605 夏野さん、iPhone/ソフトバンクのエリアの悪さを酷評
また少しだけ更新です。
以前、夏野さんがiPhoneについてあれこれ言っていることについての記事を書きましたが、またiPhoneについてまた面白いことを言っておられるのでそれについて。
◆「ドコモの代わりにはなり得ない」
本来は(この記事も)ニコニコ動画についてのインタビューだったようですが、またiPhoneの話題になっています。
「アンサーだけでは、新しいものは生まれない」夏野氏に聞く携帯の未来
http://it.nikkei.co.jp/mobile/news/index.aspx?n=MMIT0f000020082008&cp=2
ニコニコ動画の件については後でコメントするとして、まずはこの部分について。
エリアが悪すぎる。これまでソフトバンクモバイルを使ったことがなかったが、こんなにエリアが悪いのかと驚いた。これでは、ドコモのケータイを置き換えることはできない。断言する。エリアが悪いので、私は(NTTドコモの公衆無線LANサービスの)M-zoneに契約したぐらいだ。
夏野さん、エリア面について酷評をなさっています。ソフトバンクなのかiPhoneなのか、主にどちらについての突っ込みなのかははっきりしませんが、とりあえず酷評なさっています。
ドコモの代わりにはなり得ない、というだけではなく「断言する」とまで仰っています。そして、エリア悪すぎなのでドコモの「無線LAN」でエリア補完せざるを得なかったほどだ、と仰っています。携帯電話のエリアを「無線LAN」で補完したほどだ、と仰っているわけで、これは大層なツッコミ加減であります。
また改めて記事に書きたいと思っているのですが、iPhoneはどうも世界的に「3Gの電波性能が悪すぎる」ということで怒られているようでして、それ故かもしれません。しかし、夏野さんはわざわざソフトバンクの名前を出しています。
以前の記事のときもそうでしたが、夏野さんはまだiPhoneを褒めておられるようでして、その流れで記事が続いています。
前の記事のときもそうでしたし、以後の他の発言もそうなのですが、夏野さんはiPhoneをどうやら面白いデジタルガジェットの一種として褒めているようでして、「携帯としてどうなんだろう」というような良く言われるところについては、どうやらツッコミ系の意見と同じ意見のように思えます。
そしてこれもまた以前と同じ感じの話題ですが、日本でこういう端末が出なかったということについてどうも色々思うところがあるようです。
――なぜ、日本ではつまらないケータイばかりになってしまったのでしょうか。企業にとって、製品を作るときに一番大切なのは、魂や思い入れ、真剣勝負できるリーダーがいることだった。昔は現場からの積み上げのプロセスがしっかりしていれば、いい製品ができた。
今は部品、パートナーや人材、会社までネットで調べて見つけられる。それが標準化されていて組み合わせることができる。そうなると、リーダーの役割は積み上げをしていくのではなく、製品の方向性を示すことになってくる。「これをつくるんだ」という信念をもっているリーダーがいて、その人が経験と信念と実力を持っていれば、とんがってワクワクしたものができる。
しかし、いまの日本のメーカーやキャリアはケータイやデジタルデバイスをよく知っているとはいえない人がリーダーであったり、会社の経営者だったりする。
夏野さんはドコモで端末を作らせる係(メーカーに難題を押し付ける係)をしていたため、自身の過去の経験もあってのことでしょう。ご本人が端末を作らせていたわけですから。そして、夏野さんがドコモを去らなければならなかったことについての不満もこのあたりで出してしまっているようにも思えます。
つまり夏野さんは、ジョブス師匠が言いたい放題するような開発体制が良いといっています。そして、日本の企業のトップは製品が面白いというようなことを全然知らない人たちだと暗に批判をしています。
これは割と一般では共感を得られる意見なんじゃないかと思うのですが。どうも違う気もします。というのも、巨大組織のトップというのは結局「巨大組織を束ねる係」が主任務のはずだからです。そして、普通の人の予想以上にそういう任務をちゃんとこなすのは難しいはすです(ただし、日本のトップがそういう任務をちゃんとこなしているかどうかはまた別)。
それでは良い端末が作れないじゃないか、というとそれも違います。端末の責任者は社長の下に別に居ても良いわけですから。そして夏野さんは「まさにそういうこと」をやっていた人でした。
