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2008年8月の13件の記事

602 WILLCOM D4 が(実質)大幅値下げされる

WILLCOM D4 について実質値下げが発表された件について書きます。


◆5万9300円+大容量バッテリ標準化+nicoあげます

「長時間バッテリをもれなく配ります」の時も思いましたが、D4 については、WILLCOM らしからぬ素早い対応が続いています。今度は実質値下げです。

「WILLCOM D4」に大容量バッテリー標準搭載モデル
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/41496.html

ウィルコムおよびウィルコム沖縄は、「WILLCOM D4」に大容量バッテリーパックを標準装備する「WILLCOM D4 Ver.L」(WS016SH(B)P)を9月4日に発売する。「Microsoft Office 2007」を非搭載とすることで価格が下げられ、ウィルコムストアでのW-VALUE SELECTにおける一括価格は9万7700円、W-VALUE割引後の実質負担額は5万9300円となっている。
このほか、「WILLCOM D4 Ver.L」か「WILLCOM D4 Ver.L」アカデミックパックを購入し、「新つなぎ放題」のオプションである「話し放題」に加入したユーザーに、PHS端末「nico.」(WS005IN)の本体がプレゼントされるキャンペーンが9月4日~9月30日の期間限定で実施される。

実質負担額で、6万円を切る価格になったようです。三万円程度の値引きになりました。

一括支払いの場合
・9万7700円を支払う
・毎月の料金が1600円割引になる。

よって、3880円-1600円=2280円/月 でデータ通信が使い放題になります。

分割支払いの場合
・最初に8900円を支払う
・毎月の料金に+2100円の24回払い

よって、3880+2100=5980円/月。

結局そうなっちゃったというか、大容量バッテリが標準装備になってしまっています。

今回の値下げで犠牲になっているものは、Office2007が無しになっている点です。人によってはこれは許容できないダウングレードかもしれませんが、しかし、Officeはともかく2007は嫌いだという人も結構いますし、OpenOffice入れときましょうということで済ませる人も一方で居そうです。

また、話し放題オプションに同時に入った人(+980円でウィルコム同士話し放題になるオプション)には、音声端末であるnicoまでプレゼントされるようです。ただ、プレゼントされるのは本体だけでD4とはW-SIMを差し替えて使うようです。W-SIM的には正しい使い方かもしれません。

差し替えが面倒ですが、配りますから電話としても快適に使ってくださいということのようです。

逆に従来品と比較すると

従来品の良いところ
・MSOffice2007が入っている
・標準バッテリと大容量バッテリが両方とも貰える

ということになります。また恒例になっているアカデミックパックもやるようです。

学生・教職員が購入できる「WILLCOM D4 Ver.L」のアカデミックパックが9月11日に発売される。「スーパー大辞林3.0」や「リーダーズ+プラス V2」など11コンテンツを収録した「デ辞蔵スペシャルパック」がmicroSDカードで同梱される。価格は「WILLCOM D4 Ver.L」の通常版と同じ。


◆今回は妙に対応が早い

D4は発売してからまだ少ししか経っていませんが、どうにもいろんな事が既にありました。

まず発売前にバッテリの持ちが悪いという話題がたくさん出た事に対して、発売前に「全員に大容量バッテリをプレゼントします」という事前対応がされました。この件については記事にもしました。

次いで発売後にマシンを眠らせている間の消費電力が大きいことが話題になりましたが、その件については無償修理(無償アップデートと言っているようですが)を行っています。

そして今度は値下げと大容量バッテリーの標準装備化、nicoをオマケにつけることまでやってしまいました。

これらの件について発売前に解決しておいて欲しかったような気もしますが(ので本来必要ない、失敗のフォローを褒めているような形にもなりますが)、どうもウィルコムらしからぬ素早い対応です。


◆また続きはありうる

D4にはまだこういうことが起こる可能性があります。

・WindowsXPへのダウングレード対応
発売前からこの話題はありますから、もしかするとオプションとして選択可能になるかもしれません。

・頭金0円
今回の値下げでも、いわゆる「0円」にはなりませんでした。しかし、将来そうなる可能性がありそうです(かなり先になるでしょうが)。

・TypeGないしはTypeAGへのW-SIMの対応。
最大通信速度が二倍になる、ないしは四倍になることがあるかもしれません。

・クレードル関係のプレゼント

・寝ている状態での着信対応化
つまり、WindowsVistaフォンとして使えるようになる基礎が完成する可能性です。

・次世代PHSとのセット販売
W-SIM形状は無理でしょうが、外付けか何かで

他にも色々な可能性があると思います。

今回の値下げも予想していなかったので、これからもまだ何かありそうな気がしてなりません。

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603 WiBroは引き続き泥沼中/TD-SCDMAが世界進出宣言?

隣国の(自称)独自通信技術についての記事を書きたいと思います。


◆WiBroがピンチなので音声通話をサポートします?

VoIP番号移動やWiBro音声通話など、韓国の通信分野活性化に政府が柔軟姿勢
http://journal.mycom.co.jp/news/2008/08/22/041/

色々書いてありますが、まずこの部分。

|WiBroで通話が可能になる可能性

VoIP問題と同じく同委員会が「早めに検討する」との方針を明らかにしたのが、WiBro(韓国版のMobile WiMAXサービス)の問題だ。

WiBroは韓国で2年以上サービスしてきたものの、加入者は約20万人と不振だ。WiBroの中継器などを供給する中小企業も「(2008年)第4四半期は、大部分が赤字だった」(放送通信委員会)という。こうした状況を打破するためにも、WiBro機能をグレードアップする目的で、音声通話機能搭載ということが以前から叫ばれていた。

ただし同委員会でも、すぐに音声機能導入とはいかず、あくまで音声機能を導入の可否を検討するという立場だ。WiBroに音声通話機能を搭載すれば、携帯電話をはじめとした既存の無線事業者との衝突が予想される。何より利用者がそれほど多くないことも、こうした決断を遅らせている要因の1つであり、今後慎重な検討が必要となりそうだ。

少し前までは日本でもWiBroが変な持ち上げられようでしたが、現状としてはどう考えても不振です。国策で国家レベルで持ち上げておいて20万人ですから。

日本国内での日本叩きにWiBroが使われていた時期があったりもしました、韓国はWiBroという凄い独自技術を開発したIT先進国であり、一方で日本はこんなにダメでもう駄目で未来は無い滅びる、というような取り上げられ方です。

実際にはWiMAX(モバイルではない)を韓国が勝手にモバイル化したものだったわけです。ただ、韓国国内では、
・WiBroは韓国オリジナルの技術である
・WiMAXは韓国の技術が基になっている
という誤解が広まっている、ないしは広められている気がします。

自己反省過剰な日本もどうかと思うんですが、こういうのも困った現象です。またモバイルWiMAX陣営というのは、こういう風なWiBro関係者も内包してしまっているということになります。

最初はWiBroで世界征服するような掛け声でのサービスインだったようですが、結局加入者数は伸びず、ここしばらくではとうとう「バラ撒きでの加入者増やし」という最終作戦までとられていました。HSDPAとのセットで配るというよな意味不明なことまでされたとか何とか。

韓国の人はWiBroを韓国の素晴らしい独自技術であると誇らしげに言ったりしますが、利用しているんですかと聞くとこういう有様ですから当然に契約していません。エリアが悪すぎるしHSDPAと比べてよい点が無いというようなことでの不満表明付きで。

最初の発言と次の発言に矛盾がありますが、その点については「電話会社がやる気が無いのがいけないんだ」ということで電話会社が槍玉にあがるとか。欠陥技術である可能性にはあまり思い至らないようです。

で、今度は音声対応させるんだそうです。既存の無線事業者との衝突を心配なさってますが、問題はそこではないような気がします。データ通信で不評なエリアのものを、音声対応させて誰が使うのだろうとは思わないのでしょうか。

また、この会談自体がトンマな理由でおこなわれておりまして、

今回会談を開催したのは、IT分野における雇用創出や中小企業の倒産防止といった問題を解決したいとの思いが根底にある。それには「IT事業の連鎖の最上位にある」(放送通信委員会)通信業者による投資が必須となるが、最近通信業者は熾烈なマーケティング競争を繰り広げており、そのためになかなか大規模投資にいたらない状況に陥っている。このままではいずれ事業者の体力が消耗して、関連業者や消費者の利益にもならないということで、政府が状況打破に乗り出した形だ。
無線通信会社と有線通信会社別の投資額とマーケティング額の比較。いずれも投資額の半分以上をマーケティング費用が占めており、とくに無線業者は投資額をマーケティング費用が大きく上回っている(放送通信委員会資料)
通信会社の経営を圧迫するマーケティング費用に関しては、同委員会では「直接規制することは避ける」とし、あくまで通信会社による自律的な統制に任せるとしている。ただし、「マーケティング費支出現況点検」などと銘打ってモニタリングを強化していく方針を明らかにした。

きつい言い方をすると、各社が暴走しすぎて共倒れになりそうなので政府主導で業界談合をさせますというような集まりだったようです。

笑いたいところですが、日本でも一部で共倒れの予感がありますので他人事では無い面もあったりします。世間の空気が暴走フィーバーな状態で自重を続けるのはかっこ悪いのですが、そこを我慢するのが本当の大人の対応なこともあります。韓国では無理だったようです。


◆TD-SCDMAが世界進出宣言

とうとう北京オリンピックも終わってしまいまして、TD-SCDMAについても最低限は国家のメンツが問題となる事はなくなりました。

世界全体を見ると手遅れ感のTD-SCDMAで、しかし中国が技術鎖国すれば生き残るかもしれないという微妙な状態のTD-SCDMAですが、こんどはこんな事が。

中国、独自の3G通信規格「TD-SCDMA」の世界進出を宣言
http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=4313

中国科技院院長は22日、中国独自の第三世代移動通信技術(3G標準)「TD-SCDMA」の世界進出を進めていくと発表した。欧米主導となっている現在の移動通信技術の構造に対抗すべく、大規模なネットワーク試験などを行い、市場を開拓していくという。

最終段階に到達しつつあるCDMA2000やW-CDMAと、まだまっすぐ歩けないTD-SCDMAを国際市場で競争させようということだそうです。

念のために書いておきますと、TD-SCDMAには可能性ゼロだとは思っていません。北欧の割り当ての記事で書きましたが、TDD帯域にはTDDの技術しか使えないのでそこに力技で入り込める可能性もありますし、技術的に劣っていても及第点に到達していれば、中国政府の支援と圧力付きでの導入(酷いやり方ですが)とか、超巨大市場中国のスケールメリットをフル回転させた攻撃とかも可能かもしれません。

よって、日本の2.0GHz帯(TDD)にTD-SCDMAで手を挙げるようなことも、作戦としては検討されるべきことではあると思います。暗に明に中国政府の支援はもらえるでしょうし、もし化けた場合には超当たりくじです。ただ、中国大陸自体が技術を見捨てた場合には悲惨です。基本的に相当リスキーな選択肢になるでしょうが。

純粋に技術的に見た場合には厳しい状況である事には違いありません。これからTD-SCDMAが大化けして立派な技術になる可能性もあるのですが、ただ、他の二陣営に比べてあまりにも遅れすぎているのが厳しいところです。HSPA+かLTEかの話をしているときに、新しい第三世代の話では・・

