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633 iBurstが2.0GHz帯で候補に出てくる? / 802.20に正式に承認される

これも少し時間がたってしまった話題ですが、投稿します。


◆iBurstが正式に802.20になる

正しくは「iBurstをベースにしたもの」ですが気にせずに書き進めます。

IEEE802.20というのは、アメリカで規格なんかを決める委員会で、IEEE802.11が無線LAN関係、IEEE802.16がWiMAX関連のところです。

IEEE802.16はもともとが固定用途の無線(有線の代わり)の話をするところでモバイルの話ではなかったのですが、いつのまにかモバイルの話になってしまいIEEE802.16e(モバイルWiMAX)が出来上がってしまいます。もともとモバイルの話をするところはIEEE802.20でした。

細かい事は過去に記事にしたのでそちらをお読みください。

今回のニュースはそこでiBurst(をベースにしたもの)が正式に承認されたというニュースです。

京セラ提案の「iBurst」、IEEE 802.20として標準規格に
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/40436.html

「iBurst」は、京セラと米ArrayCommが共同開発した高速無線通信技術。1ユーザーあたり下り最大2Mbpsでのデータ通信が可能で、周波数利用効率の高さや、時速100kmでの移動でも利用できるハンドオーバー性能などが特徴とされる。今回、IEEE 802.20となった規格は、iBurstをベースにしながらマルチキャスト機能や現行システムの1.5倍となる伝送効率の実現、暗号化方式「AES」のサポートが追加されている。

もともとのiBurstは
・帯域:5MHz幅(上下兼用)
・基地局あたり最大24Mbps
・ユーザあたり最大1Mbps
というものでした。

効率1.5倍ということですから、

・帯域:5MHz幅(上下兼用)
・基地局あたり最大36Mbps(24×1.5として)
・ユーザあたり最大2Mbps

ということになったのでしょう。

「マルチキャスト機能」は「放送」のようなサービスを効率的に行う事ができるということです。

また、

京セラのiBurstベース技術、IEEE802.20規格として正式承認
http://www.rbbtoday.com/news/20080618/52070.html

iBurst はすでに海外11か国(オーストラリア、アゼルバイジャン、カナダ、ガーナ、ケニヤ、レバノン、マレーシア、ノルウェー、南アフリカ、タンザニア、アメリカ)で商用導入されている。

また、現在、10か国以上で iBurst を導入する計画が進んでおり、今回の IEEE による正式承認を受け、導入国がさらに広がることが期待される。

他の技術と異なるのは、このようにすでに「使われている」ということです。例えばLTEを採用したいとしても、今すぐに基地局を買ってきてサービスインする事は出来ませんし、実際にサービスをするとどんな性能になるのか解りません。それに対して今すぐに使え、実績もあることになります。

ただし、iBurstは他の次世代がOFDMA(第4世代系とでも言っておきましょうか)を用いているのに対し、第2世代系の技術です。他と比べて古い感じはします(実際、実用化されて時間が経っています)。ただし、それなりの性能があるから802.20に承認されてはいるのですが。

今すぐ導入できるローリスクローリターン(ミドルリターン)な選択肢だということです。


◆最大2Mbps

最大2Mbpsというのはかなり「遅い」ように思えると思います。

3.5世代携帯でも3.6Mbpsや7.2Mbpsであったり、LTEなどの次世代では(ほとんどハッタリの数値であるにしても)100メガ超えの話題ばかりだからです。

ただ、この数字はちょっと意味が違います。

・帯域:5MHz幅(上下兼用)
・基地局あたり最大36Mbps(24×1.5として)
・ユーザあたり最大2Mbps

基地局あたりの速度と、ユーザあたりの速度が全然違う事に注意してください。

背伸びしまくって最大2Mbpsが限度の技術なのではなく、多数のユーザが接続してもユーザあたり最大2Mbpsが出るようにしてあるということです(ただし、逆に言えば基地局がスカスカでもそれ以上は出ないということ。現状では)。

また、3.5世代での「7.2Mbps」というのは、到底そんな速度が出るわけが無いという数字ですが、この場合の最大2Mbpsは、本当にそれに近い速度が出るという数値ということになります。多数のユーザが接続中でも一メガ超えは普通に出来るであろうということです。

つまり、

・7.2Mbps:非現実的なスペック上の数値
・2Mbps:複数のユーザが繋いでいても、本当にそれに近い速度が出るという数値

というわけで、実効値で一メガ強の速度を安定して提供するような方式ということになります。


◆2GHz帯の獲得戦にどこかがiBurstで手を挙げるかもしれない

現在、2.0GHz帯の電波の再割り当ての話が進んでいます。iBurstはその割り当てですでに技術として候補になっています。

もともとはアイピーモバイルに割り当てられていましたが、サービスインできずに帯域返上となったためです。

そしてそこに、iBurstを売り込む話が出てます。

古河電工、iBurstでの伝送実験をケーブルテレビショー2008で公開
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/22141.html

古河電工は11日、iBurstによるワイヤレスブロードバンド伝送実験を、6月19日より開催される「ケーブルテレビショー2008」にて実施すると発表した。

iBurstは、京セラと米Arraycommが共同開発した無線通信規格。電波指向性を操作できるアダプティブアレイアンテナ技術などを利用して、5MHzの周波数帯域では1基地局で下り最大24Mbps、1端末あたりでは下り最大1Mbpsでの通信が可能。総務省 情報通信審議会で行なわれている、2007年にアイピーモバイルが返上した2GHz帯の再割当検討において、対象技術として審議されている方式の1つだ。

今回の実験は、6月19日から21日にかけて開催される「ケーブルテレビショー2008」の古河電工ブースにて行なうもので、iBurstの基地局1台および移動局4台を利用した伝送実験を実施する。古河電工がCATV事業者に対するシステム設計・構築を、京セラがiBurst関連機器の開発・製造を、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)がiBurstネットワークの設計・工事・運用・保守を担当する。

古河電工では、情報通信審議会の動きを注視しながらCATV事業者にiBurstの紹介を行ない、日本全土のブロードバンドネットワークの構築を促進し、デジタルディバイド解消や公共福祉サービス構築に貢献するとしている。

24Mbps/基地局で1Mbps/ユーザのようですから、従来からのiBurstでデモがなされるようです。

この話だと、CATV事業者で参入したいところがあるのでしょうか?

また、割り当てがなされる周波数幅は15MHz幅ですが、これを干渉防止で5MHz×3にする必要が無いのならば、15MHz幅全てを通信に使うことが出来ます。その場合には、

・帯域:5MHz幅(上下兼用)
・基地局あたり最大36Mbps(24×1.5として)
・ユーザあたり最大2Mbps

単にそのまま三倍すると、

・帯域:5×3MHz幅(上下兼用)
・基地局あたり最大108Mbps(24×1.5として)
・ユーザあたり最大2Mbps

という感じになります。

基地局一つで相当な数のユーザのアクセスがあっても「ユーザあたりの速度を維持」できる事がわかります。

また、すでに実用化されて時間が経っているので、導入後に深刻なトラブルを出す可能性もあまりありません。ただし、次世代な感じが今ひとつ薄いのも事実。

さてこの売り込みは成功するのかどうか?

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