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611 7月の携帯純増数は先月と同じ流れ / 純増数には一喜一憂するものでもない側面も

ここしばらくとっても忙しいので数日遅れちゃいましたが、7月の携帯純増数についての記事です。

結論から言うと、先月と同じ感じだな、という感想です。


◆まず結果と

まず結果を張ります。

2008年7月:
ドコモ 9万4200
KDDI 1万7000
SBM 21万5400
EM 6万5000
WILLCOM 2100

マスコミではiPhone効果と騒がれていますが、別に先月とあまりかわらん感じです。ちなみに先月の数字は、

2008年6月:
ドコモ 8万4200
AU 1万2000
SBM 15万8900
EM 4万7700
WILLCOM 900

ついでにその前のものも張ってみると、

2008年7月:
ドコモ 6万900
AU 7万2400
SBM 17万3700
EM 5万1500
WILLCOM 1万1200


AUが3000万加入達成と同時におとなしくなって加入者数があんまり増えなくなった以外については、あまり変動はありません。

ソフトバンクはもともと好調なのであって、「iPhone効果で一位」なんていう報道は孫社長に失礼だという感じがしてきます。iPhoneによる押上げ効果はあるようですが、しかし大勢に影響するような数字ではありません。

テレビの人とか、ちゃんと自分で調べてニュースにしているのでしょうか。iPhone効果はあるようですが、一位になったのには直接関係ないと思います。


◆純増数について考えるべきこと

改めて新たな記事にするかもしれませんが、以前から書いておきたいと思っていた、純増数を考える上で必要な事についての説明を書いてみたいと思います。

まず純増数というのは

純増数 = (その月の加入数) - (その月の解約数)

で計算されるものです。まず、機種変更は数に入っていないということであります。よって例えば、iPhoneが売れていても、SBMユーザが機種変更で手に入れている場合には無関係ということになります。

また、「解約数」が入っているのが実は難しいところです。

加入数に関連する事(増える要素):
・好評だと増える
・CMをバンバン打つと増える
・高機能(高価格)な端末を低価格でばら撒くと増える
・法人顧客に低価格で撒くと増える
・人間以外の契約を増やす(自販機への組み込み通信機器など)
・一台で電話番号二つ

解約数に関連する事(減る要素):
・不評だと解約される
加入者数が多いと絶対数が大きくなる
・解約しにくくすると減る

好評だと/不評だと、というのは説明を要しないと思います。で、主観的には「好評/不評さ」に比例する数字だと思われていて、それどころか逆に数字上の純増数の好調さが、一部の人の主観的な好評さ不評さにすら影響を与えていると思うのですが、それ以外にもいろんな要因があります。

まず、増える要素ですが、「予算をつぎ込めば」新規契約は割と素直に増える事が知られています。逆にいえば、予算の節約をすると減ってしまうということでもあります。

また減る要素については、加入者数が多いとそれだけで純減しやすくなる効果があります。例えば、解約する人が100人に1人だったとします。そして加入者数最大のところと最小のところで大まかな例を作ってみます。

解約する人が100人に1人/月だとして(あくまでも作った例):
ドコモ(5000万契約とする):50万人が解約/月
EM(50万契約とする):5000人が解約/月

この例の場合、ドコモは50万人以上を新規獲得しないと純減になってしまい、マスコミに不調だと嫌味を言われてしまいます。一方でEMは割と無視できる数字です。

また「解約しにくくすると減る」というのは、私が以前「解約妨害割」という(物騒な)表現で説明したものです。二年に一回しか無料で解約できるチャンスが無いようにするとか、家族割で家族全員で同じキャリアにさせて、解約を困難にさせたりするようなことです。

他にも解約するとローンが発生するから解約しにくいとか、単純に解約の事務手続をうんざりするほど面倒にするというような道に外れた方法もあります。

とりあえず、純増数というのは割とコントロールも可能だということです。少なくとも短期的には。


◆さて今月の数をもう一度見てみる

さてその上でもう一度今月の数を見てみたいと思います。

2008年7月:
ドコモ 9万4200
KDDI 1万7000
SBM 21万5400
EM 6万5000
WILLCOM 2100

ドコモですが、ユーザ数が最も多いにもかかわらず健闘をしています。実はドコモが一番無理をしている可能性があるように思えます。純減していても何ら不思議ではないからです。

