591 アメリカでとうとう「ホワイトスペースの開放」が公式に議論開始
ホワイトスペース問題について記事を書きます。
ホワイトスペースって何?という人は、過去に書いた以下の記事を参照していただければと思います。内容はちょっと頼りないですけれども、日本でほとんど話題になっていなかった時期に書いた記事なのでご容赦ください。
知られざる空き電波帯域(?)、「ホワイトスペース」とは何か
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/05/648_1fc8.html
ホワイトスペース問題でGoogleがキャンペーン開始
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/08/604_google_1ceb.html
なんとも一般の人には(本来)解りにくい話ではあるのですが、これから日本でも大きな話題になってゆくかもしれません。次の流行話題かもしれないということです。
◆アメリカで「ホワイトスペースの開放」が正式に議論開始
で、上記の記事で書いたように、開放しろとIT業界が騒ぎ、放送局がIT業界の横暴であると言い合って綱引きが行われている状況がしばらく続いていましたが、とうとうアメリカ政府が正式にホワイトスペースの開放を検討することになったようです。
まずは記事から。
FCCがホワイトスペース開放を協議へ,GoogleとMSは歓迎のコメント
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20081017/317151/
米連邦通信委員会(FCC)が,いわゆる「ホワイトスペース」と呼ばれる周波数帯域の開放に関する検討に乗り出したことを受け,米Googleと米Microsoftは米国時間2008年10月15日に,それぞれ歓迎のコメントを発表した。両社は,FCCがこれまでの内部作業とテストから集めた十分な情報により,ホワイトスペース使用の適切な規定を設けるプロセスに進めるはずだと期待を示した。
先の記事で書いたようにGoogleが「開放しなさい」と大騒ぎしていて、Microsoftも開放してくれとこれに荷担しておりまして、それ故の両社からの「歓迎のコメント」です。
FCCは同日,議長のKevin J. Martin氏が,11月4日の公開ミーティングで協議する議題に,ホワイトスペースに関する第2次報告および指令(Second Report and Order)などを含めていることを明らかにした。また米メディア各社(Washington Post/CNET News.com/Internetnews.com)は,Martin氏がホワイトスペースの開放を支持する意向を示したと報じている。
つまり、向こうのマスコミが言う事には(向こうのマスコミもマスゴミだそうですが)、この「公式に議論開始」は基本的にホワイトスペース開放という決定を出す事を意図したもの、だそうです。そりゃそうかもしれません。なぜなら、開放すべきでないと考えているのなら握りつぶしていればいいわけですから。
つまりもうリーチがかかったかもしれないということです。もっともリーチはちょっと言い過ぎで、イーシャンテンないしはリャンシャンテンあたりかもしれませんが。
FCCとはアメリカで電波の割り当てをする役所みたいなところです、いい加減に例えると総務省の電波を司るところのような存在です。
で、そういうところが事実上ゴーサインを出したらしいというわけですが、日本人にとって総務省の判断がどの程度信用に値すると思えるかということとか、FCCが700MHz帯のオークションのブロックDで大失敗したりしたことも忘れないようにしましょう。
「ブロックDで大失敗」についての記事:
北米700Mhz帯:Googleに非難の声上がる/失敗したDブロックで揉める
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/04/690_700mhzgoogl_5029.html
◆とても注意が必要な話題
この話題は注意しなければならない点がいくつもあります。以前の記事にも書きましたが、Googleが「正義のGoogle、悪で強欲な放送業界」の図式を作り上げてキャンペーンを張ったこととか、ホワイトスペースがそもそもどういうもので、また「空いている部分がある」としてもどういう技術的理由で「空いている」のか一般人にはさっぱり訳が解らないということです。
そして、「とっても『ステキ』なものなんですよ」という話は簡単に作るこができます、たとえば引用している記事についても、
全米規模で利用でき,ネットインフラが行き届いていない地域もカバーできる。通信速度が速いといった好条件もそろっているという。
冷静に考えてみると、こういう「ステキ化」は常套手段です。分野方面によっては、ステキ化を取り除くと何一つ残らないような分野だってありますから、まあ世の中そういうものなのかもしれませんが。
まず、利用できる帯域が存在する(あるいは慎重に言うと「無くは無い」)のは事実です。よって、有効活用できるのなら有効活用すべき帯域です。
しかし、これは一応意味があって空けられている側面もある帯域です。一部の「開放しろ」の意見には、単に浪費されているだけの帯域だと思わせるような説明をする向きも出てくると思います。そしてこういうことになると、放送局の「無駄ではない」「空いているわけではない」という事情説明は、放送局が邪悪な証拠だということにされてしまうでしょう。
まあ私も放送局は資源の無駄遣いをしていると思いますし、というか放送局以外にも無駄遣いしている変なところがたくさんある印象があります。ですが、全て無駄だと言わんばかりの主張はさすがに変だと思います。
ホワイトスペースを利用する場合には、「変則的な利用」になりますし、免許無しで開放するとまともな状態で使われるのかどうかわかりません。また、周波数的に電波の性質がとてもよい帯域なので、もっとふさわしい利用方法があるかもしれません。
例えば、素人が個人利用で使うのを少し便利にする代わりに、日本の携帯電話事情を革命的に改善するような利用方法だってあるかもしれません(画期的に新しい「条件付利用」を携帯電話会社にさせて、画期的新サービスを開始させるとか)。放送局から取り上げる事にしたとしても、使い道は一つだけではないのです。
#画期的な使い方を思いついた人はネットで披露すれば皆に感謝される事でしょう
また日本には「例の困った病気」があります。
アメリカで最新流行のホワイトスペース様だから、導入を検討しないような未開の国日本は明日にも滅びる、というような話が出てきて、さらにはこれまで書いたような世論誘導で議論を経ずにすっかり規定路線にされてしまうかもしれません。
新しい通信帯域が出来るとお金が儲かったりするところがありますし、いろんなことがある気がします。
世界中が一時的に熱に浮かれたWiMAXが今どういう状態になっているか、などを思い出してよく考えてください。WiMAXはこれから再度繁栄の道を歩むかもしれませんが、しかしながら現在、かつての過剰期待は落胆に変わっています。ブームだから当然とか、世界の流れだから、というのはその程度だということです。
日本では冷静な検討が、いろんな選択肢を含めた検討がなされる事を期待したいと思います。
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