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604 ホワイトスペース問題でGoogleがキャンペーン開始

以前、実は「ホワイトスペース」と呼ばれる日本ではあまり話題になってこなかった「電波の空き」があることを記事にしました。その件についての続報です。

ホワイトスペースって何?という方は以下の以前の記事をご覧になってください。

以前の記事:
知られざる空き電波帯域(?)、「ホワイトスペース」とは何か
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/05/648_1fc8.html

もしかすると、ホワイトスペース問題は今後日本にも飛び火して、結構な騒動になるかもしれません。


◆Google、放送業界へ攻勢

非常に簡単に言うと、放送局が無駄遣いしている電波の空きの部分を一般人に開放しろ、と言い出したのが「Googleのホワイトスペース」の騒動です。そして放送局はそれに反発をなさっています。

Googleですが、とうとう一般人を使ってのキャンペーンを始めました。

Google,「ホワイトスペース」開放を訴えるキャンペーンを開始
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080819/312905/

米Googleは米国時間2008年8月18日に,いわゆる「ホワイトスペース」と呼ばれる周波数帯域の開放を求めるキャンペーン「Free The Airwaves」を発表した。専用サイトを立ち上げ,この問題に関するユーザーの支持を呼びかけている。
Free The Airwavesサイトでは,ホワイトスペース開放がインターネットにもたらす恩恵を動画で説明している。また,ユーザーに対して嘆願書への署名を促し,賛同者は意見を動画で投稿するよう訴えている。

以前、北米の700MHz帯CブロックでGoogleとベライゾンの落札競争が発生しなかった件でGoogleが非難されているという事を書きましたが、

北米700Mhz帯:Googleに非難の声上がる/失敗したDブロックで揉める
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/04/690_700mhzgoogl_5029.html

Cブロックの時と同じような事を今回もやっているとも言えます。Googleが作ろうとしている構図は以下のようなものです。

・悪の放送業界:電波を無駄遣いして電波を開放しない既得権益者
・正しい人たちが自由をもたらす戦いをしています

一方で放送業界も情を訴えて、放送やスポーツを守れという主張をしています。スポーツを守れ、というのは、放送局の電波空きスペースがスタジアムのワイアレスマイクなどに使われる(なし崩しの)慣例があり、ここが無くなるとスポーツイベントが開催できなくなっちゃうよ、だから帯域は解放しません、というこれも無茶のある主張をしています。

日本で無理矢理に話を置き換えるとこういう風になりましょうか、

・ホワイトスペースを開放すると、公共のメディアとしての責任があるテレビ放送が危険に晒され、スポーツイベントにも支障が出ます。IT業界の口車でプロ野球が壊滅しても、あなたはいいですか?

ホワイトスペースを開放してくださいという提案が最初にありまして、色々と揉め始めます。その次に放送局がスポーツイベントを盾にすることをしました、そして今後はGoogleが正義キャンペーンを始めたというのが現在のところです。

そしてさらには、「選択肢は実はこの二つだけではない」ということがあります、アメリカでは二択になりつつあるように見えますが。


◆他の選択肢

まず上記の主張をもう一度書きますと、

・放送局:現状のままにせよ
・Googleなど:ホワイトスペースを無線LAN用(免許が必要ない帯域)として解放しなさい

そしてこれ以外にも

・ホワイトスペースを免許付きで解放しなさい(携帯電話会社が使うなど)

またそもそも

・ホワイトスペースが発生するような電波の割り当て自体止めなさい

という主張もあります。

それぞれについて日本ではどうなるかを説明してみましょう。

最初の選択肢については、「現状のままになる」ということです。おそらくこれはあまり良い選択肢ではありませんが、しかし最悪の選択肢でもありません。変なことをするのなら現状のままにするのも悪くはありません。

次の選択肢については、放送の空き帯域は無線LAN用などの免許不要帯域として解放されるというシナリオです。もし、日本が例の病気を発生させて世界に乗り遅れる、日本も世界の流れに沿ってホワイトスペース解放をならなきゃならないと言い出した時には問答無用でそうなるかもしれません。

この場合には放送局が使っている良質の電波で無線LAN的なものが使えるようになって便利になります。しかし、免許いらずの帯域の電波が「飛びがとてもいい」というのは危険な現象でもあります。せっかく良い帯域なのに混信天国というトホホなことになるかもしれません。

ただ、みんなが自由に使える帯域が今までよりも増えるのは確実です。アメリカで推進されているのにはちゃんと理由もあります。

以下はそれ以外の案を検討をした場合に出てくるシナリオとなります。

三つ目は、ホワイトスペースを例えば「携帯電話会社に変則的な免許として与える」という形での利用を図るシナリオです。

無線LANよりも携帯電話が快適になる未来の方が望ましいと思っている人や、免許不要にすると混乱したりして有効活用されないと思っている人が支持するべき案でしょう。

例えば孫社長が「放送局は電波の空きを解放して欲しい」「アメリカのような無責任な方法がよいとは思わない」「混信の危険がある難しい帯域なので、携帯電話会社が責任を持って慎重に利用する必要がある」というようなことを主張して免許必要帯域にし、結局自分でも帯域を頂戴するような流れです。

ただ、かなり変則的な帯域になりますから、設備なども相当に変則的になるかもしれません。携帯電話会社に帯域が開放されても、されるだけ迷惑ということもあるかもしれません(開放されると、キャリア間での競争が始まってしまうでしょうし)。総合的に考えて面倒なだけの帯域ならば免許不要機器に任せておいた方が良いかもしれません。

最後のものは、もっと根本的な話です。ホワイトスペースがたくさん生じるような電波の使い方そのものを止めましょうという主張です。

たとえばアナログ地上波のVHFでは、関東では奇数チャンネルが使われていて偶数が空いています、関西では逆になっています。これを「関東でも関西でも全チャンネルを埋めて使うようにすれば、帯域は半分で済む」というような主張です。そしてそうやって余った帯域を根本的に空き帯域にしましょう、と。

これまでのアナログ放送ではこんなことは難しいのですが、デジタル放送ではこれが不可能でなくなってきているということがあります。

もしそのようにすれば、普通に「普通の意味での空き帯域」が大量に出来ます。普通に空くわけですから、何にでも使えます。ホワイトスペース用機器のような難しい動作をする機器も必要なくなります。ただ、かなり思い切った措置が必要になるので、実現は難しいでしょう。

もしこの案が実行可能ならば、かなり多量の帯域が空くことになり、LTE用の20MHz幅帯域を複数確保することも難しくないはずです。携帯電話会社にとって一番望ましいのはこの案かもしれません。

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