705 エイプリルフールにTD-SCDMAの試験サービス開始 / これの日本への影響
TD-SCDMAについて少し。
このニュース、日本にも結構関係あるぞという話です。
◆よりによって4月1日ですか・・
4月1日(2008/04/01)にTD-SCDMAの試験サービスが始まったようです。
中国でも第3世代へ突入 TDのモニター利用開始
http://www2.explore.ne.jp/news/article.php?id=8761&r=sz
最初の最初の話ではもうとっくに中国全土でサービスインしているはずだったTD-SCDMAですが、ようやくサービスインすることになりました。とはいっても限定的な試験サービスインですが。
区切りが良い日である事は間違いないのですが、4月1日のスタートになりました。ただでも怪しげなところもあるTD-SCDMAなわけですが、エイプリルフールのサービス開始となりました。これは笑いを取るための技術ですと言いたいのでしょうか(笑)。
TD-SCDMAは中国の国策でして、それゆえに同じく国策のオリンピックまでにサービスインすることもこれも国策でした。遅れに遅れていたTD-SCDMAですが、オリンピックで中国自慢の技術(ということになっている)TD-SCDMAを世界にお披露目したいという目標を満たすぎりぎりのタイミングでのサービスインという感じです。
逆に言えば、今回の(試験)サービスインはTD-SCDMAが完成したからというよりも、こういう事情があってのサービスインの可能性があるということです。
◆大丈夫なのかどうか?
ちょっと心配しているのは、オリンピックに間に合わせるために無茶をしていないかということです。
技術的に未熟なままサービスインすると大変な事になるのは過去の例が証明済みです。初期FOMAしかり、WiBroしかり、初期PHSしかり。
TD-SCDMAがどのような状態なのかはまだニュースがありませんが、性能的に問題のある状態ならば現在整備しているインフラはあとでゴミになるでしょうし、使った途端に解るほど明らかに性能的に問題のあるのならば、国の威信をかけての恥さらしという事にもなってしまいます。
しかし後述するとおり、TD-SCDMAの完成度についての詳細な情報は「今すぐ日本に必要な情報」でして、どこかの方に報告していただきたいところです。でも、WiBroの現状すらニュースになりませんから、ニュースにはならないでしょうね。
#実際には悲惨な状態でも「素晴らしい」という報道はされるような気もしますけど・・
◆GSMとのデュアル端末
端末のほうですが、GSM/TD-SCDMAな端末で、TD-SCDMAの電波がつかめなければGSMで通信するような端末のようです。なんとなく、単なるGSM端末として活躍しそうな気がしてなりませんが。
GSM/TD-SCDMAというような端末は他国では全く売れないので、中国国内メーカ数社(レノボを含む)と韓国メーカ(サムスンとLG)だけが端末を供給しているようです。中国国内でもTD-SCDMAには慎重な意見が強い状態なので、韓国メーカが妙に突出している感じも受けます。
オリンピック向けに最低限のエリア整備が行われるであろうことと同様、端末についても最低限格好がつくようなラインナップが準備されるのではないかと思います。正直なところ、こんな動機での端末開発が行われる例は滅多に無いのではないかと思います。国策の携帯電話っていうのは何とも理解を超えた状況です。
◆日本の2Ghz帯への影響
なんとなく日本とは全く関係のないニュースにも思えるのですが、実のところそうでも無かったりします。
TD-SCDMAは、現在再割り当て作業が進行中の「2GhzのTDD用帯域」の候補だからです。
2Ghz帯で候補になっている技術で素性がわかっているものは実はあまり無かったりします。簡単にまとめて書いてみると、
・TD-CDMA:実用化されておらず
・TD-SCDMA:4/1から試験サービスイン(使える状態)
・モバイルWiMAX:面倒なので略
・802.20(クアルコム):サービスイン実績なし
・802.20(iBurst):サービスイン済み、基地局も端末も実物有り
・次世代PHS:開発中
・LTE(TDD):開発中かつ完成は一番遅いと見られる
商用サービスの実績があるiBurstを除くと、あとはよく解らないわけです。
ところがTD-SCDMAも4/1から試験運用されることになったわけでして、中国に行ってみるだけで素性が解るようになりました。
TD-SCDMAがある程度大丈夫そうならば、中国大陸では国策である程度は普及するはずですから、基地局や端末の市場規模も期待できそう、ということになるでしょう。
もし仮に(仮にですが)、TD-SCDMAがとても良い感じに出来上がっていて、日本に一式をそのまま持ってきても大丈夫そうだ、というような事だって考えられなくはないわけです。逆に、「ああ、こりゃどう考えても駄目」ということなら以後考える必要のある選択肢を削る事ができます。
あんまり考えたくない展開ですが、日本でTD-SCDMAを導入するといって手を挙げる陣営があった場合には、まず日本国内で大ニュースになり、次に中国大陸でニュースになり、中国大陸からその陣営にてこ入れなんていう面倒な展開も考えられなくはありません。2.5Ghz帯の終盤の場外乱闘のような状況で、中国大陸の巨大企業やらが全面協力を表明して日本で騒動になるとか。
◆全体の流れから見ると手遅れの技術
このブログを読まれている方なら当然にご存知のとおり、もう既にLTEの巨大な影が見えてきているのが昨今の状況です。全ての話題の中心はもはやこれです。
この状況で新しい第三世代をサービスインするというのはどうもタイミング的に遅すぎます。中国はTD-SCDMAの発展版やら、中国版の3.9Gなども画策しているようですが、少なくとも中国大陸以外での基準で考えると「手遅れ」です。これらは全て、国策で保護された中国大陸でしか生きられない存在です。
ただ、中国は日欧連合のLTEが世界制覇し中国も制圧するのを許さないかもしれません。また、中国大陸は半端ない巨大市場ですから(人数的には日米欧を足しても届かない)、わがままを続けられると厄介な存在ではあります。
ある意味、一番波風が立たない平和な展開は、
・TD-SCDMAが面白いような大失敗でスタートする
・改良を試みるが泥沼化しているうちにLTEが世界を席巻
・さすがに観念する
おそらくながら、中国にもTD-SCDMAはスタートした途端に木っ端微塵になり、早々に消滅して欲しいと思っている人は結構居るんじゃないかなと思う次第です。TD-SCDMAの導入を嫌がっている勢力もあるようですから。電話会社も本音ではW-CDMA→LTEに乗っかりたいというのが本音に違いありません。
ただ、TD-SCDMAは良い感じで仕上がっていた場合にはそれなりに普及(中国大陸で)する事も考えられるというのが、なかなか難しいところです。
モバイルWiMAXについてインテルの政治力を背景として発達したバブルの側面があると評しましたが、TD-SCDMAは中国政府の力によって直接に担保されています。
技術的に話にならない場合にはどうにもなりませんが(木っ端微塵コース)、神輿にできる程度の技術的完成度があれば(これも怪しいと思うのですが)、あとは政治的な力が働いてある程度は普及することになるでしょう。
日本で導入しようと思うところがあるのならば、「TD-SCDMA神輿の日本支部」をやるということになるわけです。TD-SCDMAの完成度がとても高ければ無くはない話(まあその程度の可能性ですが)かもしれません。ただし、TD-SCDMAが木っ端微塵コースに入っている場合には日本支部も瞬殺ですけども。
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