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596 ドコモが2009年中にHSUPAを開始

少し前のニュースから、ドコモが2009年中にとうとう「HSUPA」をサービスインすると言う記事について。


◆ドコモの怒涛の設備投資、とどまるところを知らず

すでに世界最強のW-CDMAネットワークを作り上げているドコモですが、まだまだ設備の強化は止めないようです。

3.5世代と呼ばれる下り速度の高速化を図った第三世代(HSDPA)に続いて、ドコモは上がりにも同様のテクノロジーを用いて高速化を図る「HSUPA」を2009年中にサービスインすると発表しています。

CEATEC JAPAN 2008 - ドコモは来年中にHSUPA導入、OSは各陣営を並行して採用
http://journal.mycom.co.jp/articles/2008/10/02/ceatec-mobile5/

HSUPAは来年、LTEは2010年度、4Gは2015年度以降

現在同社が一般にサービス提供している最も高速な通信方式はW-CDMA/HSDPAで、受信速度が最大7.2Mbps(規格上の理論値、以下同)、送信は同384Kbps。2009年中には送信を高速化するHSUPAを導入し、5.7Mbpsまで引き上げる。実効速度としては「平均1~2Mbpsくらいをお使いいただける」(辻村氏)見込みという。

「世代数」で表現してAUと比較するとこういう事になります。

・第3世代 W-CDMA/CDMA2000
・3.5世代(下り高速化) HSDPA/CDMA2000 EV-DO
・3.7世代(上がり高速化) HSUPA/CDMA2000 EV-DO Rev.A

下り高速化のさらなる高速化は何世代?MIMOは何世代?とか言われると良くわからなくなってしまう世代区分なのですが、つまりドコモは「所謂3.5世代化を終え、その次に進もうとしている」ということなのです。

日本での3.5世代の導入はまずAUの「WIN」の開始から始まりました。つまりAUは他陣営に大きく先行していました。その後現在の話題はHSDPA化です。

・ドコモ 3.5世代化は完了、これから次に進もうとしている
・AU 3.5世代化は随分前に完了 Rev.A化などを行っているところ
・ソフトバンク 3.5世代化がまだ未完成
・イーモバイル 最初から3.5世代で基地局整備を行っているが、エリア整備自体未完成

ドコモは(携帯電話会社としては)他社と大差をつけた多数の基地局を整備しており、その上基地局も他社よりも高性能なものを整備しています。質でも量でも圧倒的です。

AUは「上りの高速化」や「64QAM化(下りのさらなる高速化)」にまで手をつけているという点でドコモに先行していますが(質では現在でもなお勝っている点がある)、「上りの高速化」についてはドコモに追いつかれるのは時間の問題となったようです。

また、残りの二社は3.5世代の基地局整備で大変な苦労をしているところですけれども、ドコモはさっさと「その次」へ進んでしまうことになります。


◆しかし上がり回線の利用方法はまだ見つかっていない

3.5世代化での下り回線の高速化については、AUがあっという間に「使い方」を発見してドコモを悩ませる事になります。

AUは3.5世代化で
・携帯初のパケット定額
・音楽配信
を開始します。AU大躍進の時期のイメージはまさにこれです。そしてこれらは、3.5世代化が出来ていない他キャリアには真似する事が難しいサービスだったため、他社は大いに困る事になります。

その後AUは上がり速度の高速化もドコモに先んじて行います(EV-DO Rev.A)。もしAUが「上がり回線の世代進化が無ければサービスインが難しい」ようなサービスを、3.5世代化の時と同じく発見していた場合には、

もしもの世界:
・AUが3.7世代でなければ実施困難なキラーサービス開始
    ↓
・ドコモまたも涙目

となっていたはずでした。AUは「ドコモとの技術的差」が自分達に大勝利をもたらした事は良く知っていましたから、勝ちパターンを継続したかったはずです。ですから、「高速化した上がり回線」を絶妙に活用したサービスについては一生懸命考えたに違いありません。

