692 ドコモの新ロゴは不吉な色でスイーツ/しかし「それ以外」は侮れないかも説
ドコモの新しいロゴが発表されているようでして、その件について少し。
まず、これについてのニュース記事の一つです。どういう新しいロゴであるかについてご存知無い方はニュースでご覧下さい。
ドコモ、7月から新しいロゴ 設立以来初の「衣替え」
http://www.asahi.com/business/update/0418/TKY200804180313.html
◆不吉な色
これまでのドコモのロゴには二つのイメージがあります。
まずは「NTT渦巻き」がロゴの一部になっている黒色のロゴのもので、現在のNTTドコモのトップページにもお顔を見せているロゴです。もう一つは、「青」のイメージです。ソフトバンクがドコモのコピープランを「ブループラン」と呼んでいるように、ドコモの色といえば「青」でした。
今度の新しいロゴは「赤」です。くすんだ方面の赤です。また、ポップな感じのフォントになりました。
私には赤は不吉な色としてのイメージがあります。以下、過去に使われて消えた「不幸な赤」のものです。
・ボーダフォン(現ソフトバンクモバイル)
・暗黒時代のAU
・立ち直る前のDDI POCKET(現ウィルコム)
現時点で携帯電話で「赤」といえば、ボーダフォンを思い浮かべる人が多いのではないかと思います。この連想からのイメージはあまり良いイメージは無い筈です。ソフトバンクモバイルでは、赤のイメージが排除されています。
AUは今では明るい色のオレンジのイメージですが、初期には赤でもありました。今では赤のイメージはありません。
DDI POCKET(現ウィルコム)の大失敗に終わった音声通話による反攻計画のイメージも赤です。その後、データ通信にシフトする段階でイメージカラーは青となります。
またそもそもイーモバイルが思いっきり赤色でかぶります。ただしこちらは、ドコモでは使えないような思いっきり攻撃的な赤です。ドコモにはイーモバイルのような赤の使い方は出来ません。
今のドコモのロゴは真面目な感じのフォントに、三色でNTT渦巻きがあしらってあるものです。また、青のイメージは真面目で清潔なイメージです。
新しいロゴのフォントは、前よりは真面目な感じではなくなりました。そして、赤も青よりは真面目な色ではありません。
これからのドコモは、既存ユーザを重視した真面目で堅実なイメージにするとおっしゃっているようなのですが、新しいロゴのイメージはそういうイメージではなく、むしろ真面目で堅実なイメージはふやけてしまっているような気がします。
ロゴは親しみやすくした、ということだそうですが。安っぽくしたら親しみやすくなるのは当然というツッコミをしている人も既に見かけました。本当にこれでよいのでしょうか?
◆スイーツ作文
新ドコモ宣言なるものがあるそうでして、
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/page/080418_00.html
・ブランドを磨きなおし、お客様との絆を深めます。
・お客様の声をしっかり受け止め、その期待を上回る会社に変わります。
・イノベーションを起こし続け、世界から高い評価を得られる企業を目指します。
・活き活きとした人材で溢れ、同じ夢に向かってチャレンジし続ける集団となります。
これも何か不味いなと思いました。
まず、「ブランドを磨きなおし」というところ、ドコモ2.0の「反撃」と同様のミスをしています。あれだけ自爆していると言われたのに、今回に生かせていません。
不祥事を起こしてしまって、そこから再出発する企業ならばこういうフレーズでしかるべきですが、ドコモはそうではありません。ここ数年の流れなどどうでも良いほどの圧倒的な業界の巨人です、改めるべきは世間の認識の方です。それなのに自分で狼狽して自分の評価を自分で毀損しています。
どうしようもないと思ったのは最後のものです。これは、顧客に向かって言うような言葉ではありません。顧客からすると知ったことの無いことです。
世の中には、自分の頭の中で発生しているだけの事と、外界で発生していることの区別ができない人が居ます。例えば、私の頭の中にこんなに『ポジティブ』な感情が発生した/させる、ということを、外界や自分以外の人間にも良い事が起こったということ区別ができていない人などです。
最後のものはそういう感じです。そしてそれを踏まえて残りの部分をも読むと、同じ傾向をもっています。
ドコモは企業でして、個人が自分の内面で発生した感情を個人的表現で書いているブログではありません。表明すべきことは、「我々は、顧客側の基準で、何をどのように提供するように変化するのか」ということです。
以下不必要に解りやすくした例ですが、
はっきりしているコミットメント:
・2012年までに人口カバー率94%
・他社とそっくり同じプランを200円引きで用意し、24時間以内に必ず対応値下げを行います
・産地を偽ることは今後一切行いません、そのために産地の確認は以下のように厳密に行うことを義務つけます。
はっきりしていないコミットメント:
・来年はもっとポジティブな自分を実現します。
・チャレンジする自分に生まれ変わります。
・お客様を思う気持ちをもっと大事に思いたいと思います。
要するに何かといいますと、日本的な甘えに満ちているんじゃないかということです。
ロゴの件といい何か、脳内と現実の区別が怪しげな状態の「内気なスイーツさん」がドコモの新しい企業イメージを作ってしまって、それがそのまま承認された、ような感じがしなくもありません。
フレーズについてはこれまで書いたとおりですし、ロゴの件についても内気なフェミニンな感じで設計されたものだと考えると納得が行くかもしれません。宣言以外の部分も以下のような状態です。