#繰り返しますが、しかしながらTD-SCDMAが大化けする可能性も同時にあります

また、中国の人はこういう時に「意味のわからんぐらい大言壮語する」という癖があるようにも思えますから(あれは真に受けてはいけない)、天然でこういう感じになっているだけかもしれません。本当にそう思っているかどうかということではなくて。


中国はすでに同技術を発展させた独自の4G規格「TD-LTE」を策定。次世代の移動通信技術で国際競争力の強化を図っている。

そして、独自の「LTE」も開発しています、とのことです。おそらく独自という感じでもなくて、やっぱり似た感じになるはずです。

エリクソンや他のところが手がけているLTEのTDD版とはまたそれぞれ違うはずです。ちなみにエリクソンがLTEのTDD版を造っている理由の一つには、中国を狙っていることがあるはずです。

で、LTE(=自称発展版)といえば3.9世代なのが通例です。第三世代を発展させた結果という事になっている場合はそうです。中国のこれも「同技術を発展」とあるのですが「4G規格」と名乗っています。3.9世代と名乗るとまた世界から遅れてしまった感じになるので、世代数だけでも増やしたようにも見えます。

ちなみに、いわゆる普通に言われる「LTE」は3.9世代と言われていますが、その実態は「4.0世代-0.1世代」でして、実質的には第三世代とは見なし難い存在です。そこで第4世代を名乗らないのは、第3世代と名乗るものが「現在」持っている利権から離脱しないためです、のはずです。区別にはあんまり意味がありません。

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604 ホワイトスペース問題でGoogleがキャンペーン開始

以前、実は「ホワイトスペース」と呼ばれる日本ではあまり話題になってこなかった「電波の空き」があることを記事にしました。その件についての続報です。

ホワイトスペースって何?という方は以下の以前の記事をご覧になってください。

以前の記事:
知られざる空き電波帯域(?)、「ホワイトスペース」とは何か
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/05/648_1fc8.html

もしかすると、ホワイトスペース問題は今後日本にも飛び火して、結構な騒動になるかもしれません。


◆Google、放送業界へ攻勢

非常に簡単に言うと、放送局が無駄遣いしている電波の空きの部分を一般人に開放しろ、と言い出したのが「Googleのホワイトスペース」の騒動です。そして放送局はそれに反発をなさっています。

Googleですが、とうとう一般人を使ってのキャンペーンを始めました。

Google,「ホワイトスペース」開放を訴えるキャンペーンを開始
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080819/312905/

米Googleは米国時間2008年8月18日に,いわゆる「ホワイトスペース」と呼ばれる周波数帯域の開放を求めるキャンペーン「Free The Airwaves」を発表した。専用サイトを立ち上げ,この問題に関するユーザーの支持を呼びかけている。
Free The Airwavesサイトでは,ホワイトスペース開放がインターネットにもたらす恩恵を動画で説明している。また,ユーザーに対して嘆願書への署名を促し,賛同者は意見を動画で投稿するよう訴えている。

以前、北米の700MHz帯CブロックでGoogleとベライゾンの落札競争が発生しなかった件でGoogleが非難されているという事を書きましたが、

北米700Mhz帯:Googleに非難の声上がる/失敗したDブロックで揉める
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/04/690_700mhzgoogl_5029.html

Cブロックの時と同じような事を今回もやっているとも言えます。Googleが作ろうとしている構図は以下のようなものです。

・悪の放送業界:電波を無駄遣いして電波を開放しない既得権益者
・正しい人たちが自由をもたらす戦いをしています

一方で放送業界も情を訴えて、放送やスポーツを守れという主張をしています。スポーツを守れ、というのは、放送局の電波空きスペースがスタジアムのワイアレスマイクなどに使われる(なし崩しの)慣例があり、ここが無くなるとスポーツイベントが開催できなくなっちゃうよ、だから帯域は解放しません、というこれも無茶のある主張をしています。

日本で無理矢理に話を置き換えるとこういう風になりましょうか、

・ホワイトスペースを開放すると、公共のメディアとしての責任があるテレビ放送が危険に晒され、スポーツイベントにも支障が出ます。IT業界の口車でプロ野球が壊滅しても、あなたはいいですか?

ホワイトスペースを開放してくださいという提案が最初にありまして、色々と揉め始めます。その次に放送局がスポーツイベントを盾にすることをしました、そして今後はGoogleが正義キャンペーンを始めたというのが現在のところです。

そしてさらには、「選択肢は実はこの二つだけではない」ということがあります、アメリカでは二択になりつつあるように見えますが。


◆他の選択肢

まず上記の主張をもう一度書きますと、

・放送局:現状のままにせよ
・Googleなど:ホワイトスペースを無線LAN用(免許が必要ない帯域)として解放しなさい

そしてこれ以外にも

・ホワイトスペースを免許付きで解放しなさい(携帯電話会社が使うなど)

またそもそも

・ホワイトスペースが発生するような電波の割り当て自体止めなさい

という主張もあります。

それぞれについて日本ではどうなるかを説明してみましょう。

最初の選択肢については、「現状のままになる」ということです。おそらくこれはあまり良い選択肢ではありませんが、しかし最悪の選択肢でもありません。変なことをするのなら現状のままにするのも悪くはありません。

次の選択肢については、放送の空き帯域は無線LAN用などの免許不要帯域として解放されるというシナリオです。もし、日本が例の病気を発生させて世界に乗り遅れる、日本も世界の流れに沿ってホワイトスペース解放をならなきゃならないと言い出した時には問答無用でそうなるかもしれません。

この場合には放送局が使っている良質の電波で無線LAN的なものが使えるようになって便利になります。しかし、免許いらずの帯域の電波が「飛びがとてもいい」というのは危険な現象でもあります。せっかく良い帯域なのに混信天国というトホホなことになるかもしれません。

ただ、みんなが自由に使える帯域が今までよりも増えるのは確実です。アメリカで推進されているのにはちゃんと理由もあります。

以下はそれ以外の案を検討をした場合に出てくるシナリオとなります。

三つ目は、ホワイトスペースを例えば「携帯電話会社に変則的な免許として与える」という形での利用を図るシナリオです。

無線LANよりも携帯電話が快適になる未来の方が望ましいと思っている人や、免許不要にすると混乱したりして有効活用されないと思っている人が支持するべき案でしょう。

例えば孫社長が「放送局は電波の空きを解放して欲しい」「アメリカのような無責任な方法がよいとは思わない」「混信の危険がある難しい帯域なので、携帯電話会社が責任を持って慎重に利用する必要がある」というようなことを主張して免許必要帯域にし、結局自分でも帯域を頂戴するような流れです。

ただ、かなり変則的な帯域になりますから、設備なども相当に変則的になるかもしれません。携帯電話会社に帯域が開放されても、されるだけ迷惑ということもあるかもしれません(開放されると、キャリア間での競争が始まってしまうでしょうし)。総合的に考えて面倒なだけの帯域ならば免許不要機器に任せておいた方が良いかもしれません。

最後のものは、もっと根本的な話です。ホワイトスペースがたくさん生じるような電波の使い方そのものを止めましょうという主張です。

たとえばアナログ地上波のVHFでは、関東では奇数チャンネルが使われていて偶数が空いています、関西では逆になっています。これを「関東でも関西でも全チャンネルを埋めて使うようにすれば、帯域は半分で済む」というような主張です。そしてそうやって余った帯域を根本的に空き帯域にしましょう、と。

これまでのアナログ放送ではこんなことは難しいのですが、デジタル放送ではこれが不可能でなくなってきているということがあります。

もしそのようにすれば、普通に「普通の意味での空き帯域」が大量に出来ます。普通に空くわけですから、何にでも使えます。ホワイトスペース用機器のような難しい動作をする機器も必要なくなります。ただ、かなり思い切った措置が必要になるので、実現は難しいでしょう。

もしこの案が実行可能ならば、かなり多量の帯域が空くことになり、LTE用の20MHz幅帯域を複数確保することも難しくないはずです。携帯電話会社にとって一番望ましいのはこの案かもしれません。

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605 夏野さん、iPhone/ソフトバンクのエリアの悪さを酷評

また少しだけ更新です。

以前、夏野さんがiPhoneについてあれこれ言っていることについての記事を書きましたが、またiPhoneについてまた面白いことを言っておられるのでそれについて。


◆「ドコモの代わりにはなり得ない」

本来は(この記事も)ニコニコ動画についてのインタビューだったようですが、またiPhoneの話題になっています。

「アンサーだけでは、新しいものは生まれない」夏野氏に聞く携帯の未来
http://it.nikkei.co.jp/mobile/news/index.aspx?n=MMIT0f000020082008&cp=2

ニコニコ動画の件については後でコメントするとして、まずはこの部分について。

エリアが悪すぎる。これまでソフトバンクモバイルを使ったことがなかったが、こんなにエリアが悪いのかと驚いた。これでは、ドコモのケータイを置き換えることはできない。断言する。エリアが悪いので、私は(NTTドコモの公衆無線LANサービスの)M-zoneに契約したぐらいだ。

夏野さん、エリア面について酷評をなさっています。ソフトバンクなのかiPhoneなのか、主にどちらについての突っ込みなのかははっきりしませんが、とりあえず酷評なさっています。

ドコモの代わりにはなり得ない、というだけではなく「断言する」とまで仰っています。そして、エリア悪すぎなのでドコモの「無線LAN」でエリア補完せざるを得なかったほどだ、と仰っています。携帯電話のエリアを「無線LAN」で補完したほどだ、と仰っているわけで、これは大層なツッコミ加減であります。

また改めて記事に書きたいと思っているのですが、iPhoneはどうも世界的に「3Gの電波性能が悪すぎる」ということで怒られているようでして、それ故かもしれません。しかし、夏野さんはわざわざソフトバンクの名前を出しています。

以前の記事のときもそうでしたが、夏野さんはまだiPhoneを褒めておられるようでして、その流れで記事が続いています。

前の記事のときもそうでしたし、以後の他の発言もそうなのですが、夏野さんはiPhoneをどうやら面白いデジタルガジェットの一種として褒めているようでして、「携帯としてどうなんだろう」というような良く言われるところについては、どうやらツッコミ系の意見と同じ意見のように思えます。

そしてこれもまた以前と同じ感じの話題ですが、日本でこういう端末が出なかったということについてどうも色々思うところがあるようです。

――なぜ、日本ではつまらないケータイばかりになってしまったのでしょうか。

 企業にとって、製品を作るときに一番大切なのは、魂や思い入れ、真剣勝負できるリーダーがいることだった。昔は現場からの積み上げのプロセスがしっかりしていれば、いい製品ができた。

 今は部品、パートナーや人材、会社までネットで調べて見つけられる。それが標準化されていて組み合わせることができる。そうなると、リーダーの役割は積み上げをしていくのではなく、製品の方向性を示すことになってくる。「これをつくるんだ」という信念をもっているリーダーがいて、その人が経験と信念と実力を持っていれば、とんがってワクワクしたものができる。

