617 ヤフー騒動と、日本のヤフーの株が売られるかもしれない件
アメリカでヤフーの本体とマイクロソフトが揉めていますが、それに関しての話。
今さら記事にするのもどうかと思ったのですが、一回くらい記事にしてみても悪くは無いのではないかと言う事で投稿。
◆大まかな話
米Yahoo!、アジア資産売却も視野に、Yahoo! JAPANへの影響は?
http://markezine.jp/article/detail/4629
7月17日、米Yahoo!が株主に対して再度、現経営陣の支持を訴えた。アイカーン氏は株主として、Microsofotの買収提案を受け入れなかった現経営陣を批判し、メンバーを入れ替える意向を明らかにしているが、Yahoo!側は現状の施策こそ、株主価値を高めると主張している。Yahoo!は株主に対して、Microsoftに1株あたり33ドルでYahoo!をまるごと売却することが最良であると訴えており、条件次第では検索事業のみの売却の可能性もあるとしている。また、企業価値を高める施策を検討するなかに、同社のアジアにおける資産を売却し、株主に還元することも視野に入れていることを明らかにした。
日本のヤフー株式会社の筆頭株主はソフトバンクで持ち株比率は40.16%だが、Yahoo!も33.41%を持つ大株主、また中国のBtoBオンラインマーケット事業を手がけるアリババ・ドットコムの大株主でもあることも知られている。
皆さんご存知のとおり?、アメリカではYahoo(本体)をマイクロソフトが買収しようとして騒動が続いています。一通りの騒動があったあと、途中からアイカーンさんというややこしい人が参戦してきたのた現在の状態です。
基本的なところを確認しますと、ヤフーはヤフー本体(アメリカのヤフー:以下、単にヤフーと記す)と日本のヤフーは別の会社で、今回の話はアメリカのヤフーの話です。
そして、マイクロソフトがGoogleに対抗するためにヤフー(の検索事業)を買収しようとしたところ、ヤフーが買収を嫌がったために買収が成立しませんでした。
そして、ヤフーが買収を嫌がっているのは理不尽だとして、途中からアイカーンさんというややこしい人がヤフーに態度を変えるように、そしてヤフーのボスに退陣するように要求しています。
引用したニュースは、この騒動が日本のヤフーの株が売却される事態につながるかもしれないというニュースです。
◆何故買収しようとしたか、何故嫌がっているか
なぜこの買収の話が出てきたかということですが、マイクロソフトがグーグルに対抗したいからで、しかもマイクロソフトが自分で行っているネット検索の事業がうまく行っていないためでした。したがって、こちらもグーグルに押されて下り坂になっているヤフーの検索と合体してグーグルに対抗しようと思ったのがことの始まりです。
どうにもマイクロソフトは悪の帝国みたいな印象があります、また、買収となるとなおさらです、よって、ネットの空気みたいなものは「マイクロソフトがまた悪事を働こうとしているので阻止せねば」と反射的に反応している感じもあります。この反応があることによって話の全体がわかりにくくなっている感じもします。
二社が手を組む事にはビジネス的な合理性もあります。特に、外野(この意味については後で書きます)にとってはそうです。両社が組む事によって企業の価値は向上するので、上の話とは逆に「ビジネスっぽい話題」に拘泥なさっている方面では、両社の合併こそ正しく、反対している奴は無知ということになっています。
では、ヤフーのボスが反対しているのはどうしてでしょうか。悪の帝国と戦うためでしょうか、そうではありません(もしそうならばトップに値しないバカです)。おそらく「単に嫌」なのです。
あなたがどこかの会社に勤めているとしましょう、そしてそこの業績が最近下り坂で社内がちょっと微妙な空気になってきているとしましょう。そこで、あなたにとって「微妙な会社」が会社に買収を仕掛けてきたとしましょう。買収は事業レベルで考えると合理的だったとしても、そんなことには関係なく「嫌だな」と思うはずです。だって、自分にとっては嫌なんですから、「嫌だ」と言うのも正しい意見です。
企業や企業の事業をそれ自体を単位として考えて色々な事を言う事は出来ます、しかし、そこで働いている個々の人間にとって望ましい事かどうかということは、そういうこととは別です。大義などなくとも、企業を実際に構成している要素にとって嫌なら、その人にとっては嫌です。事業価値とか経済全体とか知った事ではありません。
