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626 携帯電話各社の「次世代」通信技術の方向

タイミング的に変な感じもするのですが(なにかきっかけになったニュースがあったわけではないのですが)、ここしばらくのうちに携帯各社が次世代通信技術でどのような作戦を取るのか明らかになってきた件について、再度整理をしてみたいと思います。


◆まずは一覧

まずは、各社ごとに一覧を書き出してみたいと思います。説明はそれから行う事にします。

・ドコモ:早期のLTE移行
・AU:態度未定だが、LTEを検討している感じ/モバイルWiMAXを別会社で準備中
・SBM:HSPA+へ移行
・EM:HSPA+へ移行
・WILLCOM:次世代PHS

まず、この系の話題を始めて読む人向けに少しだけ説明を行いたいと思います。まず、現状を整理すると以下のようになります。相当にいいかげんですが、

・ドコモ:3.5世代(W-CDMA/HSDPA)では世界最強レベルの基地局網を整備済み、なおも基地局に巨額の予算を投下中
・AU:800MHzの3.5世代(CDMA2000 EV-DO)の整備をかなり以前に済ませており、現在、2GHzと3.7世代(EV-DO Rev.A)の整備を行っている
・SBM:第三世代(W-CDMA)でのエリア整備は一応完了、3.5世代(HSDPA)のエリア整備が不十分。上位二社にくらべてエリア整備は今ひとつ。
・EM:ゼロから3.5世代(W-CDMA/HSDPA)でエリア整備中、しかしエリアは全社の中で一番狭くまだまだこれから。
・WILLCOM:現行PHSでのエリア整備は完了、高度化PHSでのエリア整備を実行中。

携帯各社の「次世代」の選択肢としては
・3.5世代のまましばらく粘る
・第三世代系をさらに発展させたもの:HSPA+(W-CDMA陣営)、EV-DO Rev.B(CDMA2000陣営)
・第四世代系の技術:LTE

ということになります。ポイントは、HSPA+ならば現在の基地局網をほぼそのままにしても大丈夫なのに対し、LTEならば「最初からやり直し」というようなことが必要になることです。ただし、LTEの方が新しい技術なので、将来に向かっては大きな発展性があります・・あるとされます。


◆各社

ドコモ:LTE

まずドコモですが、LTEの早期開始がドコモの方針です。そもそもドコモがLTEそのものを開発しているところですし、ドコモはLTEそのものと一体のようなところがあります。

皮肉にも、HSPA+のサービスインがいちばん簡単なのもドコモのようなのですが(設備投資を惜しみなく行っているために設備の拡張能力も高い)、しかしドコモはLTEに進み、他社を「世代差」で引き離す作戦のようです。

ただ、ドコモはHSPA+の導入を行う場合でも他社よりも優位なので、HSPA+が主流になったとてドコモの作戦変更は難しくないと思われます。あるいは、世界最速のHSPA+化と世界最速のLTE化の同時達成すら可能だと思われます。

ただ、現在のところはドコモはHSPA+を実性能の面で評価しておらず(よって結局は「無駄な投資」になると思っている模様)、世界最速のLTEの導入となるようですが。


AU:LTEの方向と思われながらも態度未定

AUは、公式には次世代への態度を表明していません。今のところLTEへの移行を検討していることをほのめかしていますが、公式には未決定です。AUには以下のような多数の選択肢があり、決定保留が可能な状況なので、様子見をしているものと思われます。
・LTEを採用する
・CDMA2000系統の次世代技術、UMBを採用する
・Rev.Bで現行世代のまま時間稼ぎをする
・モバイルWiMAXに力を入れる


SBM:HSPA+

SBMですが、ニュースソースの控えを無くしてしまいましたが「なんちゃって基地局」の人が、ソフトバンクはまずはHSPA+に移行し、初期のLTEは様子見するという趣旨の発言をしています。「初期段階の技術」の採用は通常はリスキーでコスト高ですから、リスク回避をするのでしょう。妥当には思えます。

またそもそもの問題として、3.5世代化がまだ十分ではないところがあります。インフラ整備にこれまで各種の「混乱」があったため、基地局網が変な事になっている部分があると予想されます。よって、きちんと3.5世代化するだけでも、基地局整備のやり直しのようなことが必要になる可能性があります。

また、AUもドコモもLTEを開始するために必要な「専用帯域」を用意が可能な状態にあります。しかしSBM(やEM)には専用帯域の確保が難しい状況です。仮に新規の帯域をこれから獲得しても、新規帯域の基地局整備をゼロから行うとなると、時間的がかかりすぎて苦労する事になります。

SBMは次世代への移行で最も苦労する事になる可能性があります。HSPA+に移行するにせよ、LTEに移行するにせよ。3.5世代で時間稼ぎをするにせよ。


EM:HSPA+

EMもHSPA+を採用する方向のようです。

http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/40338.html

次世代のサービスについても質疑応答の時間で触れられ、ガン氏からは、「現状の設備を利用し、基地局のソフトウェアのアップデートなどで 40Mbps~80Mbpsまでは行けると見ている」と説明された。千本氏からは「ここ6カ月の動きを見ていると、明らかに世界の主流はHSPA。一番確実で、スピードが上げられる。既存のものをアップデートして80Mbpsまでいくのが現実的で、メインストリームはHSPA、LTEという流れ。我々もその流れを選択する。ただし、現実的には、LTEが今後2~3年後に来るわけではない」として、ひとまずは既存設備を更新しながら、世界のメインストリームに準じた対応を行なっていく方針を示した。