 しかし、いまの日本のメーカーやキャリアはケータイやデジタルデバイスをよく知っているとはいえない人がリーダーであったり、会社の経営者だったりする。

夏野さんはドコモで端末を作らせる係(メーカーに難題を押し付ける係)をしていたため、自身の過去の経験もあってのことでしょう。ご本人が端末を作らせていたわけですから。そして、夏野さんがドコモを去らなければならなかったことについての不満もこのあたりで出してしまっているようにも思えます。

つまり夏野さんは、ジョブス師匠が言いたい放題するような開発体制が良いといっています。そして、日本の企業のトップは製品が面白いというようなことを全然知らない人たちだと暗に批判をしています。

これは割と一般では共感を得られる意見なんじゃないかと思うのですが。どうも違う気もします。というのも、巨大組織のトップというのは結局「巨大組織を束ねる係」が主任務のはずだからです。そして、普通の人の予想以上にそういう任務をちゃんとこなすのは難しいはすです(ただし、日本のトップがそういう任務をちゃんとこなしているかどうかはまた別)。

それでは良い端末が作れないじゃないか、というとそれも違います。端末の責任者は社長の下に別に居ても良いわけですから。そして夏野さんは「まさにそういうこと」をやっていた人でした。

しかしそんな夏野さんが「企業のトップ」への文句を言っているわけでして、ともかくもかつての夏野さんのドコモへの不満の一部が見える感じがします。

そうするとなかなかとんがったものをつくれない。その商品に対する信念、そのサービスに対する執念がないと、自分の判断に自信が持てなくなり、すべてアンケートやマーケティング調査に頼るようになる。

 「お客様の声が……」というようなキャリアには新しいものなんて出せない。現在のお客さんの声をいくら聞いても、お客さんは未来のことまでは予想してくれない。お客さんの声を参考にするのは構わないが、頼るのは難しい。

世の中には自身の感性によって判断をするパターンと、データによって判断をするパターンがありまして、これの比較については色々な議論がすでにあります。結論としては、そんなに簡単に判断できる話じゃないということです。

とりあえず明らかなのは「間違った感性によって尖がったものを作ってしまった」場合が最悪のケースだろうということです。そんでももって感性というのは簡単に世間とのシンクロを失います。特に時間が経過すると。

また、感性による成功例は世間ウケが良いので、無闇に結果がもてはやされる側面もあります。

データについては、夏野さんが言っているとおり「過去と現在しか直接の調査が出来ない」という問題点があります。今流行っているものは調べれば解るけれども、来年流行っているものは「直接には」調査できないというわけです。

ただし、夏野さんが不満を言っているように思えるのは、もう一段下の話に思えます。

愚鈍な感じで「お客様が」「お客様の声が」というような事でしか行動できないところがありますが、それへの不満なんじゃないかな、あるいはそういう不満であると思いたいところです。確かにあれは何かの病です。しかも、日本で広く見られる現象にも思えます。

そして、以下になるともう完全に古巣ドコモへの不満表明です。

――これから、日本のケータイ業界はどうあるべきなのでしょうか。

端末メーカーには全世界でも平均以上の技術力はある。メーカーに限らず日本の企業は、まずはマネジメントのやり方を見直さなくてはならない。年功序列、他社ベンチマーク、下からの積み重ねなどは、もはや通用しなくなってきている。

魂を込めて、新しい価値観を想像してぶつけていかないと、付加価値のある商品はつくれない。いままでの作り方を根本的に見直さなくてはならない。(ドコモの広告のキーワードである)「Answer」しているだけでは新しいものは生まれない。

「Answer」しているだけでは新しいものは生まれない、だそうでして、もう完全にドコモ批判です。

ただ、組織が滅びる時には、「間違った改革」「間違った挑戦」によって最後のトドメがさされることがあります。愚鈍なのはいけませんが、決定的に間違った事をするよりも何もしないほうが良かったりもします。どちらにせよドコモは切羽詰っているわけでもありません。

そもそもドコモは「新しいものを生み出そうと思っているわけではない」という気もします。既に存在するもの、既にお客さんが欲しているものを安心に完全に提供するのがドコモである、でもよいわけです。

夏野さんには新しくなくて面白くないのでしょうが、この意味においてはドコモと他社には勝負にならない面がありまして(例えば、あんなに律儀にエリア整備ができるキャリアが他にありましょうか?)、たしかにドコモの独壇場です。

そうやって考えてみると、ドコモと夏野さんは、袂を別つべきして別れたという気もしてきます。

この記事はそもそもニコニコ動画についてのインタビューだったようなのですが、

プラットフォームとしてのニコニコ動画の可能性をさらに確信している。特に新しく導入するサービスの社内でのディスカッションでは、iモードを立ち上げたころのエキサイティングな感覚がよみがえってきた。毎日が楽しい。

ある日、絆創膏を貼ろうと思って薬箱を開けたら、葛根湯が大量に出てきた。思い返すと、ドコモを辞めるというアナウンスをしてから風邪を引いていない。ドコモ時代は仕事相手にストレスをかけて生きてきたと思っていたが、実際は自分もストレスを感じていた。

今はストレスフリーで、超ハッピー。「最近は顔つきが変わった」と言われるくらいだ。

新しいお仕事は楽しいようですね。ドコモへの不満と比べると対照的です。

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ボーダフォン、「インドで最も失礼な企業」に選出される

どうもです。

お盆も結局忙しいだけでありまして、ブログの更新もままなりませんでした。

まだブログを更新できる感じでもなかったりするのですが、あまり間をあけるのもよろしくないだろうと思いまして、どうでもいいネタでの更新をまずしておきたいと思います。


◆(ほとんど)誰も擁護しないボーダフォン日本

このブログは携帯電話関係の話題をよく書いておりますが、時には何かをあるいはどこかのキャリアについて褒めない感じのことを書かないといけない事もあります。そうなると、どなたかがご気分を悪くなされるような事もあったりします。結果、何か書きにくい話題というのも出てきたりします。

電話会社については、時流に乗っかって褒めるところとそうでないところを決めて書けばそういうことにならないのですが、残念ながら時流の感じを疑っているようなところがありまして、なかなか書く前に悩んだりする事もあります。

しかしながら、そういう悩みがあまり無い対象があります。それは何かというと、今はもうない「ボーダフォン」についての話題です(ボーダフォンが無くなった今になってから、ボーダフォンについて書くというパターン)。

だからといって何でも書いて良いと思っているわけでは決してありませんし、それどころか、「ドコモがこれまで唯一本気で警戒した相手」はボーダフォンなのではないかとも思っていて、再評価のような事も本来必要なんじゃないかとも思う次第です。

ですが、何となく「全般的に不評な感じ」で日本中割と合意してる感じがあるような気がします。

ボーダフォン日本の失敗については、「日本市場の特異性」によって語られる事が良くあります。納得の行くロジックですが、これが正しいかどうかについては本当は「日本以外ではどうなのか」ということについて調べる必要があります。

そういうことを考えておりまして、それで気になったニュースについてです。

◆ボーダフォン、インドで最も失礼な企業に選ばれる

そしてようやく今回の話題です。ボーダフォンはインドにも展開しておりまして、そのボーダフォンインドに関する話題です。

「最も消費者に無神経な企業」が明らかに:インド
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/080819/22215.html

インド政府系列の調査機関が行なった「消費者に無神経で不便な国内ブランド一覧」にて、インドの通信大手ボーダフォン(Vodafone)と衛星放送大手タタ・スカイ(Tata Sky)、そしてインターネットプロバイダでオンラインショッピング大手のシーフィー(Sify)が「リスト上位」にランクインした。

まず注意すべきは、この調査自体が信頼のおけるものかどうか解らないということですが、その点は置いておいて記事を書き進めます。

「タタ」っていうのは、インドの二大財閥の一つでして、最近だとタタ・モータース(財閥の自動車部門)が27万円の自動車を販売すると言って話題になっていたりしたところです。ああ、あのニュースの事か、と思っていただけると幸いです。

で、ボーダフォンなんですが、どうも「ぶっちぎり」で不評さが一位のようです。

「消費者に無神経で不便な国内ブランド一覧」リストに挙がった企業は次の通り。()内は苦情が寄せられた件数。

1(210):ボーダフォン(Vodafone)
2(45):タタ・スカイ(Tata Sky)
2(45):シーフィー(Sify)
4(10):デカン航空(Air Deccan)
5(11):サハラシティ不動産(Sahara City Homes)
6(17):クラブ・マヒンドラ・ホリデー(Club Mahindra Holidays):リゾート業
7(6):ディスカウント・プレミアクラブ(Discount Premium Club):リゾート業
8(6):オマックス開発(Omaxe Developers):不動産
9(2):ヴィーアン建設(Vian Infrastructure):建設不動産
10(2):スターリング・リゾート(Sterling Resorts)
11(15):インディゴ航空(Indigo Airlines)

ダブルスコアどころの騒ぎではありません、2位を4倍してもまだボーダフォンには届きません。

一覧を発表したのは、オンラインで寄せられる消費者の苦情実態を調査する政府認定機関のConsumer Online Resource & Empowerment (CORE)。「消費者の苦情に対応せず改善努力を怠った」としてブラックリストに名前が挙がった企業は計11社。

中でも「最高」の評価を受けたのはボーダフォン。合計210件もの苦情が同機関に寄せられたが、いかなる措置もとられておらず、回答もないという。続くタタ・スカイとシーフィーでは、共に合計45件の苦情が寄せられ、それに対する処置も皆無だという。

210件というのがどういう基準なのかさっぱりだったりしまして、ボーダフォン以前にインド自体がどの程度大丈夫なのか解りかねるところもありますが、

・実際に苦情が多い
・お上が何らかの事情で苦情が多いことにしたい

のどちらかが事実であろう事は予想がつきます(調査方法が根本的におかしい、というようなことも考えられますが・・・)。

後者ならば、インド政府恐るべしということになります。インドではあらゆる予測不能な事がさも当然のように起こりますから(常識というものをインドに対して当てはめてはいけません)、この調査が最初っから最後まで完全なインチキだったとしても何ら不思議ではありません。

前者ならば、インド人も日本人と同じような目にあっている可能性があるって事になります。よって、日本からの撤退についても、日本の固有性の問題ではなく、ボーダフォンはそもそもが失礼なところであって、日本人は失礼に敏感なだけだったということかもしれません。

ボーダフォン日本時代に面白くない思い出のある人、インド人はあなたの仲間かもしれません。

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どうやら、iPhoneは速度規制がされるようになったらしい

iPhoneに速度規制がされるようになったようなので、その件について少し。


◆iPhoneが夜には100kbpsくらいしか出なくなったらしい

8/11(月曜日)からどうやらiPhoneが速度規制されるようになったようです。例えば火曜日は、

・18時くらいから規制開始
・規制中は100kbps程度しか出なくなる
・25時ピッタリに規制解除、突然速度が出る状態に回復する。

前の日も同じような現象が発生したことと、両日ともに25時で突然速度が回復していることから、まあ速度制限なのでしょう。

公式の発表が何も無い事から、これは

・これはユーザを大規模に巻き込んだ「テスト」

という失礼な事が行われたか、

・なんか凄いやばい事になりかけたので、緊急スイッチを押した

のかもしれません。

規制に気がついてしまった人は、相当お怒りのようです。100Kbpsはさすがに規制しすぎのように見えるようですね。

ただ、少しだけ速度制限してもおそらく「あんまり効果が無い」ので、ここまで速度を絞らないといけないんじゃないかとも思います。

考えてみてください、例えば500Kbpsに絞ったとしましょう。すると多少遅くなります(もともとの速度がそれほどでもなくて全く影響を受けない人も多いでしょう)。しかし、利用者はこれまでと全く同じような事をしようとして、主に待ち時間が増えるだけになります。利用スタイルには影響を与えません。

