631 ドコモとiPhone / その他のキャリアとiPhone / 蛇足
iPhoneについてもう少し書きます。
同じ話題で記事を書くか迷いましたが、結局少し書いてみることにしました。
◆ドコモはまだ諦めていない
iPhoneがソフトバンクから出るという発表がなされた時から、「ソフトバンクの独占販売である」という情報は一切出てきていません。よって、普通に考えるとソフトバンクは独占販売権を獲得したわけではないだろうということになります。しかし、独占販売権はありません、と発表されたわけでもないので、なんとも不透明な状態でした。
その後、ドコモは「iPhone獲得に向けて引き続き努力する」という発表を行っています。おそらく、アップルは二股をかけて交渉をし、現在もなお二股をかけているのではないかと思います。
事前に多くの人がドコモ勝利を予想したように、ドコモから発売されていても不思議では無いので、今後ドコモから出る可能性はまだかなりあるのではないかと予想します。
その人のiPhoneへのスタンス次第ではあるとは思うのですが、一般人にとっては基本的に「ドコモから【も】出たほうがメリットがある」だろうとは思います。
まず、ドコモのほうがネットワークが頑丈で混雑に強く、HSDPAエリアも広いために、iPhoneをドコモで使った方が差がわかるくらい快適な可能性があります。
またどちらにしても、ドコモとソフトバンクの両方で出ることになると、競争になりますから端末の価格や料金面で手に入れやすくなるでしょう。
特に「高すぎる」と思った人にとっては、ドコモからも出て値下げ競争になるのを期待すべきかもしれません。
◆ドコモとアップル
これまでの記事にも書きましたが、アップルは厄介な条件をいろいろ出していると見られています。
おそらく六万円以上で端末を納入するのではないかと思われるにもかかわらず、利用者の「実質負担額」は8GB版で199ドル前後にすることを要求しているものと思われます。その差額は「販売奨励金」で何とかしなさいというわけです。
また、パケットを大量に消費する端末をパケット定額で受け入れなければならず、おそらくアップルは帯域制限などは止めろといっているはずです。設備の面ではドコモの方に余裕がありますが、ドコモからiPhoneが発売される場合でもやはり「ドコモ史上もっともパケットを浪費する端末」になると思われます。厄介な端末である事には違いありません。
また、アップルは「アップルによる利用者の囲い込み」を行おうとしています。ドコモはドコモで囲い込みたいはずです。なにせ「元祖囲い込み」のiModeのドコモですから。しかしアップルはiMode的な事情は「全く無視した要求」をドコモにするはずです。
つまり、ドコモから見るとわがまま放題だろうということです。
今回の「ソフトバンク勝利」はドコモ側には寝耳に水だった可能性もあり、交渉で裏切られたと思っている可能性もあります。もしそうなら、この不信感、あとでアップル側からドコモに擦り寄ろうとした時にアップルにとって「高くつく」可能性もあります。
アップルから見ると、土管屋としてはドコモが圧倒的に優秀であり、なおかつ資金力やシェアにおいてもドコモが圧倒的です。
iPhone販売を通じて「アップルへの囲い込み」をしたいアップルにとって、領土の拡大にはドコモの優秀な土管とドコモユーザの数の優勢の方がありがたい面もあります。しかも、ドコモユーザの方が「支払いの良い人たち」は多いはずです。
今のままだとソフトバンクユーザ以外にはMNPや二台持ちの決断を強いる事になりますが、ドコモと手を結ぶことができればMNPを強いなくてもアップルが掌握できるユーザは市場の半分以上にも到達します。
これからのiPhoneフィーバー変化でのアップルとの力関係の変化や、ドコモがどのような姿勢でアップルとの交渉に臨むか次第で色々な事があるのではないかと思います。残念ながら、どういう交渉がこれまでに行われて、これから行われるかは全く秘密のままになると思いますが。
(実は他国ではそういう傾向が多いらしいのですが)発売当初は大変な熱気に溢れるものの、あっという間に尻すぼみになるようなパターンだった場合や、ソフトバンクの網が混雑してしまって快適に使えなくなった場合、あるいはアップルの囲い込み作戦が不発に終わった場合には、「ドコモからの追加販売によるてこ入れ」をアップルが必要とする事もあるかもしれません。
よって、ドコモの姿勢は今のところ淡白ですが、これは正しい気がします。
・獲得にむけて交渉は継続する、と言っていて諦めたとは行っていない
・ドコモは「別に獲得しなくてもそんなに困るわけではない」と言っている。他にもスマートフォンは沢山あるし、タッチパネルな機種だって沢山ある。
