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636 中国政府、国策の第三世代(TD-SCDMA)以外の「締め出し」を計画?

さて、とんでもないニュースです。

あり得ない話が検討されているようです。


◆中国、独自技術で鎖国?

中国が国策で独自開発した「TD-SCDMA」を守るため、それ以外の新技術を中国から締め出すかもしれないという恐るべきニュースが出てきました。

中国工業情報化部:通信規格TD-SCDMAの一本化、ほのめかす
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/080613/20503.html

6月12日、中国国内メディアによれば、中国工業情報部部長李毅中氏は中国通信業界専門家、李進良氏、李世鶴氏らと会談。中国3G産業の発展について、中国独自3G規格「TD-SCDMA」を中国唯一の3G規格にする見解が示されたとのこと。

見解を示した理由について、李進良氏は「現在世界3G規格は主に、WCDMA、CDMA2000、TD-SCDMAの3種類。仮に中国がWCDMA、CDMA2000、この2種類の規格を採用した場合、中国3G市場は2G時代のように、海外ケータイ大手に占有される可能性がある」とコメント。

いろんな意味で驚愕するニュースです。

まず、当事者が直接言ってしまっていることです。さすがに「私の意見では」という形にはなっておらず、「専門家に意見を聞いたらこういうことを言っておりました」という体裁になっていますが、そういう体裁での「ほのめかし」になっています。

また、携帯専門家が国策の技術を守るために、あっさりと海外勢の完全締め出しをしようと言ってしまっているのもなかなかすごい事かもしれません。

しかし確かに、TD-SCDMAを守る方法は他にはないかもしれません。


◆これは何をすると言っているのか

かつで第三世代技術が、「まだこれからの話題」で開発中だったころにこの話の始まりがあります。世界の大御所が寄り集まって開発しているW-CDMAと、当時はまだ新興勢力だったクアルコムがCDMA2000を開発しているころ、中国が独自の技術開発を検討します。そして当時新しい話として話題になっていた(はず)のTD系のCDMAを独自で開発することになり、TD-SCDMAの開発がはじまります。

ちなみに、大半の携帯電話の通信技術は、下り(基地局→端末)と上り(端末→基地局)の通信を違う周波数で行う事で分離をしています。CDMA2000やW-CDMAはそうですし、GSMやPDC、LTEもこの方法です。

それに対して、下りと上りで同一の周波数を使い、時間分割で上下を分離する方法があります。TD-SCDMAはそういう種類の第三世代のひとつです。他陣営との違いをそこで出すつもりだったのでしょう。ちなみに、PHSや次世代PHS、WiMAXなども時間で分離する方法をとっています。

最初は、CDMA2000やW-CDMAに少しだけ遅れてサービスインするはずだったのですが、サービスインは延々と遅れ、2008年の4月になってようやく「試験サービスイン」が行われるほどとんでもなく遅れています。ちなみに、「2008年の4月」というのは、北京オリンピックに間に合わせたいという「国策による日程」だと思われます。

その間、中国では第三世代の導入がなされず、その時点ですでにTD-SCDMAの保護がなされているとも言えました。また、中国はモバイルWiMAXが第三世代として認められることに反対しましたが、これもTD-SCDMAと競合するためだと言われています。

中国は現在、TD-SCDMA(第三世代)の試験サービスインに引き続いて、独自の3.5世代のTD-HSDPAをサービスインをするのかな?状態であり、さらには独自の3.9世代技術のTD-LTEを開発しています。

そして今回、TD-SCDMAを保護するためにW-CDMAやCDMA2000を中国大陸から締め出す事を検討しているという話が出てきた、というわけです。


◆もしこれが本当に行われるとしたら

これも少し前に記事にしましたが、中国では現在お上の主導で通信(携帯)の三グループへの再編が行われています。


そして、クアルコムと組む陣営(=CDMA2000を採用する)が出てきていますが、

クアルコムが中国の携帯電話会社と組むことになった
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/06/943_1bab.html

この話も流れてしまうか、もしくは「クアルコムは仕方なくTD-SCDMAに手を出す事になる」という妙な事になる可能性があります。

クアルコムは最近まで知らん顔をしていたので、中国ではおそらくTD-SCDMAはクアルコムの影響下に無いのだと思われていたような気もするのですが、基本的にTD-SCDMAもCDMAです。CDMAの特許の多くを支配するクアルコムはTD-SCDMAへのライセンス料支払いを要求することが出来ます。

よってクアルコムにとってCDMA2000での中国大陸への進出が頓挫するのは望ましくないことですが、TD-SCDMAでも支配力を残す事は出来てしまいます。よって、クアルコムがTD-SCDMAに手を貸したり、クアルコムがTD-SCDMAのチップセットを出したりするような訳の解らない展開になることも無くはない(という程度ですが)、かもしれません。

また、他のCDMA系技術よりも直接の競合関係になるモバイルWiMAXの中国上陸は、やっぱり厳しいということかもしれません。同じTDD系で帯域を取り合いになってしまいますし、TD-LTEの将来を潰すからです。

閉鎖的だと日本の悪口を言う日本の人はいますが、私は同じ人が中国のこれらの政策を批判するしているのをほとんど見たことが無かったりします。国策への批判だとすると、WiBroや台湾のモバイルWiMAX国策も同様に批判されるべきですがこれもあまり見たことがありません。


◆その他

もし、TD-SCDMAの将来がこういう無理な方法によってでも担保されるとするのであれば、TD-SCDMAの基地局は必ず量産され、端末も必ず量産される事になります(しかも「中国価格」で)。可能性レベルの話に過ぎませんが、日本の2.0GHz帯で「これをあてにして」TD-SCDMA/TD-HSDPAで立候補する、ということはありえるかもしれません。

また、もし禁止されるとこういう事になってしまうかもしれません。

すでにサービスインしているものはお咎めなし(インフラまで作ってあるのでどうしようもない)
・GSM
・CdmaOne
・PHS

これから許可されるもの
・TD-SCDMA
・TD-HSDPA
・TD-LTE?

「上に政策あれば、下に対策あり」(と中国の人は言う)の「もしかしたら」
・GSM系の高速化版、EDGEやEDGE Evolution
・高度化PHS

というわけで、ここでとんでもない事に気がついたわけですが、もし仮にW-CDMAとCDMA2000が禁止されて閉塞的な感じになった場合において、高度化PHSが抜け穴として生き残った場合には、中国大陸で意外と重宝されるかもしれません。

高度化PHSがTD-LTE(次世代)まで倒してしまうことは考えにくいですし(だからこそウィルコムは次世代PHSを開発しているわけです)、そもそもすでにPHS自体はサービスイン済み、ガス抜きにはちょうど良いかもしれません。どちらにせよ日本のローカル技術なので、中国がもっとも恐れる「欧米の世界標準による蹂躙」にはつながりようがありません。

そもそも遡ると、中国大陸で大規模にPHSが普及したきっかけは、固定電話会社に「携帯電話」を禁止したことでした。「上に政策あれば、下に対策あり」で「これは携帯電話じゃありませんから」という屁理屈で始まったのがPHSでした。その後、料金が安いなどの利点によって急速に普及する事になります。

無理に規制をすると変な事になるという例かもしれません。しかしTD-SCDMAを守るのは難しいのも事実かもしれません。

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