ということは容量的には結局同じような負荷がかかったままだということになります。

利用者の行動に影響を与えるレベルまで規制すると、「やろうと思っていたことを諦める」ようになるので、そこから一気に規制の効果がでるようになります。たとえば今回の規制で動画の再生などを諦めた人は多かったはずです。

今回の規制はお怒りの方が居られる一方、規制がなされている事に気がつかなかった人(言われてから気が付いた)もおられるようです。これは速度規制が妥当なラインだったという証拠にも思えます。

まず、HSDPAの電波が来ていないところで使っている人にはさほどの速度低下感ではなかったようです。

また、ウェブブラウズやメール程度で利用している場合には、広い意味での「許容範囲」でもあったようで、今日はいつもより何か遅いな程度で済んだ人もいるようです。

ただ、ネットでは不満を持った人ばかりが意見を書くので、こちらの意見はあまり出てこないでしょう。

おそらく、動画再生的な利用を諦めさせ、テキスト主体的利用は一応ちゃんとできる足切り点がこのあたりの速度だったのではないかと思ったりもします。

やっぱりiPhoneは怪物級のパケット浪費端末のようです。そして怪物の力を封印してを普通の端末に戻す速度ラインは、100kbpsくらいになってしまうのではないかと。

もしそうなら、「夜は利用スタイルを切り替えて使ってください」というのがソフトバンクからのメッセージと言うことになりましょうか。

規制されて困った方の利用者の方は、「これはちょっとやりすぎた規制のテストだっただけ」で、明日からはここまで規制は無いことを祈りましょう。そういう可能性もありますから。

また、iPhone以外の電話機でSBMを使っている人は、iPhoneを規制しないと電波のパンクに自分も巻き添えになってしまう瀬戸際になっているということかもしれません。こういう人も、自分は部外者だとは思わない方が良いでしょう。

AUの規制の行方も含めて、今後どうなるのか気になります。

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606 北欧の2.5GHz帯:LTEとWiMAXが「共存」ではなく、LTE勝利なんじゃないかという件

久しぶりにWiMAXとLTEネタです。

北欧の二カ国(ノルウェーとスウェーデン)で2.5GHz帯の割り当てが済んでおりまして、その件について「LTEとWiMAXの共存が始まった」という記事が出ていた件について、少し書いてみたいと思います。

いろんな感想をもたれた方がおられるようですが、どうやらこの件は意外なことが「事の根幹」となっているのではないか、ということを書きたいと思います。


◆たしかに「共存」なのでしょうが

こういう記事がありまして、それについて少し書きたいと思います。

欧州の2.5GHz帯で始まったWiMAXとLTE共存の動き
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080801/311932/

非常に簡単に説明をすると、こういう事になったということです。

・欧州では2.5GHz帯の割り当て作業が行われつつある
・オークションによる配分がなされる方向
・ノルウェーとスウェーデンでは割り当てが完了した
・両国共に、LTEとWiMAXに共に帯域が割り当てられた

これについては二通りの反応があるように思えます。まず、下り坂のモバイルWiMAXが欧州から完全排除されるんじゃないかと思っていた人は「そうでもないんだ」という反応、そして逆に2.5GHz帯といえばモバイルWiMAXの聖地だったはずで、なんかLTEに侵略されてるという反応です。

どちらにせよ想定の根本にあるのは、LTEとモバイルWiMAXがそれぞれの技術の将来性を賭けて争い、その結果両方とも生き残ったというような解釈だと思います。

でも、今回の件についてはそのような意味では「LTEとモバイルWiMAXはちっとも競争していない」のです。

なぜかというと、LTEはFDDであり、モバイルWiMAXはTDDなのであり、つまり最初から「競争が起きない」状況であるためです。


◆TDDとFDD

以前から読んでおられる人には再度の説明になりますが、簡単に技術的な説明を行います。詳しくは過去の記事を参照ください。

ちょっと解り難い話かもしれませんが、これは「今回の割り当て結果」になった原因の主因ですので、何とか理解していただきたい。

携帯電話などで使われる無線通信では、下りの通信(基地局→端末)と上りの通信(端末→基地局)の分離の仕方で、二種類に分類がなされます。TDD(Time Division Duplex:時分割複信)と、FDD(Frequency Division Duplex:周波数分割複信)です。

TDDとは、下りの通信(基地局→端末)と上りの通信(端末→基地局)を
・同一の周波数で行い
・時間で上り下りを分割する
方法です。

FDDとは
・上りと下りで違う周波数を使う
方法です。

で、今回の話題にこれらがどう関係するかというと、TDDとFDDでは「帯域の使い方が違う」ためです。

FDDでは上がりと下りで違う周波数を使いますから、「上り用帯域」と「下り用帯域」を別々に必要になります。一方でTDDの場合はそんなことはお構いなしです。

で、FDDでは「上り用帯域」と「下り用帯域」は「適度に間隔を空けてペアになっている」必要があります。まず、なせくっつけた周波数配置にしてはいけないかというと、近づけると「上がりと下りの電波が干渉する」ためです、ので、離れていないといけない。

しかし、離せばいいかというと離しすぎてもこれも問題が生じます。周波数が違いすぎると、アンテナやアナログ回路が共通で使えなくなってしまうためです。

よって、FDDでの割り当てには以下のような配慮が必要になります
・上がりと下りの帯域をペアにして割り当てないといけない
・それぞれは「適度な間隔」で離れていなければならない

一方でTDDの場合、帯域はひとかたまりになっているべきで、バラバラになっていても面倒なだけです。ただし、FDD帯域をTDDで使いまわすことは不可能ではありません。しかしTDD帯域でFDDをするのは基本的に出来ません。

◆試合前に結果が出ていた

TDDとFDDの違いは解っていただけたでしょうか。

次に、主要な通信技術がFDDなのかTDDなのかで分類してみます。

FDD:大半の通信方式
GSM、PDC、W-CDMA系、CDMA2000系、LTE

TDD:
PHS、次世代PHS、TD-SCDMA、WiMAX

LTEについてもTDDモードのLTEも開発中ですし、WiMAXにはFDDモードもありますが、一般的には上記のとおりになります。

電波の割り当てを行う場合には、まず「帯域の割り当て方針」が先に決められます。つまり、「ここは○○Mhz幅のTDD用帯域にしよう」「ここは○○Mhz幅のFDD用帯域にしよう」と、まず電波の割り当て予定地図が先に作られます。

そして、帯域のFDD用とTDD用への割り振りが完了した後に、
・TDD用帯域が欲しいひとはTDD用帯域のオークションに参加してください
・FDD用帯域が欲しいひとはFDD用帯域のオークションに参加してください
ということが行われます。

つまりオークションでは、TDD方式同士、FDD方式同士の技術競争は行われるのですが、TDDとFDDを超えた競争は「試合前に終わっている」ということです。

欧州で今現在、現実的に選択肢になりうるものは、
FDD:HSPA+、LTE
TDD:WiMAX
のみです。

FDD帯域ではHSPA+とLTEでの取り合いが発生しますが、TDD帯域はWiMAXで手を挙げるところしかないのです。発生しうる現象としては、「TDD帯域では手を挙げる奴が少ないなあ」という現象だけです。

つまり、WiMAXとLTEの勝負は「その国の政府がTDDとFDDの割り当てを考えた時点」で終わっているのです。そして「全部FDDに割り当てます、TDDは門前払いで滅んでください」という方針はさすがに決め難いという事情もあります。


◆2005年の日本の割り当てとも似ている

実はこの現象、2005年の日本の「帯域割り当て」の時とも少し似ています。あの時はこのような割り当てになりました。

・1.7GHz帯(FDD)が2枠
・2.0GHz帯(TDD)が1枠
結局、FDDにイーモバイルとソフトバンク(後に返上)、TDDにアイピーモバイル(後に炎上)が割り当てられます。

この時、ソフトバンクとアイピーモバイルが争ったでしょうか?争っていませんよね。つまりそういうことなのです。

つまり北欧二カ国で「共存した」という結果を決定したのは、LTEとWiMAXをめぐるマーケットの判断ではありません。「政府の役人」の判断の結果なのです。

ついで言うのならば、「共存しない」結果に到達するためには、以下のどれかが必要になります。

・政府の役人がTDD帯域を無くすという思い切った判断をする
・TDD帯域に誰も立候補しないという驚きの結果が発生する
・複雑なオークション方式を取り、入札額とTDD/FDD割り当て比率を連動させる


◆事前に割り当て方針決定済み

CEPT(欧州郵便・電気通信主管庁会議)というところが割り当て方針を大まかに決め、それを参照して各国が割り当てを行っているようですが、当然にこの方針決定は以前に行われています。

CEPTの計画では,2.5GHzのペア周波数で2×70MHzを,非ペア周波数で50MHzをそれぞれ配分することとした

ペア周波数というのはFDD用のことで、非ペア周波数とはTDD用のことです。

一般人としては、LTEとWiMAXが直接対決を行って、その結果より良い方に帯域が割り当照られる形にして欲しいはずですが、試合前から配分の骨格は決定済みだということです。つまり、そういう意味での技術間競争は起こっていないのです。

また、両国の割り当て時期(オークション終了時期)も微妙です。
・ノルウェー:2007年11月
・スウェーデン:2008年5月

ノルウェーは日本で帯域の取り合いをしていたのと同じ頃だった事になります。つまり、オークションを開始する前にノルウェー政府が帯域配分を決定をしたのはさらに前ということになります。

ちなみにスウェーデンですが、こちらはさらに別のファクターもあります。ここはあの「W-CDMA/LTE陣営の巨人エリクソン」の本国なのです。今度は逆に、WiMAXには不必要に不利な条件があるということになります。

で、それでも結局「LTEが人気」だったようです。まず、既存キャリアの全てが「LTE帯域が欲しい」と言っています。

ノルウェーの結果
FDD:テレノール,ネットコム,アークティックワイヤレス,ハフスルンドワイヤレス
TDD:クレイグワイヤレス

スウェーデン
FDD:HI3G,Tele2,テレノール,テリアソネラ
TDD:インテルキャピタル

ノルウェーのTDD帯域を獲得した「クレイグワイヤレス」はカナダの企業のようです。スウェーデンでは「インテルキャピタル」というところが獲得をしていますが、これが一体何であるかについては説明するまでも無いでしょう。本部が直接落札しなきゃならない状況だったとも考えられます。

つまり、TDD帯域を獲得したのは大西洋の向こうからやってきた北米勢力のみだったという事になります。

こういうのは「共存の動き」とはあんまり言わない気がします。もしそうならば、CEPT(欧州郵便・電気通信主管庁会議)の割り当て方針が「共存を強制するもの」だっただけということに思えます。


