもそも面を覆えるような技術じゃなかったことも原因ながら、電波の飛びがあまりよくないので点以上のカバーが難しかったようなところもあります。
今回の「ホワイトスペース開放」ですが、電波の飛びは飛躍的に改善する、と喧伝されています(「飛ぶ」周波数だから)。従来の無線LANがアクセスポイント一つで「点」しかカバーできないのに対し今度は電波が届くようになる、と。
飛んだら飛んだで免許要らずの電波なので、お隣と盛大に干渉するだけのような気もするのですが、とりあえず「点しかカバーできない」状態から無線LANの大きな進化が起こる可能性もあります。
以下、「かなり過剰に想像してみただけ」という点は念を押しておきますが、
もしかすると、次世代ホットスポットみたいなのができるかもしれません(できないかもしれません)。
距離を出せる無線LANといえばWiMAXが思い浮かびます、よってWiMAXの出来が予想以上に悪かったりすると、強化版無線LANにいきなり倒されるようなこともあるかもしれません。
また、3.5世代+強化版無線LANの組み合わせでだいたい事足りるようになってしまい、次世代技術が全部微妙な立場に追いやられるかもしれません。「GSM+強化版無線LAN」が世界の次の標準なんて訳のわかんないことも、可能性としてはゼロではありません。
◆別の技術
もちろん全然駄目な技術という事もありえます。もしくは日本で使ったら干渉だらけで、飛ぶ意味が全然無いとか。そういう場合には「特に何も起こらない」ということになるだけだと思います、
また、無線LANが使っている帯域はそもそも「免許不要な帯域」で結構好きに使ってよい帯域ですが、同じくホワイトスペースも条件付で好きに使ってよい帯域としたなら、アメリカと違う技術で使ってしまっても良いかもしれません。
例えば次世代PHSをベースにした技術でホワイトスペースを利用するとか、中国がTD-SCDMAをベースにしたホワイトスペース技術を作ってしまって自国で強引に普及させるとか・・・アメリカはおそらく「ホワイトスペースを開放」させた後、「アメリカ式の技術」を普及させようとすると思われますが、全然違う技術で使うことも可能だと思われます。
そもそも免許ありにして、帯域をもっと大事に使ってもらった方が良いのではないかという気もします。それならば本当に携帯電話会社を困らせることもあるかもしれません。
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コメント
>例えば次世代PHSをベースにした技術でホワイトスペースを利用するとか
(XG)PHSみたいな自律分散制御方式のやちなら不安材料は少ないのでしょうかね。
それにしてもアメリカは押し売りが好きですよね。
投稿: sy | 2009/01/27 16:38