しかしそんな夏野さんが「企業のトップ」への文句を言っているわけでして、ともかくもかつての夏野さんのドコモへの不満の一部が見える感じがします。
そうするとなかなかとんがったものをつくれない。その商品に対する信念、そのサービスに対する執念がないと、自分の判断に自信が持てなくなり、すべてアンケートやマーケティング調査に頼るようになる。「お客様の声が……」というようなキャリアには新しいものなんて出せない。現在のお客さんの声をいくら聞いても、お客さんは未来のことまでは予想してくれない。お客さんの声を参考にするのは構わないが、頼るのは難しい。
世の中には自身の感性によって判断をするパターンと、データによって判断をするパターンがありまして、これの比較については色々な議論がすでにあります。結論としては、そんなに簡単に判断できる話じゃないということです。
とりあえず明らかなのは「間違った感性によって尖がったものを作ってしまった」場合が最悪のケースだろうということです。そんでももって感性というのは簡単に世間とのシンクロを失います。特に時間が経過すると。
また、感性による成功例は世間ウケが良いので、無闇に結果がもてはやされる側面もあります。
データについては、夏野さんが言っているとおり「過去と現在しか直接の調査が出来ない」という問題点があります。今流行っているものは調べれば解るけれども、来年流行っているものは「直接には」調査できないというわけです。
ただし、夏野さんが不満を言っているように思えるのは、もう一段下の話に思えます。
愚鈍な感じで「お客様が」「お客様の声が」というような事でしか行動できないところがありますが、それへの不満なんじゃないかな、あるいはそういう不満であると思いたいところです。確かにあれは何かの病です。しかも、日本で広く見られる現象にも思えます。
そして、以下になるともう完全に古巣ドコモへの不満表明です。
――これから、日本のケータイ業界はどうあるべきなのでしょうか。端末メーカーには全世界でも平均以上の技術力はある。メーカーに限らず日本の企業は、まずはマネジメントのやり方を見直さなくてはならない。年功序列、他社ベンチマーク、下からの積み重ねなどは、もはや通用しなくなってきている。
魂を込めて、新しい価値観を想像してぶつけていかないと、付加価値のある商品はつくれない。いままでの作り方を根本的に見直さなくてはならない。(ドコモの広告のキーワードである)「Answer」しているだけでは新しいものは生まれない。
「Answer」しているだけでは新しいものは生まれない、だそうでして、もう完全にドコモ批判です。
ただ、組織が滅びる時には、「間違った改革」「間違った挑戦」によって最後のトドメがさされることがあります。愚鈍なのはいけませんが、決定的に間違った事をするよりも何もしないほうが良かったりもします。どちらにせよドコモは切羽詰っているわけでもありません。
そもそもドコモは「新しいものを生み出そうと思っているわけではない」という気もします。既に存在するもの、既にお客さんが欲しているものを安心に完全に提供するのがドコモである、でもよいわけです。
夏野さんには新しくなくて面白くないのでしょうが、この意味においてはドコモと他社には勝負にならない面がありまして(例えば、あんなに律儀にエリア整備ができるキャリアが他にありましょうか?)、たしかにドコモの独壇場です。
そうやって考えてみると、ドコモと夏野さんは、袂を別つべきして別れたという気もしてきます。
この記事はそもそもニコニコ動画についてのインタビューだったようなのですが、
プラットフォームとしてのニコニコ動画の可能性をさらに確信している。特に新しく導入するサービスの社内でのディスカッションでは、iモードを立ち上げたころのエキサイティングな感覚がよみがえってきた。毎日が楽しい。ある日、絆創膏を貼ろうと思って薬箱を開けたら、葛根湯が大量に出てきた。思い返すと、ドコモを辞めるというアナウンスをしてから風邪を引いていない。ドコモ時代は仕事相手にストレスをかけて生きてきたと思っていたが、実際は自分もストレスを感じていた。
今はストレスフリーで、超ハッピー。「最近は顔つきが変わった」と言われるくらいだ。
新しいお仕事は楽しいようですね。ドコモへの不満と比べると対照的です。
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コメント
夏野さんいろんなとこ行ってるんですねえ
http://japan.internet.com/finanews/20080708/3.html
投稿: | 2008/08/29 23:04