◆イギリスやオランダでは

記事によると今後の割り当ては

・英国とオランダが2008年中
・ドイツが2009年

となっています。

そして、英国とオランダでは以下の新しい措置が取られます。

・TDDとFDDの割り当て配分は固定せず、オークション結果に応じて動的に割り当て比率を変える

これはつまりどういうことかというと、ニーズがFDDに集中した場合にはTDDの割り当てがどんどん減ってゆく事になっている、ということです。とりあえずは「欧州の共通割り当てルールは反故にされる」ということです。

この割り当て方式変更がもたらす結果は「TDDが減る」だろうということは予想のつくことです。よって、「TDD用を減らしたい」という政府の方針転換とも思えます。

来年に割り当て作業を行うドイツが「ペア周波数で2×70MHzを,非ペア周波数で50MHz」の方針をどのように処理するのかも注目すべきかもしれません。

ちなみに、欧州はアジアと違って人口密度が高くありません。よってWiMAXの本来の用途であるFWA、つまり固定回線の代わりをワイアレスで行うような使い方は成立しやすい条件があります。よって、モバイルではないWiMAXは日本より成立しやすい条件があります。それでも、ということです。


◆日本で2次割り当てがあるとしたら

日本の2.5GHz帯についても将来的に2次割り当てが行われる可能性があるとされます。

去年までの段階では、2次割り当てが行われた場合には、2007年の2.5GHz帯割り当ての落選組にモバイルWiMAX用としての割り当てがあるのではないかという話が聞かれましたが、どうも違うことになりそうです。

おそらく欧州と同じく、LTE用としての割り当てがなされるのではないか、と思われます。

そもそも欧州は「非ペア周波数で50MHz」ですから、日本は既に欧州よりも多くの帯域をTDD用に割り当て済みです(KDDI:30MHz幅、ウィルコム:30MHz幅、地域WiMAX:10MHz幅)。そして、欧州の今後の割り当てでは50MHz幅より減る流れにも思えますから、日本でもLTEにも配分しろということになるでしょうね。

どっちを向いてもLTEの話題しかないのは実に面白くないのですが、結局そういう流れのようです。

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607 iPhone内部に「デスノート」が存在? - 『このリストに書かれたアプリは死ぬ』

すみません、記事タイトルはウケ狙いです。でも内容は本当。

iPhoneの内部に妙なものが発見されて、ちょっと騒動になっているという件について。


◆キルスイッチ発見?

外国の方がiPhoneの内部を覗いていたところ、「妙なもの」を見つけてしまったとかで、主に海外で結構な話題になっているらしい件についてです。

iPhone 2.0にブラックリストダウンロード機能を発見--非公認アプリ対策とのうわさも
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/MAG/20080808/312456/

なんか色々な話が出てますが、事実としては以下が判明したのみです。

iPhone AtlasでBen Wilsonが記しているように,iPhone向けアプリケーションなどを独自に開発するソフトウェアエンジニアのJonathan Zdziarski氏は,「iPhone 2.0」ソフトウェアの内部を精査しながら,毎回「悪意のある」アプリケーションのリストをダウンロードさせるURLの存在を,このほど突き止めた。

つまり、それはどういうことかというと、

この詳細を深刻に受け止め,Appleがリモートで,気に入らないiPhone向けアプリケーションを使用不能にする用意を整えていることの証拠であるとの情報も,いち早く出回っている。
Appleが,iPhoneで動作する「キルスイッチ」を開発しているとのうわさは,まだだれもその実態を正確に把握していないにもかかわらず,多大の悲観的な反響を呼んでいる。

「キルスイッチ」というのは外国人の方が好きな表現で、こういう感じです。

ボス「ごきげんよう愚かな市長さん、私に逆らったらどうなるかわかっていなかったのですか?」
市長「これは実は・・」
ボス「言い訳は良くないねえ。・・ではさようなら皆様」
ボスは机の上にある赤いボタン(キルスイッチ)を押す、画面には大爆発に包まれる都市。

◆HOW TO USE IT:このリストに書かれたアプリは死ぬ

発見されたものはこういう仕組みだ、と言われています。

・定期的に「何かのリスト」をダウンロードする
・iPhoneは自身の内部のソフトウェアを監視している
・「何かのリスト」に該当するソフトウェアの存在が認められると、そのソフトウェアは即時に無効化ないしは削除

ジョブス師匠がこのリストに書き込んだアプリは死ぬのです。まるでデスノートです。

つまりジョブス師匠はiPhoneを「デスノート」付きにしていたらしい、という騒動です。


◆意図はわかっていない

いろんなニュースが出ていて、アップルを非難しているものや、「いやこれはたいしたことが無いんだよ」というようなことを書いていたりするものもあります。もう少ししたらアップル自身のコメントが出てくるかもしれません。

しかしこれらは全て「感想」にすぎません(アップル自身のコメントを含めて)。たとえアップルがどのように説明しようとも、言われているとおりの機能が存在する限り、批判されているような事は「いつでも実行可能」だからです。

そして、感想の部分以外についてはまだ良くわかっていません。

Zdziarski氏は,米国時間8月7日午前に電子メールで回答して,「よく分かっていることといえば,iPhoneが,悪意のあるURLリストをダウンロードするという点のみである。この情報だけだと,まるで第3次世界大戦のようなものさえ引き起こしかねないし,ただ数台のコンピュータが,どこかでバターミルクパンケーキのレシピを吐き出すことになるだけかもしれない」と記している。

なんとも要領を得ない説明ですが、つまりこういうことです。

・iPhoneは「デスノート」付きだった
・ただし、これは何のために存在し、何に使われるか不明
・理屈の上では恐ろしい事も可能だし、良い事?に使うことも出来る
・必要悪かもしれないし、単なる暴挙かもしれないし
・結果として何が起こるかは解らない

アップルはiPhoneをがんじがらめにしているという「実績」も不安を増長させている原因です。

・アップルの公式サイトから落とした公認アプリ以外使えない完全管理社会
・「コードを解釈する機能のあるソフトウェアの開発を禁止」するなどの閉鎖的措置、このことが原因でJavaは作れないし、Flashも作れないし、ウェブブラウザも開発できません。FireFoxの人が怒っていた件です。

ちなみに、Javaやブラウザが開発できなくなっている件については、「利用者の安全をより確保するため」みたいなことが理由になっているようです。ですが、ビジネス上の理由での締め出しが原因だとも言われています。

◆さてあなたはどう思うか

キラ(ジョブス師匠)がデスノートを持っているらしいということなのですが、何のためにそんなものがあるのかがわからないということです。

キラ派(たいしたこと無いぞ派)は、「極悪なアプリケーションをキラ様が裁いてくださるのだ」という意見です。デスノートは世界を良くするために使われると。

しかし既に明らかになっているアプリケーションに開発制限について、FireFoxの開発者は「アップルは、こうした制限はセキュリティやパフォーマンス上の理由だと説明しているが、本当はビジネス上の理由だと私は思っている」と言っています。

FireFoxの「ボス」、iPhoneの不自由さに不満表明
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/06/629_firefoxipho_2ee9.html

これと同じ論理だと、名目は極悪人を裁くためだったとしても、「アップルはデスノートを自分のビジネスのためにも使うつもりだ」ということになります。

ヨツバキラ派とでも言っておきましょうか。

そしてもう一つの根本的な批判が

「そもそもデスノートのようなものが存在する事自体間違いであり、そのような権限が誰かに与えられているのがおかしい」というものです。

L派だとでも言っておきましょうか。

さて、あなたはどのようにお考えでしょうか?

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608 iPhone料金の「値下げ」は値下げではなくて「イラネ割」に思える

iPhoneがパケット料金を二段階定額制にしましたが、その件について記事にしてみることにします。

・あまり値下げになっていないこと
・しかし別の意味では値下げになっていること

という感じの記事を書きたいと思います。


◆「安くなった」と報じているニュースが目立ちますが・・

孫社長は相変わらず上手いなというか、今回の値下げはかなり思い切った値下げに見えるように出来ています。

第一印象
これまで:5985円
値下げ:1695~5985円
2990円/月でiPhoneを持つことが出来ます

一台目として持つのは躊躇している人が多いというか、そもそもソフトバンクショップの店員さんが「二台持ちを薦めてくる」ような売り方です。しかし、どうも二台持ちとしては高すぎるというところが問題でした。

2990円/月なら持とうかな、と思わせるようにしたわけです。

では、以前の記事の「実質月額料金」を新料金で書き直してみましょう。

修正版:実質的な毎月の支払い最低額(8GB版の場合)
980円+315円+(1695~5985円)+960円 = 3950~8240円/月

修正版:実質的な毎月の支払い最低額(16GB版の場合)
980円+315円+(1695~5985円)+1440円 = 4410~8700円/月

宣伝されている2990円には端末のローン支払いが入っていなかったので、その分の値段が上がったのが上記のものです。

二段階定額制だから「節約すればきっと安く使えるんだ」と思いたいところですが、計算してみると二段階定額はあまり意味が無い事がわかります。

二段階定額料金:
2万0175パケット以下 最低料金
その間 0.084円/パケット
7万1250パケット以上 上限料金

7万1250パケットはどれくらいのサイズかというと、わずか8.7メガバイトに過ぎません。1Mbpsくらいの通信を60秒行うと消費されてしまう程度の量しかありません(例:1.16Mbps×60秒)、つまり電波状態の良いところで回線を60秒フル稼働させるとそれで上限に到達しまう場合があるような、そんな量しかないということです。

一ヶ月で60秒だとすると、1日にするとわずか2秒になります。

もちろん回線はずっとフル稼働するようなものでもありませんが、時間を10倍にしてみたところで一日あたり一分にも全然届きません(平均速度120kbps×20秒/日で上限)。さらに10倍に薄めて100倍にしても数分程度にしかなりません。

フルブラウザでウェブブラウズをするとあっという間に「月額およそ一万円」に逆戻りのはずです。動画再生をしようものなら文字通り瞬殺で上限到達となるはずです。

そもそもiPhoneを買ってすべき楽しい事は、パケットの浪費を伴うことばかりです。iPhoneを買ってパケットを節約せよというのはちょっともったいない使い方です。

節約すればきっと安く使えるんだ、と思わせておいて、その実としては値下げになっていない気がします。

これは安いと思って二台持ちしてみたものの、あっさりと一万円コースの請求がやってきましたということになるような気がするということです。良く出来ています。

再修正版:実質的な毎月の支払い最低額(8GB版の場合)
980円+315円+ほぼ5985円+960円 = ほぼ8240円/月

再修正版:実質的な毎月の支払い最低額(16GB版の場合)
980円+315円+ほぼ5985円+1440円 = ほぼ8700円/月


◆しかし、こういう場合には安くなります

念のために書いておきますと、今回の料金改定は純粋な値下げです。よって以前よりも高くなる状況は考えられません。見た目の安さ感と実態がかなり違うかもしれない、という新しい問題が生じただけで、値上げか値下げかと聞かれれば純粋な値下げです。