マイクロソフトはワルイというのも、企業価値が向上するみたいなのも、結局は外野の意見だということになります。ただヤフーの株主にとっては外野ではなくて当事者なので、現実的には「株主の意見」と「従業員の意見?なのかヤフーのトップの個人的情念?なのかわからんもの」が激突する形になります。
◆恐怖のアイカーンさん登場
ヤフーのボスはあらゆる手段で徹底的に反対をしています。
その間、ヤフーからは大量の人材流出がありまして(辞めて欲しくないような人も沢山去った)、株価も下がってしまいました。ヤフーのボスは、それでもあらゆる手段での抵抗を続け、本来商売敵でもあるグーグルに支援を要請することになります。これがヤフーの一部を削るみたいな形になったので、合併するべきだと言う人にとってはまた嫌な感じになりました。
マイクロソフトとしてはヤフーがどんどん「安く」行くので、待つのも悪くは無い状況かもしれません。ただ、あんまり弱体化してしまうと手に入れる価値もなくなってしまいますが。
以前からの株主にとっては、憂鬱な事になっているはずです。
諸般の事情があるにせよ、株主の視線(ないしは全体の視線)でみると、理不尽な事が続いています。この視点からすると、買収された方がよいと考える人が多いわけですから。
そこで、「アイカーンさん」という人が、株主を代表して「さっさと買収されろ」「ヤフーのボスは辞めろ」ということで殴りこんできました。
アイカーンさんというのはどういう人かというと、大昔から企業を買収したり株主として企業に何かを言ったりして来た人です。経済全体から見ると理不尽な運営をしている企業を買って、「合理的」に作り変えたり、部門を切り売りして買収前よりも価値をあげて売って儲ける事をしてきた人です。
しばらく前に日本でも企業を無理矢理に買おうとした人がいたりして騒動になっていましたよね。
アメリカではずっと昔からそういうことが行われていて、アイカーンさんはこの分野での古株かつ大物です。いわば、そういう件で「日本で有名になった人/ところ」を超グレートにしたような人です。
アイカーンさんも当然にボランティアではありません。理不尽な状況になっているために価値が下がっているところで参入し、自分が先頭に立ってこの理不尽な状況を改めさせると、価値が回復して儲かることになるわけです。アイカーンさん「としては」、自分が儲けると同時に世の中を合理的に改めているわけです。
そして、アイカーンさん、企業は従業員のものでもある、という意見については(立場上)以前から猛烈に批判を行っています。今回についてはむしろ「ヤフーはヤフーのボスの私物ではない」という批判が目立つ気がしますが。
アイカーンさんは、他の株主に自分に味方をしてヤフーのボスと戦うように呼びかけています。アイカーンさんが勝つと、とりあえずはヤフーの現在のボスは追い出されることになるはずです。
◆日本のヤフーの株
ヤフーのボスは、買収阻止のためにあらゆる手段を使おうとしています。また、そろそろ引用もとのニュース記事について直接コメントをつけると、
7月17日、米Yahoo!が株主に対して再度、現経営陣の支持を訴えた。アイカーン氏は株主として、Microsofotの買収提案を受け入れなかった現経営陣を批判し、メンバーを入れ替える意向を明らかにしているが、Yahoo!側は現状の施策こそ、株主価値を高めると主張している。
アイカーンさんは、とっとと買収されろと言っています。それに対して、ヤフーのボスは「現状維持が株主のためにもなるんで、我々を支持してください」と言っているということです。
Yahoo!は株主に対して、Microsoftに1株あたり33ドルでYahoo!をまるごと売却することが最良であると訴えており、条件次第では検索事業のみの売却の可能性もあるとしている。また、企業価値を高める施策を検討するなかに、同社のアジアにおける資産を売却し、株主に還元することも視野に入れていることを明らかにした。
「1株あたり33ドル」というのは、ちょっと高くね?という価格提示です(交渉ですから)。ただ、一連の騒動で株価が下がっているので、最初のマイクロソフトの提案に応じていれば、もっと高い値段で余裕で売れたようです。おそらく時間が立てば経つほど安くなります。
