624 アッカが横浜ベイエリアで無線LAN、が「10年前」な感じがする件
ちょっと毛色の違うネタについて少し書きたいと思います。
◆アッカ、横浜ベイエリアで無線LANサービス
アッカが、無線LANで横浜ベイエリアをを面カバーするということを試すようです。
アッカ、横浜ベイエリアで無線LANサービス-エリア情報配信も
http://www.hamakei.com/headline/3322/
ブロードバンド・ネットワーク・サービスの「アッカ・ネットワークス」(東京都千代田区)は7月7日より、関内や新港地区などで無線LANサービス「skeletown(スケルタウン)」を期間限定で提供する。約4カ月間にわたり接続サービスを利用者へ無料で提供し、無線LANの特性を生かしたビジネスモデルや無線ブロードバンドの利用シーンを検証する。同サービスは、横浜の都心臨海部に46カ所(スタート時)のアクセスポイント(電波中継機)を設置し、無線LAN環境をエリア全体で提供する試み。ユーザーが接続したアクセスポイントの周辺のエリア情報の配信をおこなう。1つのアクセスポイントがカバーするエリアが半径100メートル以下と狭い無線LANの特性を生かしたもので、位置情報はインターネット上でサービスを展開している事業者に提供し、位置情報と連動した新しいサービスの創造を目指す。アクセスポイントは期間中に100カ所以上設置する予定。
配信するコンテンツは、神奈川新聞の「カナロコ」が提供する天気予報やニュース、「ヨコハマ経済新聞」によるイベント情報のほか、アートスポットや商業施設などの情報を毎日配信していく。
ノートPCだけでなく、iPod touchやiPhoneユーザーのために、画面サイズやタッチパネルでの操作性を考慮した専用ポータルを用意し、リクルート社「Hot Pepper」の飲食店情報などを提供する。
また、検索エンジン・仮想通貨システムの開発など行う「未来検索ブラジル」と共同で、アンケート回答者に、インターネットで使えるポイント「モリタポ」を進呈するほか、無線LANなどのワイヤレスサービスの決済手段として仮想通貨の有効性について検証していく。
うまく行くと面白そうな気もするのですが(←一応念は押してきます)、どうも「昔聞いたような話」に思えてなりません。
この話は
・無線LANで横浜の一部を面的にカバーしてみよう
・位置に応じた情報配信をしたい
・iPod touchやiPhoneとか
・モリタポ
後ろの二つは単に話題作りな気もします。iPod touchやiPhoneについては、話題作りだと解ってて話題作りに使っている気がします。最後のものについては一応なにか書く必要がある気もしますが、話題が発散するので今回はやめにします。
で、今回で話題にしたいのは前の二つです。このニュースでは明確には書かれていませんが、どうも面的にカバーする気らしいんですね。
◆うまく行かないと思い込むのもよくないのですが
無線LANで町をカバーするという話は、昔に流行した話でもあります。無線LANが町を覆ってゆき、21世紀には街中では無線LANさえあればどこでも通信ができることになっているはずでした(推進派の話では)。
一番話題になっていたのは10年くらい?(以上?)でしょうか。
AirEDGEはほどなく無線LANに滅ぼされるなんていう「専門家」の人も居ましたし、無線LANは携帯電話の音声通話すら脅かすだろうなんていう話もありました。
しかし、初期PHSですら受け入れられなかったのに、無線LANでは話になりませんでした。
そんなことは解っている人には最初からわかっていたはずのことですが、話が勝手にでかくなり、その後それは落胆に変わりました。まさか今になっても「もうしばらくしたら街中では無線LANだけで圏外の心配はほとんどなくなる」なんていう人は居ないと思います。
もちろん、昔そうだからといって今も同じだと思って良いわけではありません。例えばPHS、現在使われているPHSは初期PHSとは異次元レベルに進化しています。昔失敗したからこれからも失敗するだろうというのは、たしかに良くない思考回路です。しかし、状況が変化した証拠なしに「今度は成功する」と思うのも愚かな行為です。
しかし、無線LANで市街地を覆うという話は、21世紀になってもまだ失敗が続いています。
米国で“街全体をカバーする無線LAN”の失敗相次ぐ,シカゴ市は計画を無期延期
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20071012/284453/
