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637 第三世代のまま80Mbps超まで高速化する話が実際に進んでいるようで

以前の記事でも書いていましたが、LTEなどの次世代に移行しなくても高速化はできる、という話題です。


◆具体的な話に

以前の記事にも書きましたが、LTEに移行しなくても3.5世代の発展系でも高速化(あるいはスペック上の高速化)をする事が出来ます。それについて具体的な話が進みつつあるようです。

総務省の3.9G作業班,DC-HSDPAの標準化動向などを紹介
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080613/308039/

今回プレゼンの中心となったのが,HSPAの高度化システムの動向だ。ノキアシーメンスネットワークスと日本エリクソンは,3.9Gシステムの本命と見られるLTEに加えて,データ変調方式の多値化などによってHSPAを高速化するHSPA Evolution(HSPA+)と,帯域を2重化して高速化するDC-HSDPA(dual cell-HSDPA)の動向について紹介した。

ノキアとエリクソン、つまりヨーロッパ勢が呼ばれて説明をしたようです。

詳しい説明は後でしますが(わかんない人はしばしお待ちください)、以下のとおりのようです。文章で書くと面倒なことになったので箇条書きです。プレゼンみたいになってしまいますが、

・既存のHSDPA高速化をフルにして14.4Mbps
・64QAMで×1.5で21Mbps(HSPA+)
・2x2MIMOを利用して×2(HSPA+)
・5MHz幅の通信を二つ束ねて×2(DC-HSDPA)

これらを全部組み合わせると、なんと84Mbpsにもなります。

今回のニュースは、こういう高速化が理屈の上では可能だという話なのではなくて、こういう話が(一応は)具体的に進みつつあるということです。

この話の良いところは、既存の第三世代を徐々に進化させてゆく事ができるので(新規の帯域も必要ない)、導入が難しくないということです。また、実績のある技術ですからとんでもないトラブルが出る可能性もあまりありません。これだけのスペックがあれば真正の次世代技術にもスペック上はあまり見劣りしません。

もちろん悪い事はあって、「スペック」は稼ぐ事はできるけれども実際の速度向上や効率向上はさほどではないと見られることや、結局LTEに移行するのであれば無駄な投資になることです。

LTEが(初期)トラブルに悩まされるような状態だった場合、こちらの選択肢が(一時的な)本流になる可能性もあります。

なお、CDMA2000でも同じような高速化が可能です。64QAMなどはすでに実用化済みで(Rev.A)、むしろCDMA2000陣営の方が既存世代での高速化は先行しています。つまりAUも次世代に移行しない選択肢が同様にあるということになります。


◆あたらめて詳細の説明

前から読んでおられる方には再度になりますが、どういうことで84Mbpsにもなるのかを説明したいと思います。

現状の高速化
・まずW-CDMA(第三世代)はそもそも最高速384kbpsでした。
・HSDPA(3.5世代)になり、まず3.6Mbpsに高速化します。一応は同じ仕組みで14.4Mbps(3.6Mbps×4)まで高速化が可能になっています。

現状
・現在の日本の端末の大半は3.6Mbpsまでの対応になっています。
・現在進行しているのは7.2Mbps(3.6×2)への高速化です。スペック上は速度は2倍になりますが、実効速度が2倍になるわけではありません。しかし、それなりの効果(販売上の効果)があるのでここまでは対応は進むと見られます。
・14.4Mbpsへの高速化も可能ですが、実際の速度向上はさらに限定的になると見られ、対応するのも大変なので、現行世代での高速化は7.2Mbpsで打ち止めになるという意見も多くあります。

次の計画は、速度を1.5倍にする高速化です。現状のHSDPAは16種類(4ビット)の波形でデータを送る16QAMですが、これを64QAM(6ビット)にすることで1.5倍の高速化をします。CDMA2000陣営はEV-DO Rev.Aですでに実現済みです。クアルコム陣営はとにかく先行しています。

ただし、64QAMはノイズに弱くなるので、「電波状態の良い場合のみ最大1.5倍まで高速化する」という感じになります。よって実際の速度向上は限定的です。

これで、21MbpsにするのがHSPA+の基本的なところです。

HSPA+では、他に2x2MIMOの導入の話もありました。これは端末にアンテナを複数生やすなどして、基地局と端末の間の通信を最大二重化する方法での高速化です。最大二重化なので、スペックはこれで二倍になります。21Mbps×2で42Mbpsとなります。

ただし、MIMOは電力を多量に使うほか、携帯端末にMIMOが可能なアンテナを搭載するのは難しいので、携帯端末での実用化は怪しいところがあります。さらにはそんなに都合よく通信は二重化されない事が多いので、通信速度の高速化の効果も実際には限定的だと思われます。

理屈上ではMIMOは2x2に限られるわけではなく、さらに「倍率」を上げることもできますが、さらに現実性は薄れ(難易度は向上し)ます。

そして今回「DC-HSDPA」という名前で出ているものは、5MHz幅での従来の通信を二つ束ねて高速化する方法です(CDMA2000陣営ではRev.Bですでに計画済みです)。10MHz幅を使うことになりますが、実効速度も素直に二倍になることが期待できます。この高速化についてはスペックと実効速度との乖離はありません。

全部組み合わせると「スペック上は84Mbps」というすごい事になります。しかし、実効速度は現在から比べてそれほど向上しないはずでして、実効速度とスペック上の速度には激しい乖離が生じることになるのではないか、と予想しています。


◆ソフトバンクとイーモバイルが検討するはず

この高速化はソフトバンクとイーモバイルによって検討されるはずです。ドコモは早期の次世代(LTE)への移行を計画していますし、LTEの推進役である以上その義務を負っています。

しかし、ソフトバンクとイーモバイルがLTEへの早期の投資をする力が無い場合や、LTE自体を外れ技術であると考える場合には、HSPA+やDC-HSDPAへの投資で高速化をする選択肢があります。ただし、LTEが早期から成功した場合には無駄な投資になる可能性もあります。

特にLTEよりも良い点は、LTEの導入には「専用の帯域」を用意する必要があるのに対し、これらの高速化は既存技術の延長のものなので、従来の通信と混ぜながら次第にアップグレードできる点です。また、実績のある技術に下駄を履かせた高速化なので、大きなトラブルに見舞われる可能性も低いはずです。

スペック上はかなり高速化したように見せる事が出来るため、商売上の次世代対策にもなります。実際の高速化の効果はLTEの方が上であると思われるので、顧客に「スペックだけ」であることを悟られないようにする必要はありそうですが。

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