595 ドコモはLTEを慌てて導入しない / ドコモは全陣営を採用
以下の記事の続きです。
596 ドコモが2009年中にHSUPAを開始
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/10/596-2009hsupa-4.htm
前回書いた部分以外にも面白い内容があるのでその部分について書きます。
◆LTEや第4世代についても言及がある
LTEや第4世代についての導入スケジュールについての言及もありますので、まずはそれについて。
CEATEC JAPAN 2008 - ドコモは来年中にHSUPA導入、OSは各陣営を並行して採用
http://journal.mycom.co.jp/articles/2008/10/02/ceatec-mobile5/
HSUPAは来年、LTEは2010年度、4Gは2015年度以降(略)
また、同社が「Super 3G」の名称で呼んでいる新技術のLTEについては「2010年度には入れたい」(同)とし、その際の実効速度は「平均的な実感スピードは数十Mbpsくらいだろう。光ファイバーと同じくらい」になると説明した。
一方、第4世代(4G)と呼ばれる次世代の通信方式は「周波数が3Gとは違うし、方式も大きく異なる。かなり先、2015年度以降くらいになると見ており、この先数年は3GあるいはLTEが主流になるだろうと考えている」(同)との見解を示した。
つまり
・2009年 HSUPAを導入
・2010年度 LTE開始
・2015年度以降 第4世代導入
ドコモとしては、「これからはLTEの風が吹き荒れて欲しい」と思っているということも解ります。
HSUPAについては前回の記事に書きました。これは第三世代の発展系です。一方でLTEは第4世代に属する技術で別の種類の技術です。
この記事には出てきませんが、第三世代をさらに強化するHSPA+の方向の進化もありますが(以前に散々記事にしました)、以前書いたようにドコモはHSPA+を評価しておらず、静観なさるようです。
ちなみに(これも以前に書きましたが)、HSPA+の導入が一番たやすいのもドコモでして、LTEが流行ろうがHSPA+が流行ろうが、日本最強(でおそらく世界最強)の基地局網を作ってしまうのはやはりドコモであろうことはもう確実です。
ちなみにLTEの実効速度で言われている「平均的な実感スピードは数十Mbpsくらい」というのは、基地局の利用者で割り算する数字(例の記事参照のこと)であり、なおかつ20MHz幅×2での数字ではないかと言う気がします。
つまり光ファイバー並みとは言いつつ、容量の面では弱々しいのは変わりの無い事になるはずです。
また、「第4世代」についてはまだまだ先になるのではないかと言う見解が示されています。
◆ドコモは他国と歩調を合わせる
記事では引き続いて、世界の「次世代の勝者」がLTE確実になりつつあることが紹介されていて(これも以前から散々記事にしたとおり)、その後で「ドコモは慌てて導入しない」ということが重ねて強調されています。
世界的に「次はLTE」という動きが主流になる中、当初からの規格策定メンバーであるドコモは先陣を切ってサービスを開始したい考えだが、辻村氏は「あまり早く行き過ぎてもまずい」とも話す。
つまりドコモとしては、早期にサービスインしたいという希望はあるものの、世界と歩調を合わせての導入しか行わないと言っています。何故こういうことを言うかと言うと「過去の失敗」があるためです。
「過去の失敗」とは以下のようなものです。
FOMAは世界初の3G携帯電話だったが、標準化作業の早い段階でのサービス開始だったため、特に海外の基地局や端末との間で十分な相互接続性が得られないといった問題が初期に発生した。日本はLTEを「世界よりは若干早く導入できる」(同)としながらも、各国と足並みをそろえたいとの慎重な姿勢も伺える。
つまり、FOMAを早期に導入しすぎて色々苦労した件について大反省しているので、今回は同じ失敗は絶対しません、ということを言っているということです。
他社や他勢力に先んじてサービスインするのはやはり有利な面があります。例えば、モバイルWiMAXや次世代PHSが先行する中、ドコモは我慢を続けるというようなことも必要になるかもしれません。また先に実績を作ってしまって既成事実にすれば有利になる事もあります。しかしそういうことはドコモはしない、と言っているのです。
