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618 台湾の国策モバイルWiMAX計画「M-Taiwan」について

台湾のモバイルWiMAXについては何も書いてなかったと思いまして、久しぶりにWiMAX関連の記事を少し書きます。


◆その名は「M-Taiwan」

最近、すっかり下り坂の話題ばっかりのモバイルWiMAXですが、下り坂になる前に採用を決定しちゃったところは今も活動を続けています。

日本ではKDD(慎重)、アメリカではスプリント(炎上)、韓国は国策(失敗)、そして台湾も国策で大規模な計画を進めています。小さい計画を除くと、これだけが世界の全部だということです。

とりあえず今回は台湾の話題に付いて少し書きます。台湾は国策でモバイルWiMAXの計画を進めています。あるいは、進めちゃっています。

台湾が決断をしたのは、世界的な「WiMAXバブル」が頂点だった時期です。つまり(モバイルWiMAXがスカだった場合には)、最悪の時期に超重大な決定をしてしまったことになります。

台湾が国家レベルで推進しているWiMAXの計画は、「M-Taiwan」という名前がついています。モバイル台湾、というわけです。そして、M-Taiwanは、「台湾全土をモバイルWiMAXで覆い尽くす」という目標を立てています。


◆勘違い

2005年くらい?にはモバイルWiMAXは非常に「評判」になっていました。

当時良く言われていたように思えることには、今となっては謎なことが多々あります。従来の技術とは異次元に高性能だとか、「携帯電話」では全く勝負にならないほどだとか、固定回線を置き換えるとか、非常に安価に提供できる、などです。

「時速120Kmでも通信でき、光ファイバ並みの70Mbpsが出て、基地局一つで数十キロの範囲をカバーし、無線LAN並みに安価で、ADSLより安くて固定回線の代わりにもなる」というようなものです。で、携帯電話なんてもう時代遅れで滅びる寸前だ、のような。

とても安価で、高速で、湯水のように高速パケットをどこでも使える時代が来る、というような感じのことも言われていたように思います。

以前から記事で書いているように、このイメージはほぼインチキだったと言っていいでしょう。ですが、何故だか解らないことに、以前はこのイメージが世界中に広められて妙に期待がなされていました。

ADSLやCATVがモバイル技術に恐れをなした時期があったのも、このイメージを真に受けたためだと思われます。そもそも宣伝文句のとおりの性能だったとしても、モバイルが固定回線と勝負するなんて容量の面でものすごい無理があるんですが。

M-Taiwanでも例えばこういうことが良く言われていたようです、

勘違い
・ADSLは台湾人にとって料金が高い
・モバイルWiMAXはADSLより安く提供できるし、ADSLより高速で、モバイル利用もできる
・台湾全土をモバイルWiMAXがカバーすれば、ADSLは要らなくなる

これを台湾が国家を挙げて信じてしまったというのがM-Taiwanの一つの側面であります。


◆台湾的成功体験

台湾は世界におけるIT機器の量産拠点となっています。ノートパソコンやスマートフォンなんかも台湾で作られてるものが沢山です。こういう感じが台湾の成功であって誇りになっています。

無線LAN関係の機器についても台湾が量産拠点です。無線LANは台湾にとっては「我が領土」だというわけです。

ですが、無線LANは所詮無線LANです。モバイルとは置き換わるものではありません。一昔前に、無線LANが携帯電話の領域に入り込むなんて思われてたこともあったようですが、その結果(教訓)として思い知ったのは、無理だと言う事でした。

台湾ではちなみに無線LANについても国策での普及が進められています。よって広く利用されていますが、面をカバーしようとしたりした試みはやっぱり失敗しているようです。

そういうわけでWiMAXが夢の技術という売り込みで出てきたとき、台湾にとっては願ったりかなったりの技術に見えたのかもしれません。

一度国策で話を進めてしまうと、なかなかやり直しは出来ないようです。決めた当時は鉄板の未来だと思ったんでしょうか。

台湾は日本より先にモバイルWiMAXに多量の帯域割り当てを行っていて、日本で2.5GHz帯の割り当てが行われる時には、日本は台湾を見習ってもっと多量に帯域を割り当てないと世界に遅れる(またか)というお怒りの方も居られたようです。

帯域は台湾でも一陣営あたり30MHz幅単位(10MHz幅×3で利用する)での割り当てが行われています。さらに追加で割り当てがなされる予定もあるようですが、実際に追加割り当てが行われるのかは不明です。

帯域の割り当てやサービスインの計画は日本よりも結構適当なようでして、サービスインしてからおかしなことになる可能性も(日本よりは)高いような感じのようです。つまり、実際のモバイルのサービスを提供すると言うような意味ではあんまり慎重に検討されていないように思えます、日本よりは。

また、初期には超高速な接続を実現するということも言われていたようですが(例の「光ファイバ並み」のイメージ)、実際に試してみるとさほど速度が出なかったのか、最近ではそういうことはあんまり言われなくなったようです。実際に試してみるほどにトーンダウンしていったKDDIと似ている気もします。

台湾の目論見は、モバイルWiMAX関連機器を量産して世界中に輸出することです。ですから、世界で広く普及することが前提になっていたと思うのですが、この予定がすでに違うことになっています。台湾だけで成功しても失敗した感じなのですが、その上台湾でもうまく行かなかったら、大失敗であります。

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コメント

M-Taiwanっていうのがあるんですかー。

分かりにくいから「台-MAX」とか「TaiWAX」とか呼べばいいのにw

投稿: TT | 2008/07/22 22:42

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