しかし現実には、AUから画期的な新サービスは発表されていません。つまり、AUは高速化した上がり回線の有効活用方法を思いつけなかったのです。

ドコモは来年「上りの高速化」をも実現します。しかし、それを使って何をするのか、という点についてはまだ何も思いついてない可能性があります。ちなみに記事では用途についてこのようにあります。

高速回線を何に使うかというアプリケーション面については、まずHSUPA導入によって生まれるシナリオとして、携帯電話で撮影した動画の利用を挙げた。「アップリンクが速くなると、例えばある非常に重要なイベントに遭遇した人が、5分とか10分の動画を撮ってアップロードすることができる。事故が起こったときに、そこを経由してどこかに行きたい人がYouTubeを検索すると、何分か前にその場に遭遇した人の動画が見られるので、出かけるルートを変えるべきか判断できる、といったようになる」(辻村氏)。このように、現在主にダウンロード型だった動画コンテンツの楽しみ方が、アップロードを組み合わせたものに変わるとし、「これがインターネットのパワーであり、インターネットのケータイ化である。PCにはなかったリアルタイム性を持っている」(同)と強調した。

なんか怪しい感じですね。また、後述するようにこの提案は、容量の面で危険な提案です。

ちなみに「上がり回線」ですから、端末→基地局の高速化ということになります。つまり、端末内に入っているデータを外に高速に出したい、という要求と結びついていないといけない事になります。ですが、そういう要求(で利益につながるもの)はなかなか見つからなかったと言うのがこれまでの流れです。

オンラインストレージなんかも検討されたようですが、携帯電話の外部メモリーカードでいいじゃんと言うことになってしまいます。

「端末で撮影した動画をUPする」というのはこういうアイディアの中で、明らかに最初に思いつくものです。確かに端末で発生した多量のデータであり、端末からネットにデータを出す動機とつながっていますが、誰でも思いつくものです。AUがこの道に進んでいないからには理由があると考えるべきです。

実はたいしたニーズが無い可能性は高いでしょうし(携帯で撮影した動画の「UP」が大流行すると思いますか?)、また「携帯で動画」が流行るとなると通信容量の面で多大な負荷をかかる原因になります。

動画のUPが流行っている状況を考えてみましょう、果たしてUPだけが流行って「携帯で動画を見る」方が流行っていない状況というのは考えられません。つまり、下り回線の容量に悪夢のような負荷がかかるということになります。

量より質で基地局整備をしているAUにとっては、容量が足りなくなる事態は避けるべきことです。よって、この案はいただけません。最初に検討されてすぐに封印された案ではないかと思われます。

基地局を鬼整備しているドコモは、携帯で動画を見るのが大流行しても耐えられると思っているのかもしれませんが、耐えられるという事と儲けられるということは別問題です。もしかすると、動画を大流行させて自分も苦しみつつ、動画に堪えられない他社を押しつぶしてしまう作戦なのかもしれませんが、大流行したとしても「携帯で動画を見れないからドコモにする」とは「思わない人」の方が大半な気がします。

まあつまり、AUが「使い道が解らなかった」のと同じく、「ドコモも持て余す」可能性が高いのではないかという気がします。もしかするとドコモがすでに秘密計画を立案している可能性もありますが、ドコモのことですからそれは無さそうです。

というわけで、高速な上がり回線の画期的な使い方を思いついた人は披露すると有名になれると思います。


◆ドコモの凄さは伝わってくるが、大勢への影響は未知数

ドコモの「執念の基地局整備」の凄さが伝わってくるニュースではあります。既存の基地局をソフトウェア的に更新する感じで簡単に対応できてしまう感じで、物理的工事はあまり必要ないのかもしれませんが、もしそうだとしても「そんな余力のある高性能基地局」を多数整備しているという点では、やはり凄さの証明です。

ただし、これを使ったキラーサービスはまだ発明されていないし、発明される可能性は決して高くない(注:しかし無視も出来ない)ので、ソフトバンクやイーモバイルは「この件は無視」でもあまり問題ないような気もします。おそらくながら、下り回線の高速化のみに執念を燃やしていても大丈夫なのではないかと。


(この記事には他の内容もありますが、まずここで一度区切って次の記事に続きを書きます)

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