ドコモは今になっても「第二世代」での失敗でバッシングされます。「世界から孤立した」というお決まりのバッシングです。ドコモは第三世代が出来る際にこの件についてひどく反省しており、欧州の陣営に譲歩をして今度こそ「孤立」しないように注意を払っています(W-CDMA)。
しかしドコモはFOMAを早期にサービスインしすぎて、その後大変な苦労をすることになります。そして今回は初期FOMAの大失敗の繰り返しはしないように反省しているというわけです。前回やらかしたことはちゃんと反省しているというわけです。
今でも相変わらず「世界から孤立した」ということを言う人がたくさん居ますが、その他にも「ドコモは3.9世代で勝手に日本独自規格を作ってしまうつもりだ」ということを言っている人も居るようです。ドコモは勝手に規格を作って勝手に早期サービスインするつもりだ、というような批判です。
#ちなみにWiBroはまさにこれ↑の極みです
ドコモは「そのようなつもりは一切無い」ということを表明しているということです。
◆OSは「全部採用」
ご存知のとおり、携帯電話はむやみに高性能化中です。よって、1からソフトウェアを全部作るようなことは難しくなりつつあります。共通のプラットフォームのようなものの上に作るのが普通になりつつあります。
そして、現在そういうプラットフォームについていくつかの陣営がありますが、ドコモはそれらについて事実上「全陣営のOSを採用します」と言っています。
陣営
・Linuxベース
・Symbian(シンビアン)
・Windows Mobile
・Android
しかも「iPhoneの獲得も諦めてない」ですから、全部採用という感じです。
もともとドコモはシンビアンとLinuxについては以前から採用中です。ドコモ独自の共通プラットフォームとして、シンビアンをベースにしたものと、Linuxベースで作らせていたもの(NやPなど)の2系統がありました。ただし、ドコモ独自でのプラットフォームの追求ではなく、次第に国際共通プラットフォーム+日本独自な感じになってゆくと思われます。
Linuxベースのものは他国での同じような試みと合体して、Linux(Limo Foundation)という陣営になりました。
シンビアンは欧州のOSで、こういう用途に昔からずっと使われているOSです。つまり非常に実績があってこの点は優位な点ですが、「昔から使われている」ために古い面があり、今風の要求に対応できていない面があります。
Windows Mobileはスマートフォンでよく知られているものです。念のために説明すると、普通のパソコンで使うWindowsとは完全に別系統のOSです。UIは本家Windowsを意識してありますけれども。
AndroidはGoogleが作ったプラットフォームで、これから世に広まろうとしているものです。一番作りが新しいものです。
iPhoneについても書くと、これはMacOSXをベースにしています。Window Mobileは普通のPCで使うWindowsとは完全に別物ですが、iPhoneについては同系統の派生したものが搭載されています。ただし、今のところアップルが囲い込んでしまっているので、陣営と言う感じではありません。
というわけで、「なんでもかんでも採用」という感じです。
「全部に手を出す」のは一般的に賢明なことではありませんが、ドコモほどの巨人となれば全部に手を出してしまってどれがどうなっても関係ない状態にするのも賢明な作戦となります。
◆少なくともスマートフォンでは・・
普通の端末開発ではこれまで通り、Linuxベースでの開発とシンビアンベースでの開発が行われるはずです。
しかし少し前の記事に書いたとおり、スマートフォンについては「何でも有り」の状態があっという間にやってくることになります。ドコモはスマートフォンについて「あれもこれも投入」「2008年度に6種類投入する」「次の年度には10種類近くを投入する」と言っているからです。おまけにiPhoneの獲得も時間の問題のような気がします。
ドコモには「何でもある」状態になりそうです。各陣営の直接対決が、ドコモでの「具体的な端末での直接対決」の形で全部見られることになりそうです。
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コメント
ドコモがスマートフォン総合格闘技世界一決定戦PRIDEグランプリのリングになるのですね。
「強えぇ電話でてこいや!」
投稿: TT | 2008/10/14 21:01