で、株主にどうやって利益をもたらすかということについて「同社のアジアにおける資産を売却し、株主に還元することも視野に入れている」ということを言っています。利益の出ることをやって還元すると言っているわけではなく。
で、「アジアにおける資産」って何なんですかということになると、
日本のヤフー株式会社の筆頭株主はソフトバンクで持ち株比率は40.16%だが、Yahoo!も33.41%を持つ大株主、また中国のBtoBオンラインマーケット事業を手がけるアリババ・ドットコムの大株主でもあることも知られている。
というわけで。
・日本のヤフーの株
・アリババの株
を売り払ってお金にして、株主に配るよ、と言っていることになります。
ヤフーのボスがあらゆる手段で反対を続けていて、理不尽な感じになっているという意見があることについてはこれで何となくお解りいただけるでしょうか。グーグルにグーグル有利な条件で泣きついてみたり、自分自身を削って配当する(アイカーンさんに賛成しなければ、お金が株主に配られるので我々に賛成してね)と言ってみたりしているわけですから。
で、もうひとつ気になるのは、巻き込まれる可能性のある日本のヤフーです。
日本のヤフーの株主
・ソフトバンク 40.16%
・ヤフー本体 33.41%
日本のヤフーの株がまとめてどこかに売りに出るということです。株が大量に売りに出ると言う事は、株価が下落することにつながります。もしそうなるとソフトバンク保有の株の価値も下がります。また、もしどこかがこの株をまとめて買うと変な事になります。そんなことは決しておきないはずですが、もしドコモが全株を買い、さらに株を買い進めるととても変な事になります。
また、仮にマイクロソフトがヤフーを完全支配してしまうと、以下のようなことになるかもしれません。
日本のヤフーの株主
・ソフトバンク 40.16%
・マイクロソフト支配下のヤフー 33.41%
◆その他
恐怖のアイカーンさんですが、この人は「こういうこと」を専門にしている人なので、いろんな会社に年中同じような事をやっています。
このブログに以前書いた事と関係のあるところでは、モトローラにアイカーンさんが圧力をかけてます。
モトローラは携帯電話の端末の販売の利益で苦しい状況になっていて(世界シェアは結構ありますが)、端末製造の売却の話が出たりして、とりあえずはモトローラ本体から端末の事業が切り離されました。これに、この人は(一応)関係しています。
モトローラといえば、2008年の一月あたりに書いたように、WiMAX陣営の重鎮というかWiMAXに最初から関わっているメンバーです。一応ながら、アイカーンさんが「WiMAXは明らかに儲からないから手をひけ、手をひかないなら次の株主総会で現経営陣を全員交代させる」と言い出すことだってあるわけです。
という記事を少しづつ書いていて投稿した途端にこういう事になりました(泣)。
米ヤフーがアイカーン氏を取締役に、委任状争奪戦に幕
http://jp.reuters.com/article/domesticFunds/idJPnJT821008920080721
以下のように、両者で手打ちがなされたようです。
米ネット検索大手ヤフー(YHOO.O: 株価, 企業情報, レポート)は21日、委任状争奪戦を仕掛けていた米著名投資家カール・アイカーン氏を取締役として受け入れると発表し、8月1日の株主総会前に同氏と和解した。
ヤフーは声明で、取締役を9人から11人に増やすことを公表。現取締役9人のうちヤンCEOを含む8人を再選し、新たにアイカーン氏を迎え、残りの2人はアイカーン氏が推していた候補やタイム・ワーナー(TWX.N: 株価, 企業情報, レポート)インターネット部門AOLのジョナサン・ミラー前会長兼CEOの中から選ぶ方針だと述べた。
アイカーン氏は、合意は「好ましい結果」であり、ヤフーのすべてもしくは検索事業の売却について、引き続き検討がなされると確信しているとの声明を発表した。
ヤンCEOは声明で、今回の合意により委任状争奪戦は過去のものとなるとした。
これでこの騒動はすっかりおさまるのかどうか解りませんが、とりあえずは何かしらの売却は行われる事になるような気がしますね。検索事業だけが売られるとか。現在のまま何もないということはないでしょう。
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