どういう理屈で「80Mbpsまで行けるのか」についてはちょっと前に記事にしましたので、それを参照ください。ただ、問題はスペック上の数値は80Mbpsに到達するにしても、実際の速度向上は知れていることになるだろうということです。

イーモバイルはサービスイン自体が最近ですから、結果的に基地局網も新しく、最初から3.5世代でエリア整備を行っています。SBMが抱えているような設備の混乱はありませんが、以下の問題はあるかもしれません。

イーモバイルは東京大阪などはエリクソンの基地局でエリア整備をしています。エリクソンはLTE陣営の欧州の親分であり、なおかつHSPA+を推進している張本人です。ので、エリクソンに「HSPA+にしたい」「LTEにしたい」と言えば、おそらくそれだけで済んでしまいます。ある意味理想的です。

ただよく解らないのが、コスト節約で中国の華為(Huawei)の基地局でエリア整備している地方都市(仙台など)です。もしかするとエリクソン地区と違って、アップデートが順調に出来ない可能性もあります。場合によっては華為の採用を後悔するようなこともあるかもしれません。

LTEの採用は専用帯域の用意の面だけではなく、3.5世代でのエリア整備すら済んでいない状況なので、設備投資の資金の用意の面でも厳しい状況があると思われます(3.5世代のエリア整備だけでいっぱいいっぱいのはずですから)。よって、当面はLTEについては考えない作戦はそれで仕方ないように思えます。


WILLCOM:次世代PHS(+現行PHSの強化版)

ウィルコムについては次世代PHSへの移行以外の道はありません。現行世代のPHSの進化版もありますが、これだけでLTEやHSPA+の流れについて行くのは厳しいと見られます。ただ、次世代とと併せて使うのが一番効果的だとは思いますが。


◆しかしもしかすると

また、次世代の話題が渦巻いているなか、実際には3.5世代でのエリア整備が終わっていないキャリアがあるので、これからも3.5世代への投資を続けなければならない現状があることが原因なだけなのかもしれません。

世間の話題の流れがどうであれ、今現在のサービスのためには3.5世代のエリア整備を続けなければならない現状があったとします。これを話の基点として考えてみます。

もしLTEが本命だ、と言ってしまうと、「今やっている3.5世代基地局への投資は、長期的には無駄になる」ということを言われてしまう可能性があります。

しかし、「HSPA+の方が正しいです」と言ってしまえば、「今やっている3.5世代基地局の整備はHSPA+へのアップグレードを考えてのものです」と言える事になり、無駄ではない感じに出来ます。

考えてみますと、ドコモとAUは3.5世代への一通りの設備投資は既に終わっています。AUに至っては、随分前に整備が終わっています。そしてこの二社はLTEについての言及が主です。

SBMとEMは、まだ3.5世代への投資を止めるわけには行きません。もし仮に、LTEが「革命的な大ジャンプ」であると解った場合には(そうなる可能性は低いとは思うのですが)、彼らが行う投資は回収できずに無駄になる可能性もあります。

よってもしかすると、HSPA+が正しいと判断していると言うより、「HSPA+が正しいと思わざるを得ない」というだけのことかもしれません。

◆再確認しておきますが

一応再確認しておきますが、このブログでは以前から「LTEへの移行だけが選択肢ではない」「LTEにはリスクがある」「HSPA+ならばリスクは無い」ということを割と何回も書いていまして、それらの意見を覆すつもりはありません。

LTEは専用帯域を必要とし、基地局から端末の調達までかなり手間がかかります。また、LTEがサービスインしてみるとダメ技術である可能性はありますし、新技術の初期段階は大抵リスキーです。LTEが安全で安価になるのはしばらく後になるでしょう。それまでの時間稼ぎの方法としてはHSPA+ないしは3.5世代のままで待つかのどちらかになります。

HSPA+は実績のある既存の技術に下駄を履かせる方法なので、とんでもない悲惨なことになる可能性はあまりないように思います。おまけに既存の帯域で既存の通信方式と混ぜて以降が出来、既存の端末と混ぜて利用する事が出来ます。LTEに比べて不確定要素はあまりありません。

またスペック上は、HSPA+は相当に高速化します。導入時期によっては、LTEよりもHSPA+の方が高速に見えるような変な現象すら発生するかもしれません。

ただし、LTEの方が圧倒的に性能が良いと思える場合や、初期からいきなり安定してLTEが動く場合には、HSPA+への迂回は単なる時間と資金のロスになります。特に、初期からいきなり安定していた場合には、LTE導入の早さ遅さがそのまま勝ち負けにつながることもあり得ます。

しかし総合的にはドコモに付き合ってリスクのあるLTEの早期導入競争をする必要性は低いのも事実でしょう。


◆半年で話題の流れが全然変わった

ただちょっと思うのは、2007年末の2.5GHz帯騒動の時点では「モバイルWiMAXは夢の未来技術」というような流れでしたが、これが今や「HSPA+で行きます」という選択肢が語られるようになったのは、ものすごい変化に思えます。HSPA+が正しいのかどうかはともかく、よく考えないとHSPA+は選択肢にすら出てこないからです。

もし2007年の時点で現在と同じ状況だったならば、2.5GHz帯は使い道そのもののレベルでまったく別の提案がなされていたような気すらします。

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