上記の説明のとおり、iPhoneをiPhoneとして使う限り、つまり「iPhone面白いな」とか「買って楽しいな」と思っている人は値下げ効果がなさそうであるように思えます。

ただ、「イラネ」と思ってしまった人の場合には、二段階定額の恩恵がやってきます。買ったけど全然使わなかったとか、あべこべにも音声通話にしか使わないような使い方をしている場合には安くなります。

安くなるパターン:イラネになってしまい、自宅に置きっ放しになってる人
・8GB版 3950円/月
・16GB版 4410円/月

4000円前後ではあるわけで安くはありませんけれど、家で電源を切って転がしておけば半額くらいにはなるというわけです。これが今回の値引きでの最大の恩恵に思えます。

「イラネ割」とでも呼びたくなるような状態です。


◆イラネ割としてのお得さを考える

「使わなくなって自宅でほったらかしになる」というのは「ひろゆきさん」が予言したiPhoneの一ヵ月後の未来です。

ほったらかしになるということは、積極的に何もしないということなので、それがあるがままの姿だともおもうのですが、イラネ割以外に積極的に「解約してしまう」という方法もありますから、それと比べてみましょう。

解約すると販売奨励金の1920円/月の支払いが復活するはずです。これで、比較をしてみましょう。

イラネ割
・8GB版 3950円/月
・16GB版 4410円/月

解約後のローン支払い
・8GB版 960円+1920円=2880円
・16GB版 1440円+1920円=3360円

イラネ割の方が1000円くらい高いということが解りました。ですが、ホワイトプランで通話できますし(ほったらかしておいてそういう使い方は無い気もしますが)、もう一回iPhoneを使うように戻したり出来ることを考えると、悪くは無いかもしれません。

「解約Lite」という風にも思えますね。


◆ソフトバンクにとって

パケットを使わなければ安くなるということは、無線LANで使えば安くなるぞ、と思えるかもしれませんが、最初に説明したとおり「上限が低すぎる」ので、基本的に無線LANを使う習慣で使っても、上限に到達しないようにするのは難しいのではないかと思います。

もちろん、ほぼ無線LANでしか使わないような使い方をすれば話は別ですが、そうなるとiPhoneである意味がなくなります。それならばiPod Touchを買ったほうがよっぽど経済的になります。

よって、新料金コースで無線LANでの利用が増えるというのはちょっと疑問です。しばらくは頑張ってみるかもしれませんが、すぐになんじゃコリャになって節約する意味が無い事を悟るでしょうから(あるいは人間ってもっと頭が悪くて、それでも節約してしまうのかしら?)。

現在でも無線LANで利用している人が割と多いようですが、これは夏野さんが言っていたように「3G接続だけど遅いけど、無線LANなら快適」だからのような気がします。少なくとも私の知っている限りではそんな感じのようです。

また値下げ前で考えると、買ったものの飽きられて放置されている端末は「一番儲けが大きい」端末でした。一切通信をすることなく(つまり設備に負担をかけることなく)、月8000円以上の収入をソフトバンクにもたらす事になるわけですから。

iPhoneは大変残念な事に買うべきではない人が買っている場合も多いと考えられるため(変に話題になりすぎたため)、自宅で放置されている端末は割とある状態になるのではないかと思います。これから時間が経つにつれて、そういう可哀相なiPhoneは増えてゆくはずです

「値下げ」で安く持てるようになったように見えるので、二台持ち狙いで購入する人は増えると思いますが、使われなくなって寝ている端末からの収入は経ることになります。

もちろん孫社長は最初からそんなことは解っているはずですから、ソフトバンクとしては寝ている端末一台あたりからの収入を減らしても、台数を出したい事情があるのでしょう。


◆意外な人が得をするという変な結論

とりあえず、iPhoneをiPhoneらしく使う前提においては、これまでとほとんど変わらないように思えました。よって、二台持ち前提で考えている人は引き続き慎重に検討なさるのがよいのではないか、と思います。

おそらく、月額およそ一万円は変わらないのではないかと思います。音声通話もするのであれば、一万円超えは普通になるはずです。月額料金が下がる、という理解の仕方はどうもよろしくないように思えます。

ただ、二年経つ前に飽きて自宅でほったらかしにする可能性が高いので悩んでいる人には、これは良い値下げかもしれません。飽き性の方、熱しやすく冷めやすい人には朗報であるかもしれません(?)

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609 スプリントの資金調達計画が翌日に撤回の憂き目 / mova受け付け停止の件

スプリントというアメリカの携帯電話会社について記事を書きます。

最近読まれるようになった方のために説明すると、スプリントというのは北米でモバイルWiMAXをやろうとしていた携帯電話会社でしたが、その後経営状態がおかしくなってそれどころではなくなっているところです。

スプリントがどうなるかは、モバイルWiMAXが将来どうなるかということに影響します。


◆スプリントは相変わらずピンチ

スプリント、4-6月期は赤字転落
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCHT2220.html

スプリントといえば北米のモバイルWiMAXの鍵となってきたところですが、相変わらず経営状態は不味いようです。新CEOの努力で状況は改善しつつもあるようですが、ピンチである事には違いないようです。

ダニエル・ヘッセ最高経営責任者(CEO)はインタビューで「まだまだ先は長い。1四半期は、9イニングある試合の1イニングのようなものだ」と語った。

出来れば良いことをアピールしなければならない場であるにも関わらず、慎重な事を言っています。スプリントの建て直しにはまだまだかかるようです。

で、この時に「建て直しのためにお金を調達する計画」が発表されていたのですが、これが妙な事になってしまいました。


◆一日で計画頓挫

スプリント、30億ドルの転換優先株発行を中止
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCHV6407.html

負債の一部返済に充てるため計画していた30億ドル規模の転換優先株発行を中止したと明らかにした。
スプリントの株価は前日6日、転換優先株の発行計画が発表されたのを受けて14%下落していた。

つまりこういうことです、変な事が起きました。

計画を発表(最初のニュース:8/6)→株価どーん→すぐに計画撤回(8/7)

つまり、最初に紹介したニュースの行事(8/6)で「転換優先株を発行します」と発表したところ、株価がどーんと下落し、あっという間に計画撤回の憂き目となったということです。何やっているんですかスプリント。

スプリントは転換優先株のほかにも現金を調達する方法を模索している。先月にはTowerCo(ノースカロライナ州ケアリー)に無線通信塔3300基を現金約6億7000万ドルで売却することで合意したと発表した。また事情筋によると、韓国のSKテレコム(NYSE:SKM)とは、SKテレコムによる出資を伴う可能性のある技術提携について話し合っている。スプリントは昨年、SKテレコムからの50億ドルの出資提案を退けている。

モバイルWiMAX関連では韓国からの資金の噂が時折出ているようですが、これもそのひとつです。「事情筋によると」というのが怪しい感じもします。そもそもWiMAX関連ではこういう良く解らない話が多いような気がしますので。


◆mova新規受付終了

ドコモ、第2世代の「mova」新規受付を11月末で終了
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/41288.html

11月末でドコモの第二世代のmovaが新規契約できなくなるようです。年内で新規受付事務関連をすっかり終わらせるおつもりのようですね。しばらく前(でもない?)まではFOMAにエリア面の不安があることもありましたから、ものすごい田舎でもつながる事の多いmovaをあえて契約する人も結構いましたが、それもこれでおしまいです。

FOMAのエリア力は驚異的に改善したので、受け付け停止をしてももう大丈夫、ということ自信の表明でもあるのだと思います。

既にあるmova自体は引き続き使え、機種変の在庫も一応確保してあるそうです。しかし周波数自体の免許が2012年7月24日で失効するのでそれまでには完全停波しなければなりません。随分先ですが、ドコモユーザには全然動こうとしないユーザが多そうなのもまた事実です。また、ドコモはこういうこと(ごねるユーザとの巻き取り交渉)は苦手な気もします。

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610 エリクソン「先行してLTEを導入するドコモは稀な例」

携帯基地局を作っているエリクソンが、日本で色々発表した件について少し記事にします。


◆ソフトバンクの次世代はエリクソンのHSPA+が担う?

エリクソンというのは、欧州(スウェーデン)の携帯基地局メーカです。GSMの本部みたいなところで、W-CDMAの本部の一つで、LTEの本部の一つであるようなところです。つまり文字通り業界の巨人です。

詳しくは以前から書いている記事を参照ください。エリクソンはモバイルWiMAXを良くない技術だと評価しており、その関係でも記事を書きました。

まず、ソフトバンクがエリクソンの基地局の採用をするというニュースです。

エリクソンがソフトバンクモバイルの東名阪のHSPA回線を増強
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080806/312319/

スウェーデンの携帯電話向け機器メーカーであるエリクソンは,ソフトバンクモバイルとHSPA(high speed packet access)ネットワークの拡張とアップグレードを引き受ける包括的な契約を結んだと,2008年8月6日に日本エリクソンが開催したセミナーで明らかにした。

ちなみに、ドコモもエリクソンと縁が深く、イーモバイルも東京大阪名古屋などはエリクソンに基地局を作ってもらっています(ただし地方都市は中国企業)。今回の発表は、加えてソフトバンクもエリクソンに基地局を頼む事になったという発表です。

発表でもこのあたりの事情への配慮はなされていて、

エリクソンはすでに7月18日に英文のリリースを発表していたが,日本語でのリリースは出さなかった。これは,日本国内の他の顧客である携帯電話事業者に配慮したためだという。

おそらくドコモに配慮したものだと思われます。エリクソンはドコモとずっと関係がありますし、ドコモの方が上客です。エリクソンはドコモのLTE基地局網も受注しています。

しかも、おそらく配慮したんだろう、ということではなくて、「日本国内の他の顧客である携帯電話事業者に配慮したため」と答えてしまっているあたりがエリクソンの「ドコモ>>>>ソフトバンク」加減を示すものであるとも思えます。

今回の契約では,通信トラフィックが多い東京,名古屋,大阪で,既存のHSPA基地局を高速化する。また,新規に高速の製品を導入していく。

東京・大阪・名古屋で基地局整備を請け負うようです。またアップデートだけではなく、基地局の入れ替えやバックボーンの整備も請け負うようです。つまり、世界のエリクソンが「なんちゃって基地局」の後始末をするということのようです。

ソフトバンクは微妙な事になっている基地局網について反省しているからこその「エリクソンへの依頼」だと思われますので、新しく入れる基地局はアップグレードへの配慮がなされ、最低限HSPA+のMIMOなしには対応可能な基地局で、もしかするとLTEまでのアップグレードを配慮したものではないかという気がします。

また、イーモバイルも東京・大阪・名古屋ではエリクソンの基地局を採用していますから、もしかすると「日本で飛ぶHSPA+の電波はエリクソンによるもの」みたいなことになるかもしれません。


◆HSPA+が当面の主流でLTEの早期採用は例外的

また、W-CDMA/LTE陣営の今後についても発表がなされています。エリクソンはW-CDMA/LTE陣営の親玉ですから、これは単なる状況の解説ではなく、エリクソン自身が「そのようにする方針である」という面を含んでいます。

エリクソン、LTEなど次世代ネットワーク戦略を解説
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/41273.html