ここで「ドコモとしては何としてでも獲得します」と言ってしまった場合、当然にアップルは強気になります。全体的な情勢を考えた場合、ドコモの立ち位置自体が圧倒的に有利な面もあります。その点は、どうやってもアップルは決して無視できません(また、だからこそ多くの人がドコモ勝利を予想したのです)。
そして利用者にとって望ましいのは、「両方から出る」という展開です。そうなって損になることはありませんから。
私自身の(外れた)予想も、「予想としてはドコモ勝利なんだろうけども、希望としては両方から発売される方がユーザーのためにはなるだろう」というものでしたから、
・ドコモ落選だが交渉継続
・ソフトバンク勝利も独占権持たず
ならば、利用者にとって望ましい展開にむしろ近い流れなのかもしれません。
◆「その他」のところは
その他のキャリアからiPhoneが出ることはほとんど期待できません(当面は)。
まずAUですが、通信方式が違います。AUから出すためには「CDMA2000に対応したiPhone」を開発する必要があるためです。北米ではCDMA2000が優位であるにもかかわらず、アップルは世界で優勢なGSM/W-WCDMAに対応させていますから、なかなか難しいところでしょう。お膝元なのに切り捨てているくらいですからね。
イーモバイルについては、周波数がまず問題になります。iPhoneが1.7GHz帯に対応していなければどうしようもありません。また、ユーザ数が少なすぎますし、エリア整備も不十分です。現時点ではパケットをどんどん使えるようになっていますが、これは「ユーザ数が少ないから」の現象であることはアップルも直ぐ見抜くでしょう。
また、千本会長もいろんな意味での多大な負担を強いるiPhoneの獲得よりも別の戦略を選ぶのではないかと思います。むしろ「iPhoneキラー」な端末を猿に持たせてCMをするような作戦のほうが「らしい」というのは皆さんも思うところではないでしょうか。
ウィルコムについては「W-SIMスロット」にアップルが興味を持ってもらえれば何らかの製品が出るかもしれません(可能性だけですが)。GSM版のW-SIMやW-CDMAのW-SIMが出た場合には、もしかしたらアップルとの何かはあり得る話かもしれません。もしかするとAUよりゴールに近いかもしれません。ただ当面発売される可能性がほぼ無い点では全く同じです。
つまりまとめると、当面はドコモとソフトバンク以外から出る可能性はかなり低いということです。当面は出ないと思って差し支えないと思います。
それ以外のキャリアのユーザは自分のキャリアの端末とiPodTouchとの組み合わせで使うということになりそうです、その方がお金もかかりません。
しかし「どうしてもiPhoneそのものが欲しい人」は、さっさと諦めて二台持ちかMNPを検討した方が良いだろうということです。ただ、ドコモユーザなら待つ方が正解の可能性はあります。
◆素朴な疑問
以下、ついでの蛇足。
元祖のiPhoneが出た当時にすぐに思ったことなのですが、iPhoneは新しいデジタルなおもちゃとしては面白そうなんですが、
・通話するには横幅が大きすぎませんか、元祖W-ZERO3並みに無理がありませんか?
・iPodを兼ねてる事になっていますが、本当に兼ねてるんでしょうか?
後者を簡単に説明すると、「iPhoneを買ったとして、結局のところiPhoneとiPodを両方持ち歩いている気がしてならない」ということです。いや別に、両方持って歩いて何ら問題あるわけではないのですが。音楽携帯とiPodをもって歩くのは別に普通ですし。ただちょっと、あまり見かけない感想のような気がしたのでついでに書いて見ました。
一応お断りしておきますと、前から書いているように「閲覧装置」としては面白い端末だとは思いますので、その部分に何かを言っているわけではありません。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
ドコモはiPhoneを諦めていない、でしょうけど、
「アップルはドコモ・ルートも諦めていない」・・・となると、SBMに喰らわせた、
ジョブズ師の暗黒フォースの意図が怖いものになるかもしれません。
・SBM/iPhoneはなにゆえに専用USIMなのか?
・上納金やコンテンツ自社占有など、ある種のMVNO(ディズニーも?)的なしくみである。
・キャリアは土管屋になれ。
以上のことを踏まえたとき、ドコモからもiPhoneならば
・専用USIMはドコモに書き換えられる!
・コンテンツはiTunesのものなので他社で使えなくなることがない。
・キャリアに縛られる引力が弱まる。
などという、暗黒面が待ち構えているのかもしれません。
しかし、ユーザーの側からするとお得なことなのかもしれません。
投稿: TT | 2008/06/25 20:34