まあ、これはこれで悪くはない気もするのではありますが・・
■新ブランドステートメントこれからのドコモが目指すこと。
それは、人と人、人と明日を、新しい絆でつないでいくこと。そのためにまず、
一人ひとりのあなたと、きちんと向き合い、関わり合うことからはじめます。昨日までできなかったことを、次々とかなえながら、
それぞれが今、いちばん必要としていることに、真っ先に応えること。
そして、あなたが生きていく今日を、明日を、
もっと気持ちよく、もっとあなたらしくしていくこと。ドコモは、一人ひとりの手の中で、
その毎日を一緒に歩いていこうと思います。
そして、あなたを自由な明日へと導く、新しい扉になろうと思います。いつでも、どこでも、あなたと明日をつなぐために。
その手のひらから、限りない可能性を広げるために。■新ブランドスローガン
手のひらに、明日をのせて。
ドコモユーザには「これを作った奴は今すぐ表に出ろ」と思った人も居たのではないかと思います。
どうにもスイーツ作文風です。
◆新しいドコモの現実的だと思われる点
イメージ方面はともかく、他の方針としては納得できるところもあります。
新規ユーザの獲得重視から、既存ユーザ重視(つまり解約抑止中心)にするという発言です。
つまりのところドコモにとってはまずは防御が肝要だろうということでもあります。そして、防御が上手くいっている限り、ドコモにはものすごく都合のよいユーザを大量に抱えたままで居られます。ほとんどコストがかからず、支払いがよく、解約しないユーザです。
またそもそも、市場が飽和して居る状況でもありますから、ドコモは母数が多い以上解約には弱い構造になっています。
ならば、解約させない事ばかり考えるというのは悪い作戦ではないかもしれません。
「解約妨害割」が今後大活躍の予感でもあります。
なお、ずっと使っているユーザにやさしくします、というような情緒的表現や議論がこれから横行すると思いますが、本質は単に以下のようなもののはずです。
・顧客の新規獲得に使う予算の金額は?
・どんなターゲット層にどこのよう分配しますか?
・既存の顧客の解約抑止に使う予算は?
・どんなターゲット層にどこのよう分配しますか?
夏野さんは派手なパフォーマンスで新規獲得を行いつつ、副作用で既存の顧客の引きとめも狙いました。しかし、これへの反感が出たのでしょうか、新規獲得の予算の比率を削るようです。
しかし、予算全体を削ってしまうのではなく、解約抑止の方を重視するということのようです。解約抑止とはつまり、囲い込みに予算を使うというだけのことであります。それはつまり、解約妨害割に力を注ぐということになります。
ユーザのことを考えるとか言うと本質が見えなくなりますが、つまりのところは「解約妨害割」をなさるというだけのことです。
◆新社長は技術系
また、新社長は今度は技術系です。
現社長(中村社長)は労務系の人だったようで、その前の社長(立川社長)は技術系だったはずです。
理系の官僚と文系の官僚が交代でトップになるというお役人ルールをドコモがいまだに守っているという情けない状況も予想されます。
しかし第4世代への移行準備期(LTEとか)に技術系がトップに座るというのは悪い事ではないかもしれません。超基本的な技術的判断ミスをする可能性はなくなるだろうからです。ただし、FOMAが大失敗したのは立川社長の時期でもありまして、LTEに拘りすぎて自爆する事はあるかもしれません。
私が懸念しているようにHSPA+こそが当面の正解選択肢だった場合には、ドコモは先行したゆえに苦労する事になるかもしれません。しかし、もしLTEが最初から素晴らしかった場合、LTEが何であるか理解しているトップに率いられた「技術のドコモ」はここから加速をつけて独走するかもしれません。
蛇足ですが、立川社長は次の社長も技術系の社長にするつもりだったはずですが(津田さん)、NTT本体からの指令(グループ全体の意向だ指令)が炸裂して現在の社長になったいうこともありました。そして、社長になれなかった津田さんが電撃的にボーダフォン日本で社長になる、という驚愕の展開もありました。結局、津田さんはボーダフォンで大失敗して(ただし、この失敗の責任が全て津田さんにあるのかどうかは不明です)しまいますが。
ドコモの前副社長で社長になり損ねた人が、今で言うソフトバンクモバイルの社長に就任したというわけで、今ならば・・・夏野さんが今年の秋にソフトバンクモバイルの社長になるくらいの大事件でしょうか。
とりあえず今後のドコモは
・解約妨害割中心
・LTEへの急速な移行
こんなところでしょうか。
既存のドコモユーザで長く使っている人は、今後どんな素敵な「解約妨害割」が用意されているのかを期待しても良いかもしれません。
また、孫社長はこの状況に黙っていないかもしれません。全社で囲い込みが横行すると、全体ではユーザの不利益になる可能性もありますから、もしかすると孫社長、本件については真に我々の役に立つ事をやってくれる事になるかもしれません。
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コメント
>本件については真に我々の役に立つ事をやってくれる事になるかもしれません。
ブループランの新規受付停止、エコノミーをはじめとした、旧オレンジプランの完全廃止とかはすぐにでもやりそうな悪寒。
投稿: HT | 2008/04/19 10:03
5年縛り、10年縛りとか出てきたら嫌かな
ソフトバンクみたいに釣った魚に餌やらないところは同じことしないでほしい。攻撃的でいてほしいな。
投稿: はなな | 2008/04/20 07:46