まず時期的なものについて

2008年の後半にも「HSPA Evolution」として、21Mbpsや42Mbpsの通信速度を実現するHSPAネットワークが登場する見込みである

程なく、第三世代の強化版が登場する事になっているようです。しかも2008年中に、だそうです。

21Mbpsは14.4Mbps(従来の3.5世代の最大速度)を1.5倍化(64QAMを採用)したものです、詳しくは過去の記事を参照してもらうこととして今回は詳細な説明は省きます。

信号処理だけで高速化するので、従来の基地局でも新しいものであればアップグレードで対応できるかもしれません。

42MbpsはそれをさらにMIMOに対応させるもので、送信アンテナが変わってしまうので基地局の入れ替えが「通常は」必要になります。


平行して開発されているLTEは2010年ごろから商用化される見通しであることが解説された。

これはこれまで発表されているとおりです。2009年に前倒しで採用するところがあるか無いかくらいでしょうか。エリクソンとしてはそんなに急ぐつもりは無いのもかもしれません。


さらに、同一帯域で隣接する2つの下り帯域を同時利用するDC-HSDPA(Dual-Cell HSDPA)や、4×4 MIMOの活用により、HSPA Evolutionとして80Mbpsの通信速度まで計画されていることを説明した。

DC-HSDPAというのはEV-DO Rev.Bみたいな事をする高速化です。現在、ドコモやソフトバンクは2GHz帯に「四つの通信帯域」を持っていますが、これを二つ以上束ねて高速化する方法です。いわば1人で何人分もの周波数帯域を使ってその分高速化するという解りやすい方法で、素直に高速化しますけれども、電波の消費量も増えてしまいます(混雑しやすくなる)。

DC-HSDPAについては「ソフトバンクモバイルが実用化すると考えられている

という発表もありまして、エリクソンへの基地局発注はここまでの進化を見越したものである可能性があります。ただ、DC-HSDPAは速度が出る代わりに混雑しやすいわけでして、そのあたりは大丈夫なんでしょうか。

なお、ドコモがHSPA+への流れが出来つつある事に苦言を呈していましたが、

ドコモはHSPA+が嫌いらしい
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/07/616_hspa_1d00.html

すでにHSPAネットワークを構築した事業者は、今後LTEの前段階としてHSPA Evolutionに移行していくとの見方を明らかにした。なお、藤岡氏によれば、NTTドコモのようにHSPA Evolutionではなく、先行してLTEを導入するのは世界的に見れば特殊な例であるという。

ドコモはHSPA+が流行りつつあるのが気にいらないようですが、エリクソンはLTEはしばらく先だと考えているようです。もっともエリクソン自身がHSPA+を推進している張本人であるということもあると思われますが。ドコモとしては面白くない流れかもしれませんね。

また、発表では例のごとく「LTE完全勝利の流れです」という説明がなされています。CDMA2000陣営もLTEを採用する流れで、HSPA+を経由するところはあるとしても、もはや他方式を採用するところは無いだろう的な発表です。

確かにこのままだとLTEが世界標準になるでしょう。

またその他に、「デザイン性を持たせた基地局」というのが発表されていたようです。ただこのネタはずっと昔からあるネタのはずです。

エリクソンの基地局はオブジェのように見える方向性の基地局のようですが、自然物に擬態する基地局や、その場所の建築物の感じに溶け込む基地局などもあるはずです。

景観問題とか、携帯基地局があると解った途端に文句をつけてくる人が基地局の存在に気がつかないようにするために使われたりします。○○国立公園に無粋な人工物が目立ったりしないようにするとか、歴史的景観に溶け込むようにするためとか、ネズミの国には携帯基地局というものは存在しない事になっておりますので、とか。

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611 7月の携帯純増数は先月と同じ流れ / 純増数には一喜一憂するものでもない側面も

ここしばらくとっても忙しいので数日遅れちゃいましたが、7月の携帯純増数についての記事です。

結論から言うと、先月と同じ感じだな、という感想です。


◆まず結果と

まず結果を張ります。

2008年7月:
ドコモ 9万4200
KDDI 1万7000
SBM 21万5400
EM 6万5000
WILLCOM 2100

マスコミではiPhone効果と騒がれていますが、別に先月とあまりかわらん感じです。ちなみに先月の数字は、

2008年6月:
ドコモ 8万4200
AU 1万2000
SBM 15万8900
EM 4万7700
WILLCOM 900

ついでにその前のものも張ってみると、

2008年7月:
ドコモ 6万900
AU 7万2400
SBM 17万3700
EM 5万1500
WILLCOM 1万1200


AUが3000万加入達成と同時におとなしくなって加入者数があんまり増えなくなった以外については、あまり変動はありません。

ソフトバンクはもともと好調なのであって、「iPhone効果で一位」なんていう報道は孫社長に失礼だという感じがしてきます。iPhoneによる押上げ効果はあるようですが、しかし大勢に影響するような数字ではありません。

テレビの人とか、ちゃんと自分で調べてニュースにしているのでしょうか。iPhone効果はあるようですが、一位になったのには直接関係ないと思います。


◆純増数について考えるべきこと

改めて新たな記事にするかもしれませんが、以前から書いておきたいと思っていた、純増数を考える上で必要な事についての説明を書いてみたいと思います。

まず純増数というのは

純増数 = (その月の加入数) - (その月の解約数)

で計算されるものです。まず、機種変更は数に入っていないということであります。よって例えば、iPhoneが売れていても、SBMユーザが機種変更で手に入れている場合には無関係ということになります。

また、「解約数」が入っているのが実は難しいところです。

加入数に関連する事(増える要素):
・好評だと増える
・CMをバンバン打つと増える
・高機能(高価格)な端末を低価格でばら撒くと増える
・法人顧客に低価格で撒くと増える
・人間以外の契約を増やす(自販機への組み込み通信機器など)
・一台で電話番号二つ

解約数に関連する事(減る要素):
・不評だと解約される
加入者数が多いと絶対数が大きくなる
・解約しにくくすると減る

好評だと/不評だと、というのは説明を要しないと思います。で、主観的には「好評/不評さ」に比例する数字だと思われていて、それどころか逆に数字上の純増数の好調さが、一部の人の主観的な好評さ不評さにすら影響を与えていると思うのですが、それ以外にもいろんな要因があります。

まず、増える要素ですが、「予算をつぎ込めば」新規契約は割と素直に増える事が知られています。逆にいえば、予算の節約をすると減ってしまうということでもあります。

また減る要素については、加入者数が多いとそれだけで純減しやすくなる効果があります。例えば、解約する人が100人に1人だったとします。そして加入者数最大のところと最小のところで大まかな例を作ってみます。

解約する人が100人に1人/月だとして(あくまでも作った例):
ドコモ(5000万契約とする):50万人が解約/月
EM(50万契約とする):5000人が解約/月

この例の場合、ドコモは50万人以上を新規獲得しないと純減になってしまい、マスコミに不調だと嫌味を言われてしまいます。一方でEMは割と無視できる数字です。

また「解約しにくくすると減る」というのは、私が以前「解約妨害割」という(物騒な)表現で説明したものです。二年に一回しか無料で解約できるチャンスが無いようにするとか、家族割で家族全員で同じキャリアにさせて、解約を困難にさせたりするようなことです。

他にも解約するとローンが発生するから解約しにくいとか、単純に解約の事務手続をうんざりするほど面倒にするというような道に外れた方法もあります。

とりあえず、純増数というのは割とコントロールも可能だということです。少なくとも短期的には。


◆さて今月の数をもう一度見てみる

さてその上でもう一度今月の数を見てみたいと思います。

2008年7月:
ドコモ 9万4200
KDDI 1万7000
SBM 21万5400
EM 6万5000
WILLCOM 2100

ドコモですが、ユーザ数が最も多いにもかかわらず健闘をしています。実はドコモが一番無理をしている可能性があるように思えます。純減していても何ら不思議ではないからです。

またKDDIは経営目標だったらしい3000万契約を達成したあたりから純増数が鈍化し、どうも低空飛行気味です。これは、新規獲得の手を緩めた結果ではないかと思っています。

SBMですが、必死で数を稼いでいてそのとおりの結果になっています。問題はこのような純増はいつまでも続かないことです。普通ならば純増二位に落ちたところで別段問題でもないのですが、SBMの場合、好調が好調を呼ぶ流れに依存しているようにも思えるので。

イーモバイルですが、前述したとおり解約の効果をほぼ無視できるにもかかわらずこの数字です。もしイーモバイルが予算を湯水のように流し込んで新規獲得に走っていた場合には、10万超えは余裕なはずですから、これは考えがあってのことか、何らかの事情によるものだと思われます。

ずっと前(春より前?)からそのように評していますが、イーモバイルは数字的には上記のような理由で少なすぎるとも言えるのですが、攻勢に出るよりも適度に力を温存する方が適切に思えるので、まあそんなもんだろうと思ってます。もし本気で売ろうとしていてこの数字ならピンチですが、それは無いだろうということで。

ウィルコムですが、今月もまた低空飛行です。ウィルコムが低空飛行をずっと続けているのも(一時期、地面に衝突していましたが)、予算節約優先で純減しない程度にユーザ獲得予算を使いつづけているからではないかと思っています。

ちなみに、ウィルコムについても解約効果が弱いので、あんまり増えていないということは携帯三社よりも解約率が高い(ないしは新規獲得をあまりやっていない)ことを意味します。実はよろしくない傾向です。ただ、ユーザ数を爆発的に増やそうと思っていない限りは、現状程度でも500万契約突破を目指していたとしても致命的障害にはならない気もします。爆発的に増えなければ、解約効果も大きくならないからです。

ウィルコムは予算はあいかわらずあまり使っていないようですが、HONEY BEE がまだ好調のようなので、今月も純増を維持できたのだと思われます。ウィルコムの機種の中では、HONEY BEE (などのWX320K系の機種)は購入後の不満が出にくい機種のはずですから、売ったはいいがその後解約されるということも割と少ないのではないかと思われます。

よって長期的に考えてもHONEY BEE(などのWX320K系の機種)は良い機種ということになりそうです。手のかからないユーザが獲得できているはずなので。ただ、買っているユーザ層自体が浮気性だったらトータルではどうなのかわかりませんが。

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612 アッカがイーアクセスの子会社になった件と、両社の憂鬱

更新にちょっと間があきました。

ちょっと前の話になりますが、アッカがイーアクセス(≒イーモバイル)の子会社になった、という件について。


◆経緯とか

ちょっと前になりますが、アッカがとうとうイーアクセスの子分になってしまいました。

イー・アクセス、アッカと業務・資本提携 - アッカを子会社に
http://journal.mycom.co.jp/news/2008/08/01/012/

この件については2008年の正月過ぎくらいから揉めていましたが、結局こういう結末ということになりました。

・2007年末 モバイルWiMAX騒動(イーモバイル落選、アッカ落選)
・2008年正月過ぎ 千本会長が今度は突如アッカの経営陣への糾弾を開始
・その後 アッカはこれに抵抗、アッカは千本会長の要求をはねのける
・千本会長敗北
・かと思いきや、7月末に子会社になっちゃったらしい