またKDDIは経営目標だったらしい3000万契約を達成したあたりから純増数が鈍化し、どうも低空飛行気味です。これは、新規獲得の手を緩めた結果ではないかと思っています。

SBMですが、必死で数を稼いでいてそのとおりの結果になっています。問題はこのような純増はいつまでも続かないことです。普通ならば純増二位に落ちたところで別段問題でもないのですが、SBMの場合、好調が好調を呼ぶ流れに依存しているようにも思えるので。

イーモバイルですが、前述したとおり解約の効果をほぼ無視できるにもかかわらずこの数字です。もしイーモバイルが予算を湯水のように流し込んで新規獲得に走っていた場合には、10万超えは余裕なはずですから、これは考えがあってのことか、何らかの事情によるものだと思われます。

ずっと前(春より前?)からそのように評していますが、イーモバイルは数字的には上記のような理由で少なすぎるとも言えるのですが、攻勢に出るよりも適度に力を温存する方が適切に思えるので、まあそんなもんだろうと思ってます。もし本気で売ろうとしていてこの数字ならピンチですが、それは無いだろうということで。

ウィルコムですが、今月もまた低空飛行です。ウィルコムが低空飛行をずっと続けているのも(一時期、地面に衝突していましたが)、予算節約優先で純減しない程度にユーザ獲得予算を使いつづけているからではないかと思っています。

ちなみに、ウィルコムについても解約効果が弱いので、あんまり増えていないということは携帯三社よりも解約率が高い(ないしは新規獲得をあまりやっていない)ことを意味します。実はよろしくない傾向です。ただ、ユーザ数を爆発的に増やそうと思っていない限りは、現状程度でも500万契約突破を目指していたとしても致命的障害にはならない気もします。爆発的に増えなければ、解約効果も大きくならないからです。

ウィルコムは予算はあいかわらずあまり使っていないようですが、HONEY BEE がまだ好調のようなので、今月も純増を維持できたのだと思われます。ウィルコムの機種の中では、HONEY BEE (などのWX320K系の機種)は購入後の不満が出にくい機種のはずですから、売ったはいいがその後解約されるということも割と少ないのではないかと思われます。

よって長期的に考えてもHONEY BEE(などのWX320K系の機種)は良い機種ということになりそうです。手のかからないユーザが獲得できているはずなので。ただ、買っているユーザ層自体が浮気性だったらトータルではどうなのかわかりませんが。

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コメント

HONEY BEEは本当によい戦略でした(良い端末の意ではない)
同社内完全定額といってもSBMや家族定額キャリアとくらべてお徳かどうか、一概に言えませんでした。

だれがどこの電話かを気にしながら使うのはけっこうわずらわしいかもしれません。

ですがHONEY BEEを一緒に持つ友達同士という分かりやすい「しるし」を持つトライブ(部族)型コミュニティを形成すると通信コストが目に見えて下がったと感じられるのかも。

「ウィルコム国民」ではなくて蜜蜂族である必要があると思います。

学生はガッコとプライベートとかでは別のコミュニティに属しているかもです。トライブ内では蜜蜂を外の世界ではケータイを使えばいい。
これは2in1にすればいいのに、という単純な問題ではないかもしれません。同じ価値観・能力のレベルでまとまるトライブにひとつの「しるし」があるほうがいい。
ジョシコーセーの仲間内でいきなりスマートフォンで現れたら定額とはいえ、「しょーじき引くわ」と言われかねないw

(iPhone族もSBM国民という意識じゃないかもしれません。でもこっちはすでにリンゴの部族に属している可能性があり、携帯世界で部族を増やすかわかりませんが)

投稿: TT | 2008/08/09 20:45

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