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696 解説:1.5Ghz帯が3.9世代/LTE/Super3G用帯域に再割り当ての件

しばらく前に、「1.5GHz帯を3.9世代用に再割り当てする」というニュースが出ていましたが、それに関する記事です。

私の知っている範囲程度で、ではありますが、全く知らん人向けの解説っぽい事を書きつつ、記事にしてみたいと思います。

◆その前にまず、全体の状況を再度書き出してみます

1.5GHz帯というのは、現在第二世代携帯用(PDC)に割り当てられている周波数帯のことです。その前に、まず最初に大雑把に、携帯電話の周波数割り当て全体の状況をまず書いてみますので、全体像をつかんでください。

・700/900MHz帯(近い将来に割り当てあり)
アナログ地上波TV停波後に利用可能、携帯電話用の電波としては一等地であるため、壮絶な取り合いになること確実。

・800GHz帯(決定済)
AU(第三世代)、ドコモ(第二世代+一部第三世代)が利用中。ここも一等地。現在、細切れになった電波帯域を「区画整理中」で、区画整理後はAU(第三世代)とドコモ(第三世代)で利用することが決定済みです。昔、孫社長が「私に帯域をよこしなさい」と割り混もうとしましたが、各方面の調整の末に複雑な区画整理作業計画が決定後という微妙な段階での殴りこみだったので、返り討ちにされています。

・1.5GHz帯(近いうちに?再割り当てあり)
現在、第二世代用に使われています。ツーカー(東名阪:東京/名古屋/大阪近辺のみ)、ドコモ、Jフォン→ボーダフォン→ソフトバンク(全国帯域)に割り当てられています。
Jフォンが圏外になりやすかったのは800MHz帯よりも1.5GHz帯の方が電波の飛びが悪いためでもありました。今回の記事は、この帯域が今後、3.9世代用に割り当てられるらしいという件についてです。

・1.7GHz帯(利用中:ただし空き帯域有り)
イーモバイル(全国帯域)とドコモ(東名阪)が利用しています。ソフトバンクにも一度割り当てられましたが、新規参入をやめたので返却されました。ドコモについては補助的な利用になっています。また別途記事を書く予定ですが、帯域に空きがあります。イーモバイルにとって生命線(のはず)の帯域です。

・2.0GHz帯(利用中)
現在、第三世代用に使われています。ドコモのFOMAが代表的です。ドコモ(FOMA)、ソフトバンクの第三世代、AUの第三世代に利用されています。電波の飛びは今ひとつで、そのことはFOMAやソフトバンクがエリア面で苦労する原因にもなっています。この帯域は今後次第に3.9世代用の帯域としても利用されると見られます。

・2.0GHz帯:TDD帯域(現在割り当て作業が進行中)
元々はアイピーモバイルに割り当てられたのですが、サービスインに失敗してしまい、現在再割り当て作業がまさに進行中です。しかしこの帯域はどうも人気がありません。この帯域についてはこれまで何回か記事に書いたとおりです。

・2.5GHz帯:TDD帯域(割り当て済)
2007年末に大騒動の末に、KDDI(モバイルWiMAX)とウィルコム(次世代PHS)に割り当てられました。この帯域についても散々記事にしましたのでそちらをご覧下さい。

・3.5GHz帯:TDD帯域(将来に割り当てられる)
世界的な「第4世代用帯域」として割り当てられる予定があります。広い帯域が割り当てられることになりそうですが、周波数が高すぎて利用は大変に難しいとみられます(これも過去に記事にしました)。

◆1.5GHz帯

簡単に書くつもりでしたが長くなってしまいましたが、1.5Ghzはそんな感じで現在第二世代用に使われている帯域です。利用者の感覚的には「Jフォンで象徴される帯域」と思ってよいところです。

これまでの割り当て
・第二世代用(PDC)に割り当てられていた
・約50Mhz幅×2(下り帯域:基地局→端末、上り帯域:端末→基地局)
・帯域の約半分が全国で利用可能な帯域、残りが東名阪(東京/名古屋/大阪の近郊)でのみ利用可能な帯域。
・全国帯域は基本的に「J-Phone→ボーダフォン→ソフトバンク」に割り当てられていた(あるいはそのように考えて差し支えない状態)
・東名阪帯域は基本的にツーカーに割り当てられていた
・ドコモに一部割り当てられており、シティフォン/シティオや補助用途(mova全盛期の800Mhz帯の混雑対策)に用いられていた。

現在の状況
・ツーカーが2008年三月末で停波したので、ツーカー利用分が空き状態になった。
・ドコモも2008年秋までに、帯域を明け渡す予定。
・ソフトバンクの第二世代についても、免許の期限が2009年度末(2010/3末)となっている。

凄い事実が一つ明らかになってしまいましたが、その事については後で書くとして、帯域自体の説明を続けます。

今後の予定
・とりあえず第二世代にはすべて退場して頂いて、空き地にする。
・併せて、周辺帯域における携帯以外での「ローテクな利用」を成敗して、帯域を総合的に綺麗にする。
・最終的な目標は、帯域の整理によって「50MHz幅以上×2」「全て全国で利用できる帯域」とすることのようです。
・ただし、現時点ではツーカーの部分が空いただけに過ぎず、作業はまだこれから。
・帯域は既存キャリアに割り当てられて、3.9世代用に、つまりLTE/Super3G用の帯域として利用される見込み。

箇条書きの形にしましたので、解説的にはやさしくない感じになりましたけれども、状況は解っていただけたでしょうか?