千本会長は、アッカの経営陣は無能で株主に損失を与えていると言い出しまして、当時の経営陣の退陣およびイーアクセスから送り込んだ人に経営を掌握させなさい、ということを突然言い出します。また、これに先立って、2.5GHz帯で落選後に下落したアッカの株をイーアクセスは買い増ししていました。

アッカはこの要求を拒否しまして、対決になります。時期の迫った株主総会に向け、株主の委任状争奪戦になるかに見えましたが、他の大株主が千本会長に同意しなかったようで、この戦いは千本会長の負けとなりました。

この時には、千本会長は「アッカの乗っ取りを意図していない、アッカの株主の事を考えての事だ」「イーアクセスが保有する株式の株価が下がったのでやむを得ず行動した」と強調していましたが、結局今回「子会社化」を行っています。以前「決してやらない」といっていたことをやってます。

よって、やっぱり当時からアッカの植民地化が目的だったのではないかと思います。

この件については記事を書いたりしましたが、結局簡単に振り返ると
・アッカ:無能
・イーアクセス:野蛮
アッカはどうも大丈夫には思えなかったのですが、しかし千本会長のこの件でのやり口のダメさはその上を行くものに見えていました。少なくとも、提案が本当にアッカ自身のためになるのかどうかは怪しいように思えました。

私には、アッカが新体制になって「ちゃんとする」のが一番良いのではないかと思っていました。ただ、アッカの新体制が数ヵ月後に出した結論は、千本会長の元に下るという判断でした。これが今回のニュースです。


◆ADSL陣営は不安

今回のニュース、アッカの現体制や方針を割とそのままにして穏やかに手を握り合うというようなことを言っていますが、おそらくそうはなりません。企業が別の企業に吸い取られる時には、大人の事情で最初はこういう風な事を言うのが通例なだけははずです。アッカの関係者にとっては、これから試練の時がやってくるかもしれません(部署にもよるはずですが)。

こうなったそもそもの背景には、「ADSLが先細り」ということがあります。そしてさらには「(日本の)ADSLはそもそも変な商売だった」ということもあります。

世界中でADSLのような商売をしているところでは将来に不安を感じているところが沢山あります。WiMAX陣営が世界中に広めた「無線が有線に取って代わる」という話(おそらくそうなりませんが)もそうですし、光ファイバに取って代わられるという不安もあります。

また、光ファイバ時代になっても光ファイバに商売変えが難しいのは、ADSLが「既存のインフラに寄生しているだけ」とも言えるためです。日本で考えてみますと

・加入者宅からの回線 NTTが敷設した電話回線をそのまま借りているだけ
・その回線を受けるところ NTT局舎内の場所を借りて、そこにモデムを置いているだけ
・その先の基幹回線 ここもNTTから借りていることが多い
・ADSLモデム 買って来るだけ

結局、国がNTTに強制解放させた設備をそのまま借りるだけで出来る商売だったということです。よって、ADSLは通信の商売でありながら自前でインフラ整備をしなくても良いという変なことになっていました。

ぬるい状況であるともいえました。ただ、ソフトバンクはそんなぬるい状況で超攻撃的なシェア拡大戦略を取り、日本のADSLで首位に立ちます。

ちなみに、無線が有線にとって代わるという話の方はどうも怪しいです。有線の容量に無線で太刀打ちするのはとても難しいからです。速度だけを見て「有線はもう古い」と言っている人は、容量の問題を全く理解していません。このあたりは過去の記事を参照ください。ただ、このあたりはあまり良く理解されていません


◆両陣営の不安

イーアクセスやアッカも、ADSLが先細って行くことへの不安がありました。加えて、不安を煽るような事を無責任に言う人も沢山居ました(無線で有線が滅びるとか)。

イーアクセスがイーモバイルとして携帯電話事業に参入したのは、ADSLが下り坂になることを見越してのことでした。アッカが何かいろんな事をしていたり、モバイルWiMAXで手を挙げたのも同じ理由でした。

アッカにとってはADSLの次を探していたものの、どうもうまく行かない状態が何年も続いていました。とどめがモバイルWiMAXのふがいない落選でした。千本会長が気にいらなかったように、アッカにはどうもグダグダ感がありました。ただし、結果的に「変な新事業で大勝負に出て滅びる」という最悪の決断もなされていません。

イーアクセス≒イーモバイルは、携帯電話事業に新規参入をしましたが、今のところ超赤字のままです。しかも、商売として安定しないうちに次世代の足音まで聞こえてきてしまいました。千本会長からすると、もうちょっとぬるい業界に進出したつもりだったと思うのですが、孫社長が突然の買収やホワイトプランなどで大暴れした結果、随分と厳しい状況になってしまいました。

ただ注意すべきは、両社とも「ADSLは今のところちゃんと儲かっている事業」ということです。今のところは、お金を生みつづけているのです。

私は周辺の状況も併せて考えてですが、当初より、「イーアクセスの狙いはアッカの植民地化」であろうと見ていました。

イーアクセスは簡単に言うとこういう事になっています
・ADSLでは儲かっている
・携帯電話では超赤字(まだ全然儲かっていない)

ADSLの黒字を携帯電話に流し込んでいるというわけです。

そしておそらく携帯電話で予想以上の苦労をしており、携帯電話事業のためのお金が足りなくなってきているのではないかと思います。で、今回子会社化したことで「アッカのADSLを資金供給源に追加」することが出来ます。まあつまり、植民地です。

また、両社が合体する事で二重になっている設備を一つにまとめたり出来ますから、現在の両社のADSLがそれぞれ別個に生み出しているお金よりも多くのお金を供給できるようになります。つまり、合理化による収入増もあるということになります。

ただ、合理化するということはたいていにおいて「誰かの人生がおかしくなる」ということでもあります。アッカの中の人は大変なこともあるかもしれません。

千本会長の頭の中は「ADSL→携帯電話」のはずです(実は携帯電話がもう取り返しのつかないことになっている場合を除く)、よって、イーアクセス+植民地アッカは、携帯電話事業で全力勝負すべきでそれ以外は蛇足ということになるはずです。よって、アッカの「諸事業」も切り捨てられるのではないか、と思います。それが、新体制では合理的だからです。


◆もし間違っていたら?

アッカはまだ将来どうするか未決断の状態でした。ADSLの他社よりも遅れをとっているのも事実でしょうが、後出しでより正しい選択肢を選べるというメリットもありました。よって、自分で未来を選ぶ方法もあったはずです。

またイーアクセスについては、携帯電話への新規参入が本当に正しかったのかまだ判明していません。

人によっては、イーモバイルにはもう将来など無いという人も居ます、つまり負け戦決定であると。今行われているのは単に滅びの時期の延長に過ぎないと。

また、もっと悪いことを言う人になると、そもそもウィルコムへの私怨で行動していて、あまりちゃんと考えていないという人も居るようです。実はイーモバイルの千本会長は元々はウィルコム(旧DDIポケット)で社長をやっていましたが、追放されたという過去があります。イーアクセスを作ったのはその後のことです。

正直、ドコモとAU以外は全て難しい状況になっていると思いますし、前も書きましたが、私怨なんかで行動する人が大企業のトップができるはずがない(あるいはそんな間抜けなことを許す組織があるとは思えない)のですけれども。

ただ、イーモバイルからすると今さら自分で退場するわけにも行かないでしょうから、「アッカが新しい財布になってくれる」というのは無条件で歓迎のはずです。アッカやアッカの中の人にとってそれが幸せなのかはちょっと怪しいですが。

個人的にはアッカにとって良い結末ではないが最悪な結末でもないようには思えます。また、アッカが「全く新しい形態の通信事業者」になって我々に新しいサービスを提供してくれる面白い存在になってくれる可能性もあったはずで、これがなくなってしまったのは残念です。いかにも部外者の意見ですが。

子会社になったのは、ある意味妥当な結末でもあるとは思うのですが、随分つまらない結末だな、とも思います。

もし仮に、イーモバイルが大炎上した場合には、こう言いたいと思います。

「アッカは間抜けだったが、とりわけ最後の判断(子会社になったこと)が一番間抜けだった。」


◆他社への影響

アッカは以前から関係のある他社と組む事でイーアクセスへ対抗をしていました。

・NTTつながりでのドコモ:HSDPA回線を借りる
・NTTコム:遠縁ながら親戚関係
・ウィルコム:ウィルコムのADSL回線はアッカから借りている

今回の件でまず、NTT系の資金は引き上げてゆきました。これでNTT一族ではなくなりました。ただ、ドコモの回線は借りたままですし、ウィルコムのADSLはアッカのままです。ちょっと変な状態になってしまいました。

イーモバイルからすると、ドコモの回線よりもイーアクセスの回線を使ってくれということになって、ドコモのMVNOのサービスは急速にフェードアウトして消えるかもしれません。また、逆にこれを逆手にとって、嫌がらせ的にアッカ経由でもドコモ回線を借りるような事になるかもしれません。

ややこしいのはウィルコムのADSLです。

一応ですが、ADSLを自前での提供に置き換えるなんて事も出来なくないはずです。ウィルコムは音声定額のために、一部のNTT局舎に直接回線を引き込んでいますが、ここはADSLの接続点にもなるからです。それ以外にも「容量に優れる次世代PHSでADSLを置き換える」ということを早期に画策する方法もあります。

もっとも、大した契約数ではないのなら、単に捨て置くような気がします。双方が。


◆イーモバイルのほかの可能性

他の可能性としては、イーモバイルがアッカを操り人形にして「2.0GHz帯の割り当てに立候補させる」ということも考えられます。

特に、1.7GHz帯での事業が大変な事になっていて、パルプンテが必要な場合にはそういうことをするかもしれません。ただ、逆にいえば、普通に判断するのなら、2.0GHz帯で手を挙げるのはナンセンスに思えます。

アッカがもし、2.0GHz帯で手を挙げるようなことがあった場合には、何かしら変な事が起こっていると見たほうがよさそうです。何らかの理由で馬鹿な判断が下されたか、イーモバイルがもう手遅れになっているかのどちらかです。

また、今後のようなところを少し書くと、

少し前まで言われていたほどにはADSLの将来は暗くない、ということは両社ともに気がついているはずですから、ADSLをもうちょっと大事にして、ADSL事業者としてやってゆくのもありでしょう。もう、イーモバイルはフェードアウトさせるくらいの勢いで。

また、モバイルで勝負をするのならこうするしかないでしょう。
・アッカの今すぐ金にならない事業は全滅させる
・アッカのADSLは新しいお財布
・1.7GHz帯での携帯サービスに専念し、そこにお金を使えるだけ使う。

なんで「1.7GHz帯」と限定しているかというと、他の帯域に手を出すとお金が余分にかかるからです。ソフトバンクの「なんちゃって基地局」の人が、「ドコモの三分の一でインフラ整備しないとダメだ」と仰っていましたが、同じような事情がイーモバイルにもあります。投資効率を最大化しないといけません。

そもそも1.7GHz帯はFDDで、割り当て作業中の2.0GHz帯はTDDです。周波数どころかいろんなものが不統一になります。

結局、1.7GHz帯での第三世代のみに徹するしかないわけです。LTEすら微妙です。このあたりはまた改めてしっかり書きたいと思いますが。

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