いつでも,どこでも,市内ならば無線LANが使える--。自治体主導でインフラを整備して,市内一帯を公衆無線LANサービスでカバーするというアイデアがある。2004年ころから米国を中心にそうした計画が盛んに立ち上がった。例えば2006年にシカゴ市が立てた計画は,600平方km近い市内全体を無線LANでカバーするという壮大な計画だった。携帯電話に対抗する,新たな無線インフラになると期待された。ところが最近,こうした自治体主導の公衆無線LANサービスの計画が相次いで破たんしている。
ちなみに、公衆無線LANで大騒ぎしていた人たちは、その後WiMAXでの大騒ぎに乗り換えている傾向もあるようなないような。
さてさて、改めてアッカのニュースを見てください。2008年なのにまだ同じ事をまだやっているんですか、と思えてきませんか。
◆「位置に応じた情報配信」というのは
「位置に応じた情報配信が利用者になされるなんて、新しいビジネスの予感だ」とか思った人も居るかもしれませんが、これも10年(以上)前からグダグダになっているネタです。
まずこの話はシーズ(技術者側からの思いつき)によるものです。しかも「誰でも思いつく系」のシーズです。誰でも思いつくし、なんかそんなに難しく無さそうに思えてしまうので、とりあえすやろうと思ってしまいます。そういう意味では「アカンぞこれ」な感じの代表的なものとも言えます。
もちろん今回の実験で、とうとうお金になる話に変わるなんてことが起きるかもしれませんけども、無線LANで位置情報なんていうのは、むしろ典型的な要注意ネタだと思った方が無難に思えます。
◆コピペ
無線LANで町を面的にすっかり覆うのはさすがに厳しいと思いますが、無線LANがあちこちで使えるようにするのはよいことには思えます、日本では、というか日本の東京以外では、無線LANが使える場所が少なすぎますし。
位置情報も、またかという感じはしますし、モリタポについても十分に考えてのことならば割と面白いことになることもあるでしょう。私が予算を出す立場だったら勘弁ですが、他人の挑戦には拍手はしておきます。うまく行かないように思えますけど。
ただ、なにかしら「(昔)かっこよかった」ものを今さらやっているだけにも思えてしまいます。iPod touchやiPhoneが話に出てきているところとか、モリタポが引っ張り出されているところとか。
気になっていることがありまして、2.5GHz帯の落選騒動あたりからずっと継続して気にしていることなんですが、どうもアッカがすることには、「かっこよさげに見えたんだろうな」をコピペしただけに思える話がどうも多いように思えてなりません。
私にはなんとなく、モバイルWiMAXへの立候補自体も同じ思考回路で行われ、儲かる可能性の低いネット動画ビジネスに関与したのも、しっかり考えてそうしたのではなくて、「かっこよさげな話題をコピペ」で決まっちゃっただけの気がします。
アッカをめぐる騒動が少し前にありましたけど(その件については、乗っ取ろうとした行動もまた愚かだったので話がややこしくなりましたが)、その時にアッカに落胆してた人の憂鬱はまだ続くんじゃないだろうかと思ったりしました。
◆ただし
ただ、この話は机の上で考えている分には楽しい話題です。この仕組みがうまく回ると前提し、そこから想像すると楽しいです。相当に夢のあることを考えたりできます。
その時に想像の中に広がるのは、未来な感じの都市です。実験が実現しようとしていることが現実になっている都市が実際にあるとしたら、素敵に違いありません。
だから成功するならば成功していただきたいとも思いますし、この話のプレゼンはとても素敵なものでもあったに違いありません。ああ、そんな未来もあるんだなって。
でも、そこから発想しての行動はこれまではうまく行っていないように思えます。
私も「素敵なイメージ」は大事にしたいとは思ってて、これ自体を否定すると世の中が面白くなくなってしまいます。でもそれは、頭の中と現実を混同するような思考スタイルを肯定して良い事にはなりません。難しいでございますな。
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コメント
記事のタイトルを見て、私はてっきり「10年前」な感じがポケベルの事かと思ってしまいました。あれも最後は地域情報の発信とかに賭けてたような。
投稿: | 2008/07/10 23:33