◆実質的に「LTE用帯域」を意識した再割り当て

計画上(書類上)では、2010年度末には一応の帯域の返却が終わっていることになっているので、この4月(2008年の4月)になって、実際の割り当て作業の話が出てきました。

総務省、“3.9Gケータイ”の技術条件検討へ
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/39402.html

7月を目処に基本コンセプトを整理し、年内を目処に具体的な技術的条件を定める。総務省では、12月頃にも情報通信審議会からの答申を受ける見通しを示しており、その後、規定の整備を行なっていく考え。

2008年中に再割り当て作業の基本的部分を決めてしまい、2009年に割り当て作業(つまり「帯域の取り合い」をしてもらう)を行い、2010年には実際に使ってもらえる状態にする、ということのようです。

「3.9世代」が具体的に何を差すかについては、これまでに書いた記事を参考にしてください。LTEやUMBが該当し、場合によってはモバイルWiMAXや次世代PHSも該当するかもしれませんが、実質的には「LTE(Super3G)」が主に想定される方式となります。

よって、非常に大雑把に言うならば、「1.5GHz帯はLTE帯域として再編される」という感じになります。

また(これも以前の記事に書いたとおり)、ソフトバンクやイーモバイルは「HSPA+」(従来の第三世代系の技術)や、さらには「W-CDMA/HSDPA」での利用も場合によっては一時的に許すように国にお願いした方が良いかもしれません。

ツーカーとドコモの利用分についてはもう空いている(も同然な)ので、その部分については再割り当て可能になると思われますが、他の部分の停波や帯域の整理がそれまでにどうなっているかはわかりません。

次世代の通信技術は、基本的に帯域を大食いする方式になっているため、将来において電波が有効に利用される事を考えると、帯域を綺麗に整理して大きな幅で割り当てる必要があります。そうしないと十分な性能が出ないためです。

実際、再割り当ての方針では「二社程度」という話が出ているようで、細切れにしないつもりではいるようです。ただし(いつもの事ながら)、一社に全部割り当てるという男らしい方針ではなくて「二社」のようです。

つまり、こういう事になります。

・2010年度(2010/04/01)から、1.5Ghzで3.9世代の帯域を確保できるかもしれない(計画上は)

それはつまり

・2010年度(2010/04/01)から、1.5GhzでLTE用の帯域を確保できるかもしれない(計画上は)

ということになります。2010年までには他の注目帯域の割り当てなどもあるでしょうから、1.5GHz帯だけが注目される事にはならないでしょうが、なかなかこれは注目の割り当てという事になります。


◆しかし疑念が

本来ならばここから「予想される最初の割り当て幅」などを考えて、その幅でLTEをしたらどうなるかとか、どの陣営に割り当てられるか考えてみたいところですが、その前に気になることがあります。

以上は、先ほどスルーした「ある疑問点」が何も問題を起こさず、加えて、その他の帯域の整理も平行して上手く進んだと考えた場合の予定です。

というのは、2009年度末までには(執筆時点の現在から)すでに二年を切っていることです。

どういうことかというと、「今から二年以内にソフトバンクの第二世代が完全停波する」ということがこの計画の前提になってしまっているということです。

これは人によっては「驚愕の事実」ではないでしょうか。

何しろ、2008年4月の時点で、ソフトバンクの第二世代の利用者は「まだ450万人以上存在する」からです。


(続きは次の記事)

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コメント

1.5GHz帯の現状について

ツーカーが全国枠の東名阪地域
ソフトバンク(旧デジタルホン)が東名阪枠
ソフトバンク(旧デジタルツーカー)が
全国枠のツーカーの未使用地域
です

変則的なのですが、じっさいはそうらしいです

投稿: 姫 | 2008/04/14 02:13

LTE(を含む3G?)の割り当て予想ですが

あたしの勝手な予想では
全国1社、東名阪1社で割り当てになるとおもいます

全国は、ソフトバンク(もともと使っていたわけだし
800M帯でドコモとauに割り当てたのと同じ理由で)
東名阪は帯域あたりのユーザ数の多いところ=多分ドコモ
となるのではとおもってます

そういう割り当てなら
ソフトバンク版プラスエリアにすることで
2Gと3Gを共存させ、2G停波を遅らせることができますよ

投稿: 姫 | 2008/04/14 02:26

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