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697 「日中韓で第四世代携帯」は正直どうだろうか?

ちょっと前のニュースについて。

◆どうなんでしょう?

ネタを投稿しないでいるうちにちょっと前の話題になってしまいましたが、以下のニュースについての記事です。

第4世代携帯、日中韓で国際標準 今月下旬に国際会議
http://sankei.jp.msn.com/economy/it/080320/its0803201418000-n1.htm

大丈夫なの?と思えるニュースです。

読んでいる人からのリアクションが無いので、実際のところは解りませんが、私が思うに、読者のかたも同じく「これは怪しくね?」と思っている人が多いのではないかと思っています。

とりあえず、日本のメリットが今ひとつ解らなかったりします。

◆技術的に組むメリットなし

組むとしたら、技術的な点か、数の力を期待してということになります。まず、技術的な点について考慮する価値があるかどうかを考えてみましょう。

両国のこれまでの国策技術について挙げてみましょう。

・韓国:WiBro
・中国:TD-SCDMA

両方ともみっともない状態です。

まずWiBroについては、このブログでそこそこ書いています。

WiBroの大本営発表(一部では大成功という事になっている)を鵜呑みにしている日本のマスコミはいるようですが、成功した技術とは言えないと思います

韓国国内ではWiBroは完全に独自の技術で、なおかつWiMAXはWiBroを基にして作られた、というようなことになっているようですが、それは間違いですので信じてはいけません。

次はTD-SCDMAについて。

世界がCDMAの話題で盛り上がっていた頃に中国が独自の第三世代技術として開発を開始したものです。最初は、CDMA2000やW-CDMAに「多少遅れてサービスインする」ということになっていたはずですが、結局開発は延々遅れており、試験サービスインがようやく2008年の4月1日にスタートするということになりました。

「多少遅れる」どころか「CDMA2000より後発のW-CDMAの発展版(HSDPA)すら枯れた状態」になっているのに、今さら試験サービスインでは国際的にはさすがに手遅れです。しかし、国策で保護されているために、中国大陸ではある程度は普及するかもしれないのが恐ろしいところです。

結局のところ「通信技術そのもの」を作ることを考えた場合には、これまでの実績をみる限り、技術的に組む必要性は怪しいように思えます。


◆「中国が大きい」のは世界にとっても日本にとっても同じ

次に理由として考えられるのは、中国の巨大さでしょう。

TD-SCDMAがこの手遅れの状態にありながら、しかし中国大陸ではこれから無視できない存在になる可能性があるとされている事自体が、この意味での「中国の実力」の一端を示しています。

つまり、その技術が何であろうとも、中国が採用すると言った途端に世界的に無視しにくくなるというわけです。これは組む理由にはなりえます。

しかしこれは「中国にとって中国自身の巨大さが有利である」という事実を示しているだけで、その中国が日本を尊重してくれない限りは、日本にとっては逆の結果を生みかねません。

つまり、日本と中国の陣営内部においても「中国の存在力は巨大」になりうるので、日本は世界に出る前に「陣営内部で中国に押しつぶされるだけ」かもしれないということです。

今回の話は、日本側に十分に考えられた「シナリオ」があって、万事大丈夫なのかもしれません。しかしこれまでのいろいろな事での経緯をみる限り、日本側にはそういうことをする才能は皆無のはずです。

例えば考えてみてください、こういうことを言われたらどうしますか?

「我々は日本の技術案は採用しません」
「TD-SCDMAに配慮した次世代技術とします」
「日本は日本の技術力でTD-SCDMAの発展に貢献してください、日本独自の提案はいりません」
「日韓が独自案を出して『非協力的』ならば、中国は欧州かアメリカのどこかと組むことにします」

中国の巨大さを頼りにする限り、交渉の主導権はそれを持っている中国にあることになります。そして中国は日本(や韓国と)組む必然性は無いのです。

日本は自分では戦えないけれど、中国と組めば欧米と対抗できるかもしれない、というのは中国の立場に立って考えていないように思えます。

こちらが気を使ったんだから、向こうも当然気を使うでしょ、というのは日本でしか通用しません(これは本当の話)。日本が気を使っているから、中国も気を使ってくれるはずだから上手く行くだろう(上記発言例のような事にはならない)、っていうのは考えが足りないか、日本人の習性を熟知した向こうに嵌められているかもしれません。

またそもそも、欧米と日本自身で渡り合える自信が無いのに、どうして中国と渡り合えると思うのでしょうか?

◆典型的フレーズ

記事には典型的フレーズが出てきます。

日本は第2世代携帯電話(2G)でNTTドコモの規格が国際標準に採用されず、世界の携帯電話市場から孤立した苦い経験がある

ドコモはその後W-CDMAで大反省して日欧連合を成立させ、そして今やW-CDMA/HSDPAは勝者で、次の世代のLTEも勝者の可能性濃厚なのですが、なぜか毎回無視されます。

自国を無意味に褒めるマスコミよりはよっぽど健全だと思いますが、なぜに日本のマスコミは日本は駄目だと言いたがるのでしょう。彼らは一体いつまで第二世代の話をするのでしょう。

ドコモは現在、「勝ち陣営」の重鎮なのですが。

日本と並ぶ情報通信先進国となった韓国

彼らは「携帯端末の製造」で世界の水準になっただけで、他の分野では世界水準ではありません。

ちなみに補足しておくと、「携帯端末の製造で世界クラス」というのはとても立派な事です。何しろ日本はそうではないのですし。しかし、携帯端末の製造で優れているからといって全面的に優れている事にはなりません。


◆そもそも「現在の流れの延長」に進むだけでは?

第4世代は現行の3.9世代のどれかからから生まれるか、あるいは3.9世代の技術そのものになるか、類似技術になるはずです。3.9世代は第3世代の発展したものであるというのは誤解で、むしろ第4世代の初期型なのですから。

ならば、ドコモとエリクソン(やクアルコム)でそのままLTEから第4世代を作ってしまってそれでいいのではないか、とも思うのですが。それが世界標準に採用されないとは到底考えられませんし。

もちろん、これから(実質的に)新たに3.9世代技術を作るのもありえるでしょうけれども、日中韓で協力関係自体が何も無い状態からそれをはじめて、上手く行くようには思えません。2011年(だったとして)はもうすぐですし。

ドコモと欧州のやり取りでは、ドコモが提案したけれど駆け引きの結果蹴られた提案は沢山あるようです。まあ確かに欧州と組まなければ、ドコモがせっかく作ったのにお蔵入りした技術のようなことはなくなるように見えるのかもしれません。でも中国や韓国に蹴られたら同じ事でして、中国政府やサムスンがドコモの提案をありがたく受け取るでしょうか?

上手く行くパターンがあるとすれば、最低限、
・日本(ドコモ)の提案の多くを中国と韓国が飲む状況(何らかの理由で「日本の提案に乗っかる方が彼らの利益になる」状況が出来上がっていること)
・欧州やアメリカとの全面戦争にならない(そうなると東アジア限定技術になる)

まあ、無理じゃないかなと。

また、この話についてドコモ自身はどう思っているのでしょうね。

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もしくは、日中韓で何をするつもりなのか本当のところを知っている人が居たら教えてください。私が知らないだけで「これは基本的に上手く行く話」だというのならば(私の心配が間違いである方が)、その方がはるかに良いですから。

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